進撃の巨人の世界に15m級の無垢(?)の巨人として転生してしまった……   作:感謝君

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第百五十一話

 

 

 

この星空と銀色の砂漠だけの『道』の空間に引き摺り込まれてから。

 

 

 

体感時間で言えば、およそ一ヶ月……いや、ここまで来ると俺自身の体内時計すら全く信用できない。

 

 

 

ともかく、現実世界との流れる時間の凄まじい差を信じるしかない。

 

 

 

向こうではまだ、一瞬たりとも時間は動いていないだろうから大丈夫なはずだ。

 

 

 

……多分。いや、絶対にそうであってくれ。

 

 

 

そんな一抹の不安を抱えつつも、今日も今日とて、俺はユミルと一緒に砂をこねこねしながら、果てしなく続く女子トークという名の完全に俺の一方的なマシンガントークに花を咲かせていた。

 

 

 

この一ヶ月(仮)の間に、俺自身の砂遊びスキルも飛躍的に向上し、遂に人に見せられるレベルの巨人のパーツを造形できるようになっていた。

 

 

 

最近では少し余裕も出てきて、真面目に作業するユミルの横で、「ねぇねぇ、ここ、こんな感じにしてみたらどう?」とか、「見て見て! この奇行種のポーズ、ちょー面白くない!? あははは!」ってな感じで、たまに巫山戯た造形を作って見せたりしていた。

 

 

 

……まぁ、数秒後にはユミルの手によって速攻で完璧な形に修正されるんだけど。

 

職人は妥協を許さないらしい。

 

 

 

「──それでね、スール制度っていうのがあって! 上級生と下級生が……あ〜っと、つまり年上の女の子が、年下の女の子と血は繋がってないんだけど『姉妹』として特別な関係を築いて、あら〜^な場面を展開する物語があってね! もうそれがほんっと尊くてぇ……やばっ……想像しただけで涎出てきた」

 

 

凡そ他人に、それも『道』で悠久の時を独りぼっちで過ごしてきた神聖な女の子相手に話すような内容じゃない話を、俺はぺちゃくちゃと語り続けていた。

 

 

 

比類なき黄金比で設計された超絶美少女フェイスを限界までだらしなく崩し、口元を拭いながら熱弁を振るう。

 

 

 

エレン少年が見たら「これもまた至高……!」とか言ってカンバスに描き殴りそうな顔面崩壊っぷりである。

 

 

 

だが、ここまで俺は、アニメや漫画、ラノベ、果てはウェブ小説のコアな設定に至るまで、手広くひたすらに自分のオタク趣味を語り続けてきた。

 

 

 

そして、どれだけくだらない(あるいは業の深い)話をしても、文句一つ言わず、無言でただひたすらに聞いてくれる(主観)相手を手に入れた事で、俺の中でユミルはすっかり『最高に都合の良いオタクの理解者』として定着してしまっていたのだ。

 

 

 

「あー、マジで最高。尊いって感情はいつまで経っても色褪せない真理なんだよ……」

 

 

ふと、俺がだらしなく垂れそうになった涎を手の甲で拭っていると。

 

 

──ふふっ……

 

 

不意に、風の音すらないこの空間で、微かにそんな笑い声が聞こえた。

 

 

(……えっ?)

 

俺はピタリと手を止めた。

 

 

いよいよこの果てしない砂漠の空間で精神に異常をきたし、幻聴まで聞こえ始めたのか?

 

 

そう思って、恐る恐る隣へと顔を上げる。

 

 

そこには──────

 

 

今までずっと前髪の影になって見えなかった、ユミルの顔がはっきりと顕になっていた。

 

 

 

あどけないながらも、端正でとても可愛らしい顔立ちの少女。

 

 

 

その彼女が、俺のあまりにもだらしない顔と熱弁っぷりに、少し堪えきれないといった様子で、小さな両手で口元を抑えながら肩を震わせていたのだ。

 

 

(……!!)

 

 

そうか!

 

奴隷として舌を抜かれ、言葉という概念を紡ぐことは出来なくなってしまったのかもしれないけれど。

 

 

 

声を出したり、こうして感情を乗せて『笑う』ことはできるんだ!

 

 

 

途方もない間、たった一人で巨人を捏ね続け、誰に逆らうこともなく、ただ無表情で服従し続けてきた始祖の少女。

 

 

 

その彼女が今、俺のくだらないオタク語りと顔芸を見て、心から楽しそうに笑ってくれている。

 

 

 

その事実が、たまらなく嬉しかった。胸の奥が、じんわりと温かいもので満たされていく。

 

 

「んへへ……でね───」

 

俺は、あえてその笑いには直接触れなかった。

 

 

 

ここで「笑ったね!」なんて野暮な指摘をして、彼女がまた無表情の殻に閉じこもってしまったら嫌だからだ。

 

 

 

俺はいつも通り、いや、いつも以上に楽しそうな声を出しながら、今日(?)も彼女と共に銀色の砂を捏ね続ける。

 

 

「この主人公の女の子が、また絶妙に鈍感でさぁ。周りの女の子たちがみんなデレてるのに全然気づかなくて──」

 

 

俺の弾むような声に合わせるように。

 

小さな神様は、砂を撫でる手を止めないまま、また微かに、柔らかな声をこぼした。

 

 

「……ふふっ……」

 

星空と砂漠だけの空間に、穏やかな二人の時間が、確かに流れていた。

 

 

 

 

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