進撃の巨人の世界に15m級の無垢(?)の巨人として転生してしまった……   作:感謝君

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必ず会いに……あれ?
第三十九話


リーシェとの身を裂かれるような別れから半年。

 

暦は、843年の夏を迎えていた。

 

うだるような熱気が壁外の森を包む中、俺はあの別れの日以降、文字通り修羅の如く己を鍛え上げ、狂気の修練に没頭していた。

 

すべては、あの日彼女と交わした「人間に戻る」という、途方もない約束を果たすために。

 

まずは、硬質化能力の応用と拡張だ。

 

度重なる自己破壊と再生、そして硬質化の訓練により、今や巨大樹の森の岩盤下には、一つの街がすっぽりと収まるほどの「広大な地下空間」が形成されていた。

 

これほどの巨大な空洞が崩落しないのは偏に、俺が床から天井に向けて、直径数メートル、高さ20メートルにも及ぶ純白のクリスタルの柱を、神殿のように何百本と生成し、寸分の狂いもなく岩盤を支えているからだ。

 

(俺の硬質化の範囲と生成速度、そして強度は……最早、原作の『戦鎚の巨人』に迫りつつある。いや、練度で言えばもしかしたら既に凌駕しているかもしれない)

 

空間の確保を終えた俺は、その圧倒的なスケールを利用した新たな物理トレーニングを始めていた。

 

それは、森に生える高さ80メートルはある超巨大な樹木を根元から引き抜き、頭上まで持ち上げたまま、地上と地下空間を繋ぐ巨大なスロープを行き来するというものだ。

 

その重量たるや、おそらく数年後のトロスト区奪還作戦でエレンが持ち上げるあの「大岩」に匹敵するか、あるいは優に超える重さだろう。

 

最初は、80メートルの巨木一本を担ぎ上げるのが限界だった。

 

だが、超回復(?)を繰り返しながら筋繊維を破壊し続けた結果、今ではその80メートルの巨木を「二本」同時に担いだまま、地上と地下を一往復できるまでに筋力が跳ね上がっていた。

 

このトレーニングの真髄は、ただの馬鹿力(パワー)だけじゃない。

 

いかにして「力の配分をコントロールするか」にかかっている。

 

少しでも力みすぎれば巨木は自重と俺の膂力でへし折れ、足腰の使い方が甘ければ、踏み込んだ瞬間に地盤が陥没してしまう。

 

15メートルの巨躯と、80メートルの巨木二本という天文学的な質量を、ミリ単位のバランスで制御する。

 

それが俺の身体操作能力を別次元へと押し上げていた。

 

次に、遠距離攻撃の確立だ。

俺は硬質化能力により、手元に直径2メートル程の極めて分厚いクリスタルの「球体」を生成する。

 

ただの石の塊ではない。その球体の内部には、リーシェの立体機動装置のガス補充にも利用した「超高圧・超高温の巨人蒸気」を限界まで圧縮して充填してあるのだ。

 

俺はその特製爆弾を右手に握り込み、広大な地下空間の端に立つ。

 

そして、前世の野球の知識と、極限まで高めた身体操作能力を総動員し、15メートルの巨体で『完璧な投球フォーム』を描いて全力投球する。

 

 

──────ヒュガァァァァンッ!!!

 

 

腕を振り抜いた瞬間、空気が爆ぜた。

 

放たれた2メートルの球体の瞬間速度は、容易く音速を超える。

 

コンマ数秒後。

 

遥か彼方の硬固な岩盤の壁に球体が着弾したと同時に、硬質化の殻が砕け、内部に何百倍にも凝縮されていた超高圧蒸気が一気に解放される。

 

 

─────ドゴォォォォォォォォンッ!!!

 

 

地下空間全体が激しく揺れ、着弾地点の分厚い岩盤が爆発したように吹き飛び、巨大なクレーターが形成される。

 

そして、遠く離れたマウンド(投球位置)にいる俺の元まで、遅れて凄まじい蒸気の衝撃波と熱風が叩きつけてきた。

 

(……完璧だ。『獣の巨人』の投石の投擲力も破壊力も、遥かに上回っている)

 

この蒸気爆弾を直撃させれば、鎧の巨人の装甲ごと中身を木っ端微塵に消し飛ばせるだろう。

 

仮に超大型巨人が相手だったとしても、着弾時の衝撃波と内部爆発で、奴のあの巨大な肉や骨の大部分が跡形もなく弾け飛ぶはずだ。

 

他にも、空気抵抗を極限まで減らした「徹甲弾」や、空中で無数のクリスタル片に分裂する「散弾」など、状況に応じた手札を次々と開発し、精度を高めていた。

 

だが、俺にとって、これらの破壊力の向上など、あくまで副産物にすぎない。

 

一番重要で、最も心血を注いでいる究極の訓練。

 

それは、自らの肉体の奥深くを知覚し、うなじの奥に『人間体を宿す』ことだ。

 

投球訓練を終え、静まり返った地下空間の中央で、俺は胡座をかいて目を閉じた。

 

破壊と再生を繰り返し、己の細胞の隅々まで神経を行き渡らせるイメージ。

 

度重なる修練により、もはや無限に近いエネルギーを宿すに至った奔流の中に、たった一つの小さな「核」を見つけ出す作業。

 

薄暗い精神の海を深く、深く潜っていく。

 

やがて……進捗は、確かにあった。

 

(……感じる。何となくだが、一番奥底に……俺の「本体」の輪郭を)

 

気の遠くなるような訓練の末、俺は微かに、だが確かに、15メートルの肉の鎧の奥深くに眠る「本来の俺」の存在を知覚することに成功していた。

 

ただ、そこへ意識を完全に同調させ、肉体として再構築し「宿す(顕現させる)」には未だ至らない。

 

分厚いガラス越しに、自分の手を見つめているようなもどかしさがある。

 

それでも。ただ知覚出来ただけでも、これは俺にとって途方もなく大きな成果だった。

 

「……待っていろよ、リーシェ」

誰もいない地下空間で、俺は静かに呟いた。

 

人間へと戻るための扉の鍵穴を、ついに見つけたのだ。あとは、これをこじ開けるだけ。

 

彼女が壁の中で、絶対に死なずに俺を待ってくれていると信じているからこそ、俺はどんな地獄の修練にも耐えられる。

俺の決意は、843年の夏の熱気よりもさらに熱く、地下の暗闇の中で確かな炎となって燃え続けていた。

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