進撃の巨人の世界に15m級の無垢(?)の巨人として転生してしまった……   作:感謝君

162 / 165
第百六十一話

状況を整理しよう。

 

 

まず、現在進行形で俺の腹の上に跨り、完璧なマウントポジションを維持しているこの絶世の美少女についてだ。

 

 

 

腰まで届く美しい鈍色の金髪を揺らし、少しあどけなさが残る端正な顔立ちをした彼女は、どう見てもあの『道』にいた幼い少女が順調に成長した理想的な姿そのものである。

 

 

 

しかも、その女性特有の柔らかさと丸みを兼ね備えた極上のプロポーション、とりわけ豊かな胸を俺の顔面に押し付け、愛情という名の物理的窒息死を本気で狙ってきている。

 

 

 

うん、やっぱり意味不明だ、なんだこれ。

 

 

 

どうやって肉体を得た?

 

 

 

どうやって現実世界に顕現した?

 

 

 

どうやってあの座標の樹がそびえ立つ『道』の空間を抜け出した?

 

 

 

というか、最高管理者であるユミルがいない状態であっちの『道』は大丈夫なのか?

 

 

 

俺の元・男子大学生の脳髄は、目前で起きている怪奇現象───いや、神話的バグを前にして、疑問符で埋め尽くされてパンク寸前だった。

 

 

 

一度、落ち着いて過去を振り返ろう。

 

 

 

発端は、俺が地下礼拝堂で気絶したフリーダに触れ、彼女を縛る『不戦の契り』と『十三年の呪い』をハッキングによって強制解呪しようとした瞬間のことだ。

 

 

 

強固なシステムに干渉した結果、俺の意識は逆に、始祖ユミルが管理する『道』の空間へと引き摺り込まれてしまった。

 

 

 

最初はうんともすんとも反応せず、無言で砂を弄るだけだった始祖の少女。

 

 

 

だが、俺が一方的に前世のオタク趣味を垂れ流したり、隣に座って一緒に砂をこねこねして歪な巨人のパーツを生成し手伝い続けたことで、彼女は徐々に人間らしい自我と感情を取り戻していった。

 

 

それから暫くして、俺はユミルに砂を使って文字を教えた。

 

 

エルディア語ではなく、俺の母語である『日本語』で。

 

 

理由は単純

 

 

 

語彙力と表現力が圧倒的に豊かな日本語を教える事で、より深く、より正確に彼女とコミュニケーションを取りたかった為だ。

 

 

 

だが、それがすべての歯車を狂わせる決定打となった。

 

 

 

俺が果てしない時間の中でオタク趣味を垂れ流していた過程で、お嬢様学校を舞台にした『スール制度(姉妹百合)』の概念を完璧にトレースし、思想を再構築されてしまったユミルは、俺の事を『アトラスお姉様』と呼び、お姉様大好きっ娘として完全に定着してしまったのである。

 

 

そこから先は、俺の体感時間にして数百年、もしくは数千年間。

 

 

 

俺はユミルにとっての完璧な「お姉様」として、銀色の砂漠で果てしなく姉妹百合のイチャイチャ空間に興じていた。

 

 

うん、思い返してみても中々意味不明だ。

 

 

 

原作勢がこの事実を知ったら、間違いなく泡を吹いて卒倒するだろうな。

 

 

血みどろのダークファンタジーから、ジャンルが急カーブで変わり過ぎだろって。

 

 

 

俺自身も心底そう思う。

 

 

 

そして、別れの時

 

俺が本来の目的────現実世界で仲間が待っていることを思い出し、帰らないといけないことを告げた瞬間、ユミルは泣き喚きながら激しく俺を引き止めた。

 

 

 

だが、俺の意志の固さに最終的には折れ、呪いの解除と始祖の力を俺の独自の『道』へ移動させることに、渋々ながら同意してくれたのだ。

 

 

 

すべてが終わり、俺の意識が白んで現実世界に戻ろうとした、まさにその一瞬。

 

 

 

俺はこの妹に不意打ちのキスをされ、「ふぇぇぇ!?」と情けない悲鳴と赤面を晒しながら、現実世界へと弾き出されたのだった。

 

 

 

 

……そして、現在に至る

 

 

 

「アトラスお姉様、好きー!」

 

 

甘ったるい声と共に、美少女ボディである俺の首元に顔を深く埋めながら、ユミルが至近距離で愛の宣言をしてくる。

 

 

 

……ユミル、ついに声を出して流暢に話せるようになったんだね、良かったね……

 

 

 

あと、感動の再会なのは分かるんだけど、しれっと俺の首筋を甘噛みして啄むのやめようか。

 

 

 

めちゃくちゃ危ない(えっちな)気分になるし、なにより俺の理性が超絶美少女のフェロモンに耐えきれなくなるから。

 

 

 

パニックになりかけた思考を強制的にシャットダウンし、俺はすべてを悟った僧侶のような

 

 

 

あるいは、すべてを受け入れる女神のような慈愛の表情を顔面に張り付けた。

 

 

「うん、よくわかんないけど、何とかなるよね……私も好きだよ、ユミル」

 

 

俺は半ばヤケクソで現実逃避しつつ、胸元にすり寄る彼女の柔らかい金髪を優しく撫でた。

 

 

 

 

─────ドサッ……

 

 

 

その時、リビングの入り口、部屋の奥から何か重い物が床に滑り落ちたような鈍い音が響いた。

 

 

 

 

ピタリと動きを止め、俺がソファに寝転がったまま顔を横に向けると……

 

 

 

 

そこには、大量の夕飯の買い出し袋を床に落とし、瞳から一切の光が消え失せ、絶望と凄まじい嫉妬で顔をどす黒く染め上げたリーシェが立ち尽くしていた。

 

 

 

 

そして彼女の背後には、買い物中に偶然合流したのだろう。

 

 

 

シガンシナ区での長きに渡る交流を経てリーシェが「第二の家族」とまで呼ぶようになったイェーガー一家──グリシャさんとカルラさん、エレン、さらにはミカサとアルミンの姿が勢揃いしていた。

 

 

 

「……アトラスが…………浮気してる……」

 

 

地獄の底から響くような、絶対零度の声。

 

 

 

 

リーシェが纏う、窓ガラスが軋むほどの国家滅亡レベルの殺気がリビングの空気を一瞬で凍結させる。

 

 

 

 

アトラス以外の命の価値はゼロという彼女の狂気的な独占欲とメンヘラ気質が、限界突破で爆発しようとしていた。

 

 

 

 

そんな硬直した修羅場の空気の中、ただ一人、別のベクトルで狂気に呑まれている少年がいた。

 

 

 

 

「…寝とられ百合……なるほど…神聖なるユートピアへの異物の介入……次の作品のテーマはこれでいくか……」

 

 

 

 

10歳のエレン・イェーガー少年である。

 

 

 

 

彼は初恋を粉砕されて以来、俺とリーシェの百合空間を後世に残すことに執念を燃やす『天才百合絵師』として完全に覚醒しており、この絶望的な修羅場を前にしてもなお、ブツブツと呟きながら手元のスケッチブックに猛烈な勢いでメモを取っていた。

 

 

 

相変わらず、勉強(百合)熱心なことだ。

 

 

 

(あー……もう滅茶苦茶だよ)

 

 

 

俺は、首筋に吸い付く神様と、今にも虚空から刃を抜きそうなリーシェと、スケッチをする未来の天才画家ことエレン少年を視界に収めながら、ただ静かに天井を仰ぎ見て、心の中で血の涙を流した。

 

 

 

 

R-18な回って需要ある?

  • ある
  • ない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。