進撃の巨人の世界に15m級の無垢(?)の巨人として転生してしまった……   作:感謝君

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第百八話

844年10月20日

 

 

訓練兵団が所有する、巨大な樹木が立ち並ぶ広大な立体機動装置の練習場。

 

 

肌を刺すような秋の冷気が漂うその森の一角に、俺とリーシェ、リヴァイ、ハンジ分隊長、ミケ分隊長、そしてエルヴィン団長という、まるで狂気のハッピーセットみたいなメンツが一堂に会していた。

 

 

 

そもそも、何故こんな胃が痛くなるような濃すぎる面々で集まることになったのか。

 

 

 

その原因は、現在から数日前に遡る。

 

 

───数日前、調査兵団本部、会議室

 

 

ここでは幹部たちが集まり、各方面への問い合わせ対応から次期予算の編成、物資の追加発注、そして次の壁外調査の計画といった、極めて”真面目”な会議が執り行われていた。

 

 

 

俺は特異点という立場上、一応オブザーバー的な扱いで偶々同席していたのだ。

 

 

 

「───では、他に共有事項などある者は挙手を」

 

 

 

長時間の息詰まる会議を終え、エルヴィンが疲労の色を微かに滲ませながら締めの確認をした、その時だった。

 

 

「はい! はいはいはーい!!」

 

 

静まり返っていた会議室の空気を根底からぶち壊す、ハンジ分隊長の鼓膜を破らんばかりのクソデカ大声が響き渡った。

 

 

「……では、以上で本会議を───」

 

 

どうせろくでもない事だろうと一瞬で察したエルヴィンが、ハンジの存在を完全に無視し、流れるような動作で強制閉廷しようとした。

 

 

 

「ちょっとちょっと待ってよエルヴィン! もしかして過労で聴覚まで腐っちゃったの!? 酷いじゃないか!」

 

 

 

机に身を乗り出して、バンバンと叩きながら猛抗議するハンジ。

 

 

 

「……要件があるならさっさと言え。時間は有限だ、ハンジ」

 

 

エルヴィンは、底知れぬ面倒臭さを微塵も隠すことなく、冷ややかな視線を向けた。

 

 

 

「そうこなくっちゃ団長! 実はさ、風の噂で聞いたんだけど……!」

 

 

ハンジはギラギラと血走った目で、一直線に俺の方へと顔を向けてきた。

 

 

「アトラスちゃん、巨人の硬質化能力で『オリジナルの立体機動装置』を作ったんだって!? 是非っ! 是非ともっ! 実地でその性能を見せて貰いたいんだ!!!」

 

 

「却下だ」

 

 

エルヴィンが、食い気味に、そして無慈悲にそう告げた。

 

 

 

団長としての至極真っ当な判断である。

 

 

 

兵団の最高機密たる特異点の能力を、興味本位で、それも壁内で無闇に披露するなどリスクしかない。

 

 

 

だが、巨人の能力に対する執着で常軌を逸しているハンジに、上官の命令など届くはずもなかった。

 

 

 

「エルヴィンには聞いてない! ねっ? アトラスちゃん、良いかな???? 良いよね??? ありがとう!!!」

 

 

「えっ? えっ? えっ?」

 

 

凄まじい勢いで顔を近づけてくるハンジの圧力に、俺は神がかった超絶美少女フェイスを困惑で真っ赤に染めながら、情けない声を出すことしかできなかった。

 

 

 

(……何も喋ってないのに、本人の中で勝手に会話が完結してる……! 怖っ!!)

 

 

ていうか、こういう時に限って、いつも俺にベッタリなリーシェが居ないのはなんでだ!?

 

 

 

ああそうか、あのお花畑狂犬が何かしらの準備などで席を外しているタイミングを見計らって、ハンジはこの爆弾を投下しやがったんだ……! 変なところで策士かよ!

 

 

 

 

 

 

 

……そんなこんなで

 

 

ハンジの凄まじい暴走を誰も止められず(というか巻き込まれたくなくてミケすらも目を逸らし)、あれよあれよという間に実地検証の予定が決まってしまったのである。

 

 

 

結果として、超絶美少女と、兵団の最高責任者、人類最強の二人、巨人狂いのマッドサイエンティスト、そして団長の腹心が、この人気のない訓練用の森で一堂に会するという異常な事態に陥っているという訳だ。

 

 

 

「あぁっ、アトラスの専用装備……! 私への愛が詰まったその硬質化の糸で、今日も華麗に空を舞うのね……! すっごく楽しみだわ、ふふっ、ふふふふっ……!」

 

 

 

俺の隣では、いつの間にか合流したリーシェが、両手を自身の頬に当てて身体をくねらせながら、荒い鼻息と共に恍惚とした表情を浮かべている。

 

 

(……いや、意外とリーシェがこの実地検証にノリノリなのも怖いんだけど……)

 

 

 

彼女にとって、俺が空を飛ぶ姿を見るのは『アトラス成分の過剰摂取』に繋がる至福の時間らしい。

 

 

 

俺の身に危険が及ばない単なるデモンストレーションであれば、むしろ大歓迎のようだ。

 

 

 

少し離れた木陰では、リヴァイが「チッ、なんで俺まで休日にこんな茶番に……」と忌々しそうに舌打ちをしているが、エルヴィンの命令という名のハンジの巻き添えで引っ張り出されて不機嫌の極みである。

 

 

 

俺は、周囲の濃すぎる面々から向けられる様々な視線、興味、恍惚、呆れ、疲労を一身に浴びながら、こっそりとため息をつき、腰に装着した硬質化の射出機にそっと手を伸ばしたのだった。

 

 

 

 

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