進撃の巨人の世界に15m級の無垢(?)の巨人として転生してしまった……   作:感謝君

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と゛う゛し゛て゛こ゛う゛な゛っ゛た゛
第百六十話


 

 

845年10月中頃

 

 

シガンシナ区の中央にある、俺とリーシェの家に戻ってきてから、かれこれ一ヶ月程の月日が流れていた。

 

 

 

あの地下礼拝堂でフリーダの呪いを解呪し、脳の処理限界を迎えて盛大に気絶した俺だが、次に目を覚ました時には、なんと王都での革命がすべて綺麗に終わっていたのである。

 

 

 

エルヴィン団長をはじめとする調査兵団と各兵団のトップたちが、俺が寝こけている間に王城を無血開城させ、偽りの王政を打倒し、フリーダ・レイスを真の女王として擁立するという歴史的偉業を成し遂げてくれていたのだ。

 

 

 

俺は本当に「寝て起きたら世界が平和になっていた」という、主人公らしからぬ完全なチート・スキップをかましてしまい、そのままシガンシナ区の我が家へと帰還したわけである。

 

 

 

現在の俺の立ち位置は、すっかり「お家でのんびり日向ぼっこをするおばあちゃん」みたいなものだった。

 

 

 

過保護が限界突破しているリーシェからは「アトラスは世界を救ったんだから、もう一生私が養って甘やかしてあげる!」と宣言され、家事のほとんどを奪われ、文字通り至れり尽くせりの堕落した毎日を送っている。

 

 

 

 

そして今日の午後

 

リーシェが夕飯の買い出しに出掛けている間、俺はリビングのふかふかなソファで、比類なき超絶美少女ボディをだらしなく投げ出し、窓越しに差し込むポカポカとした斜陽を浴びながら惰眠を貪っていた。

 

 

平和だ。巨人の脅威も、王政の暗躍も、すべてが解決に向かっている。

 

 

 

ウトウトと微睡みの海を漂う俺の耳に、ふと、鈴を転がすような甘くて可愛らしい声が聞こえてきた。

 

 

「……お……ま……おねぇ……お姉様……」

 

「……んぅ?」

 

寝ぼけた頭で、小さく唸る。

 

 

 

なんだか、お腹のあたりにずっしりとした心地よい重みを感じる。

 

 

 

布団にしては重いし、リーシェが帰ってきたにしては気配が違う。

 

 

 

重たいまぶたを開け、目を擦ろうと腕をゆっくりと持ち上げようとした、その瞬間だった。

 

 

───ちゅっ

 

 

俺の唇に、不意に、暖かくて信じられないほど柔らかい感触が押し当てられた。

 

 

「……!?」

 

「アトラスお姉様、おはよう」

 

微かに鼻をくすぐる、甘くていい匂い。

 

 

焦点の合わない目でぼんやりと見上げた視界に映ったのは、一人の見知らぬ……いや、何処と無く懐かしい面影のある美少女の顔だった。

 

 

腰まで届く、美しくもどこか神秘的な鈍色の金髪。少しあどけなさが残る端正な顔立ちは、控えめに言っても「極上の美」を体現している。

 

 

(……んん? なんだこの子……どことなく、あの『道』にいたユミルちゃんが、そのまま順調に成長したらこんな感じだろうなーっていう姿にそっくり……)

 

 

完全に夢だと思った。

 

 

いくら俺が特異点バグの権化とはいえ、始祖ユミルが現実世界の俺の家のリビングに現れるなんて、そんなファンタジーなオチがあるわけない。

 

 

きっと最近の平和ボケが見せた、都合の良い明晰夢に違いない。

 

 

 

俺がそうやって再び目を閉じようとした、次の瞬間。

 

 

────ちゅっ

 

 

また、キスされた。

 

 

今度はさっきよりも少しだけ長く、唇の柔らかさと温度をはっきりと脳髄に伝えてくるような、生々しい感触。

 

 

(……んっ? 現実?)

 

 

息継ぎの吐息。お腹にかかる確かな質量

 

 

そして、俺の顔を覗き込む彼女の体温

 

 

(……現実!?)

 

 

「ふぁっ!?」

 

 

俺の喉から、絶世の美少女らしからぬ、カエルの潰れたような素っ頓狂な声が漏れた。

 

 

俺は跳ね起きようと上体に力を入れたが、お腹に乗った重みのせいでうまく身動きが取れない。

 

 

「ふふっ……寝ぼけてるお姉様も、すっごく可愛い……」

 

 

「!?」

 

俺の腹の上に完全に跨る形で座っていたのは、紛れもなく、16歳ほどに成長した完璧な美貌を持つ『ユミル』その人だった。

 

 

なぜ!? なんでユミルが現実にいるんだ!? あの銀色の砂漠で永遠に巨人を捏ねてるはずの管理者が、どうしてシガンシナ区の俺の家のソファの──それも腹の上に跨っているんだよ!?

 

 

 

俺の脳みそがパニックを引き起こし、激しい処理落ちの警告音を鳴らし始める。

 

 

「ゆ、ユミル……!?」

 

「うん! お姉様の愛する妹、ユミルだよ」

 

彼女は、俺の腹の上に跨ったまま、両手を赤く染まった自身の頬に当て、熱に浮かされたようなとろける笑顔で俺を見下ろしている。

 

 

その紫色の瞳の奥には、妹としての純粋な慕情だけでなく、この受肉した肉体を使って、今にも俺を捕食(意味深)してきそうな、ただならぬ情欲の炎がゆらゆらと燃え盛っているのがはっきりと見て取れた。

 

 

(ひっ……!? 目が、目がマジだぞこの子!?)

 

 

「ずっと、ずっと逢いたかった……! お姉様ぁっ!!」

 

 

「ちょ、ま───わぷっ!?」

 

俺が制止の声を上げるよりも早く、ユミルは弾かれたように俺の胸元へと飛びつき、折れんばかりの強い力でギュッと抱きしめてきた。

 

 

顔のすぐ横で、彼女のすりすりとする頬の感触と、金髪から漂う甘い香りが俺の理性を激しく揺さぶる。

 

 

女性特有の柔らかさと丸みを兼ね備えたプロポーションが、俺の身体に隙間なく密着してくる。

 

 

いや、待て待て待て。

 

 

どうなってんだこれ……

 

ただでさえリーシェという人類最強の重すぎる愛情(ヤンデレ)を抱え込んでいるというのに。

 

 

 

ここに来て、俺のオタク布教で完全に思想を再構築……もとい洗脳されてしまった『重度のお姉様ガチ勢』の神様まで現実世界に降臨(受肉)してしまったというのか。

 

 

 

もし今、買い物から帰ってきたリーシェがこのリビングのこの惨状────見知らぬ極上美少女が俺に馬乗りになってキスとハグの嵐を浴びせている図を目撃でもしたら。

 

 

 

国家滅亡レベルの修羅場どころか、世界そのものが真っ二つに割れるんじゃないか!?

 

 

 

「お姉様、お姉様……大好き……っ」

 

 

俺の首筋に顔を埋め、恍惚とした吐息を漏らしながら抱きついてくるユミルの頭を撫でるべきか、それとも引き剥がすべきか。

 

 

 

完全にフリーズした俺の頭の中では、ただひたすらに「どうしてこうなった」という定型句が、虚しくエコーし続けていた。

 

 

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