進撃の巨人の世界に15m級の無垢(?)の巨人として転生してしまった……   作:感謝君

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第百二十二話

845年の5月中頃

 

 

昼夜問わず暖かで、肌を撫でる風が心地よく、一年の中で俺が一番好きな季節となった。

 

 

あれからというもの、エレン少年は毎週足繁く我が家に通い詰めるようになった。

 

 

そして時たま、幼馴染のミカサやアルミンまで連れてくるようになったのだ。

 

 

最初は、俺たちのせいでエレンが「百合という名の新たな扉」を開いてしまったため、エレンに好意を寄せているミカサは、俺やリーシェを露骨に目の敵にして警戒していた。

 

 

だが、事態は意外な方向へと転がった。

 

 

リーシェが、あのミカサの内に秘められた異常なポテンシャル(アッカーマン特有の身体能力)にいち早く気付いたのだ。

 

 

リーシェ自身は『アッカーマン一族』の特別な血筋について何も知らない。

 

 

だが、「あの子の身のこなしと無意識の重心、リヴァイと同じようなバケモノの匂いがするわね」と薄々察したようで、最近はエレンがデッサンをしている傍らで、リーシェ直々にミカサへ『護身術という名のえげつない殺人技』を伝授し始めているのだ。

 

 

 

しかも、休憩中にはミカサの恋愛相談的なこと(いかにしてエレンの愛を独占し、外敵を排除するか)までしているらしい。

 

 

……あの二人、重すぎる愛情の向け方というか、ヤンデレ的な波長が妙に合いそうだからな。

 

 

 

人類最強による師弟関係がこんなところで結ばれるとは、本部に居るエルヴィンが見たら胃痛で倒れるかもしれない。

 

 

 

一方のアルミンは、俺が語る『外の世界の話』に夢中になっていた。

 

 

 

もちろん巨人の正体や壁外人類といった世界の根幹に関わるネタバレは伏せつつ。

 

 

前世の日本(高層ビル群や飛行機、様々な料理や文化)の話を『俺が読んだ古い本に書いてあった夢物語』として聞かせているのだが。

 

 

 

「でもアトラスさん、その『ヒコウキ』っていうのは、どうやって重力を振り切るだけの揚力を得るんですか?」

 

 

とか、

 

「その『インターネット』という情報網は、誰が管理しているんですか?」とか、度々核心を突いた鋭すぎる質問をしてくることがあった。

 

 

子供ながら、既にその異常な頭脳と探求心を遺憾無く発揮しているようだ。

 

 

で、肝心の問題児、エレン少年だが……

 

 

滅茶苦茶、絵が上手くなっていた。

 

 

 

自身の語彙力の無さが今だけは心底恨めしいが、彼はシガンシナ区の片隅で、恐るべき凄まじい才能を開花させ、発揮していたのだ。

 

 

 

最近では、たまたまシガンシナ区に視察にやってきた王都の貴族だか大商人だかの目に留まり、その『神がかったデッサン力と情熱』を高く評価され、超高級な質の良い画材道具一式を無償でパトロン提供してもらっているらしい。

 

 

 

彼が描く絵の内容の殆どが、俺とリーシェの『尊すぎる百合イチャイチャ空間』でさえなければ、俺も手放しにその才能を喜ぶ事が出来ただろう。

 

 

 

……いや、待てよ? まさかエレン少年は、その圧倒的な画力とスポンサーの力を使って、一人で王都の思想を『百合園』で染めあげようとしているのでは……!?

 

 

 

 

(※実際、数年後には王都を含めた壁内全土で、俺たちを題材にした尊い絵画や小説が大流行し、一種の宗教的なムーブメントを起こすことになるのだが、この時の俺はまだ知る由もない)

 

 

 

そんな馬鹿げた、しかし妙に現実味のある考えが浮かんでしまうぐらいには、彼がカンバスに向かう姿には、巨人を駆逐するかのような異様な『執念と狂気』が感じられたのだ。

 

 

 

そうして、お昼の三時頃。

 

今日もエレンたち三人を見送り、俺は鼻歌交じりに早めの夕飯の準備に取り掛かろうとしていた。

 

コンコン……

 

その時、控えめに扉を叩く音が聞こえた。

 

「あれ? 画材道具でも忘れちゃったのかな……はーい!」

 

 

俺は、扉の先に立っているであろうエレンに向けて明るく声をかけ、エプロン姿のままドアノブに手をかけた。

 

 

「何か忘れ物でもしちゃった?」

ガチャリと扉を開け、俺が人の良い笑顔を向けた、その先にいたのは。

 

 

「……突然の訪問、すみません……エレンの父、グリシャ・イェーガーです。

……いつも、息子がお世話になっております……」

 

 

顔面蒼白になりながら、ひどく思い詰めたような、そして何かにひどく怯えているような様子でこちらを見下ろす、眼鏡をかけた長身の男だった。

 

 

(……ああ。遅かれ早かれ、来るだろうとは思っていたよ)

 

 

俺は内心でため息をつきつつ、表情だけは完璧な『女神スマイル』を崩さずに彼を見上げた。

 

 

大方、進撃の巨人の能力を通じて今まで見えていたはずの『未来の記憶』が突然見えなくなったとか、記憶旅行で干渉してくるはずの『未来のエレン』からの通信がパタッと途絶えて消えたとか、そんな理由でパニックになっているんでしょ。

 

 

 

そりゃそうだ。

 

 

息子の未来の目標が「巨人の駆逐」から「究極の百合絵師」に全振りしてしまったのだから、因果律もバタフライエフェクトもへったくれもない。

 

 

一先ず、俺は外向けの愛想の良い顔で、彼を家の中へと引き入れることにした。

 

 

「いえいえ、こちらこそいつもエレン君にはお世話になっております。積もるお話もあるでしょうし、どうぞ、お上がりください」

 

 

そう言って、中に案内するよう促す。

 

 

「……お気遣い、心より感謝します。それでは……お邪魔させて頂きます」

 

 

グリシャは、まるで処刑台に向かう罪人のような重い足取りで、深々と頭を下げて玄関を上がった。

 

 

俺は奥のキッチンにいるリーシェに目で合図を送り、「お茶を用意して」と身振りで伝えた。

 

 

 

シガンシナ区の小さな一軒家に、壁外の真実を知る男と、世界の理を壊す特異点が、遂に相まみえる時が来たのだった。

 

 

 






グリシャおじさんと遂に対面!





ストックの方で物語が完結次第一気にだばーっとお話を流し込みますので宜しくお願いします。

ストックを消費仕切るまでに完結するかは不明ですが……
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