進撃の巨人の世界に15m級の無垢(?)の巨人として転生してしまった……   作:感謝君

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進撃の巨人3発表されましたね!

それはさて置きユミルちゃんを『道』に放ったらかしにしたアトラスにはお仕置です。


第百五十六話

 

 

 

「ふぇぇぇ!? あわわわ……っ!!」

唇に焼き付いた柔らかい感触と、脳をショートさせるようなパニックの渦の中。

 

 

 

 

視界を埋め尽くしていた純白の光が晴れ、俺は勢いよく現実世界へと意識を引き戻された。

 

 

 

「……ハッ!?」

荒い息を吐きながら周囲を見渡す。

 

 

 

 

冷たいクリスタルの床。祭壇の奥で震えるロッド・レイスと子供たち。

 

 

 

そして、俺のすぐ後ろで、固唾を飲んで事の成り行きを見守っているエルヴィン団長、リヴァイ兵長、リーシェ、そしてケニーたち。

 

 

 

俺の手は、今まさに気絶したフリーダの手に触れた直後の体勢のままだった。

 

 

 

(……一切、時間が経ってない……)

 

 

あんなに……何百年、何千年という悠久の時をあの『道』で過ごし、ユミルと砂を捏ね、果てはオタク語りをし尽くしたというのに。

 

 

 

現実世界では、文字通り「一秒」たりとも時間は進んでいなかったらしい。

 

 

 

(危ねぇ……)

 

 

俺は内心で冷や汗を拭った。

 

 

 

もし現実世界と時間が同期していて、俺が虚空を見つめながらだらしない顔で「お姉様だなんて〜でへへ〜」とよだれを垂らしている姿を数年単位で晒し続けていたとしたら、特異点としての威厳もクソもなく、間違いなく社会的に死んでいただろう。

 

 

 

俺は小さく安堵の息を吐き、フリーダの白い手からそっと自身の手を離した。

 

 

そして、今か今かと俺の口からの「結果」を待ちわびている調査兵団の面々とケニーらに向けて、いつもの余裕たっぷりな美少女スマイルを向け、作戦が成功した事を告げようとした。

 

 

 

「無事解呪で───」

 

その、瞬間だった。

 

 

─────ズガァァァァァァァァンッ!!!!!

 

 

 

「…ガァ゛ァ゛ア゛ア゛!!!!」

 

 

俺の喉から、鼓膜を劈くような絶叫が弾け飛んだ。

 

 

 

頭蓋骨の内側から、脳髄を直接ドリルで抉り回されるような、経験したことのない超弩級の激痛。

 

 

 

原因は明白だった。

 

 

 

俺のこの現実世界にある物理的な「人間の脳」が、たった一瞬の間に、『道』で過ごした数千年分という天文学的な容量の記憶と経験を、強制的にダウンロードし、処理・統合しようとしたのだ。

 

 

 

処理能力の限界を突破した脳が悲鳴を上げる。

 

 

 

「あ゛……ぁ……ッ、がっ……!」

 

 

ドクドクと拍動に合わせ、自然と両の鼻の穴からツーッと赤い鼻血が垂れ落ちる。

 

 

 

視界が激しく明滅し、クリスタルの洞窟の景色と、銀色の砂漠の景色が脳内でバグのように交差する。

 

 

 

三半規管が狂い、強烈な吐き気が込み上げ、肺が酸素の吸い方を忘れたように呼吸ができなくなった。

 

 

 

俺はクリスタルの床に倒れ込み、頭を掻き毟りながらのたうち回った。

 

 

「アトラス!!!!!」

 

 

 

耳鳴りの向こう側から、悲痛で、今にも狂乱しそうなリーシェの絶叫が聞こえた。

 

 

 

彼女が俺の異常事態に血相を変え、駆け寄ろうと飛び出してくる気配を感じる。

 

 

(……来ちゃ、ダメだ……!)

 

 

俺は咄嗟に、本能レベルの危機感から、床に這いつくばったまま片手を力強く彼女の方へと突き出し、「近付くな」という制止のジェスチャーを送った。

 

 

 

今の俺の身体は、莫大な情報の処理で完全に暴走状態にある。

 

 

万が一、この状態でエネルギーが暴発したり、防衛本能で無意識の硬質化が発動したりすれば、不用意に近づいたリーシェを傷つけてしまうかもしれない。

 

 

ピタリと、リーシェの足音が止まる。彼女は、その場に縫い止められたように立ち尽くし、「アトラス……っ、いや……どうして……っ!」と泣きそうな声で震えていた。

 

 

 

周囲の大人たちも、俺の唐突すぎる異常事態に完全に騒然となっていた。

 

 

 

「おい! どうしたってんだ急に!」とケニーが叫び、エルヴィン団長が「グリシャさん! 医療鞄を!」と声を張り上げているのが、遠くのノイズのように聞こえる。

 

 

それから、約一分後。

 

 

 

──シュゥゥゥゥゥッ……

 

 

 

俺の身体に備わっている、デタラメな独自の『道』仕様の『超回復力のゴリ押し』が、強引に脳細胞を修復し、肥大化した記憶の最適化を完了させた。

 

 

明滅していた視界がゆっくりとクリアになり、止まっていた呼吸が、ヒューッ、と大きく肺へと流れ込んでくる。

 

 

「……はぁっ……はぁっ……」

 

荒い息を吐きながら、俺はゆっくりと上体を起こした。

 

 

 

鼻血を手の甲で拭い、涙目で滲む視界の先を見る。

 

 

 

そこには、今にも泣き出しそうなリーシェと、完全に顔面を蒼白にしたエルヴィン団長、ハンジ分隊長、そして、あの氷のように冷徹なリヴァイ兵長でさえ、柄にもなく本気で焦燥しきった顔でこちらを見つめていた。

 

 

 

俺は、心配をかけてしまった彼らを安心させるように、涙目のまま、力なくふにゃりと笑ってみせた。

 

 

 

「……解呪……できました……」

 

掠れた声だったが、その言葉はクリスタルの洞窟に確かに響き渡った。

 

「アトラス殿……!」

 

「無茶しやがって、この馬鹿野郎が……」

 

エルヴィン団長が深く、本当に深く安堵の息を吐き出し、あのリヴァイ兵長でさえ、心底ホッとしたような、それでいて俺の無謀さを叱りつけるような心配の言葉を口にした。

 

 

 

彼らからの、その温かくて重い言葉と感情をしっかりと受け止めながら、俺はコクンと頷き、フリーダの呪いの解除が無事に完了したことを改めて証明した。

 

 

そこからのことは、正直あまり覚えていない。

 

 

 

脳を限界まで酷使した反動と、数千年分もの強制処理による疲労感が一気に押し寄せてきて、俺の意識は急速に暗闇へと沈んでいったからだ。

 

 

 

薄れゆく意識の中で、俺の身体を優しく抱き起し、泣きながら強く抱きしめてくれたリーシェの温もりだけが、微かな記憶として残っていた。

 

 

 

……そして

 

 

次に重い瞼を開け、俺が明確に意識を取り戻した時。

 

 

 

気付けば俺は、オルブド区で一時休憩を取っていたあの宿舎の、見慣れたベッドの天井を見つめていた。

 

 

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