進撃の巨人の世界に15m級の無垢(?)の巨人として転生してしまった…… 作:感謝君
「私も、連れて行って」
口を突いて出たその言葉に、自分でも驚きはなかった。
アトラスが用意してくれた、強固なクリスタルのシェルター。
あの中にいれば、確かに私の命は安全だろう。
でも、それでは壁という鳥籠の中で息を潜めているのと何も変わらない。
私は自分の目で、この残酷な世界を見届けるために調査兵団に入ったのだ。
目の前の彼が、これから外の世界で何を成すのか。それをただ安全圏で待つなんて、私の兵士としての矜持が許さなかった。
私のまっすぐな視線を受け止めたアトラスは、少しの間沈黙した後……ふっと、その端正な顔を歪めた。
「……ふっ。リーシェならそう言うと思った」
呆れたような、困ったような。
でも、どこか私のその言葉を待っていたかのような、酷く優しく、嬉しそうな響き。
15メートルの巨人が、人間に対してそんな複雑な感情を顔に浮かべるなんて、昨日までの私なら絶対に信じられない光景だ。
ズシン、と。
アトラスはゆっくりと片膝を突き、少しでも私と目線を合わせようと身を屈めた。
その巨大な質量が動くことで発生した風が、私の濡れた前髪を大きく揺らす。
「……分かっていると思うが、着いて来るということは死の危険、若しくは重傷を負う危険があるという事だ」
彼の口調は、先程までの温かさから一転して、戦場の現実を突きつける重く厳しいものに変わった。
腹の底から響くその重低音が、私の足元から全身を震わせる。
「私としては、このまま留まっていて欲しいが、君の意志も尊重したい。……本当に着いて来るんだな?」
私の安全を第一に願いながらも、一人の兵士としての「意志」を何よりも尊重してくれる。
その事実が、私の胸を酷く熱くした。誰かから無理やり与えられる庇護ではなく、対等な人間として扱ってくれているのだ。
死の危険など、5年前にこのジャケットに袖を通した日から百も承知だった。
「うん」
私は大きく頷き、彼を見上げながらきっぱりと口にした。
「足手まといになるのは分かってる。それでも、お願い、私を連れて行って」
ガスは残り僅か、ブレードの刃も満足な状態じゃない。戦力にならないことは自分が一番理解している。
それでも、彼と共にこの壁の外を歩きたい。恐怖は微塵もなかった。
私の胸の奥で燃えているのは、未知を探求する熱い炎だけだった。
私の瞳の奥を覗き込んだアトラスは、やがて小さく、けれど力強く一度だけ頷いた。
「分かった。準備するといい」
「……! ありがとう、アトラス!」
許可を得た私は、弾かれたように彼が造ってくれたクリスタルの宿へと駆け出した。
入り口の木の板を退けながら、腰の立体機動装置に手を当てる。
昨日、巨人の群れに囲まれて孤立した時は、この装置の重さがそのまま死の重圧のように感じられた。
けれど、今は違う。
絶対的な力と、それ以上に温かい心を持つ規格外の存在が、私と肩を並べてくれている。
彼がいったいどんな戦いを見せてくれるのか。私は急いで装備の最終点検をしながら、震えるほどの期待に胸を躍らせていた。