進撃の巨人の世界に15m級の無垢(?)の巨人として転生してしまった……   作:感謝君

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第十二話

それから数分後。

 

ズシン、ズシンという俺の一定の足音だけが森に響く中、俺たちは比較的澄んだ水場に到着した。

 

ゆっくりとしゃがみ込み、巨大な掌を地面に添えてリーシェを降ろす。

 

彼女は周囲を警戒しつつも、やはり極限の疲労と喉の渇きには抗えなかったようで、すぐさま水辺に駆け寄り、両手で水を掬って必死に喉を潤し始めた。

 

(さて、彼女が水分補給をしている間に、ちょっとした大工仕事でもするか)

 

いくら俺が護衛するとはいえ、ここは巨人が跋扈する壁外の巨大樹の森だ。

 

生身の人間が野宿するにはあまりにも危険だし、夜になれば容赦なく冷え込む。

 

最低限、雨風を凌げて安心して眠れる場所が必要だろう。

 

俺は手頃な太さの───といっても直径十数メートルはくだらない巨大樹の幹の前に立ち、右手の指先へスッと意識を集中させた。

 

 

シュウゥゥッ……!

 

 

指先が瞬時に青白いクリスタルに覆われ、極めて鋭利なカッターナイフのような形状に変成する。

 

硬質化能力の精密な応用だ。

 

そのまま巨大樹の幹へ、まるで柔らかいケーキでもくり抜くかのように指を突き立て、四角く切り出していく。

 

縦横5メートルほどの巨大な木材のブロックを無音でスポンと抜き取ると、巨木の幹に見事な四角い空洞が出来上がった。

 

さらに、人一人が余裕で出入りできるサイズの穴を入り口として残し、空洞の内側全体に薄く硬質化のクリスタルを這わせてコーティングしていく。

 

これで樹液や虫の侵入も防げるし、雨漏りの心配もない。即席にしては完璧すぎる、クリスタル張りの絶対安全シェルターの完成だ。

 

(ついでに扉もクリスタル製にして……いや、待てよ)

 

危ない危ない。危うく機能美とロマンに走るところだった。

 

可動式の蝶番なんかを巨人の指先で作るのは地味に複雑で面倒くさいし、何より重厚なクリスタルの扉なんて作ったら、質量がヤバすぎて生身の人間であるリーシェの力じゃ開け閉めするだけで一苦労だろう。

 

うっかり閉じ込め事案になりかねない。

 

妥協案として、先程くり抜いた木材のブロックから適当な厚さの木の板を薄くスライスし、入り口に立て掛けるだけの簡易的な扉として横に置いておくことにした。

 

内装については、下手に15メートルの俺が手出しするよりも、本人の好きにさせた方がいいだろう。

 

前世のゲームでも、自室のレイアウトを自分で考えている時間が一番楽しいしな。

 

俺は付近に生えている手頃な枝や、ベッドのクッション代わりになりそうな巨大で柔らかい葉っぱをガサッとかき集め、入り口の前にドサリと山積みにしておいた。

 

一連の作業(人間からすれば魔法か神々の土木工事にしか見えないだろうが)をわずか数分で終え、俺は振り返った。

 

水場での給水を終えたリーシェは、口元を拭うのも忘れて、俺が爆速で完成させた謎のクリスタルコーティングハウスをポカンと口を開けて見上げていた。

 

俺は極力威圧感を消した穏やかな表情を作り、彼女を見下ろして声をかける。

 

「食べられそうな実を持ってくる。見える範囲までしか離れないから、心配は無用だ」

 

それだけ言い残し、俺は彼女が返事をする前に踵を返し、食料調達のためにのっしのっしとその場を後にした。

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