進撃の巨人の世界に15m級の無垢(?)の巨人として転生してしまった…… 作:感謝君
───あれからさらに2ヶ月。
この絶望的な世界に、俺というバグのような存在が転生してから、きっちり2年と2ヶ月が経過した。
森の周辺をうろつく無垢の巨人たちなど完全にガン無視し、俺はただひたすらに、己の肉体を限界まで破壊しては再生させる狂気の修練に没頭し続けた。
地下深くの岩盤をぶち抜くことに熱中しすぎた代償として、何度か地盤沈下を引き起こし、何万トンという土砂と岩石の下敷きになって生き埋めになりかけたこともあった。
しかし、その程度のハプニングすら、今の俺にとってはちょっとした筋トレか、せいぜいサウナ程度の息苦しさに過ぎない。
自らの怪力と硬質化を使って押し潰してくる土砂を粉砕し、巨大なモグラのように地上へ這い出る日々を繰り返した。
その結果───俺はついに、頭部から下、首の付け根から足の爪先に至るまでの「全身硬質化」を達成した。
青白く輝く、鋼鉄やダイヤモンドすら赤子扱いできるほど強固な結晶の鎧。
それを15メートルの巨体すべてに分厚く纏わせても、なんと体内タンクの謎エネルギーには、もう1回分全身をフル硬質化できるだけの余力が残されている。
限界までタンクを空にしては拡張し続けた成果が、底なしのスタミナお化けを爆誕させてしまったらしい。
全身の物理的強度、桁違いのパワー、そして巨体に似合わぬ爆発的な瞬発力。
それらのステータスは、最早「埒外」という言葉すら生温い次元に到達していた。
ひとたび硬質化した巨大な拳を全力で振り抜けば、直撃させるまでもなく、巻き起こる衝撃波だけで周囲の地形が抉れ、計り知れない局地的な災害を生み出してしまう。
だが、今の俺はただ暴れるだけの怪獣ではない。
力任せの破壊から一歩進み、硬質化の「形状」を脳内で精密にコントロールする技術も身につけつつあった。
例えば、腕全体を極限まで薄く鋭利な巨大刃に変成させて横に薙げば、あの樹高80メートルを超える分厚い巨大樹でさえ、まるで熱したナイフで常温のバターを切るように、抵抗ゼロで綺麗に伐採できてしまうのだ。
切り口はあまりに滑らかで、鏡面のように景色を反射するほどである。
あまりにも力が余り余っているため、最近ではこの硬質化能力を使って、「何か便利な物作りができないか?」と密かに研究している始末だ。
巨大なクリスタルの椅子やテーブルを作ってみたり、即席の地下シェルターを形成してみたり。もはや気分は15メートル級の巨大なマインクラフターである。
……ふと、自作の無駄に豪華な水晶の椅子に腰掛けながら、俺は真顔で思うのだ。
「もうこれ以上強くなって、一体俺はどうすんだ?」と。
いくらなんでもオーバースペックすぎる。一人で地鳴らしの超大型巨人の群れに単騎掛けでもするつもりか?
そんな、自分がどこへ向かっているのか分からなくなりかけていたある日のこと。
ずっと地下の岩盤エリアに引き籠もっていたせいか、無性に外の空気が吸いたくなり、俺は何となく巨大樹の森の地表を散策することにした。
地上を歩くのは本当に久方ぶりだった。木漏れ日を浴びながら歩を進めていると、前方の視界に、複数の「無垢の巨人」たちの姿を捉えた。
5メートル、7メートル、11メートル。様々なサイズで、相変わらずぽっこりと出た腹やアンバランスな手足を揺らしながら、木々の間をあてもなく彷徨っている。
(あぁ、久しぶりに見たな。相変わらずキモい顔してんな……)
などと、安全圏から野生動物を観察するような暢気な気分で眺めていた、その時だった。
ピタリ、と。
奴らは俺の巨大な姿を視界の端に捉えるなり、その不気味な徘徊を止めた。
そして、一斉にこちらへ顔を向けたかと思うと――次の瞬間、耳まで裂けた口から滝のように涎を撒き散らし、異常なまでの執着と歓喜をその虚ろな顔に張り付けて、一直線にこちらへ向かって猛ダッシュしてきたのだ。
「……は?」
俺は思わず歩みを止めた。
おかしい。絶対におかしい。
俺がこの世界に転生したばかりの頃、平原で出会ったあの小型巨人をはじめ、無垢の巨人たちは俺のことなど「ただの同族」として完全にスルーしていたはずだ。
背景の木や石ころと同じ、空気のような扱いだった。
それが今、奴らの濁った双眸には、明確な「食欲」が宿っている。
まるで、極上のフルコースのメインディッシュを、あるいは何十年も飢餓状態で探し求めていた至高の獲物を見つけたかのように、狂ったように歓喜しながらこちらへ群がってくるのだ。
どういうことだ?
やっぱ、俺は最初からただの「無垢の巨人」じゃなかったのか?
九つの巨人のどれかの能力を内包していて、強くなったことでその性質が表面化したとでもいうのか?
それとも、あの2年以上に及ぶ狂気的な自己破壊と再生の訓練の果てに、俺の肉体の構造や発するエネルギーそのものが変質し、奴らにとって致命的に魅力的な
───人間以上に美味そうな匂いを放つ存在へと「進化」してしまったからなのか?
ズシンッ、ズシンッ、ズシンッ!!
そんな疑問を頭の中でぐるぐると巡らせている間にも、奇行種じみた猛烈なスピードで、群がり来る巨人たちとの距離はみるみるうちに縮まっていく。