進撃の巨人の世界に15m級の無垢(?)の巨人として転生してしまった……   作:感謝君

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第百三十二話

シガンシナ区でのベニア姉妹とグリシャ医師との密会

 

 

 

あの歴史的な夜から9月までの三ヶ月間、我々調査兵団は、表向きは平穏を装いながらも、水面下では息つく暇もない怒涛の日々を送っていた。

 

 

 

来るべき「運命の秋」に向けた盤面を完成させるため、私は幾つもの極秘作戦を同時進行で指揮した。

 

 

 

そのどれもが、一歩間違えれば人類を滅亡、あるいは我々自身の首を括ることになる綱渡りの連続であった。

 

 

 

まず着手したのは、ハンジ・ゾエ分隊長を中心とした「壁外地下牢建設計画」である。

 

 

 

あの日、巨人の真実と同胞の悲劇、そして理外の特異点のスペックを知らされたハンジは、数日間、文字通り狂ったように自室に籠りきりとなった。

 

 

 

食事も睡眠も削り、奇声と歓喜の叫びを上げながら、壁外の地質データと過去の調査記録を引っ掻き回し、巨大な地下収容施設の設計図作成に邁進していたのだ。

 

 

 

「出来たよエルヴィン! 捕獲した三人の戦士を収容し、かつ王政の目から完全に隠匿するための、完璧な地下要塞の設計図がね!」

 

 

目の下に濃い隈を作りながらも、目を血走らせて設計図を叩きつけてきたハンジの顔を、私は今でも鮮明に覚えている。

 

 

彼女は完成した建設計画をもとに、口が堅く信用できる少数の工兵と必要資材を揃えた。

 

 

 

そして、度重なる我々の壁外調査という名の「過剰な狩り」によって、今やほぼ無巨人地帯と化した壁外の森の奥深くに陣取り、極秘裏に地下牢の建設に取り掛かった。

 

 

 

硬い岩盤を穿つ難工事であったが、ここでも「特異点」の理不尽な力が遺憾なく発揮された。

 

 

 

時折、アトラス殿がこっそりと現場を訪れ、その圧倒的な硬質化能力で岩盤を豆腐のようにくり抜き、強固なクリスタルの支柱と壁面を一瞬で生成してくれたのだ。

 

 

 

「いやぁ、アトラスちゃんの力って本当に建築向けの反則技だよね! これなら何とかあの日までに完成しちゃうよ!」

 

 

そう言って歓喜の舞を踊るハンジを尻目に、私はまたしても常識の崩壊による胃痛を覚えながらも、その恩恵を享受した。

 

 

かくして、845年の8月中旬。壁外の森の地下25メートルという奥深くに、王政も憲兵団も知る由もない、極秘の地下牢が完成した。

 

 

捕らえた戦士たちを収容する堅牢な檻。

 

 

 

これは同時に、我々壁内人類が、100年の歴史において初めて「壁外に人工物を建造し、拠点を築いた」という、歴史の表舞台には決して残ることのない偉大な快挙であった。

 

 

並行して、私が王都内部で中心となって進めていたのが、「憲兵団師団長のすげ替え」という前代未聞の政治工作である。

 

 

駐屯兵団のピクシス司令、訓練兵団のキース教官ら各兵団の首領たちと裏で強固に結託し、かつての私の同胞であり、腐敗した憲兵団の中で唯一まともな芯を残している男───ナイル・ドークを師団長の座に擁立する計画だ。

 

 

 

当然、現在の権力を握る派閥からの猛烈な反発と、ナイルを失脚させようとする陰湿な妨害工作があった。

 

 

 

だが、それらを未然に防ぎ、完全に潰して回ったのが、ミケ・ザカリアス分隊長率いる裏工作部隊である。

 

 

「……臭うな。三番街の裏路地から、腐った企みの匂いがする」

 

 

ミケのその人間離れした嗅覚と直感は、対巨人戦のみならず、人間同士の暗闘においても凄まじい威力を発揮した。

 

 

 

彼らは敵対派閥が雇ったゴロツキや暗殺者を暗がりで次々と無力化し、逆に彼らの横領や不正の決定的な証拠を嗅ぎ当て、王政府の要人たちの机の上に叩きつけた。

 

 

 

ミケたちの徹底した裏工作による妨害阻止と、三兵団のトップからの強力な政治的圧力が決定打となり

 

 

8月上旬頃、ついに当時の師団長を不正の咎で引きずり下ろすという形で、計画は成功を収めた。

 

 

 

「まさか、本当にお前がこれを仕組んだとはな……エルヴィン」

 

 

師団長就任から数日後。

 

 

王都の薄暗い酒場の奥で密会したナイルは、師団長の証であるループタイを弄りながら、疲労と緊張の入り交じった顔で私を見た。

 

 

「あぁ。約束通り、お前の家族の安全は我々が死守する。だが、お前にはこれから、憲兵団のトップとして我々と裏で協力し、内部に溜まった膿を出し切ってもらわねばならない」

 

「……分かっている。お前たちが何を企んでいるのか、全貌は知らんが……この腐りきった体制を本気で変える気なら、乗ってやるさ」

 

 

現在、ナイル・ドークは憲兵団師団長として指揮を執りながら、徐々に我々に同調する者たちを要職に配置し、中央の権力基盤を我々にとって都合の良い形へと塗り替えているところだ。

 

 

 

しかし、盤面が我々に有利に傾きつつある一方で、深刻な懸念事項も存在していた。

 

 

 

ナイルからの極秘情報によれば、王政の真の暗部──中央第一憲兵のさらに奥に潜む、ケニー・アッカーマン率いる「対人制圧部隊」が、少しきな臭い動きを見せているというのだ。

 

 

 

彼らは通常の憲兵とは指揮系統が異なり、王政、ひいては真の王家であるレイス家の直属の番犬として暗躍している。

 

 

 

我々がフリーダ・レイスに接触し、真の女王として擁立する革命を起こす際、彼らは必ずや最大の壁となって我々の前に立ちはだかるだろう。

 

 

 

その強大な障害に対抗すべく、現在、我々の陣営で最も殺気立っている男がいる。

 

 

 

リヴァイ兵長だ。

 

彼とケニー・アッカーマンとの間には、幼少期に地下街で共に過ごし、戦い方を教えられたという深い因縁がある。

 

 

 

アトラス殿からの情報で「アッカーマン一族」の真実を知ったリヴァイは、自身の力のルーツと、かつての師の存在に確信を抱いていた。

 

 

 

「……あのクソ野郎が、王様の犬に成り下がってやがるとはな」

 

 

訓練兵団の敷地内、人目を避けた森の奥。

 

 

 

リヴァイは忌々しげに舌打ちをしながら、自身が直々に鍛え上げている数十名の超精鋭部隊──「対人立体機動部隊」の動きに鋭い視線を送っていた。

 

 

 

彼らは、対巨人のブレード技術を対人戦闘へと極限まで応用した、殺人術のスペシャリストたちだ。

 

 

「いいか、お前ら。対人戦において、相手が立体機動で飛んでくる前提で動け。

……特に、ケニーとその部下どもは、対人用の散弾銃を装備している可能性が高い。射線に入るな。ワイヤーの軌道を読め。一瞬の判断の遅れが、お前らの脳天に風穴を開けると思え」

 

 

リヴァイは容赦のない怒号を飛ばし、自らも擬似刀を手に、部下たちを次々と地面に這い蹲らせていく。

 

 

 

その動きは、かつて私に牙を剥いた時よりもさらに洗練され、無駄がなく、冷酷なまでに必殺の軌道を描いていた。

 

 

「ケニーの首は俺が獲る。だが、その前に雑魚どもに殺されるようなマヌケは、この部隊にはいらねぇ」

 

 

リヴァイが率先して対ケニー・アッカーマンの対抗戦術を自身の部隊に叩き込んでいるこの光景は、私にとってどれほど心強いものであったか。

 

 

 

彼らがいれば、いかに王政の番犬といえども、そう容易く我々の革命を阻止することはできないはずだ。

 

 

 

地下牢の完成、憲兵団トップの掌握、そして対人戦闘部隊の成熟。

 

 

 

これらすべてが、845年の夏という極めて短い期間に、水面下で完璧に成し遂げられた。

 

 

 

そして現在

 

季節は巡り、木々の葉が色づき始める9月を迎えようとしていた。

 

 

 

グリシャ医師の予言通りであれば、あと数日のうちに、マーレの戦士たちがこの壁を破壊しにやって来る。

 

 

 

すべての準備は整った。

 

 

 

シガンシナ区に待機する「特異点」たる二人の少女が、壁外からの刺客をどう迎え撃つのか。

 

 

 

そして、それを皮切りに始まる我々の王政打倒という大舞台。

 

 

 

人類の歴史が、真の意味で動く時が来たのだ。私は執務室の窓から、秋の気配を孕んだ風を感じながら、来るべき決戦の日に向けて静かに目を閉じた。

 

 







21時にもう一話投稿します。
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