進撃の巨人の世界に15m級の無垢(?)の巨人として転生してしまった……   作:感謝君

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第百六十五話の続きです。
前話は第百六十四話のあとがきにリンクを貼っていますので、まだ読まれていないえっちぃの大丈夫という方は読むことを推奨します。






第百六十六話

 

 

 

俺の、羞恥と涙に濡れたせめてもの抵抗としての「……バカっ!」という罵倒。

 

 

しかし、それは完全に逆効果だった。

 

 

限界まで理性を吹き飛ばした猛獣たちにとって、弱り切った獲物のそのか細い鳴き声は、彼女らの情欲の炎に大量の油を注ぐだけの結果にしかならなかったのだ。

 

 

「あぁ……っ、お姉様、そんな顔しないで……もっと虐めたくなっちゃう……」

 

「アトラス……駄目よ、そんなに可愛く泣いたら……私、もう抑えられない……」

 

左右から、さらにねっとりとした熱を帯びた視線と手が伸びてくる。

 

 

ユミルが俺のセーラー服の裾をさらに捲り上げようとし、リーシェが再び俺の唇を塞ごうと顔を近づけてきた、まさにその時だった。

 

 

コンコンコン

 

シガンシナ区ののどかな午後の空気を震わせるように、家の扉を叩く軽快な音がリビングに響き渡った。

 

 

「ッ……!?」

「あ……」

不意の来客音に、二人の動きがピタリと止まる。

 

俺は、これを天から差し伸べられた蜘蛛の糸、いや、絶対絶命の窮地を救う神の福音だと直感した。

 

 

「はーい! い、今開けますね!」

 

 

俺は二人の拘束が緩んだその一瞬の隙を突き、椅子から弾かれたように立ち上がった。

 

 

 

そして、これ幸いにと救世主のもとへ駆け込むが如く、玄関に向かって猛ダッシュしたのだ。

 

 

 

だが、パニック状態にあった俺の脳内は、致命的な確認事項を完全にすっ飛ばしていた。

 

 

 

乱れた服を整えること。

 

 

 

そして何より、自身が現在『どれだけ扇情的で、この時代背景(845年の壁内文明)を考慮したらあり得ないほど先進的で破廉恥な衣装』を身にまとっているかという、絶対的な事実を。

 

 

ガチャリ、と勢いよく扉を開け放つ。

 

 

 

「お邪魔します! 今日も絵のモデル、よ……ろし……く……」

 

 

そこに立っていたのは、スケッチブックと真新しい画材セットが入った鞄を肩にかけた、将来天才百合絵師として約束された未来に突き進む──エレン・イェーガー少年だった。

 

 

 

元気よく挨拶をしながら顔を上げた彼の声は、俺の姿を視界に収めた瞬間、まるでゼンマイが切れたおもちゃのように段々と細くなっていき。

 

 

 

最後には、ただでさえ大きいそのエメラルドグリーンの瞳を、限界までさらに大きく、見開いたのだ。

 

 

 

ここで、現在の俺の状況を、極めて客観的に整理しよう。

 

 

 

俺はつい十数秒前まで、リビングの椅子の上でリーシェとユミルに前後を抑え込まれ、限界突破の羞恥と快楽に身を包まれていた。

 

 

 

息は上がり、顔は首の先まで林檎のように紅潮し、ミステリアスなアイスブルーの瞳には、抗えなかった証拠である薄らとした涙の雫が溜まっているだろう。

 

 

 

口元には、つい先程までリーシェとディープキスを交わしていた名残の艶が、いやらしく光っているかもしれない。

 

 

 

全身から、ただならぬ色香と、事後のような甘いフェロモンをこれでもかと放ちまくっている状態だ。

 

 

 

その上、現在俺が身にまとっているのは、凡そ人様の前に出せないような、極めて扇情的な衣装である。

 

 

 

丈が短く、動くたびに白い太ももと絶対領域を惜しげもなく晒すプリーツスカート。

 

 

 

そして身を屈めても尚、この魅惑的で白く柔らかなお腹とくびれが丸見えになってしまう、へそ出し仕様のセーラー服のトップス。

 

 

 

ただでさえ神が黄金比で形造られたかのような超絶美少女ボディである。

 

 

 

そんな女が、壁内人類にとって「未知の概念」である異世界のフェティッシュな衣装を着て、涙目で、顔を真っ赤にして玄関から飛び出してきたのだ。

 

 

 

よって、導き出される結果は、たった一つしかない。

 

 

「…………ぁ……」

 

バタンッ

 

 

エレン少年は、完全に白目を剥きながら、糸の切れた操り人形のように膝から崩れ落ち、玄関先の石畳に倒れ伏して完全に気絶した。

 

 

無理もない。

 

 

その比類なき絶世の美少女が、言い知れぬ圧倒的な色香を放ちながら、この世界には存在しない先進的な衣装で極上の素肌を晒している姿。

 

 

 

それを至近距離で、一切の心の準備もなく直視してしまった純情な10歳の少年の脳髄では、到底処理しきれるものではなかったのだ。

 

 

 

未知の視覚情報と、致死量のフェロモンという情報の濁流に、彼の脳は遂に「エラー」を吐き出し、完全にフリーズ。

 

 

 

自身の精神を崩壊させないための防衛本能として、正常に動作させる為に一度電源を強制的に切るがごとく、意識を手放したのだった。

 

 

「……もう、やだぁ……」

 

 

俺は玄関の床に崩れ落ち、気絶したエレンの小さな身体を抱きとめながら、情けない声を上げてこの残酷な現実に悲嘆した。

 

 

 

俺の尊厳も、年上の元・男としての威厳も、何もかもが粉々に砕け散っていく。

 

 

俺は隠すこともせず、ぽろぽろと大粒の涙をこぼし、しくしくと泣き崩れた。

 

 

「あっ……」

 

「お姉様……」

 

 

背後のリビングから、遅れて玄関にやってきたリーシェとユミルが、その惨状を目の当たりにして息を呑む気配がした。

 

 

床に座り込んでエレンを抱きしめながら、本気で泣きじゃくっている俺の姿を見て、流石に自分たちが「やり過ぎた」と悟ったのだろう。

 

 

二人の纏っていた情欲のオーラが一気に霧散し、代わりにひどく焦ったような、申し訳なさそうな声が俺の背中に降ってきた。

 

 

「ごめんなさい、アトラス……その……欲望に抗いきれなくって……」

 

 

「ごめんね、お姉様……私、お姉様が可愛すぎて、つい……」

 

 

普段なら、俺はここでお人好しの性格を発揮して「もう、次からは気をつけてね」と苦笑いしながら許してしまうところだ。

 

 

だが、今日ばかりは違った。

 

 

 

俺は泣き顔を拭いもせず、二人の謝罪に一切の返事を返すことなく立ち上がった。

 

 

 

そして、圧縮された巨人の膂力を無意識に使い、気絶したエレンを羽毛のように軽く抱き抱えると、無言のままリビングを横切り、俺がいつも惰眠を貪るときに使っているふかふかのソファーへと彼を優しく寝かせた。

 

 

 

その間、俺は一切、二人と目を合わせなかった。

 

 

 

少しムッとした、明確な「怒り」の表情を顔に張り付けたまま、俺はリビングの奥にある寝室へと向かう。

 

 

「アトラス……?」

 

 

「お姉様、あの……」

 

 

戸惑う二人の声に耳も傾けず、俺は寝室の扉を開け、中に入ると。

 

 

────バタンッ!!!

 

 

家全体が揺れるほどの、これまでにない大きな音を立てて扉を閉め、そのままガチャリと、内側から厳重に鍵を閉めたのだ。

 

 

流石に、今回のは明確な「ライン越え」だ。

 

 

いくら俺が前世の男の感覚を引きずっていて、美少女同士のスキンシップにどこか甘えがあり、断りきれない俺自身にも問題があるのは重々承知している。

 

 

だが、それでもアレはやり過ぎだと思う。

 

 

朝から晩まで休むことなく弄られ、市街のド真ん中で公開処刑(ほっぺチュー)され、風呂場で襲われ、挙句の果てにはこの破廉恥な衣装で来客(しかも純情な子供)の脳を破壊する羽目になってしまった。

 

 

これ以上、彼女たちの暴走を野放しにするわけにはいかない。

 

 

少し、彼女らの頭を物理的に冷やさせる機会を作るためにも、今は距離を置くことにしたのだ。

 

 

俺だって、怒る時はちゃんと怒るんだぞ、という意思表示である。

 

 

ベッドに歩み寄り、俺はそのままシーツの上にバフッと突っ伏した。

 

 

鍵の掛かった扉の向こうからは、初めて見る俺の「本気の怒り顔」と「露骨な拒絶」に、内心穏やかじゃないだろう彼女たちの慌てふためく声が、微かに、しかし確かに聞こえてきた。

 

 

「リーシェ、どうしよう……! お姉様が、本気で怒っちゃったよぉ……!」

 

 

いつもは余裕たっぷりで俺をからかってくるユミルが、今にも泣き出しそうな、すっかりパニックに陥った声でリーシェにすがりついているのが分かる。

 

 

「……えぇ……そうね……しまったわ………」

 

 

対するリーシェの声も、かつてないほどに動揺し、震えていた。

 

 

「私としたことが……アトラスに嫌われるような真似を……っ。どうしよう、どうやって謝れば……」

 

 

人類最強の鬼神たる調査兵団の特別班長が、扉一枚を隔てて、この世の終わりのような後悔の念に苛まれている。

 

 

少し可哀想な気もするが、ここは心を鬼にしなければならない。

 

 

 

今許してしまえば、俺の貞操と羞恥心は完全に彼女たちのオモチャとして蹂躙され続ける未来しか待っていないのだから。

 

 

 

「……はぁ……」

 

 

俺はクッションに顔を埋め、深く、ひどく疲労したため息を吐き出した。

 

 

 

とりあえず、あの純情なエレン少年が意識を取り戻し、安全に家へと帰っていくまでは。

 

 

 

そして、リビングの二人の頭が完全に冷えて、正座で反省の態度を示すまでは。

 

 

 

俺はこのまま、寝室のベッドで絶対に外に出ない『引きこもり』を貫き通すことを、固く心に誓うのだった。

 

 

 

 

 

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