とある天才の話   作:Enis

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第2話

真理

 

それはある意味人間の究極目標の1つと言ってよい。

人には知識欲というモノがある。人間の根源的な欲求の1つだ。

睡眠、食事、性、 これら3大欲求だけの生き物でないことを示すものだ。

 

 

人は農耕という手段によって安定した生活を手に入れた。

そして奴隷という労働代理人を得た古代ローマの貴族たちは暇を持て余した。

彼らは知識欲という新たな欲を満たし始めた。

 

我等とは何か。モノは何でできているのか。人はどうやって生きていくべきか。

思考の始まりである。

 

それらは多角的に変化した。

宗教にもなった。世界各地の伝承にもなった。そして学問にもなった。

 

「何が正しいのか?」

それがどの思考でも考えざるを得ない疑問である。

しかしその答えは出ない。

 

「以前偉い人はこう答えた、こう考えた、こう定義した。だからこれは正しい」

という結論で妥協せざるを得ない。

 

実験による正しさの確認という手段も有効だ。

しかし、すべてを疑問実験により実証することは不可能だ。

世の中の疑問の数は那由他の果てである。

 

 

『真理』とは・・・

『答えへの正しい道のり』

『全ての世界の大本から積み立てる思考の世界』

『悟りを得ること』

『     』

 

 

 

1つ確かなことがある。

「彼」が得た答えは人類にとって最も正しい答えに近いことである。

 

- - - - - - - - - - - -

 

 

彼は社会人、大手の会社に勤めていた。

 

大したことの無い大学、良くも無い成績。

しかし論理的で理解しやすい問答をする彼を会社は採用した。

 

卑屈なほどの謙虚さ、1を聞き10を知るような理解力。

飽き易い性格だが優秀な人間、彼の上司はそう評価した。

 

 

 

そんな彼がいきなり論文を発表した。

 

『宇宙の構造』

 

大学の彼の成績を知る人達。最初は鼻で笑っていた。

 

しかし正しい目を持った人は、その内容の正しさと途方も無く斬新な発想が世界を騒がすものだと確信した。

宇宙の基本定義とも言える式が極めて簡潔かつ、はっきりと証明されていた。

 

『空間に置いては●●が○○の単位となり・・・』

『よって宇宙の膨張は・・・』

 

無名の大学で博士号も無い人間が発表した論文は各界を騒然とさせた。

そして世界でも知名度の高い賞をいくつも受賞し、一躍時の人となる。

 

 

 

彼も苦難が無いわけでは無かった。

 

(宇宙・・・ 物理法則について書いてみるか・・・)

彼は理系大学の出身だ。とはいえ授業を蔑にしていたので苦労した。

 

『まずは数学、特に微積の基礎から。基礎概念と高校、大学の基礎公式の扱いを慣れておく』

『力学、電磁気学、そして相対性理論をすべて精査する』

『熱統計力学も重要、量子力学も概念は知っておく』

『そして宇宙物理学を調べていく』

 

たとえ筋道が見えるとはいえ新たなる原則の発見を数式で表すには途方も無い労力を要した。

そして仕事と調べ物を両立すること数年。彼は革新的な論文を発表したのだ。

 

 

彼は会社の仲間に祝わられ、高名な研究者などのパーティにも参加し、各地を公演して周った。

そして劣等生と自分を評価した大学や高校への小さな復讐とばかりに、自分の考える「思考」を重視する教育をすべきだと、さり気無く発言もしていた。

 

彼は賞金などで、贅沢しなければ一生暮らすのに十分な金を手にした。

そして休職をし、新たな論文のための研究に勤しんだ。

 

 

- - - - - - - - - - - -

 

また数年が経ち彼は田舎でゆったりと過ごしていた。

そして彼を名を知らぬ人など世界の少数派となった。

 

 

(脳神経細胞の挙動と意識や精神の関係は・・・?)

『脳神経と人格』という論文を出した。

 

(AI・・・ 人間の脳細胞を模せばできるかもしれない)

『人間型AIの構造概念』 情報科学の世界にも手を出した。

 

(政治はどうするのが最良なのか・・・)

『理想の政治と腐敗』 政治学にも影響を及ぼした。

 

 

彼は多種多様な方面において革新的な論文や著書を書き続けた。

そしてそれぞれの方面において何が重要な核となるのかを明確に書かれていた。

彼の『真理』とやらは重要な核というものを見抜く思考に長けていた。

 

 

そして・・・

「この世界では何が必要か? 豊かにするには? 平和にするには?」

お前がやれ(僕がやるべき) それが1番確率が高いだろう』

 

 

彼は動く事を決意した。

彼のもっとも考える事が苦手な世界、

 

人間社会で。

 

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