進撃の巨人の世界に15m級の無垢(?)の巨人として転生してしまった……   作:感謝君

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第百六十四話

寝室の柔らかなランプの光が、この残酷な世界で私が唯一愛してやまない、私の女神であり最愛の伴侶の寝顔を優しく照らし出していた。

 

 

 

アトラスは、薄く透けた純白のワンピースを身にまとい、ベッドの上でうつ伏せになって泥のように眠っている。

 

 

 

お風呂上がりでほんのりと桜色に火照った白い肌が、薄い生地越しに艶かしく透けて見える。

 

 

 

規則正しい寝息に合わせて上下する華奢な背中。

 

 

 

そして、乱れたワンピースの裾からは、なめらかで吸い付くような太ももの絶対領域が惜しげもなく覗いていた。

 

 

 

神が黄金比を用いて設計したかのような、扇情的な美の極致。

 

 

 

今日一日、私とあの「妹」からの激しすぎるスキンシップの猛攻に翻弄され、羞恥心と体力の限界を突破してしまったのだろう。

 

 

 

いくら安全な我が家の中とはいえ、こんなにも無防備な姿を晒すなんて、本当に自分の魅力に無自覚すぎる。

 

 

(……可愛い。今すぐこのまま押し倒してしまいたいけれど……今日はいっぱい泣かせてしまったから、我慢してあげる)

 

 

私はそっと彼女の頬に落ちる黒髪を撫で、柔らかなキスを一つ落とすと、アトラスを起こさないように静かに寝室の扉を閉じた。

 

 

 

薄暗い廊下を抜け、リビングに向かう。

 

 

 

そこには、もう一人の「規格外のバグ」が我が物顔で鎮座していた。

 

 

 

テーブルの上に置かれた小さな器を前に、目をキラキラと輝かせながら銀の匙を動かしている少女。

 

 

 

鈍色の金髪を背中まで長く伸ばし、少しあどけなさが残る端正な顔立ちをした彼女は、アトラスが教えてくれたレシピ──デザートであるプリンを夜食として幸せそうに舌鼓を打っていた。

 

 

自称・アトラスの妹にして、エルディア人の起源。

 

 

始祖ユミルである。

 

 

私は彼女の向かいの席に、ふわりと腰を下ろした。

 

 

「こんな時間に食べてたら太るわよ」

 

 

私が腕を組みながら呆れた顔で告げると、彼女は匙をくわえたまま小首を傾げた。

 

 

「この肉体は姿が完全固定されてるから大丈夫だよ?」

 

 

事も無げに微笑みながら、恐ろし反則設定を口にする。

 

 

「…どういう原理よ…………」

 

 

私が思わずこめかみを押さえると、ユミルは嬉しそうに身を乗り出してきた。

 

 

「『道』で作った、詳しく説明しよっか?」

 

 

(『道』って……)

 

グリシャの話によれば、すべてのユミルの民の魂を繋ぐ、もっとこう、壮大で神聖な何かの筈なのに。

 

 

この娘が言うと、まるでお手軽な器具や粘土細工か何かのように、一気に世俗的になるわね。

 

 

「…遠慮しとく」

 

話が長くなりそうだった為、私はきっぱりと断った。

 

 

それに、『道』のシステムの複雑怪奇さは、説明されても私の頭では到底理解できないだろう。

 

 

「そう?……んふふ、おいしいー」

 

 

ユミルは特に気にした様子もなく、再びプリンへと意識を戻す。

 

 

ほんと……

 

あの地下礼拝堂での出来事を思い出すと、今でも胸が締め付けられるような恐怖と、それと同等以上の理不尽な呆れが湧き上がってくる。

 

 

アトラスがフリーダにかけられた呪いを解除した直後。

 

 

 

彼女は突然、鼓膜を劈くような絶叫を上げ、激痛に打ち震えてクリスタルの床をのたうち回った。

 

 

 

美しい顔からは鮮血が滴り、その瞳からは滝のように涙が溢れ出していた。

 

 

 

私はあの時、心臓が止まるかと思うほど絶望した。

 

 

 

私の世界のすべてである彼女が、未知の呪いか解呪の反動によって壊れてしまったのではないかと、気が狂いそうになったのだ。

 

 

 

なのに……

 

 

まさかその激痛と鼻血の原因が、目の前で呑気にプリンを食べているこの娘と、数千年以上にわたって『道』という精神世界でイチャコラしていた「姉妹百合」の記憶の濁流を、現実の脳内に一気に流し込まれて処理落ちしていただけだったなんて……

 

 

 

あの時の、私の身を引き裂かれるような心配と涙を返して欲しいわ…全く……

 

 

 

アトラスが目覚めてからその真相をユミルの口から嬉々として聞かされた時の、私の脱力感といったらなかった。

 

 

……でも

 

 

それがあったから。

 

 

その理不尽な記憶の統合と、この自称妹の受肉という規格外の現象があったからこそ。

 

 

今日、私はこうして、アトラスの甘い唇を白昼堂々と味わうことができた。

 

 

 

お風呂場では、あの扇情的な美の極地であるアトラスのありのままの姿を、隅から隅まで目に焼き付け、思う存分に触れることが出来たのだ。

 

 

 

アトラスは自身の美しさに無自覚な上に、元々の性別への執着や羞恥心が邪魔をして、私とのスキンシップにはどこか及び腰だった。

 

 

 

私がどれだけ求めても、最後の一線は巧みにはぐらかされてきた。

 

 

 

だが、今日は違った。

 

 

この「アトラスの妹」を自称するユミルが、恥じらいも遠慮もなくアトラスに猛アタックを仕掛けたことで、現場はなし崩し的にカオスと化した。

 

 

 

結果論でしかないけれど。

 

 

この娘が積極的だったからこそ、私も「妹に負けていられない」「妹の暴走を止める」という大義名分を盾にして、アトラスに直接触れる良い口実が出来たのだ。

 

 

 

あの滑らかで吸い付くような白い肌。

 

 

 

耳まで真っ赤にして抗議する甘い声。恥じらいに潤んだ瞳。

 

 

 

思い出すだけで、身体の奥が甘く熱くなる。

 

 

 

絶対に直接この娘に言うことは無いだろうけど……正直、感謝してる。

 

 

 

そんな私の内心の葛藤と官能的な回想など知る由もなく、ユミルは器の底についたカラメルを幸せそうに掬い取っている。

 

 

 

「ところでそのプリン私のなんだけど」

 

 

私が冷ややかな声で指摘すると、ユミルはピタリと動きを止めた。

 

 

「そうなんだ!とっても美味しいよ!」

 

 

悪びれる様子など微塵もなく、満面の笑みで返してくる。

 

 

「そう…ならいいわ」

 

 

絶妙に噛み合わない返答に完全に呆れ果て、私はため息をついて、そのまま美味しそうにプリンを食べるユミルを黙って眺めることにした。

 

 

「んふぅ〜おいひい〜!」

 

 

ほっぺたを落とさんばかりの笑顔。

 

 

 

その姿は、『道』で永遠にも等しい間、王の奴隷としてたった独りで巨人をこね続けてきた神様とは到底思えない、ただの年相応の無邪気な少女だった。

 

 

 

アトラスに救われた者同士だからだろうか。

 

 

 

私はこの娘に、妙な親近感を覚えているのだろう。

 

 

 

この娘がアトラスとイチャイチャしていても、もちろん嫉妬はするし全力で張り合いもするけれど、不思議と「排除しなければならない」というような、ドロドロとした不快感はないのだ。

 

 

 

むしろ、同じ女神を崇拝する「同志」のような、奇妙な連帯感すら感じ始めている自分がいる。

 

 

 

最後の一口を飲み込み、スプーンを咥えて幸せそうに目を細める彼女を見つめながら。

 

 

 

私は呆れたように、けれど決して冷たくはない声で、ポツリと呟いた。

 

 

「……ほんと、不思議な娘……」

 

 

 

 




第百六十五話のリンクです。

https://syosetu.org/novel/415498/

描写がR-15の範囲を超えているので読む際はご注意ください。
m(_ _)m

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