進撃の巨人の世界に15m級の無垢(?)の巨人として転生してしまった…… 作:感謝君
848年4月7日
特別車輌の蒸気機関車に揺られ、一生の誓いを交わしたあの奇跡のような帰り道から一夜明けた、翌日の昼下がり。
帝都ミットラスの一等地にそびえ立つ我が家───俺たちが住まう広大な邸宅へと無事に帰還した俺たち三人は、一息つく間も惜しんで、真っ先に『ある場所』へと足を運んでいた。
向かった先は、俺たちの邸宅から歩いてすぐの距離にある、赤レンガ造りの可愛らしい洋館。
シガンシナ区で出会って以来、俺たちにとって『第二の家族』とも呼べる大切な存在、イェーガー一家の住まいである。
玄関の呼び鈴を鳴らし、昨日列車の中で交わした『婚約』の事実を報告するためだ。
「あらー! 良かったじゃない! おめでとう、三人とも!」
応接間に通された俺たちから報告を聞くなり、カルラさんはパァッと顔を明るく花咲かせ、自身の頬に両手を当てて、我が事のように微笑ましそうに祝福してくれた。
だが、次の瞬間、彼女は少しだけ不思議そうに首を傾げた。
「というか……まだ婚約してなかったの? あんなに毎日ベッタリくっついて、お互いのことしか見えてないみたいだったから、なんならとうの昔に結婚しているとばかり思っていたのにー」
「あ、あはは……」
カルラさんの、あまりにも的確すぎる、そしてごもっともなツッコミ。
俺は顔を微かに赤くしながら、乾いた笑いを返すしかなかった。
確かに、傍から見れば俺たちは、出会った頃からずっと一緒に暮らし、隙あらばハグだのキスだのとイチャイチャを極めていたのだ。
夫婦以上の爛れた同棲生活を送っていたと言われても、全く否定できない。
すると、カルラさんの隣で大人しく話を聞いていた……いや、全身をわなわなと震わせていた『一人の少女』が、突如として限界を迎えたように弾け飛んだ。
「っしゃーーーーーッッ!!!! キターーーーーーッッ!!!!!」
耳を劈くような、あまりにも猛烈な雄叫び。
「本当に、おめでとうございますッッ!!! 挙式には絶対に、絶ッッ対に行きますので!! むしろ最前列でスケッチさせてください!!」
立ち上がり、両手を天高く突き上げて完璧なガッツポーズをキメているのは、ダークブラウンの髪を揺らす絶世の美少女───今年で十三歳となった、エレン・イェーガー少女であった。
かつて人類の八割を踏み潰す未来の悪魔として恐れられた原作主人公は、今や完全に『TS超絶美少女天才百合絵師原作主人公』という、属性が過多すぎて原作読者が見たら泡を吹いて発狂しかねない存在へと変異している。
彼女のエメラルドグリーンの瞳は、俺たち三人の関係性が公式に『永遠のもの』となった事実に対する狂喜乱舞で、ギラギラと血走るほどに輝いていた。
(……相変わらず、ブレないなぁ君は)
見た目の可憐さに全く似つかわしくない野太い雄叫びと、完全なるオタクの挙動。
俺は内心で盛大なツッコミを入れつつも、彼女の心の底からの純粋な祝福の言葉には、自然と顔がほころんでしまった。
「リーシェさん。……おめでとうございます」
エレンの狂乱の横で、静かに、けれど確かな温もりを込めた控えめな声が響いた。
赤いマフラーを巻いた黒髪の少女、ミカサちゃんだ。
彼女は、自身の『護身術(暗殺術)』の師匠であり、今や実の姉のように慕っているリーシェの前に歩み寄り、微かに口角を上げて微笑みかけた。
「ええ、ありがとうミカサ。……私、今、本当に幸せよ」
リーシェは、かつての冷徹な鬼神の仮面などとうの昔に脱ぎ捨て、まるで春の陽だまりのような優しい笑顔を浮かべた。
そして、愛弟子であるミカサの肩をそっと引き寄せ、慈しむように優しい抱擁を交わしたのだ。 ミカサの背中に回されたリーシェの左手。
その薬指には、俺が昨日『道』の力で極限まで精密に創り出した、硬質化結晶特有の青白い輝きを放つエンゲージリングが、誇らしげに、そして美しく光っていた。
その尊すぎる師弟のやり取りを眺めながら、俺が胸の奥を温かいもので満たしていると、正面のソファから、静かに立ち上がった人物がいた。
「……おめでとうございます。本当に、良かった……」
丸眼鏡の奥のエメラルドグリーンの瞳には、大粒の涙が浮かんでいた。
グリシャは、目尻に浮かんだその涙を太い指先でそっと拭いながら、俺たち三人に向けて、深く、深く頭を下げた。
「私達家族が、貴女方にどれ程救われて来たか……あの絶望の淵から、こうして光の当たる場所へと導いていただいた恩は、一生忘れません。
……どうか、三人で、この世の誰よりも幸せな家庭を築いてください。そして、これからもイェーガー一家共々、よろしくお願いいたします」
かつて『進撃の巨人』の呪縛に囚われ、己の手を血に染めて息子を悪魔にするはずだった男の、魂の底からの深い感謝と、これからの平和な未来を祈る言葉。 その言葉の重みに、俺の胸もキュッと締め付けられた。
「もー、グリシャおじさんは涙脆いなぁ……っ。そんなこと言われたら、私まで泣けて来ちゃうじゃん……!」
俺の左腕にギュッと抱きついていたユミルが、紫色の瞳からポロポロと幸せの涙をこぼし、俺の袖で顔をぐしぐしと拭い始めた。
二千年の間、愛を知らずに奴隷として生きてきた彼女が、今こうして、他人の温かい言葉に触れて嬉し涙を流している。
俺は、俺の腕にしがみつくユミルの小さな手に自身の指を優しく絡ませながら、万感の思いを込めて、グリシャさんたちへ感謝の言葉を口にした。
「私達の方こそ……皆さんが、私たちがどんな存在であろうと、変わらずこうして家族のように温かく接してきてくれた。それが、私たちにとって何よりの救いだったんです。本当に、ありがとうございます。……そして、これからもどうか、末長くよろしくお願いしますね」
満面の、一点の曇りもない笑顔で。俺はイェーガー一家に向けて、深くお辞儀をした。
俺が頭を下げた瞬間、何を言われた訳でもなく、俺の右腕に寄り添うリーシェと、左腕に抱きつくユミルも、全く同じように続くようにしてお辞儀をし、心からの感謝を伝えた。
最早種族も、背負ってきた業も違う。けれど、確かな絆で結ばれた俺たち三柱の神と、一組の家族。
その応接間は、この残酷な世界には到底似つかわしくないほどの、温かく、そして圧倒的な幸福の空気に満たされていた。
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あの後、カルラさんが淹れてくれた極上の紅茶とケーキをいただきながら、暫くこれまでの思い出を語り合ったり、エレンの描いた最新のスケッチ(俺たちの百合絵)を見せられて赤面したりと、和気藹々とした暖かな交流を経て。
俺たち三人は、夕暮れが近づく頃、最早見慣れた豪華な俺たちの邸宅へと帰宅した。
ガチャリ、と鍵を開け、重厚な扉を押し開く。 三人並んで、広々とした大理石の玄関を進み、見慣れたリビングへと足を踏み入れた。
「ふぅー……今日も良い一日だったね。さて、少し早いけど、夕飯の準備でもしないとね」
俺は小さく伸びをして、いつもの日課である料理に取り掛かろうと、リビングを抜けてオーバーテクノロジー仕様のキッチンへと向かおうとした。 その、時だった。
──────バッ!!!
「え?」
突如として、俺の左右の腕が、万力のような凄まじい力でがっちりとホールドされた。
右からはリーシェが。左からはユミルが。 俺の華奢な二の腕を、絶対に逃さないとばかりに固く、そして熱を帯びた手で掴み込んできたのだ。
「え? え? なに? リーシェ? ユミル?」
俺が困惑して二人の顔を交互に見比べるが、二人は何も言わなかった。
ただ、完全に据わった瞳で無言のまま、俺の身体を両脇から浮き上がらせるようにして持ち上げ、そのままリビングを通り抜け、邸宅の最奥にある『俺たち三人の寝室』へと向かって、一直線に引き摺るように連行し始めたのだ。
「ちょ、ちょっと待って! 夕飯は!? ご飯作らないと……っ!」
俺の情けない抵抗など、二人の前では無意味だった。
バタンッ! と、重厚な寝室の扉が足で乱暴に蹴り閉められ、カチャリと内側から鍵が掛けられる。
そして、俺の身体はそのまま、部屋の中央に鎮座する特大のキングサイズベッドへと、有無を言わさぬ勢いで乱暴に押し倒された。
「きゃっ……」
ボフッ、と。 すべてを包み込む様な、最高級の羽毛布団の柔らかな感触を背中越しに感じながら、俺はシーツの上に仰向けに転がった。
何が起きているのか完全に理解できず、表情に強い困惑を滲ませて身を起こそうとする。
だが、それよりも早く。
「……アトラス」 「……お姉様」
左右から、ベッドの上に膝をつき、四つん這いの体勢になったリーシェとユミルが、逃げ場を塞ぐようにしてゆっくりと、じりじりと俺の上に迫り来たのだ。
薄暗い寝室の空気の中で、二人の顔が俺の視界いっぱいに覆い被さる。
「…………ッ!」
俺は、息を呑んだ。 俺を見下ろす二人の瞳には、極上の料理───いや、待ちに待った最高級の獲物を前にして、最早一秒たりとも我慢出来ないといった、ドロドロに溶けきった強烈な『情欲』が、隠しきれないほどに滲み出していたのだ。
ハァ、ハァ、と。二人から零れる甘く熱い吐息が、俺の首筋と頬を撫でる。
彼女たちの白く美しい頬は、異常なほどに紅潮し、熱に浮かされたように妖しく朱に染まっていた。
ここでようやく現在の状況を正確に理解した。
「ねぇ? お姉様? 私達さ……今日、一日中、ずーっと散々焦らされてきたんだよ?」
ユミルが、普段の無邪気な声からは想像もつかないほど、低く、艶やかで、しっとりと甘い声で俺の耳元に囁いた。
「ええ。ユミルの言う通りよ。……ねぇ、アトラス。昨日の今日で、ずっと誰かの目があったから我慢してきたけれど……」
リーシェが、俺の胸元にそっと手を這わせながら、完全に理性のタガが外れた獣のような瞳で俺の唇を見つめ、蕩けるような声で続けた。
「私達、そろそろ……身も心も、"ひとつ"になっても良いと思わない?」
彼女らに残された最後の、ほんの一欠片の理性───俺の「同意」を待つというギリギリのストッパーが、辛うじてその口を動かしていた。
(……あぁ、まぁ……そりゃそうなるか……)
俺は、ベッドのシーツをギュッと握りしめながら、内心で深く、しかしどこか納得したような息を吐き出した。
思い返せば、ここまでの道中、思い当たる節はいくらでもあった。 イェーガー家へ向かう途中でも、帰り道の歩道でも。
二人は俺の背後で何やらコソコソと熱っぽい視線を交わし合い、俺が少しでも無防備な仕草を見せるたびに、「……今はダメよ……」「……うん、おうちに帰るまで我慢……」と、小声で必死に己の理性を律しようとしていたのだ。
昨日、あんなにドラマチックにプロポーズをして、指輪を交換して。 お互いの生涯を懸けた重すぎる愛情をぶつけ合ったのだ。
それが、ただの「言葉の誓い」だけで満足して終わるような、枯れた関係性の二人であるはずがない。
(どうせ、ここで断ったとしても、最終的には丸め込まれて美味しく頂かれる未来しか見えないしな……)
俺は、逃げられないこの甘い捕食の状況を前にして、不思議と恐怖や焦りは感じていなかった。
むしろ、俺のために今日一日必死に我慢してくれていたこの愛おしい二人の猛獣に対して、ほんの少しだけ「可愛い」とすら思ってしまったのだ。
ならば、だ。 どうせ結ばれるのなら、どうせ彼女たちの愛にすべてを委ねるのなら。
彼女らに微かに残された迷いも、くだらない後ろめたさも、全部ひっくるめて吹き飛ばしてあげようじゃないか。
俺は、最後の"了承"の言葉を待ってハァハァと熱い息を吐き出している彼女らに向け、フッと口角を上げた。
そして、神が黄金比で創り上げた自身の比類なき超絶美少女フェイスに、これまで見せたことのないような、とびきり妖艶で、魅惑的な表情を浮かべてみせた。
無防備を装うように、シーツの上に投げ出していた両腕を、ゆっくりと頭の先の向こう──枕の上へと無造作に投げ出す。
自身の柔らかな胸郭を無防備に晒し、完全に「降伏」と「受け入れ」の意思を身体全体で表現したのだ。
息を呑んで固まる二人の顔を、俺はアイスブルーの瞳で甘く、挑発するように見つめ返し。
そして、静かな寝室の空気を震わせるように、甘く掠れた声で、トドメのセリフを告げた。
「……いいよ……?」
リーシェとユミルの肩が、ビクンッ! と大きく跳ねる。
俺はさらに目を細め、彼女たちの理性の最後の一本を完全に断ち切るように、艶やかに微笑んだ。
「…………むちゃくちゃにして……?」
その言葉が、寝室の空気に溶けた瞬間。 もはや、一切のストッパーは存在しなかった。
「あぁっ……アトラス……っ!!」 「お姉様ぁっ……!!」
理性という名の鎖を完全に噛み千切った二頭の美しい獣が、狂おしいほどの愛と情欲を剥き出しにして、俺の身体へと同時に覆い被さってくる。
帝都ミットラスの夜の帳が下りる中、俺たち三人の、永遠の愛を刻み込む長く甘い初夜が、ついに幕を開けたのだった。