進撃の巨人の世界に15m級の無垢(?)の巨人として転生してしまった……   作:感謝君

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第四十二話

それから数日。

 

俺は、自身の新たな肉体──つまりこの超絶美少女ボディ──を包み隠すための本格的な衣服作りに没頭していた。

 

巨大樹の森には、人間サイズからすればバカみたいに巨大な葉や、強靭な蔦、そしてしなやかな茎が無限に自生している。

 

それらを細かく裂き、編み込みながら、俺自身の能力である「硬質化クリスタル」を繊維レベルで極薄にコーティングして定着させる。

 

最初はただの「葉っぱの服」や「原始人の腰蓑」になるかと思いきや、俺の硬質化能力は予想以上のポテンシャルを秘めていた。

 

クリスタルの密度や屈折率を微調整することで、ベースとなる植物の緑色を白や淡い黄色へと変色させ、さらには絹のような艶やかな質感や、綿のような柔らかさすらも疑似的に再現できることに気付いてしまったのだ。

 

だが、作業に没頭しすぎた代償は大きかった。

 

丸二日を過ぎた頃、突如として激しい目眩と立ちくらみに襲われ、俺は文字通りぶっ倒れた。

 

十五メートルの巨人体で四年近く過ごしていたせいで完全に失念していたのだ。

 

人間の肉体を維持するためには「食事」と「睡眠」という極めてアナログなエネルギー補給が不可欠であることを。

 

慌てて森の果実をかじり、地下空間で数時間気絶するように眠った後、俺は己の人間らしさ(ポンコツ具合)に呆れながらも、再び衣装作りへと精を出した。

 

そんなこんなで完成した本日の勝負服は、純白に近い色合いに染め上げたノースリーブの『サマーワンピース』と、乾燥させた茎を緻密に編み込みクリスタルで補強した『麦わら帽子風のツバ広帽』である。

 

地下空間のクリスタル柱を鏡代わりにして全身を映してみる。

 

肩甲骨まで流れる艶やかな黒髪に、ワンピースの白が異常なほど映えている。

 

風に揺れる裾から覗く健康的な足のラインといい、丁度良いサイズの双丘を上品に包み込むデコルテの設計といい……我ながら、天才的な仕上がりだった。

 

そう、俺は思いの外、この「衣装作り」というクリエイティブな作業にドハマりしてしまったのである。

 

素材の色や質感を自在に操れると知ってからというもの、俺の中の何かが弾けた。

 

どうせこの森には俺一人しかいないのだ。

 

ならば、この黄金比で構成された奇跡の美少女ボディ(中身は元・男子大学生)を最大限に活かして遊ばなければ損というものだろう。

 

そして今日

 

俺はついに、森の広場に硬質化クリスタルで大規模な「特設ランウェイ(舞台)」を建設し、前代未聞のガチ・ファッションショーを開催するに至った。

 

とはいえ、観客のいないファッションショーほど空しいものはない。

 

そこで俺は、森の周辺をうろついていた無垢の巨人たちを十数体ほどかき集め、ランウェイの周囲に立ち並ぶ巨大樹の幹に、頑丈なクリスタルの鎖でがんじがらめに縛り付けた。特等席の確保である。

 

「さぁ、アリーナ席のみんなぁぁ! 今日は集まってくれてありがとうーっ!」

 

カツン、カツンと、クリスタルのヒール(これも自作だ)を鳴らしながら、太陽の光が差し込む純白のランウェイの中央へと歩み出る。

 

麦わら帽子のツバを指先で軽く持ち上げ、憂いを帯びたアイスブルーの瞳でウインクを飛ばす。

 

雰囲気を完璧に守るため、表向きの話口調も「私」を一人称とした、とびきりキュートでアイドルらしい女性語へと見事にシフトチェンジしていた。

 

「ガアアアァァァァッ!!」

「オオォォォンッ!!」

 

観客席(という名の拘束具)に張り付けられた巨人たちが、美しい俺の姿を見るなり一斉に血走った目をひん剥き、特大の歓声(人間を食いたくてたまらない雄叫び)を上げてランウェイへと手を伸ばしてくる。

 

その狂気的なまでの熱狂ぶりに、俺の中のアイドル・スイッチが完全にオンになった。

 

「えへへ、みんな元気いっぱいで嬉しいよーーー! こっちまでテンション上がっちゃうなー!」

 

ポーズを決めるたびに響き渡る割れんばかりの雄叫び。熱い。今日の観客はなんてノリが良いのだろうか。

 

俺はその熱狂に応えるべく、指先からパキィッ!と音を立てて鋭利なクリスタルの槍を数本生成した。

 

「一番前で応援してくれてる君たちに、私からの特別ファンサービスだよっ! 受け取ってね!」

きゅるんっと擬音が聞こえて来そうな程キュートなウィンクを自身の比類なき超絶美少女フェイスで送る

 

シュパァァァンッ!!

 

アドリブで放たれたそのクリスタルの槍は、空気を切り裂き、最前列で最も大きな口を開けていた三体の巨人の眉間や眼球に、寸分の狂いもなく深々と突き刺さった。

 

ドゴォッ!という鈍い音と共に、脳を破壊された巨人たちが白目を剥いてガクンと首を垂れる。

 

もちろん、うなじ(項)を削がれたわけではないので死んではいないが、脳の再生にリソースを割くため一時的な機能停止に陥ったのだ。

 

「あーん!嬉しすぎて失神しちゃったー?。でも無理しないでね?」

俺は両手を胸の前でキュッと握り、小首を傾げ、可憐に微笑みながらランウェイを練り歩く。

 

感極まって(物理的な脳挫傷で)一切身動きを取らなくなった熱狂的なファンたちを眺めながら、俺は心ゆくまで自分の美貌と自作の衣装を見せびらかし、完璧なターンとポージングでフィナーレを飾った。

 

「みんなーーー!!!今日は本当にありがとねッ! また次のコレクションで会おうねー!」

投げキッスと共にファッションショーが終了する。

 

同時に、俺はパチンッと指を鳴らし、観客たちを縛り付けていたクリスタルの拘束具を一斉に解除した。

 

「ガアアァァァァァッ!!」

拘束を解かれた瞬間、先程まで歓声を上げていた(そして数分で脳の再生を終えた)巨人たちが、俺と熱い握手を交わしたい(ただ俺の肉体を食い殺したい)のか、涎を撒き散らしながら凄まじい勢いでランウェイに向かって雪崩れ込んでくる。

 

(おっと、出待ちのファンが殺到してきたな)

俺は麦わら帽子が風で飛ばないように軽く押さえながら、困ったように眉を下げてみせた。

「ごめんね、みんな。うちの事務所(存在しない)の意向で、ファンとの直接的な身体接触(捕食)は禁止されているの」

俺は片手目の前に持っていき、軽く指を鳴らす

「警備員さんよろしくね!」

その可憐な声が響き渡ると同時。

 

ランウェイの周囲の地中から、俺が事前に仕掛けておいた直径一メートルを超える極太の「硬質化の槍」が、無数の棘のように大樹の森へと突き出された。

 

───ズバァァァァァァンッ!!!

 

「ガッ……!?」

俺のもとへ殺到していた巨人たちは、一切の回避も許されず、下から突き上げられた超硬度のクリスタル槍によって、次々とそのうなじを正確に貫かれていった。空中に串刺しにされ、絶命していく熱狂的なファンたち。

 

もくもくと立ち昇る超高温の巨人蒸気が、まるでライブ終わりのスモーク演出のように俺の周囲を白く染め上げていく。

 

有能なボディガード(俺の能力)による完璧な捕縛(討伐)劇。

俺は蒸気の中でワンピースの裾を優雅に翻し、「よし、今日のイベントも大成功だな」と、中身の男の口調で満足げに一人ごちるのだった。

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