進撃の巨人の世界に15m級の無垢(?)の巨人として転生してしまった……   作:感謝君

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第二十一話

「私も、連れて行って」

凛とした、それでいてどこか懇願するようなその声が、静かな朝の森に響いた。

 

木漏れ日の下、濡れた金髪を輝かせながら真っ直ぐに俺を見上げてくるリーシェの瞳には、一切の迷いがなかった。

 

(ああ、やっぱりそう言うよな……)

 

俺は心の中で、小さく、けれど深く息を吐き出した。

 

彼女がこの安全なシェルターに大人しく引きこもっている柄ではないことくらい、昨晩の対話を経ていれば容易に想像がつく。

 

彼女がなぜ、死と隣り合わせの調査兵団に入ったのか。

 

壁という巨大な鳥籠の中で、誰かから与えられるだけの偽りの平和に甘んじるよりも、どれほど残酷であっても自分の目で本物の世界を見たかったからだ。

 

薄々勘付いていたのだ。

 

俺がどれほど安全性を説いて留まるように提案したところで、彼女はそれを払い除けて「ついていく」と言い張るだろうと。

 

だが、それでもここは「進撃の巨人」の世界だ。

 

無垢の巨人は、人類にとってただの獣や猛獣とは次元が違う。

 

少しでも油断したその瞬間、文字通りあっけなく命を落とす、絶対的な理不尽の象徴だ。

 

前世で読んでいた漫画やアニメでも、その圧倒的な暴力と恐怖は、トラウマになるほど嫌というほど描写されていた。

 

俺自身がその「理不尽」の側に立っているからといって、彼女の安全が100パーセント保証されるわけではない。

 

巨人の群れとの戦闘になれば、何が起こるか分からないのだ。

「……ふっ。リーシェならそう言うと思った」

 

俺は、今の心情をそのまま表情に出した。

 

巨人の端正な顔立ちが、呆れたような、それでいて彼女の揺るぎない芯の強さにどこか嬉しさを感じているような、ひどく複雑な形に歪む。

 

俺はゆっくりと片膝を突き、15メートルの視座を少しでも彼女の高さへと近づけた。

 

周囲の空気が、俺の巨体が動くことによる微かな風で揺れる。

「……分かっていると思うが」

俺は声を一段低く落とし、腹の底から響く重低音で、事実だけを静かに、そして重く告げた。

 

「ついて来るということは、死の危険、若しくは取り返しのつかない重傷を負う危険が常に付き纏うということだ。いくら私が君を守るつもりでも、戦場に絶対はない」

 

俺は彼女の青い瞳を真っ向から見据える。

「私としては、このままこの安全な場所で留まっていて欲しい。……だが、君が自分の足で外の世界を歩むと決めたその『意志』も、同じくらい尊重したいと思っている」

 

僅かな沈黙が二人の間に落ちる。

「本当に、ついて来るんだな?」

 

再度の確認。

 

それは脅しではなく、彼女の覚悟を試すためのものだった。

だが、リーシェは瞬き一つしなかった。

 

「うん」

彼女は力強く頷いた。

 

「私が足手まといになるのは分かってる。昨日みたいにガスも刃も満足にない状態じゃ、戦力にはなれないことも。……それでも、お願い。私を連れて行って」

 

彼女の言葉には、死への恐怖など微塵も混じっていなかった。

 

その深く澄んだ夜空のような瞳の奥で燃えているのは、ただひたすらに、その先にある未知の光景を探求しようとする純粋な炎だけだ。

 

自分が信じた道を、この規格外の巨人と共に見届けたいという、強烈なまでの生への渇望。

 

その眼差しを見せられては、これ以上拒むことなど到底できなかった。

 

「……分かった。準備するといい」

俺がそう言って首を縦に振り、了承の意を示すと、彼女の顔がパッと明るく華やいだ。

 

「ありがとう、アトラス!」

彼女は弾かれたように踵を返し、俺が造ったクリスタルの宿へと駆け出していく。

 

残されたわずかな装備の点検をするためだろう。

 

その小さな、けれど頼もしい背中を見送りながら、俺はゆっくりと立ち上がった。

 

関節が鳴ることもなく、巨大な筋肉が滑らかに駆動する。

 

(俺も、腹を括ろう)

 

彼女の覚悟を受け取った以上、半端な真似は許されない。

俺の存在意義は、この残酷な世界で彼女のような意志を持つ人間を、絶対に死なせないことだ。

 

そしてどうせ見せるなら、ただ同族を屠るだけの無残な光景ではなく、彼女の探求心と期待に最大限応えられるような、圧倒的で絶望感のない戦いを見せつけなければならない。

 

(俺の2年間の狂気の成果……存分に、派手に演出しようじゃないか)

 

硬質化のクリスタルをどう展開し、いかにして無垢の巨人を一瞬で、芸術的に粉砕するか。

 

俺の脳内では既に、彼岸のバケモノたちを圧倒するための、血湧き肉躍る一方的な蹂躙劇のシミュレーションが始まっていた。

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