進撃の巨人の世界に15m級の無垢(?)の巨人として転生してしまった……   作:感謝君

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第百五十八話

フリーダ・レイス氏との交渉が成立した。

 

 

彼女が自らの意志で我々のクーデターに協力し、真の女王として表舞台に立つことを承諾したその瞬間、人類を解放するための革命の盤面は完全に揃った。

 

 

 

私は夜の帳が下りた宿舎の一室で、即座に羽ペンを走らせた。

 

 

 

吉報を待つ調査兵団本部、東西南北の壁を統治する駐屯兵団の各司令、そして王都で新師団長として内部を掌握しつつある憲兵団本部のナイル・ドークに向けて。

 

 

 

決行日である『二日後の正午』、そして作戦の最終目標地点である『王城』を記述した極秘の手紙をしたためる。

 

 

 

「これを、各所に頼む。夜を徹してでも急ぎ届けよ」

 

 

数人の信頼できる部下たちに託し、闇夜へと放つ。

 

 

早馬を乗り継げば、数時間後にはピクシス司令やナイルの元へ届くはずだ。

 

 

 

その夜──────

 

 

私は、いまだ意識の戻らないアトラス殿が眠る部屋を訪れた。

 

 

ベッドの傍らには、彼女の手を固く握り締め、一時も離れようとしないリーシェ特別班長と、付き添うグリシャ先生の姿があった。

 

 

 

私は彼らに向けて、深く頭を下げた。

 

 

「リーシェ特別班長、アトラス殿、そしてグリシャ先生には、この安全な場所に残ってもらう」

 

 

「……エルヴィンさん…」

 

 

「あなた方は、本作戦において最も困難で、最も偉大な貢献を成し遂げてくれた。偽りの歴史を暴き、マーレの脅威を退け、そして真の王の呪縛を解き放った。……ここから先は、我々壁内人類自身の仕事だ」

 

 

私は、眠り続けるアトラス殿の穏やかな顔を見つめた。

 

 

 

「彼女を、しっかりと療養させてやってくれ。彼女が文字通り命を削って繋いできたこのバトンは、私が責任を持って目的地まで届ける。……目を覚ました時、我々の手で勝ち取った『成功』を手土産にしようじゃないか」

 

 

リーシェ班長は無言で頷き、アトラス殿の額にそっと自身の額を寄せた。

 

 

その姿を背に、私は宿舎を後にした。

 

 

 

さぁ、人類の新たな夜明けを迎えに行こう。

 

 

─────────────────────────

 

 

845年9月15日、正午

 

 

澄み切った秋晴れの空の下、王都ミットラスの中心を貫く大通りを、重厚な足音が響き渡っていた。

 

 

 

我々調査兵団が誇る、50名の精鋭部隊。

 

 

 

そこに、王都の治安を担う憲兵団、そして壁の守護者たる駐屯兵団の兵士たちを加えた、総勢200名の完全武装した合同部隊。

 

 

 

その陣形の中心には、豪奢な馬車ではなく、我々と同じように馬に跨り、凛とした表情で前を見据える真の女王──フリーダ・レイス氏の姿があった。

 

 

 

私の右隣には、駐屯兵団の最高トップであるドット・ピクシス司令が静かに馬を進めている。

 

「まさか、ワシの生きている内にこんな大博打を打つ日が来るとはのう。エルヴィン、お主の背負ってきた狂気も、大したもんじゃ」

 

 

「ピクシス司令のご協力あってこそです。感謝いたします」

 

 

そして左隣には、憲兵団の制服に身を包み、引き締まった顔つきのナイル・ドークが並ぶ。

 

 

「ナイル。内部の抑えは万全か?」

 

 

「あぁ。旧体制の甘い汁を吸っていた連中は、あらかた俺の部下たちで監視下に置いた。……王城の近衛兵たちも、すでに話は通してある」

 

 

ナイルの言葉通りだった。

 

 

我々が王城の巨大な正門へと差し掛かると、城を守るはずの近衛兵たちは、我々に槍を向けるどころか、一切の抵抗を見せずに静かに整列し、その重厚な鉄の扉をゆっくりと開け放ったのだ。

 

 

 

彼らもまた、腐敗した王政に見切りをつけ、我々の革命に同調した者たちだった。

 

 

 

我々は馬から降り、フリーダ氏を中央に護衛しながら、王城の奥深く──玉座の間へと続く豪奢な赤絨毯を踏みしめて進んだ。

 

 

 

バンッ!! と。

 

広大な玉座の間の両開きの扉を、兵士たちが勢いよく蹴り開ける。

 

 

「な、何事だッ!?」

 

 

そこに広がっていたのは、昼間から豪勢な酒食を並べ、優雅に談笑する腐敗した貴族たちの姿だった。

 

 

そしてその奥、煌びやかな玉座には、常に虚ろな目をしているだけのただの傀儡───偽りの王が、ポカンと口を開けてこちらを見下ろしていた。

 

 

「エ、エルヴィン・スミス……!? 貴様、許可もなく完全武装で王の御前に立ち入るとは、反逆かッ!!」

 

 

一人の恰幅の良い貴族が、顔を真っ赤にして怒鳴り散らした。

 

 

「憲兵は何をしている! 逆賊どもを捕らえよ!」

 

 

しかし、彼のその叫びに応える者は一人もいない。

 

 

ナイルが冷ややかな目で前に進み出た。

 

 

「無駄だ。あんたらの私兵も、近衛兵も、すでに全員憲兵団の手で武装解除させている。王都はすでに、我々三兵団の完全な管理下に置かれた」

 

 

「な、なんだと……ッ!?」

 

 

貴族たちが顔面を蒼白にし、ざわめき始める。

 

 

 

私は、彼らの動揺を冷徹に一瞥すると、大股で玉座の階段の下まで歩み寄った。

 

 

「長きに渡る偽りの統治、ご苦労だった。……玉座から降りていただこうか、偽りの王よ。そして、自らの権力と保身のために人類の真実を隠蔽し、民を欺き続けてきた豚共よ」

 

 

「き、貴様ら……正気か!? 自分たちが何をしているのか分かっているのか!」

 

 

別の貴族が、震える指を私に突きつけながら叫んだ。

 

 

「王家に逆らうということは、すなわち人類の記憶がどうなってもいいということだぞ! 始祖の力によって、貴様らの記憶など一瞬で改竄されるのだぞッ!」

 

 

その言葉が響き渡った瞬間。

 

 

玉座の間に、ピクシス司令の腹の底から響くような高笑いが轟いた。

 

 

「フォッフォッフォ! 自分の口からゲロを吐きおったわ! 記憶を改竄する? つまり貴様ら自身が、王政の歴史が捏造された偽りであると認めたわけじゃな!」

 

 

「あ……ッ!」

 

 

致命的な失言に気付いた貴族たちは、絶望に顔を歪め、後ずさる。

 

 

私は、陣形の中心から、一人の女性を前へと導いた。

 

 

「見よ。この方こそが、貴様らが都合よく利用してきた真の王家の血を引く正統なる後継者。そして、今日この日より壁内人類を導く真の女王、フリーダ・レイス陛下である!」

 

 

 

毅然とした態度で歩み出たフリーダ氏の姿に、真実を知る数少ない貴族たちは完全に腰を抜かし、床にへたり込んだ。

 

 

 

彼女の瞳にもう、彼らを操っていた「不戦の契り」の呪縛が存在しないことを悟ったのだろう。

 

 

「反逆罪、及び人類への背信行為で全員を拘束しろ!」

 

 

私の号令と共に、兵士たち一斉に動き出し、喚き散らす貴族たちと偽りの王を取り押さえ、無慈悲に玉座の間から引きずり出していった。

 

 

一切の流血を伴わない、完全なる無血開城。

 

 

 

百年に及ぶ偽りの王政は、今、呆気ないほど静かに崩れ去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その数時間後

 

王都ミットラスの中心にある広場には、突然の王城の騒ぎを聞きつけた何万という民衆が、不安と好奇の入り混じった顔で押し寄せていた。

 

 

王城の高く張り出したバルコニー。

 

 

私は、ピクシス司令、ナイル師団長と共にそこに立ち、眼下に広がる無数の民衆の顔を見下ろした。

 

 

 

やがて、バルコニーの中央に、純白のドレスに身を包んだフリーダ・レイス氏が歩み出る。

 

 

 

群衆がざわめく中、私は用意された拡声器を手に取り、壁内全土に響き渡るような力強い声で演説を開始した。

 

 

 

「王都の、そして壁内すべての人類よ! 私は調査兵団団長、エルヴィン・スミスである!」

 

 

私の声に、広場の喧騒が水を打ったように静まり返った。

 

 

「今日、我々調査兵団、駐屯兵団、憲兵団の三兵団は、王城を制圧し、現在の王政を打倒した! 驚く者も多いだろう。

だが、聞いてほしい! これまで玉座に座っていた王は、血筋すら持たないただの傀儡であり、その裏で腐敗した貴族たちが、己の私腹を肥やすためだけに我々人類を欺き、支配していたのだ!」

 

 

どよめきが群衆を波のように駆け抜ける

 

 

「彼らは、壁の外の真実を隠蔽し、兵士たちの命を無駄に散らしてきた。だが、その偽りの時代は、今日ここで終わる! 見よ!」

 

 

私は、フリーダ氏へと手を向けた。

 

 

「この方こそが、真の王家の血を引く正統なる後継者、フリーダ・レイス氏! 彼女は、腐敗した過去と決別し、自らの意志で我々人類と共に歩むことを決断してくださった!」

 

 

フリーダ氏は、バルコニーの縁に立ち、民衆に向けて深く、そして優雅に一礼をした。

 

 

その凛とした美しさと威厳に、民衆の中から自然と感嘆の声が漏れ始める。

 

 

「人類よ! 我々の敵は、無知と偽りであった! 壁の外には、我々が立ち向かうべき真の脅威が存在する。

だが、恐れることはない! 我々には、真実を見据え、抗う力がある! そして、我々を勝利へと導く希望の光───調査兵団が誇る『強大な力』が、この壁内にはすでに備わっている!」

 

 

 

私は、ベッドで眠るアトラス殿とリーシェの姿を思い浮かべながら、力強く拳を突き上げた。

 

 

 

「今日、この日より! 偽りの王政を廃し、三兵団と真の女王を頂点とする『新政府』の設立を高らかに宣言する! 心臓を捧げよ! 我々人類の、真の自由と未来のために!!」

 

 

「「「ウォォォォォォォォォォォッ!!!」」」

 

 

私の演説が終わると同時。

 

広場を埋め尽くす数えきれない程の民衆から、地鳴りのような大歓声と拍手が巻き起こった。

 

 

兵士たちも一斉に右拳を左胸に当て、人類の新たな夜明けを祝福する。

 

 

すべては、あの一人の少女がもたらした奇跡から始まった。

 

 

 

私は、歓声に包まれる王都の青空を見上げながら、長い、本当に長かった人類の反撃の準備が、ついに完了したことを噛み締めていた。

 

 

 

 

 

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