進撃の巨人の世界に15m級の無垢(?)の巨人として転生してしまった……   作:感謝君

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第百五十二話

あの『道』の空間に引き摺り込まれてから、体感時間にして……いや、やめよう。もう分かんねぇし。考えるだけ無駄だ。

 

 

とにかく、あのユミルの「初デレ(微笑み)」事件からさらに少し───それが一ヶ月かもしれないし、もしかしたら数年かもしれない時間が経った頃。

 

 

 

表情が以前よりも目に見えて豊かになったユミルに対して、俺は新たな試みとして、この無限にある銀色の砂を使って『指で文字を書くこと』を教えてみることにしたのだ。

 

 

「いい? これが『ゆ』で、これが『み』。そしてこれが『る』ね。そうそう! 上手! ……いやホント、めちゃくちゃ上手だね!?」

 

最初は幼児のお絵かきを褒めるような、ちょっと舐めたお姉さん的態度だった俺だが、彼女が砂に描いた文字を見て、結構素で驚愕してしまった。

 

 

 

どうにも、永遠と休むことなく巨人をこねこねし続けてきた『砂捏ねスキルレベル999』のユミルの指先は、恐るべき精密さを誇っていたらしい。

 

 

 

俺が見本として描いた文字を完璧にコピーし、なんならちょっと俺の字よりもバランス良く、流麗な美しい字で書いて見せたのだ。

 

 

 

職人技ここに極まれり、である。

 

 

 

ユミルの意外すぎる特技に舌を巻きながらも、俺は一通りの文字を砂の上に書いて教えていく。

 

 

 

──エルディアの文字ではなく、『日本語』で

 

(……いや、やっぱこの世界のエルディア語(カタカナ擬き)だと、圧倒的に語彙がねぇんだよな……)

 

 

一応、そっちの文字も気が向いたら教えるつもりではある。

 

 

だけど、やっぱり俺の『オタ友』として育成……いや、交流していくには、圧倒的に語彙力と表現力に富む日本語の方が都合が良いのだ。

 

 

 

尊いとか、推しとか、そういう概念を伝えるには日本語のニュアンスが必須だし、何よりいい加減、一方通行の語りではなく「まともなコミュニケーション」を取りたかった。

 

 

 

そんな不純と純粋が入り交じった理由で、五十音のひらがなを一通り教え終えた時のことだ。

 

 

トントン、と。

 

 

隣に座っていたユミルが、小さな指で俺の肩を突っついてきた。

 

 

振り返ると、前髪の隙間から覗く彼女の瞳が、何かを期待するようにキラキラと輝いてこちらを向いている。

 

 

(……あざといな、おい)

 

年齢不詳の少女神様、自分の可愛さを無自覚に振りまいてきやがる。

 

 

どうやら、今教えたばかりの文字を早速使って、自分の意志を俺に伝えようとしているらしい。

 

 

「なになにー?」

 

 

俺は興味津々で、ユミルが砂の上に小さな指で一文字ずつなぞっていくのを見守った。

 

 

彼女が慎重に、しかし流れるような綺麗な指使いで紡いだ言葉は。

 

 

 

 

『あ』『と』『ら』『す』『お』『ね』『え』『さ』『ま』

 

 

 

……………………

 

 

 

(ぶふぉぉぉぉおおお!!!!!)

 

 

 

俺の脳内では今、盛大に鼻血と吐血が吹き荒れ、視界が真っ赤に染まっていた。

 

 

 

嘘だろ!? おい!?最初に書く文字が俺の名前で!?そんでもって『お姉様』だって!?

 

 

 

スール制度の百合小説の話をずっと聞かせていた成果(洗脳)が、こんなところで爆発するなんて!

 

 

 

俺の純情な元男子大学生のハートを、真っ直ぐな豪速球で容赦なくぶち抜いて来やがったぜ……

 

 

 

俺はもう、この比類なき美少女フェイスが限界までだらしなく崩れていくのを隠すこともできず、デレデレの笑みを浮かべて身悶えした。

 

 

 

「え〜、お姉様だなんて〜! も〜ユミルちゃんったら〜、でへへ〜」

 

 

俺が気持ち悪い笑い声を漏らしながら悶絶していると、ユミルは不思議そうに小首を傾げた後、さらに砂に文字を書き足した。

 

 

 

『ほかに もじ ある 』

 

他に文字ある? ね。

 

 

うんうん、向学心があってよろしい。

 

 

ひらがなだけじゃなく、句読点(、。)とか、疑問符(?)や感嘆符(!)なんかの記号も教えてあげないとな。

 

 

 

まずはその概念と、どういう時に使うのかという使い方から教えないとねー

 

 

「あるよー! 先ずは使い方と意味から、しっかり教えるね!」

 

 

俺は鼻息を荒くし、意気揚々と砂の上に新たな文字を書き始めた。

 

 

 

こうして、言葉を失った孤独な少女に文字を教え、まともなコミュニケーションを交わすための、俺による熱血『日本語授業』が幕を開けたのである。

 

 

 

 

 

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