とある天才の話   作:Enis

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第1話

 彼は天才だった。

 

 彼は真理を知っていた。

 

 彼は絶望と希望を持っていた。

 

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小学生の頃

彼はそれなりに勉強ができていた。

 

頭が良い子、彼を見た大人はそう評価し、

変わった子、彼を見た子供はそう見てた。

頭は良い。だけど奇妙な少年だった。

 

彼は自分から子供に話しかけることはしなかった。

彼にとって自分と同等である「他の子供」、それは何よりの「知るべき」対象であった。

 

自分は人間の子供であるし、それは周りも同じ。

周りのような子供はどんな存在だろうか?

 

しかし

 

間違っていることを正しいと言う子

正しいことを間違って言う子

 

 

彼には理解が難しかった。

 

「どうすればいいんだろう・・・」

 

人は多様な存在で、それは子供も然り。

あまりの人間の多様性や矛盾のある言動に彼の思考は振り回された。

 

そして

正しい事、間違っている事。

世の中がその2つに分けられる事が出来ないのを、彼はまだ知らなかった。

 

 

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中学生の頃

彼はかなり勉強ができた。

 

しかし周りの子がやっている勉強、彼は1度もしたことがない。

授業に出て、教科書を読み、ノートをとる。

それが大人が言う勉強だ。

 

彼にとって勉強とは、先生が言ったお話を聞くだけだった。

「ふーん 面白いな」

そう思うだけだった。

 

 

 

 

周りの子は嫉妬した。

 

虐められた。罵られた。馬鹿にされた。

 

「なぜ自分に馬鹿だというの?」

「彼には僕が間違って見えるのか?」

「自分は何を間違っている?」

 

 

矛盾に満ちた周りの言うことに彼は混乱した。

まだ人間というものの存在を理解するには早い。

 

そして自分に自信を持てないでいた。

卑屈とも言える謙虚さ、そして自分の理解と周り声のギャップに苦しめられた。

 

しかし、

 

「自分は間違っているのかもしれない、なら自分が正しくなるまで考えるだけだ」

 

彼は歪にも前を向くことができた。

 

 

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高校生の頃

彼は劣等生だった。

 

話を聞くだけでは進めない内容にぶつかった。

ノートのとり方なんて知らない。

 

先生の話は面白くない。わかりにくい。

 

「やはり自分はダメな人間なのか・・・」

 

この事は彼の卑屈さを後押ししてしまった。

 

 

しかし本の読み方は知っている。

彼は本を読み始めた。

 

そこには人の歴史に拠る、知の深淵が広がっていた。

 

その深淵を覗き、彼は非常に喜んだ。

「この世界には自分の知らないことがたくさんある!」

 

彼は知識の海に……

 

 

 

 

 

 

 

潜り込まなかった。

 

知識には過程がある。

前提知識と思考だ。

 

彼を魅了したのは知識ではなかった。

知識が生み出される過程…… 思考。

 

彼は知識の海から知にたどり着くための思考を読む奇妙な読書家となった。

前提知識がどのように新たな知となるか。それを知りたくて仕方がなかった。

 

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大学生の頃

彼は変人といわれた。

 

大学の授業は彼にとって期待はずれだった。

留年までするほど不真面目な学生だった。

 

数式は覚えない、歴史の知識もない、語学は特にダメ。

哲学、彼にとっては遊びにしか見えなかった。

 

彼は本の虫ともささやかれた。

しかし彼は本にある「知識」の大半を覚えずに読み終える。

内容を質問しても半端な答えしか返さない。

 

 

とるい足らない学生 そんな評価だった。

 

 

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ある日…… 彼ははっと気が付いた。

ついに思考の先『真理』に辿り着いたのだ!

 

 

・・・ なんだこれは?

 

彼の最初の真理に対する疑問は、今知りえた『真理とは何か』だ。

 

『真理とは全ての思考の在り方 その原点』

 

それがはっきりとわかった。

天の声が聞こえるわけではない。

 

判るのだ 疑問から答えへの道筋、その立て方が。

 

例えるならこうだ。

巨大な迷路、そこに何も知らず手探りでゴールへ向かうのが普通だ。

しかし彼には最初から全ての迷路の地図を知っていたかのようにたどり着いた。

 

彼は思考と言うもの極めたような気がした

そしてこれが新たな始まりだとも感じた。

 

 

彼はすべてを知っているわけではない。

物事に対する考え方、それを知ることができるだけである。

 

人はどうすれば幸せになる?

宇宙の外側には何がある?

宗教とは何だ?

金とは、経済とは、政治とは何か?

テレビの政治家が言っていることで国はよくなるのか。

 

どんな疑問も考えることができた。

 

『幸せとは主観から見る自己満足』

『●●が限りなく+0に近い空間』

『ある意味では規範の原書 ある意味では人為的な価値観の集合体 ある意味では…』

『価値の代替品、金などを指標にした人間活動の数値化したもの、国という人間の共同体の運営』

『全体的には良くなる、しかし1部国民が苦しむ、よって批判される』

 

この答えは正しいのか?

『正しい、ただし定義が他者と違う場合はまた別』

 

彼はそんな問答のような思考を繰り返していた。

 

 

 

そして卑屈な劣等感を感じながら少年期を過ごしてきた彼はこう思わざるを得ない。

 

 

伝記で伝わるような過去の偉人はこの真理に至っていたのか?

『少ないが居るだろうと予測できる 不確定要素が多いため断言は不可』

 

自分は歴史に名を残すような偉大な人間になる可能性は?

『大いにある』

 

 

では・・・

この『真理』を・・・ 人間のために活かせるのか?

 

 

お前()次第』

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