進撃の巨人の世界に15m級の無垢(?)の巨人として転生してしまった…… 作:感謝君
訳の分からない解釈、物理法則の無視、超展開、
そして団長の胃壁陥落など
これらに抵抗感がある方は閲覧を控える事を推奨します
あの「上層部突撃事件(あるいはクーデター未遂事件)」から数日後。
エルヴィン団長に執務室へと呼び出された私は、彼が常備するようになった胃薬を水で流し込むのを静かに見守っていた。
「……上層部での決定事項だ。次回の巨大樹の森への壁外調査について、君に『予算および編成の全権』を委任するとのことだ。好きなように部隊を組め、だとさ」
「あら。それは随分と太っ腹ね」
心労で頬がこけ気味の団長に、私は冷徹な表情のまま淡々と返した。
どうやらあの幹部たちは、私に一切の不満を抱かせないよう、事実上の白紙委任状を叩きつけて機嫌を取ることにしたらしい。
ならば、そのご好意に甘えさせてもらうまでだ。
私は即座に編成案を組み上げ、出撃可能な人員の「最大人数」と、それを長期間支えるための「大規模な補給物資および荷馬車」の調達を要求した。
巨大樹の森の深部まで到達し、そこで彼──アトラスを捜索するには、兵団全体の完璧なバックアップと補給線が必要不可欠だからだ。
作戦までの約一ヶ月間。
私は自分の身体を鈍らせないため、そして彼が与えてくれたこの理外の力をさらに馴染ませるため、毎日訓練場で立体機動の訓練に明け暮れていた。
───シュガァァァァンッ!!
的として設置された巨人の模型群を、空中で三回転しながら連続で斬り伏せる。
重力も遠心力も完全に私の支配下にあった。
ふと視線を向けると、訓練場の隅の方で、複数人の屈強な兵士たちが交代制で私を遠巻きに監視しているのに気がついた。
どうやらあの上層部突撃事件以降、私が本当に反乱を起こさないか、上層部が監視の「番犬」を配置したらしい。
(……ご苦労なことね。そんな所から見てたって、私の動きの半分も視認できていないでしょうに)
私は内心で呆れながらも、表面上は気づかないフリをして、さらに鋭く空を切り裂く。
今頃彼らは、青ざめた顔で本部に報告書を書き送っていることだろう。
『鬼神の動向を監視中。……現在、化け物じみた訳の分からない立体機動を展開しており、もはや物理法則が通用しておりません。我々では到底抑えきれません』──なんて。
そうして、準備の期間はあっという間に過ぎ去り。
季節は雪解けを終え、柔らかな春の風が吹き抜ける844年の4月。
『第22回壁外調査』
それが、今回の特大ミッションに与えられた正式な作戦名だった。
暖かな春の陽射しに包まれた、シガンシナ区の巨大な門の前。
そこに集結したのは、現在の調査兵団に所属する人員のほぼすべて──総勢約三百人という、一回の調査としては過去最大規模の兵力だった。
何十台もの荷馬車が連なり、整然と並ぶ緑の十文字マントが春風にはためいている。
これほどの大軍勢を前に、沿道に集まったシガンシナ区の住民たちも、固唾を飲んで我々を見守っていた。
私は最前列付近で、自身の愛馬の首を優しく撫でながら、静かに目を閉じた。
(待ってて、アトラス)
あの日、冷たい雪が降る森の中で別れたあなたの背中を、私は一日たりとも忘れたことはない。
人間の姿に戻っていようがいまいが、そんなことはもうどうでもいい。
あなたが会いに来ないなら、私がこの兵団の総力を挙げて、あなたを迎えに行くだけだ。
「開門んんんんッ!!」
駐屯兵団の兵士の叫び声と共に、巨大な歯車が軋む重厚な音が響き渡り、ウォール・マリアの門がゆっくりと上がり始めた。
太陽の光が、壁の外へと続く道を黄金色に照らし出す。
「第22回壁外調査、これより開始する!! 前進!!」
エルヴィン団長の力強い号令が響く。
「おおおおおおおッ!!」という三百人の兵士たちの鬨の声と共に、私たちは一斉に地を蹴った。
目指すは、遥か彼方の魔境──『巨大樹の森』。
冷徹な鬼神の仮面の下で、私の心臓は、かつてないほどの激しい熱を帯びて高鳴っていた。