進撃の巨人の世界に15m級の無垢(?)の巨人として転生してしまった……   作:感謝君

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リーシェ視点です


第二十二話

「私も、連れて行って」

口を突いて出たその言葉に、自分でも驚きはなかった。

 

アトラスが用意してくれた、強固なクリスタルのシェルター。

 

あの中にいれば、確かに私の命は安全だろう。

 

でも、それでは壁という鳥籠の中で息を潜めているのと何も変わらない。

 

私は自分の目で、この残酷な世界を見届けるために調査兵団に入ったのだ。

 

目の前の彼が、これから外の世界で何を成すのか。それをただ安全圏で待つなんて、私の兵士としての矜持が許さなかった。

 

私のまっすぐな視線を受け止めたアトラスは、少しの間沈黙した後……ふっと、その端正な顔を歪めた。

 

「……ふっ。リーシェならそう言うと思った」

 

呆れたような、困ったような。

 

でも、どこか私のその言葉を待っていたかのような、酷く優しく、嬉しそうな響き。

 

15メートルの巨人が、人間に対してそんな複雑な感情を顔に浮かべるなんて、昨日までの私なら絶対に信じられない光景だ。

 

ズシン、と。

 

アトラスはゆっくりと片膝を突き、少しでも私と目線を合わせようと身を屈めた。

 

その巨大な質量が動くことで発生した風が、私の濡れた前髪を大きく揺らす。

 

「……分かっていると思うが、着いて来るということは死の危険、若しくは重傷を負う危険があるという事だ」

 

彼の口調は、先程までの温かさから一転して、戦場の現実を突きつける重く厳しいものに変わった。

 

腹の底から響くその重低音が、私の足元から全身を震わせる。

 

「私としては、このまま留まっていて欲しいが、君の意志も尊重したい。……本当に着いて来るんだな?」

 

私の安全を第一に願いながらも、一人の兵士としての「意志」を何よりも尊重してくれる。

 

その事実が、私の胸を酷く熱くした。誰かから無理やり与えられる庇護ではなく、対等な人間として扱ってくれているのだ。

 

死の危険など、5年前にこのジャケットに袖を通した日から百も承知だった。

 

「うん」

 

私は大きく頷き、彼を見上げながらきっぱりと口にした。

「足手まといになるのは分かってる。それでも、お願い、私を連れて行って」

 

ガスは残り僅か、ブレードの刃も満足な状態じゃない。戦力にならないことは自分が一番理解している。

 

それでも、彼と共にこの壁の外を歩きたい。恐怖は微塵もなかった。

 

私の胸の奥で燃えているのは、未知を探求する熱い炎だけだった。

 

私の瞳の奥を覗き込んだアトラスは、やがて小さく、けれど力強く一度だけ頷いた。

 

「分かった。準備するといい」

 

「……! ありがとう、アトラス!」

許可を得た私は、弾かれたように彼が造ってくれたクリスタルの宿へと駆け出した。

 

入り口の木の板を退けながら、腰の立体機動装置に手を当てる。

 

昨日、巨人の群れに囲まれて孤立した時は、この装置の重さがそのまま死の重圧のように感じられた。

 

けれど、今は違う。

 

絶対的な力と、それ以上に温かい心を持つ規格外の存在が、私と肩を並べてくれている。

 

彼がいったいどんな戦いを見せてくれるのか。私は急いで装備の最終点検をしながら、震えるほどの期待に胸を躍らせていた。

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