メンヘラ彼女   作:しゃくれた分度器

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脆く弱い心臓

俺の名前は ゆうすけ。

ボロアパートで一人暮らしを始めたばかりの

超ジーニアスな大学生だ。

 

彼女いない歴=年齢だが、これには理由がある。

まずは告白をされること。自分からは告白しないこと。

告白をされても罰ゲームではないこと。

 

この3つの袋を大事にしているからだ。

作ろうと思えばいつでも彼女はできるんだよぃ!と

常に思っている。

 

そんな俺様が、我慢ならず告白をし

付き合った彼女(初めて)の話をしよう。

 

少し付き合ってくれ。

 

ーーーーーーーーーーー

 

雨の夜だった。

駅前の古い自販機の前で、彼女は立っていた。

 

濡れた髪、震える指先、コンビニ袋の中には甘いお菓子ばかり。

まるで世界から逃げてきたみたいな顔をしていた。

 

「大丈夫?」

 

思わず声をかけたのが、全部の始まりだった。

 

彼女は少し驚いた顔をしてから、ぎこちなく笑った。

 

「…知らない人なのに優しいね」

 

「いや、なんとなく」

 

それから二人は少しだけ話した。

名前は美菜。

眠れない夜に外を歩く癖があるらしい。

 

「頭の中がね、静かにならないの」

 

彼女はそう言って、空のペットボトルをくるくる回した。

 

 

 

それから会う回数が増えた。

 

夜のコンビニ。

河川敷。

人気のない公園。

 

美菜はよく笑うけど、どこか壊れそうだった。

 

「私、めんどくさいよ?」

 

ある夜、彼女は突然言った。

 

「すぐ不安になるし、すぐ泣くし、すぐ嫌われたって思う」

 

俺は少し考えてから言った。

 

「それでもいいよ」

 

 

 

次の瞬間、美菜は泣いた。

 

声も出さずに、ただ静かに。

 

「そう言う人、みんな途中でいなくなる」

 

「俺はまだいるだろ」

 

「…まだ、ね」

 

 

 

付き合い始めてから、彼女の世界を知った。

 

夜中の長いメッセージ。

返信が少し遅れるだけで不安になる心。

急に「嫌いになった?」と聞く声。

 

ある日、スマホが震えた。

 

「今、私いなくなったらどうする?」

 

俺はすぐ電話をかけた。

 

「今どこ」

 

「…公園」

 

息を切らして走った。

 

ベンチに座る彼女は、子どもみたいに小さく見えた。

 

 

 

「ねえ」

 

彼女が言う。

 

「どうしてそんなに優しいの」

 

「優しいわけじゃない」

 

「じゃあ何?」

 

少し考えてから答えた。

 

「好きだから」

 

 

 

美菜はまた泣いた。

 

でも今度は少し笑っていた。

 

「私、普通じゃないよ?」

 

「知ってる」

 

「重いよ?」

 

「持つよ」

 

「壊れてるよ?」

 

「じゃあ一緒に直す」

 

 

 

その日、彼女は初めて俺の肩に寄りかかった。

 

 

 

季節が変わった。

 

春になった頃、美菜は言った。

 

「ねえ、私ね」

 

「うん」

 

「あなたに会ってから、生きるのがちょっとだけ怖くなくなった」

 

風が桜を揺らしていた。

 

「私、ずっと思ってたの」

 

「何を」

 

「愛される人は最初から決まってるって」

 

 

 

少し沈黙してから、彼女は続けた。

 

「でも違った」

 

「どう違った?」

 

美菜は笑った。

 

 

 

「壊れてても、愛されるんだね」

 

 

 

その笑顔は、

初めて会った雨の日よりも、

ずっと綺麗だった。

 

 

 

そして彼女は小さく言った。

 

 

 

「ねえ」

 

「うん」

 

「ずっと好きでいてもいい?」

 

 

 

俺は笑って答えた。

 

 

 

「むしろ、やめないで」

 

 

 

桜が静かに舞っていた。

 

彼女の壊れそうな心臓は、

それでも確かに、

愛で動いていた

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