進撃の巨人の世界に15m級の無垢(?)の巨人として転生してしまった…… 作:感謝君
転生してからはや2年。
来る日も来る日も岩盤を殴り続け、最早カチカチの岩盤すら自身にとっては「ちょっと硬めの土壁」程度の認識になり始めた頃。
俺はふと、硬質化発現のイメージを根本から変えてみることにした。
今までは、あの青白いクリスタルを外部から「纏わせる」あるいは「コーティングする」ようなイメージで発現させようと念じていた。
だが、もしかしてアプローチが間違っていたのではないか?
クリスタルを、鎧のように着込むのではなく「自身の肉体の延長線上」であるとイメージするのだ。
例えばそう、吹き飛んだ拳を再生させる時、肉と骨が編み込まれていくあの生々しい感覚。
あれの延長として、皮膚の代わりに硬質な結晶を細胞から構築していくように。
スゥッ、と意識を右手に集中させる。
すると──右拳の皮膚を突き破るように、ヌルリと青白いクリスタルが「生えて」きた。
「……ッ」
……こんな、簡単な事だったのか。
この1年以上の試行錯誤は何だったんだと、若干自身の発想力の貧困さに悲嘆しつつ、俺はそのまま意識を深く集中させる。
ズズッ、と音を立てて左拳にも同じようにクリスタルが生え、両手が強固な鉱物で完全に覆われた。
ひどい倦怠感はまだない。
ただ、消費される体内の謎の「エネルギー」は、通常の再生を遥かに上回るペースで減っているのが感覚としてハッキリと分かる。
ひたすら肉体を壊しては直し、エネルギー上限のタンクを泥臭く成長させ続けてきたのが、ここに来て役立つとはね。
拳全体が分厚いクリスタルで覆われたのを確認し、試しに目の前の岩盤に打ち付けてみることにする。
今までは、反動で拳が一瞬で消し飛んでしまわないよう、無意識のうちに動作にリミッターをかけていた。
だが、今は絶対に壊れない矛が手元にある。
今回はリミッターを解除し、15メートルの巨体が生み出す100パーセントの全力で振り抜く。
────ドッッッッゴォォォォォォォォン!!!!!
今までとは比べ物にならない、大気を揺るがす破滅的な衝撃音と振動が森を震わせた。
砂埃が晴れた後、目の前にあった強固な岩盤の壁は、直径20メートルほどの巨大なクレーターに変わっていた。それだけではない。
あまりに規格外な摩擦と圧縮のせいか、周囲の岩盤は異常な熱を持ってドロドロと赤く染まり、溶け出している。
肝心の右拳は……無傷だ。クリスタルは傷一つなく怪しく輝いている。
しかし、その代償として右腕の「中身」、肘から肩にかけての骨と肉が、自らの生み出した絶大な反動に耐えきれず、ぐちゃぐちゃにひしゃげていた。
(拳は耐えられても、腕の強度が追いついてないか……!)
ひしゃげた右腕を瞬時に回復させ、俺は硬質化のクリスタルを左右の拳から、腕を伝って肩まで一気に纏わせる。
ズズズズッ、と音を立てて両腕が完全にクリスタルでコーティングされた。
流石にここまで広範囲を覆うと、全身に重い倦怠感が出始める。
この勢いで両足にもクリスタルを纏わせようと試みる。
しかし、足先から上へと侵食していった結晶は、脛の中部まで到達したところでピタリと進行が止まった。
今のエネルギーと集中力では、これが限界らしい。
未だ赤熱し、凄まじい熱気を放つ岩盤のクレーターへ足を踏み入れる。
肩まで硬質化した右腕を大きく引き絞り、俺はもう一度、全力の打撃を振り抜いた。
────ズドゴォォォォォォンッ!!!
さっきよりもさらに巨大で深い穴が形成され、周囲の地形そのものがひどく歪む。
……しかし、今度は右腕が丸ごと「ちぎれた」。
硬質化のクリスタルに覆われ、完璧な形状を保ったままの巨大な右腕が、クリスタルで覆われていない生身の部分
───右肩の付け根から、凄まじい反作用によってブチィッ!と無惨に引きちぎられ、後方へと吹っ飛んでいったのだ。
(……なるほど。いくら剣の刀身を硬くしても、それを振るう柄が脆ければ根元から折れるってわけだ)
痛覚がないおかげで、ちぎれた自身の右腕をひどく冷静に観察することができた。
だが、とにかく、俺はついに無事に「硬質化」の能力を手に入れたんだ。これでまたもう一段、確実に強くなった。
一歩間違えれば自壊する諸刃の剣だが、威力の底上げとしては申し分ない。
次の目標は、反動に耐えうるための「全身硬質化」だな。
これからの果てしない訓練メニューに、この硬質化能力の維持と範囲拡大を追加しよう。
それに、限界までエネルギーを使い切ることで、エネルギー上限の成長効率がさらに上がったのも、今の俺にとってはかなり大きい収穫だった。
確かな手応えを感じながら、俺は肩の断面から猛烈な蒸気を吹き出し、失われた右腕の再生を始めた。