進撃の巨人の世界に15m級の無垢(?)の巨人として転生してしまった……   作:感謝君

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第百二十三話

俺は、グリシャをリビングの丸テーブルの椅子に座らせ、中央に置かれた小さな花瓶越しに相対するように自身も腰を下ろした。

 

 

同時に、キッチンから戻ってきたリーシェが、ティーカップを俺とグリシャの前に静かに差し出し、湯気を立てる紅茶を注ぐ。

 

 

最後に自身のカップにも注いだ後、彼女は俺のすぐ隣に椅子を引き、無言で座った。

 

 

その立ち振る舞いは優雅で完璧な女主人そのものだが、彼女のアイスブルーの瞳は、目の前の長身の男を油断なく観察していた。

 

 

グリシャは紅茶に手をつけることもなく、両手を膝の上で固く握りしめ、どう切り出したものかと視線を泳がせながら思案している様子だった。

 

 

重苦しい沈黙が数秒続いた後、俺の方から口を開くことにした。

「本日はどういったご要件で?」

 

 

俺が静かに問いかけると、グリシャの肩が一瞬ビクッと跳ねた。

 

 

彼は乾いた唇を舐め、口を開く。

「……先ずは、お忙しいところ、予告も無しに、押し掛けて、しまい……申し訳ない……」

 

 

途切れ途切れに、喉の奥から絞り出すように声を出す。その額には、うっすらと脂汗が浮かんでいた。

 

 

一拍置いて、グリシャは深く息を吸い込んだ。

「……単刀直入に言わせて欲しい」

 

 

彼のエメラルドグリーンの瞳が、より一層の悲壮感と、覚悟を決めたような固い光を帯びて俺を真っ直ぐに射抜いた。

「君達は、一体何者ですか」

 

 

その問いに、隣に座るリーシェの顔から微かに警戒の色が滲む。空気が僅かに張り詰めた。

 

 

(……回りくどいのは面倒くさいな)

俺は心の中でため息をついた。

 

 

彼がここまで追い詰められ、直接訪ねてきた以上、はぐらかしても意味はない。

 

 

 

それに、来たるべき壁の破壊とマーレの戦士への対応を考えれば、彼とはここで情報を共有し、手札として巻き込んでおいた方が都合が良い。

 

 

 

ここまで来たら、核心に差し掛かっても良いだろう。

 

 

「私はアトラス。アトラス・ベニア」

 

 

 

俺は、紅茶のカップを両手で包み込みながら、静かに、そしてはっきりと告げた。

 

 

「この世界の真実を知ると同時に、始祖ユミルの『道』から外れ、完全に独立した独自の『道』を保有する……第十の巨人化能力者です」

 

 

グリシャの息を呑む音が聞こえたが、俺は間髪入れずに言葉を続ける。

 

 

「グリシャさんが、壁の外であるマーレ国から来た『エルディア復権派』であること。

そして……いずれ壁が破られた時、レイス家である真の王から始祖の巨人を奪い、息子さんであるエレン君に継承させようとしている事も、私はすべて知っています」

 

その瞬間、目の前の男の肌の色が、壁土のように真っ白になるのが分かった。

 

 

 

グリシャの瞳孔が限界まで見開き、呼吸が止まる。

 

 

脳の処理能力を遥かに超える絶望的な情報量を叩きつけられ、白目を剥きそうになるのを、彼自身が何とか奥歯を噛み締めて正気を保とうとしているのが見て取れた。

 

 

 

ついでに、隣に座るリーシェも、目を丸くして俺の横顔を凝視している。

 

 

(……そう言えば、リーシェにはその辺の深い『世界の真実』とか『進撃の巨人の未来』の話は、まだ詳しくしてなかったな)

 

 

「……私は……どうすれば良いんだ……」

 

 

 

グリシャは、顔をテーブルに向け、震える両手で自身の頭を抱えた。

 

「未来が見えなくなった……エレンからの声も途絶えた……私が進むべき道は、あの惨劇の先にしかなかったはずなのに……君が現れてから、すべてが狂ってしまった……」

 

 

 

全てを諦めたような、それでいて暗闇の中で何かに縋りたいと願うような、痛切な言葉が彼の口からこぼれ落ちる。

 

 

「そう悲嘆に暮れないでください。グリシャさん」

 

俺は極上の女神スマイルを浮かべ、彼を安心させるように語りかけた。

 

 

「私は、これからやってくるマーレの戦士によるシガンシナ区の壁の破壊も、貴方の愛する奥さんの死も、息子さんであるエレン君に『父親を食い殺す』という重い業を背負わせることも……絶対にさせません」

 

 

ゆっくりと、グリシャが顔を上げる。

 

 

その瞳には、深い困惑と絶望、そして……「そんなことが可能なのか」という、微かな、しかし縋るような光が宿っていた。

 

 

「それは……どういうことですか……」

掠れた声で、彼が問う。

 

 

「口先だけでは信用出来ないでしょう。……手を出して下さい。今から、それを証明します」

 

俺は、先月完成させたばかりの『ウイルス』──ユミルの呪いを解除し、対象の巨人化能力を俺の管理下に置くためのプログラミングを、実地検証も兼ねてここで使うことに決めた。

 

 

机の上に、グリシャが震えながらゆっくりと自身の手を差し出す。

 

 

俺は、その大きくゴツゴツとした手のひらの上に、自身の一回り小さな白い手を静かに乗せた。

 

 

───瞬間

 

 

ピリッ、と。

 

目には見えないが、全身を駆け巡る高圧電流のような『道』の接続感覚が走る。

 

 

俺は、その見えない稲妻の奔流に、自身が組み上げたプログラムを乗せ、グリシャの肉体と魂へと一気に流し込んだ。

 

 

ビクンッ! と、一瞬だけ相手の大きな手が跳ねるように震えたのが分かる。

 

 

時間にして、わずか数秒。

 

 

俺は目を閉じ、自身の脳内にある独立サーバー『道』の状況を確認する。

 

 

(……よし。恐らく、成功した)

 

リーシェに繋がっている太い光の線とは別に、新たに細い一本の線が増え、俺の『道』のネットワークへとゆっくりと馴染み、接続が確立されていくのがハッキリと認識できた。

 

 

俺はゆっくりと目を開け、グリシャから手を離した。

 

 

「今、グリシャさんを始祖ユミルの『道』から強引に引き剥がし、私の管理する『道』のネットワーク……樹の枝の様な場所に組み換え、上書きしました」

 

 

俺の言葉に、グリシャは呆然と自身の手のひらを見つめている。

 

「これで、あなたが抱えていた『13年の寿命の呪い』や、始祖の巨人による座標の干渉、記憶の改竄といったものは一切受けなくなりました。

寿命の制限は無くなり、あなたは普通の人間と同じように天寿を全うできます」

 

「……なっ……」

 

「ただ、事後承諾となってしまって申し訳ないのですが……グリシャさんの『進撃の巨人』の能力は、これから私の管理下に入ります。

私が管理者権限で『巨人化を禁ずる』とロックをかければ、あなたは巨人化が不可能になります。

……まぁ、今のところはそういった制約は設けませんので、ご安心ください」

 

「……あぁ……」

その直後だった。

 

 

グリシャの身体がフラッと大きく揺れ、まるで糸の切れた操り人形のように、椅子から崩れ落ちて床に転がった。

 

 

「っ、グリシャさん!?」

俺が慌てて身を乗り出すと、彼は床に倒れたまま、意識はあるようだったが、荒い息を吐きながら天井を虚ろに見つめていた。

 

 

これまでの人生を縛り付けていた強迫観念と呪い。

 

 

あまりにもスケールが違いすぎる超常現象を連続で叩きつけられ、文字通り全身の力が抜け果て、腰が抜けてしまったようだ。

(……ちょっと、やりすぎたかな)

 

 

 

俺は、床に転がって放心状態の未来のラスボスの父親を見下ろしつつ、少しだけ申し訳ない気持ちになりながら、冷めた紅茶にそっと口をつけるのだった。

 

 




原作破壊にトドメが刺されました。
同時にエレン百合絵師化が完全に確定してしまいました。

こんなエレン見たくない!という方はブラウザバック推奨です。

百合に脳を灼かれたエレンとか新し過ぎて草という方は是非引き続きお楽しみ下さい(*^^*)
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