進撃の巨人の世界に15m級の無垢(?)の巨人として転生してしまった……   作:感謝君

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第二十三話

準備を終えたリーシェを、俺は右肩にそっと乗せた。

 

15メートルの視界。

 

彼女からすれば、ビルの5階部分から森を見下ろすような感覚だろう。

 

最初は少しバランスをとるのに苦労していたようだが、さすがは立体機動装置を扱う調査兵団、すぐに姿勢を安定させて周囲を警戒し始めた。

 

水場から少し離れ、巨大樹がひと際密集しているエリアに到着した俺は、ズシンと足をとめた。

 

「リーシェ」

 

俺は声をかけながら、肩から彼女をそっと掬い上げ、地面から20メートルほど───今の俺の頭頂部よりもさらに高い位置にある、極太の枝の上へと降ろした。

 

「えっ? ここで降りるの?」

 

突然のことに目を白黒させる彼女をよそに、俺は少しだけ後ずさり、距離を取る。

 

「リーシェ、全力で耳を塞げ」

 

「?」

何が何だか分からない様子で、それでも俺のただならぬ真剣な声色に、彼女は慌てて両手で耳を塞ぎ、身を屈めた。

 

(よし。……じゃあ、始めるか)

 

俺は大きく、胸郭が張り裂けんばかりに空気を吸い込んだ。

 

肺から絞り出すのではなく、15メートルの巨体の全細胞からエネルギーを爆発させるように。

 

 

 

──────ウォオオオオオオオオオオオッッッ!!!!!

 

 

鼓膜を物理的に殴りつけるような、大気が割れんばかりの雄叫びが巨大樹の森に轟いた。

 

木々の葉が暴風に煽られたように一斉に散り、鳥たちがパニックを起こして空を覆い尽くす。

 

ビリビリと空気を震わせる衝撃波は、おそらく森の外まで届いたはずだ。

 

未だ森の中で反響し続ける轟音の中、頭上からかすれ声のような抗議が降ってきた。

 

「ちょっと! 急に大声出してどうしたのよ!!」

 

耳を塞ぐどころか、頭を抱えるようにして枝に伏せているリーシェが叫んでいる。

 

それに対して、俺は静かに見上げた。

 

「まぁ、見ておけ」

 

俺は全身の神経を研ぎ澄まし、体内タンクのエネルギーを一気に解放する。

 

 

─────ズズズズズッ……!!

 

 

うなじから発生した青白いクリスタルが、瞬く間に俺の巨躯全体を覆い尽くしていく。

 

ただの鎧ではない。

俺は右腕から指先にかけての硬質化の形状を、極限まで薄く、そして鋭く研ぎ澄まされた「巨大な刃」へと変成させた。

 

十数秒後。

 

森の奥から、かすかな振動が伝わってきた。

 

ズン……ズン……という音が、次第に数を増し、重なり合い、やがて全周囲からの明らかな「地鳴り」となって近づいてくる。

 

10や20じゃない。

100……いや、下手をすれば200はくだらない数の足音。

 

俺の先程の咆哮───奇行種に特有の、あるいは「女型の巨人」が見せたような、同族を呼び寄せる叫びを聞きつけ、森中の無垢の巨人たちが全速力でこちらへ向かってきているのだ。

 

頭上のリーシェもその異常な気配に察しがついたのか、顔からスッと血の気を引かせて青ざめる。

 

だが、その瞳には絶望の色はない。

 

むしろ、俺がこれから何をするのか、どんな光景を見せてくれるのかという「期待」の眼差しを、眼下の硬質化した俺に向けていた。

 

「……死んだら呪うから」

強がりかもしれないが、震えのない声。思いの外、彼女にはまだ精神的な余裕がありそうだ。

 

「ふっ……今からでも戻るか?」

俺が、わざと挑発にも取れるような軽いトーンで返すと。

リーシェは木の枝の上で立ち上がり、ニヤリと不敵に口角を上げた。

 

「冗談はよして」

その、調査兵団のベテランらしい頼もしい顔つきに、俺も思わず頬を緩めた。

 

軽口を叩き合っているうちに、木々の隙間から次々と奇妙な走り方をする無垢の巨人たちの姿が視界に入り始めた。

 

涎を垂らし、狂ったような歓喜の顔を張り付けたバケモノの群れが、全方位から俺という「極上のエサ」に向かって雪崩れ込んでくる。

 

俺は、巨大な刃と化した右腕をゆっくりと横に構えた。

体内のエネルギーは完全に充填されている。

身体は羽のように軽い。

 

「さぁ、殺戮の時間だ」

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