猫先生と私   作:げのげすみ

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猫先生の手は器用なようで、プラモとかもできるしスマフォ操作とかもできます。


猫はツンデレ、麺かため。

 「ほら!キビキビ歩きなさい!」

 

 砂煙が視界を邪魔する程度には吹いている午後、ヘルメット団を調伏した私たちは校舎へと戻っていた。

 先頭ではセリカさんが元気よく歩き、その後ろをぞろぞろと顔を汁まみれにしたヘルメット団が並んでいる。

 はたから見れば奴隷商のキャラバンのように見えてしまうだろうが、手錠の持ち合わせが足りないのでそこらにあった縄で代用しているだけである。

 それほど間違っているわけでもないのではあるが。

 

「あんた達逃げるんじゃないわよ?逃げたらただじゃ置かないんだから!」

 

 セリカさんはドラマとかで刑事やらが言ってそうなセリフを言ってみただけだろうが、最近の警察はあまりこういうことをあまり言わないらしい。警察は犯罪者には容赦しないイメージがあったりするがそういうのはそこまでおらず、私もそこまでイケイケでやってるヴァルキューレ生(同僚)なんてめったに見たことがない。

 噂によると公安局のだれだかが過激な捜査をしたって話があったような……。

 

 むしろ最近は反対に、犯罪者の社会復帰を促そうとする風潮があるらしい。

 クロノスの放送で受刑者に職業斡旋がある自治区の話を聞いたときは驚いたものだ。

 しかし、罰を与えるために捕まえてるんだからそんな至れり尽くせりでは本末転倒というか……それらの支援を受けるためにあえて捕まる輩も出てくるのでは?ボブかしんだ。

 

「ところでさー。マユミちゃんはこの後どうするの?さっきの話だとミツリちゃん達はこっちで好きにしていいんでしょ?」

 

 好きにしていいという発言にミツリはビクッと体を強張らせる。

 ――別に取って食おうって話をしてるわけでもないのにそこまで怯えられても困るだけなのだが。

 

「好きにしていいと言っても常識の範囲内でお願いしますよ?知り合いを検挙するのはこっちもいやですから。」

「わかってるよー。もう、冗談が通じないと悲しいなー。」

 

 冗談に聞こえないから言ったんですけどね。ミツリからの視線がヒーローを見るそれになっている気がするがきっと気のせいだろう。気にしない気にしない。

 

 

 

 

 

 

 

 アビドス校舎に帰還した私たちは一度カタカタヘルメット団を空き教室に収監した後、今後について話し合うことにした。

 最初に口を開いたのはアヤネさんだ。

 

「とりあえず彼女たちは私たちの管轄ということですが……どういう扱いにすればいいんでしょう?」

「今の私と同じで大丈夫ですよ。シャーレの部員がシャーレの仕事をするのは当然のことですから。まぁそのまえにちょっと聞き取り調査はさせてもらいますが。」

 

 つくづくシャーレというのは便利な組織だと思う。一度入部させてしまえば学籍の有無関係なしに何でもさせることができるのだ。――連邦生徒会に反対したものはいなかったのだろうか?

 

 「仕事をすると言ってもどのくらいの仕事をさせればいいの?シャーレってそこらへん何か制限ってあったりあするんじゃない?」

 ”別に気にしないでも大丈夫だよ。彼女達は今のアビドスに足りない貴重な労働力だからね。こき使っていいよ。”

「あ、こき使って大丈夫だそうです。」

「……」

 

 言葉の伝達をしただけなのに視線が痛いのはなぜだろう。

 セリカさんはもとより、シロコさんまでドン引かれるとこちらも悲しいのだが。

 

「取り合えず、これでいったんはヘルメット団関係のことは片付きましたね。」

 

 そう話すアヤネさんの顔は嬉しそうだ。よっぽど彼女達のことに気をもんでいたらしい。

 

「そうだね~。あいつらのせいで最近はまともに活動できてなかったしね~。」

「ん、これでやっと本業に戻れる。」

「お二方には感謝ですね☆」

 「ええホント、これで借金返済に集中できるわね!」

 

 ほとんど私たちって何もしていなかった気がしなくもないが、ここまで感謝されるとうれしいものだ。

 あとはそこで日向ぼっこしている堕猫がもっと働いてくれたらいいものなのだが。

 だから一旦はシャーレに戻って――?

 

「――借金?」

「っ!セリカちゃん!」

「あっ、ごめ、」

 

 明らかに焦った様子のアヤネさんの様子からそれが隠したいものであった事察する。

 まぁ、察するも何も事前に聞いていたからどうとも思ってはいないが。

 しかしこうも狼狽されると自分が信用されていないのだなと思い知らせらされているような気分になる。

 

 "……。"

 

 いつの間にやら近寄ってきた先生がその小さな前足を肩に乗せてきた。

 別に傷ついてるわけでもないからやめてほしい。

 そのまま頭の上に乗ってきた先生を放って置いていると――。

 

「いいんじゃない?アヤネちゃん。もしかしたらマユミちゃん達なら助けてくれるかもよ?」

「っ、ですが!」

 

 ホシノさんはこちらに好意的ならしい。

 まぁ支援しに来た相手に対して敵意を向けるのは得策とも言い難いし当然ではあるのだが。

 

「今回のヘルメット団のこともそうじゃん。私たちだったら追い払うだけで精一杯だったのにマユミちゃん達は全滅させるだけじゃなくてこっちの戦力の強化までしてくれた。それは紛れもない事実じゃないかな。」

「でも!これは私たちだけで頑張ってきたことじゃない!それを今日来たばっかの人に任せるなんて……!」

 

 どうやら1年の二人はまだ私たちを信頼しきれていないので話したくないといった感じだろうか。

 

「私はホシノ先輩に賛成。……この人たちなら、悪いようにはしないと思うから。」

「悪いようにはって、この人たちは部外者じゃない!」

「部外者っていってもさ~。もう私たちの話を聞いてくれそうなのはマユミちゃん達しかいないんだよ?せっかく頼れる機会なんだし、頼った方がいいんじゃない?」

「ぐぬぬぬ……。」

 

 ホシノさんはあくまでも論理的に話を進める。

 そういう話は苦手そうに見えたのだが、流石は生徒会とでもいうべきかそれなりに頭はまわるらしい。

 最低でも私よりは。

 

「どうかな?セリカちゃん。とりあえず相談だけでもしてみないかい?マユミちゃん達なら、何か解決法が見つかるかもよ?」

 

「……この学校のことは、私たちで、ずっと私たちだけでなんとかしてきたじゃん……今更出てきたってそんなの、信じられるわけない!」

 

 不信を叫ぶセリカさんの目尻に涙が浮かぶ。

 自分の言っていることがおかしいことは解っているつもりなのだろう。

 

「――認めない。」

「……セリカさん?」

「あんた達に助けられるなんて、そんなこと認めないんだから!」

 

「ちょ、セリカちゃん!――私ちょっと言ってきます!」

 

 セリカさんに続いてアヤネさんも飛び出して行ってしまった。

 ……なんとなく、決まずい。

 

 "助手も追いかけたりはしないのかい?"

「……私が行っても逆効果でしょう。」

 "――そうかい。"

 

「あー。……ごめんね?後輩ちゃんたちが迷惑かけてさ。」

「いえ、ああいうのは慣れてますから。……それより、借金っていうのは?」

 

 質問を受けたホシノさんは言いづらそうに頬を掻く。

 まぁ金の話なんて誰が誰にいつ話しても話しづらいものであることは間違いないだろうが。

 

 「あー。なんていうかさ、アビドスにはそこそこの借金があってさ……。ここに来るまでの間、街にほとんど人がいなかったでしょ?」

 

 言われて思い出したが人の気配などはほとんどしなかったように思える。

 最初は気にも留めなかったが、アビドスの借金と関係があったとは知らなかった。

 

「それも借金のせいでさ。借金が返済できないと学校は銀行のものになって……廃坑になる。それでどんどん生徒がアビドスを捨てていって、住民も減っていったんだ。」

「残ったのは、私たちだけ。」

「セリカちゃん達が神経質になっているのは、これまで誰も助けるどころかまともに向き合ってくれもしなかったからだろうね。」

 

 

 決してアビドスを捨てた生徒たちが理解できないわけでは無いのだろう。

 ――できないわけではないからこそ、悲しんでいるのだろう。

 私たちがセリカさんに警戒されたのは、私たちが敵か味方か決めあぐねているからだ。

 つまりは信用が無いのだ。

 自分たちの悩みを共有できるほどの信頼が私たちに対してない。

 

「まぁ悪いことばかりじゃないよ?ヘルメット団を引き込んでくれたおかげでしばらくは楽になるし、これで借金完済に全力投球できるようになったわけだしね。」

 

 ……明らかに無理している。空元気という奴であろう。

 こんな時にかける言葉がない自分が情けない。

 そんなことを思っていると先生が沈黙を破るように口を開く。

 

 "……助手。一旦シャーレに戻るぞ。いろいろと追加で準備が必要になった。明日にはここに戻れるように準備しなければな。"

「え?あ、はい。すいません、先生が一旦シャーレに戻るそうなので失礼します。明日また来ますから!」

「うん判った。気を付けてね~。」

 

 珍しく先生が本気なのか、もう教室を出て行ってしまったので急いで追いかける。

 教室を出る直前、思い出したように振り返る。

 

「あ、それと!」

「うん?」

 

「今はできませんけど、その気になればシャーレはいろいろできますから!困ったことがあったら言ってください!」

「……わかったよ~。」

 

 

 

 

 

 "遅いよ助手。さっさとエンジンをかけたまえ。"

「わかってますよ。……あ。」

 

 ホシノさんと別れ、校門の外まで走ってきた私はスクーターのキーを取り出し――。

 

 ここで私は最悪なことを思い出してしまった。

 それはここに来る前、シロコさんに助けられた時のことだった。

 

 "どうしたんだい助手?"

 

 私たちはスクーターに乗ってきて――そしてガス欠している。

 

「……ガス欠です。」

 "……は?"

 

 今度はもっと燃費が良くてタンクもデカい奴を買おう。

 

 

 

 

 

 

 "アビドス高校。かつてはキヴォトスで最も長い歴史と最大の生徒数を誇るマンモス校だったが、数十年前から観測されている砂嵐による砂漠化とそれを取り巻く様々な問題によってその規模は縮小、現在では全校生徒が5名の衰退学校になり果てる。"

 

 最悪なまま終わった初日から一夜明け、私たちはスクーターに乗ってアビドス高校へと向かっていた。

 

 "また、砂嵐の対策としてあちこちから……というよりは闇金だね。そこから借りた借金が総額9億6千万ほどあり、彼女達は月々の利子を支払うためにいろいろしているそうだね。……というか助手。なんでまたスクーターなんだい?"

「駄目ですか?」

 "駄目だとも。昨日迷うにいいだけ迷ってガス欠になったのを忘れたのかい?"

「忘れてませんよ。じゃなきゃわざわざ燃料タンクを大きくしたりしないです。」

 "そういう話じゃなくてだな――おや?あれは黒見君じゃないかね?"

 

 バッグの中からどうやって見つけたのかはわからないが、電柱三本分ほど遠くにセリカさんを見つけた。

 昨日はお互い気まずい別れになってしまったが、まだ私たちはあったばかりなのだ。

 スクーターの速度を落として近づくと、あちらも気づいてようでこちらを振り返る。

 

「うげ……なんでいるのよ。」

「あーと、おはようございます?」

「なんで疑問形なのよ!」

 

 自慢ではないが私は友達といえる存在など生まれてこの方できたことがないのだ。

 なので人付き合いに関してはポンコツもいいとこ、故にあんな気まずい別れをした場合の対処がわからないのだ。

 

「ふん、朝っぱらからツーリングなんていいご身分じゃない!言っとくけど私は、あんたのことなんか認めてなんていないんだからね?」

「……まぁ昨日の今日で信用してもらえるとは思ってませんから大丈夫ですよ。それより、セリカさんはこれから学校ですか?後ろ空いてますし乗ってきます?」

「乗らないわよ!大体今日は自由登校日だから行かなくてもいいんだから!」

「自由登校日?」

"いわゆるところの休みだね。助手はそういうのはなかったのかい?"

「ヴァルキューレに休みはないですから……。」

"そっかぁ。"

 

 懐かしいなぁ。

 ヴァルキューレに入って一週間であんなに夢と正義に目を輝かせていた同期の子の目が全員死んだっけ。

 あの時発狂してた同期の子は元気だろうか。

 

「とにかく!私は忙しいから行くから。精々そこでのんびりしてたら?じゃあね。」

 

 ふん、と鼻を鳴らしたセリカさんはそれだけをいうと砂埃を上げながら走り去っていった。

 

「行っちゃいましたねー。これからどうします?あの様子だと他の生徒さん達もいるかわからないですよ。」

 "……助手。今から私の言う通りに進んでくれないか?"

 

 

 

 

 

 

 

 「いらっしゃいませ!紫関ラーメンです!」

 

 湯気が立ち込める店内。

 その元が客に用意されたラーメンからなのか、それを啜る客によるものかは知る由もないが、そのようなことはここの連中にとってはどうでもいいことだろう。

 

「少々お待ちください!替え玉追加ですね!」

 

 高く積み上げられたヤサイ、こってりとトッピングされた背油、そしてばっちりと効かされたニンニク。

 それを食べる者、食べる前の者、そして食べる気がなかったものでさえも、その匂いによる食欲には無力だ。

 これだからラーメンとは罪な食べ物なのだ。

 

「いらっしゃいませ!紫関ラーメンで……ぅえ?!」

 

 よほど驚いたのだろう。

 セリカさんは明らかに予想外といった感じで目を見開いて固まってしまった。

 

「は~い☆6人なんですけど~!」

「あはは……セリカちゃんお疲れ……。」

「お疲れ。」

「うへ~やってるねぇ~。」

「あ、失礼します。」

 

「ど、どうしてここを……!?というかあんたまで……もしかしてストーカー……」

「違います。あの後先生が案内してきたんです。バッグからここのユニフォームが見えたって言って。」

「な!?う、迂闊……!」

「まぁ疑うのも無理はないと思うよ?マユミちゃんったら入口のところでウロウロしてたしね~。」

 

 違うんです。

 ただ知らないラーメン屋に入るのには勢いが必要だっただけなんです。

 うじうじしてたらホシノさん達に見つかっただけなんです。

 

「というより、こいつはともかくなんでそいつもいるのよ!」

 

 そう言って指された指の先には、昨日よりはマシになったものの落ち着きなく目を泳がせているミツリさんの姿があった。

 

「いや~だってミツリちゃんがね?紫関ラーメンを食べたことないって言うから歓迎会も兼ねて食べさせに来たんだよ。」

「歓迎って、そいつ昨日まで私たちに襲撃してきた奴なのよ!?そんな奴を――」

 

「お、アビドスの生徒さんか、セリカちゃん。おしゃべりはそのくらいで注文受けてくれな。」

 

「あ、うう……はい、大将。それでは、広い席にご案内します……こちらへどうぞ……。」

 

 流石に入口で騒ぎ過ぎたのか、奥にいた店主と思しき人から注意をされた。

 彼が先ほど聞いていた大将だろうか?

 顔に傷こそ残っているものの、その目は穏やかで優しそうだ。

 飲食店がキセルを咥えてるのはどうかとはおもうが。

 

 それからすぐ、私たちはたまたま空いていた入口近くの団体席に座ることができた。

 

「はい、マユミさんはこちらへ!私の隣、空いてますよ?」

「……ん、私の隣も空いている。」

 

 いきなりギャルゲーのヒロインどうしたのだろう。

 別にそっちのケは無いのだが、唐突にこんなことをされるとこっちもドキドキしてしまう。

 とりあえずはまだ関わりの深いシロコさんのところに座ろう。

 

 "モテモテだねー。私は助手の上で構わないよ。"

 

 先生は私の膝の上らしい。

 ……猫ってラーメン食べられたっけ?

 

「ふむ……。」

「あらあら~。ではミツリさんはこっちですね☆」

「わ!ちょ!」

「狭すぎ!シロコ先輩、そんなにくっついたら食べづらいでしょ!」

「いや、私は平気。ね?」

 

 私が平気じゃないですね。

 まだ席は余裕があるのでそっちに行ってもらいたいのだがとても言いづらい。

 田舎の人ってパーソナルスペースとか気にしないって本当だったんだなぁ。

 アビドスが田舎かどうかは置いておくとしても。

 

「シロコ先輩が平気でもダメなの!ほら空いてる席使って!」

「わ、わかった……。」

 

 さて、私たちがそんな陣取り合戦をしている間にミツリさんはというと――。

 

「へ~♧ミツリさんって年下だったんですね~。ミツリちゃんって呼んでもいいですか?」

「あ、は、はい……。」

「ありがとうございますミツリちゃん!そんなに緊張しなくてもいいんですよ?」

 

 なぜかノノミさんに酔っぱらったサラリーマンのごとく絡まれていた。

 ヘルメット団のリーダーなんてしていたが、ミツリさんはもともと陰の気質なのだろう。

 返答は歯切れが悪く、てんぱっているのが傍から見てもまるわかりだ。

 藁にもすがりたいのか、向かいにいる私へ向けて助けてほしいと叫ばんばかりに視線を送ってくる。

 まぁ助けないけどね。

 

「もう!ご注文はっ!?」

「セ・リ・カ・ちゃーん。お客様には笑顔で親切に接客しなくちゃねー。」

「うぐぐ……ご注文はお決まりですか……。」

「私はチャーシュー麵で!ミツリさんもそれでいいですね?」

「いや私はワンタン「チャーシュー麵2つで!」あうぅ……。」

 

 ノノミさん大丈夫だろうか……。

 さっきからミツリさんへのダルがらみが過ぎるというものではないだろうか。

 シャーレの人材派遣制度が初回で問題が起きたとなると今後が面倒なのでやめてほしい。

 ……報告しなけりゃばれないか。

 

「私は塩。」

「えっと……私は味噌で……。」

「私はねー。特性味噌ラーメン!炙りチャーシュートッピングで!マユミちゃんも遠慮しないでね!」

「……ところで、みんなお金は大丈夫なの?まさかまたノノミ先輩に――」

「あぁ、それならこちらで払いますよ。」

 

「え、いいの?」

「はい。ここに先生の大人のカードがありますので。」

 "ふぇ?"

 

 そういうと私は膝でくつろいでいた先生を持ち上げる。

 その首には模様の無い黒い無機質なカード――大人のカードがぶら下げられていた。

 

 "ちょっと待ちたまえ助手!私はおごるなんて一言も、ただの一言も言っていないではないか!"

「なんかすごい騒いでるんですけど……大丈夫ですか?」

「全然大丈夫。むしろいっぱい頼んでほしい。だそうです。」

 "言ってない!私そんなこと言ってない!"

 

 きーこえなーいきーこえなーい。サボりの先生の悲鳴なんてきーこえなーい。

 私があくせくと書類仕事をしているときにカイテンジャーFXのプラモを1個小隊ぐらい組み上げていた先生の言葉なんてきーこえなーーい。

 

 "待ってくれ助手!今月本当にピンチなんだ!クラブふわりんで新キャラと別衣装がある!その子は私がリリース初期からの推しなんだ!わかってくれ助手よ!推しに貢ぐことが幸福であるとわかってくれ!"

「……すごい暴れてるしやっぱりダメなんじゃ……。」

「……。」

"じょ、助手?"

 

 「サイドメニューもいっぱい頼んで大丈夫だそうです。担々麺、トッピングいっぱいで。」

"うわー!悪魔!悪魔!助手の悪魔ぁ~!"

 

 

 

 

 

 

 

 腹ごしらえをした私たちは会計を終え、食休みに入っていた。

 途中、ノノミさんがこっそり自分のカードを渡してきたが、しっかりと断って置いた。

 ヘルメット団を押し付けた借りもあるし、こちらからなにかしてあげたかったのだ。

 ついでにあの先生が絶望している様を見られたのは儲けものだったが。

 

「いやーごちでしたー、先生!」

「ご馳走様でした。」

「うん、おかげ様でお腹いっぱい。」

"ふわりん……私の……ふわりんが……。"

 

 珍しく意気消沈している先生を鞄に押し込んでいると、ミツリさんがこちらを恨めしそうに見ていることに気が付いた。

 ずっと食事中ノノミさんにあーんされてたから食べた気になっていないのかもしれない。

 

「早く出てって!二度とこないで!仕事の邪魔だから!」

「あ、あはは……セリカちゃん、また明日ね……。」

「ホント嫌い!!みんな死んじゃえー!」

"今月は……納豆にネギ入んないかもな……。"

 

 なんとも元気なことだ。

 最初、アビドスの話を聞いたときは全員暗い雰囲気で大敗的に暮らしているのかと思ったがそんなことはなかった。

 むしろ彼女たちは、現状を変えようとその身のすべてでなんとかしようと走り回る、バイタリティのある生徒たちだった。

 ……彼女達がいるなら、今後の不良公正先はアビドスにしてみるのもいいかもな。

 そんなことを考えながら、私はスクーターにまたがった。

 

 

 

 翌日、セリカさんが行方不明になった。

 




参考までに言っておきますと、KAITEN FX Mk.0の値段は約1万円で、一個小隊は30~50名ほどだそうです。
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