進撃の巨人の世界に15m級の無垢(?)の巨人として転生してしまった……   作:感謝君

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ゾンビパンデミックもの書いてみました。
お口直しに良ければどうぞ。
https://syosetu.org/novel/417913/






第百九十六話

 

 

 

眩い冬の陽光が、視界を真っ白に染め上げた。

 

 

 

一段、また一段と、重厚な木製の階段を踏みしめ、最上段へ。 特設舞台の壇上へと足を踏み入れた瞬間、俺の全身を容赦なく襲ったのは、文字通り物理的な質量を持ったかのような、圧倒的な「圧」だった。

 

 

「…………っ」

 

 

純白の仮面の奥で、俺の喉がゴクリと乾いた音を鳴らす。

 

 

眼下に広がるのは、地平線の彼方まで、途切れることなく文字通り地面を黒々と埋め尽くす、数万、数十万という途方もない数の人間の群れ。

 

 

平民、商人、貴族の生き残り、そして各兵団の兵士たち。 壁内全土からオルブド区へと押し寄せた、あらゆる階級の民衆が、今か今かと俺たちの登場を待ちわび、ひしめき合っている。

 

 

 

前世の記憶で、何万人も収容するスタジアムや大型フェスの光景くらいは映像で見たことがあった。

 

 

だが、そんなものは比較の対象にすらならない。 本物の、今日この日に己の「生存と常識のすべて」を懸けた人間たちの、執念と、熱気と、極限の恐怖が渦巻くこの光景は、完全に別次元の畏怖を孕んでいた。

 

 

冷たく乾いた冬の平原の空気の中で、数十万人が一斉に吐き出す白い息。

 

 

それが幾重にも重なり合い、うごめき、まるで平原そのものが一つの巨大な生き物となって、深く重い吐息を漏らしているかのように感じられる。

 

 

 

凡そ数十万人分の視線という、目に見えない凶器のようなプレッシャーが、一斉に舞台上の俺たちへと突き刺さってきた。

 

 

(……やばい。足が、震えそうだ……っ)

 

 

俺は、神が黄金比で設計したこの超絶美少女ボディの膝が、元・小市民としてのメンタルの弱さから微かに震えそうになるのを、奥歯を噛み締めて必死に堪えた。

 

 

 

いくら俺が半径10キロを吹き飛ばす規格外の力を持っていようとも、この無数の『人間の感情の渦』の前に晒されるのは、巨人の群れを相手にするよりもよほど恐ろしい。

 

 

その時だった。

 

 

スッ……と。 俺の右手が、温かく滑らかな布地越しに、そっと握り込まれた。

 

 

驚いて横を向くと、純白の法衣に身を包んだリーシェが、仮面の下で『大丈夫、私がいるわ』とでも言うように、静かに、しかし絶対の信頼を込めて俺の手を握り締めていたのだ。

 

 

 

さらに左側からは、キュッ、と、俺の法衣の袖口を小さな手が引く感覚があった。

 

 

ユミルだ。彼女は俺の左腕に自身の腕を絡ませ、ぴたりと身体を密着させて、その柔らかな体温を俺に分け与えてくれている。

 

 

右に、人類最強の鬼神たるリーシェ。 左に、二千年の神話の創造主たるユミル。

 

 

二人の、愛おしくて堪らない確かな体温と温もりが。

 

 

プレッシャーで押し潰されそうになっていた俺の理性を、すんでのところでかろうじて繋ぎ止めてくれた。

 

 

(……ありがとう、リーシェ、ユミル。そうだ、俺は一人じゃないんだ)

 

 

俺は大きく深呼吸をし、震えを完全に抑え込んだ。 背筋を伸ばし、三柱の女神の中心として、堂々と前を見据える。

 

 

俺たちの数歩前を歩むエルヴィン団長は、この数十万人の殺気にも似た視線を全身に浴びながらも、一切の動揺を見せることなく、その広い背中だけで民衆を圧倒するような毅然としたオーラを放ち、所定の位置へと付いた。

 

 

彼もまた、この一週間、胃に穴が開くほどの重圧に耐え抜き、この盤面を整え上げたのだ。俺がここで怯気づくわけにはいかない。

 

 

 

そして。 分厚い教典を両手で高く掲げ、真っ白な法衣に身を包んだニック大司教が、ゆっくりと舞台の最前面へと進み出た。

 

 

「静粛に──ッ!!」

 

 

ニック大司教の低く、しかし驚くほどよく通る声が、ハンジさんが急造した巨大な固定式拡声器を通じて、冷たく澄んだオルブド区の空気をビリビリと震わせた。

 

 

 

その一喝の威力は絶大だった。 地鳴りのようだった数十万人のざわめきが、まるで巨大な刃で水を打たれたように、一瞬にして完全に静まり返ったのだ。

 

 

すべての音が消え、ただ冬の風の音だけが吹き抜ける。 すべての人間が、息を呑んで大司教の次の一言を待っていた。

 

 

「壁内人類の同胞たちよ! 今日、我々はただの歴史の目撃者ではない! 新たなる時代の夜明けを告げる『神話』の当事者となるのだ!」

 

 

厳格で、それでいて不思議なほどに耳に染み渡り、人々の心の奥底に直接語りかけるようなニック大司教の演説が、平原に響き渡る。

 

 

 

かつて、壁の真実を隠蔽するために民衆に偽りの祈りを捧げさせた男。

 

 

だが、今の彼の声には、愛娘を想う一人の父親としての覚悟と、壁内人類を真の救済へと導くという、強烈な使命感が宿っていた。

 

 

ニック大司教は劇的な手振りを伴いながら、ゆっくりと背後を振り返り、舞台の中央に立つ俺たち三柱を仰々しく、そしてこの上ない畏敬の念を込めて指し示した。

 

 

「見よ! 我らが新エルディア帝国を導き、迷える民に慈悲の手を差し伸べる、大いなる三柱の守護神であらせられるぞ!」

 

 

ニック大司教が、俺たちに向かって、これ以上ないほど深く、そして神に平伏するかのように頭を下げた。

 

 

そのまま彼は、主役の座を明け渡すように、静かに舞台の端へと捌けていく。

 

 

ついに、来た。 民衆の期待と興奮、そして「本当に神など存在するのか」という強烈な疑念が混ざり合った数十万の視線が、最高潮の熱量を持って俺たちへと集中した。

 

 

(よし……いくぞ)

 

 

心の中でそう呟くと同時に。 俺は、右のリーシェ、左のユミルと、完璧に呼吸を合わせ、顔を覆っていた純白の仮面へと、ゆっくりと両手をかけた。

 

 

そして、仮面を上へと持ち上げ、ゆっくりと外す。

 

 

「─────────ッ!?」

 

 

その瞬間。 最前列に陣取っていた民衆から順に、文字通り「息が止まる音」が波のように伝播していくのが、壇上の俺の耳にもはっきりと届いた。

 

 

冬の澄んだ陽光に、俺たちの素顔が照らし出される。

 

 

数日前の新聞の一面をデカデカと飾り、壁内全土に狂信的な衝撃を与えた、エレン・イェーガー作のあの『宗教画』。

 

 

だが、本物の俺たちが放つ圧倒的な「生きた美」は、あの天才的な絵画すらも遥かに凌駕していた。

 

 

陽の光を浴びて神聖にきらめく、それぞれの髪色。

 

 

冷徹なまでに完成された、氷の彫刻のように美しいアイスブルーの瞳を持つリーシェの金髪。

 

 

 

悠久の時を感じさせる、無垢で神秘的な可憐さを湛えるユミルの鈍色の金髪。

 

 

そして、その中央で。 あどけなさと、人知を超えた神性を同時に漂わせる俺の、絹糸のような漆黒の黒髪と、黄金比の超絶美少女フェイス。

 

 

誰一人として、言葉を発することができない。 歓声すら上がらない。

 

 

数十万の民衆はただ、その圧倒的な美の暴力と、俺たち三柱から放たれる尋常ならざる存在感に完全に気圧され、本物の神の顕現を前にして裁きを待つ罪人のように、ただ呆然と立ち尽くしていた。

 

 

 

完璧な静寂。 これ以上ない、奇跡を証明するための最高の舞台(お膳立て)だ。

 

 

俺は内心の残った緊張を分厚い理性の底へと完璧に覆い隠し、ただ静かに、俺たちの正面にそびえ立つ、オルブド区の巨大な外壁へと視線を向けた。

 

 

隣の二人もまた、俺に呼応するように、鋭く、そして慈悲深い眼差しを壁へと定める。

 

 

俺たちは同時に、法衣の袖からその白く、しなやかな腕を、巨大な壁に向かって真っ直ぐに突き出した。

 

 

「──顕れよ」

 

 

俺が、この劇的な演出効果を最大限に高めるため、意識して鈴を転がした様な、可憐で透き通るような美しい声で発した、その瞬間。

 

 

 

パキィィィン─────────ッ!!!

 

 

 

空間そのものを物理的に切り裂くような、硬質化特有の硬く、そしてガラス細工のように美しい音が、静寂の平原に高く響き渡った。

 

 

 

俺の突き出した腕から放たれたのは、破壊の力ではない。 陽光を反射して七色に輝く、無数のまばゆい『クリスタルの粒子』だ。

 

 

 

──────シャラララララ……ッ!

 

 

きらめく光の粉が、突風に煽られるようにして、オルブド区の巨大な外壁の表面へと一気に押し寄せていく。

 

 

 

「おおぉ……っ……!」 「光が……壁を……!」

 

 

 

そのあまりにも幻想的で、魔法のような美しさに、民衆が我を忘れて目を奪われている間に。

 

 

 

光の粒子は壁の表面を覆い尽くし、まるで巨大な半透明のクリスタルの保護膜となって、何百メートルにも及ぶ壁全体を、優しく、そして強固に包み込んでいった。

 

 

これは、単なる見せ掛けの奇跡(パフォーマンス)ではない。

 

 

これからユミルの力で壁の硬質化が解除され、巨人が崩れ落ちる際、大量に飛び散るであろう岩盤の破片が、足元の街や、周囲を警備する兵士たち、そして民衆に牙を剥かないようにするための、俺なりの精密な防護策だった。

 

 

 

だが、何も知らない民衆からすれば、それは完全に神の御業以外の何物でもない。

 

 

彼らはその超常的な光の奔流に、ただただ言葉を失い、両手を組んで天を仰いでいる。

 

 

場が、完全に「三神教」の空気へと支配された。 それを見計らい、俺の左隣で、ユミルが小さく、力強く頷いた。

 

 

仮面を外した彼女の、桜色の唇が静かに動く。

 

 

「『始祖』の力よ、解き放たれよ」

 

 

 

その可憐な声は、拡声器を通さずとも、不思議と平原にいるすべてのエルディア人の脳内へと直接響いた。

 

 

 

──────ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……ッ!!!

 

 

 

次の瞬間、大地が、世界そのものが怯えるように悲鳴を上げた。

 

 

 

オルブド区の外壁を構成していた、百年間微動だにせず人類を守り続けてきた巨大な岩盤。

 

 

その「硬質化」が、始祖ユミルの合図とともに、一斉に、何百メートルという広範囲にわたって強制解除されたのだ。

 

 

 

──────バリバリバリッ! ズドドドォォォォンッ!!

 

 

 

耳を劈くような轟音と共に、壁の表皮であった岩盤が次々と剥がれ落ち、俺が展開したクリスタルの保護膜の内側へと崩れ落ちていく。

 

 

そして、剥がれ落ちた岩盤の奥から、遂にその『正体』が露わになっていく。

 

 

「あ……」 「嘘、だろ……」

 

 

民衆の顔から、一瞬にしてすべての血の気が引いた。

 

 

そこに姿を現したのは───筋肉の繊維が剥き出しになった、巨大な眼窩。

 

 

皮膚のない、赤黒い筋肉の塊。 原作で、人類を幾度となく絶望のどん底に叩き落とした、あの『超大型巨人』の巨大な顔面と、おぞましい肉体だった。

 

 

百年間、自分たちを守ってくれていた神聖な壁の中身が、自分たちを食い殺してきた『巨人』そのものであったという、究極の絶望。

 

 

「ひ、巨人が……!!」 「壁の中から、巨人が出てきたぞおぉぉっ!!」 「嫌だぁぁぁ! 逃げろ! 食われるぞッ!!」

 

 

一瞬にして、数万の群衆の間に、理性を完全に失った狂気的な恐慌(パニック)が広がりかけた。 泣き叫び、隣の者を押しのけて逃げ惑おうとする人々の動き。

 

 

だが、それよりも早く。

 

 

──────シュアァァァァァァァァァァァァァァッ──!!!!

 

 

彼らの悲鳴を完全に掻き消すほどの凄まじい轟音と共に、剥き出しになった超大型巨人の身体全体から、爆発的な白い蒸気が一斉に噴き出した。

 

 

ブォォォォンッ!という熱波が保護膜の内側で荒れ狂う。

 

 

あまりにも濃密で莫大な蒸気の放出により、冬の太陽の光さえも完全に遮られ、平原の視界は一瞬にして真っ白な霧の世界へと変貌した。

 

 

「な、なんだ!? これは……蒸気だ!」 「中が見えない……っ!」

 

 

民衆が突然の白い闇と熱気に恐怖し、身をすくませて座り込む中。

 

 

 

蒸気の向こう側──俺のクリスタル保護膜の内側では、ユミルの『始祖』の権能が、完璧な精度で発動していた。

 

 

 

壁の中に囚われていた超大型巨人たち。

 

 

彼らの巨大な肉体が、急速に莫大な熱量と蒸気へと変換・分解されていく。

 

 

そして、その強靭な巨体の核に囚われていた『百年前の人間の肉体』が、巨人の呪縛から解放され、長い長い悪夢の眠りから目覚めていく。

 

 

俺は、保護膜の内側で巨人の肉体が完全に消失し、人間の生体反応だけが残ったのを自身の能力で正確に感知すると。

 

 

スッ……と右手を下ろし、壁を覆っていた七色のクリスタル保護膜を、静かに粒子化させて消滅させた。

 

 

──────ザァァァァ……ッ

 

 

やがて、冷たく乾いた冬の北風が、平原を覆い尽くしていた真っ白な蒸気の霧を、ゆっくりと、だが確実に吹き払っていく。

 

 

 

白から、元の冬晴れの青空へと視界が戻っていく。 霧が完全に晴れた、その先。

 

 

 

パニックと恐怖のあまり、地面にうずくまって固く目をつぶっていた民衆たちが、恐る恐る顔を上げ、視線を壁の方へと戻した時。

 

 

 

そこにあったのは────────

 

 

 

彼らを食い殺そうとしていた、超大型巨人の巨大なおぞましい姿など、影も形もなかった。

 

 

あるのは、壁の中身がすっぽりと抜け落ちた、ただの「空っぽになった壁の跡」だけ。

 

 

代わりに、崩れ落ちた壁の跡地の麓、駐屯兵団があらかじめ用意していた安全な緩衝地帯には。

 

 

衣服こそ朽ち果てているものの、ピクシス司令の指示で迅速に動いた兵士たちによって、素早く厚手の防寒着や毛布に包まれ、保護されていく。

 

 

紛れもない、無数の『人間たち』の姿があった。

 

 

 

「ここは……?」 「私は……一体……」

 

 

百年の眠りから覚め、混乱しながらも確実に息をして、自らの足で立ち上がろうとしている同胞たちの姿。

 

 

「あ……ああ……」 「本当に……人間に、戻った……?」 「巨人が……人間になったんだ……!!」

 

 

 

最前列の群衆の中から、誰かが震える声で、掠れた言葉を漏らした。

 

 

それが波紋のように広がり、数十万の民衆の目に、信じられない光景として突き刺さる。

 

 

巨人は、消えた。 人類の天敵であった悪魔は、本当に、俺たちの手によってただの『人間』へと戻されたのだ。

 

 

エルヴィン団長が語った真実。 そして、今目の前で起こった神話のような奇跡が、彼らの目の前で完全に現実のものとして証明された瞬間だった。

 

 

呆然自失となり、奇跡の余韻に全身を震わせ、涙を流してへたり込む民衆たち。

 

 

その極限の感情のうねりを逃さず。 再び、純白の法衣を翻し、ニック大司教が舞台の最前面へと力強く歩み出た。

 

 

「同胞たちよ! 己の目を疑うな! これこそが、現実だ!」

 

 

 

彼の声が、今度は絶望の警告ではなく、人類の夜明けを告げる勝利のファンファーレのように、澄み切った平原へと力強く響き渡る。

 

 

 

「これこそが、我らが新エルディア帝国の守護神の御力! 大いなる奇跡の姿である!!」

 

 

 

大司教の激しい演説に、民衆の身体がビクンと震え、誰もが彼の一挙手一投足に魂を鷲掴みにされたように釘付けになる。

 

 

 

「壁の中にいたのは怪物ではない! 百年前、外の世界の脅威から我らを守るために、自らの身を挺して人柱となってくれた、我らの大いなる祖先であり、尊き同胞なのだ!!」

 

 

 

プロパガンダの、完璧な総仕上げ。 恐怖の象徴であった壁の巨人を、『人類を守るために犠牲になった英雄(同胞)』へと一瞬にしてパラダイムシフトさせたのだ。

 

 

「彼らの百年の孤独と犠牲に報い、温かく迎え入れよ! そして、我らを導く三柱の神々の御下、この新エルディア帝国を、世界の何者にも脅かされることのない、並ぶもののない偉大な国家へと発展させるのだ!!」

 

 

 

静寂。 一拍の、肺の空気をすべて吸い込むようなタメの後。

 

 

 

 

「「「「おおおおおおおおおおおおおっ──!!!!」」」」

 

 

 

地と天を揺るがすような、凄まじい大歓声が爆発した。

 

 

 

それはもはや、先程のような恐怖の絶叫ではない。

 

 

 

過去の呪縛を打ち破り、絶望の象徴を希望へと変え、絶対的な神の加護を得たという、完全なる狂熱と歓喜の雄叫びだった。

 

 

 

数十万人の人間が上げる地鳴りのような歓声が、オルブド区の冷たい空を、どこまでも高く、力強く突き抜けていく。

 

 

涙を流して抱き合う者、天に向かって祈りを捧げる者、俺たち三柱に向かって狂信的なまでに手を差し伸べる者。

 

 

 

新エルディア帝国の、そして三神教の盤石な基盤が、今ここに完全に完成したのだ。

 

 

 

熱狂の渦と化す民衆の海を舞台の上から静かに見下ろしながら。

 

 

 

俺は、自身の右腕を恍惚とした表情でさらに強く抱きしめてくるリーシェの温もりと。

 

 

左腕で「えへへ、お姉様、大成功だね!」と無邪気に誇らしげに胸を張るユミルの柔らかな体温を感じていた。

 

 

(まずは第一歩……大成功、だな)

 

 

これでもう、この壁内の人類が、外の脅威に怯えて同士討ちをするような悲劇は起こらない。

 

 

 

彼らの労働力と、俺たちが導く力があれば、マーレはおろか世界とだって対等以上に渡り合える。

 

 

 

 

熱狂する民衆には決して見せない、一人の元男子大学生としての、心からの安堵と達成感に満ちた、小さな、小さな微笑みが浮かんでいた。

 

 

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