進撃の巨人の世界に15m級の無垢(?)の巨人として転生してしまった……   作:感謝君

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第六十二話

巨大樹の森の地下深く、青白い発光鉱石が幻想的に照らし出す広大な空間。

 

 

かつてない規模の壁外調査に駆り出され、極限の緊張状態から解放された約三百名の調査兵団の面々が、

 

俺の作ったハンモックやクリスタルのベンチで完全に骨抜きになってハーブティーを啜っているその裏で。

 

 

 

俺は、地下空間の中央に鎮座する巨大なクリスタル製の衣装棚の前で、大忙しで作業を進めていた。

 

 

「よいしょ、っと……シワにならないように、丁寧に……」

ここ一ヶ月の「現実逃避という名の狂気のファッションショー」以降に生み出された、我が子のように大事な自作衣装たち。

 

 

 

色とりどりのスカートやブラウス、そして質感にまでこだわり抜いた数々の衣服を、引越し用に生成した特大の硬質化トランクケースへと次々に詰め込んでいた。

 

 

 

これらはすべて、俺の血と汗とクリスタル硬質化能力の結晶である。

 

 

壁内に持ち帰れば、間違いなく王都の貴族が目の色を変えて買い漁るレベルの超高級ブランド品だ。

 

 

置いていくなどという選択肢はない。

「ふぅ……こんなもんかな。あとは、壁までの道中を凌げる動きやすい服に着替えて……」

 

 

俺がトランクの蓋を閉めようと一息ついた、その時だった。

 

 

「アトラス」

背後から、ひどく低く、そしてただならぬ真剣さを帯びた声で呼び止められた。

 

 

振り返ると、そこには俺の最愛の人にして人類最強の矛、リーシェ・ベニアが立っていた。

 

 

だが、俺の視線は彼女の顔ではなく、彼女の両手に恭しく捧げ持たれている「ある一着の衣服」に釘付けになった。

 

 

(……なっ、それは……!!)

それは、俺が衣装作りにおいて完全に狂に陥っていた時期に生み出した、渾身の最高傑作。

 

 

 

漆黒の布地と、植物の繊維を極限まで細かく裂いて純白の絹のように仕立て上げたエプロン。

 

 

計算し尽くされたフリルの配置と、絶対領域を強調する絶妙な丈のスカート。

 

 

そう、俗に言う『ヴィクトリアン風・王道メイド服』である。

 

「アトラス……これを着て」

リーシェは、かつて巨人の大群を前にした時よりも遥かに真剣な、一切の妥協を許さない眼光で俺を見据え、その残酷な要求を突きつけてきた。

 

 

「無理!」

俺はコンマ一秒で即答した。

 

 

いくらなんでも、これから壁外の荒野を三百人の男たちと共に何時間も馬に乗って帰還するというのに、なんでこんなヒラヒラのメイド服を着て行かなければならないのか。

 

 

俺の尊厳が死ぬ。完全に性的な目で見られるか、狂人扱いされるかの二択しかない。

 

 

「脱げ!!!」

「何言ってるの!?」

俺の拒絶を聞くや否や、リーシェは一切の躊躇なく両手を伸ばしてきた。

 

 

「問答無用!!!」

 

「ひゃああっ!?」

バッ!という風切り音と共に、リーシェの恐るべき速度の手が、俺が今身に纏っている純白のサマーワンピースの襟元を強引に掴みにかかった。

 

 

俺の『道』に接続され、リミッターの外れた擬似アッカーマンとなった身体能力。

 

 

それが今、巨人の討伐ではなく、俺の服をひん剥くという一点において最高出力で発揮されている。

 

 

信じられないほど慣れた、そして一切の無駄がない洗練された手つきで、ワンピースの背中の結び目が解かれ、肩紐が乱暴に引きずり下ろされる。

 

 

(ま、待て待て待て!! ここは地下空間のド中央だぞ!?)

俺の視界の端で、ハーブティーを飲んでいたエルヴィン団長やミケ、ハンジ、そして三百人の兵士たちが、

 

突然始まった「最強の兵士による美少女への公開ストリップ」に気づき、全員が目玉を飛び出させんばかりに驚愕してこちらをガン見しているのが見えた。

 

 

このままでは、俺の純潔(※中身は男だが)が三百人の精鋭たちの前で白日の下に晒されてしまう!

 

 

俺は極限のパニック状態のまま、脳内の硬質化命令を限界突破の速度で足元に叩き込んだ。

 

 

 

───ガゴォォォォンッ!!!

 

 

 

けたたましい轟音と共に、地下空間の岩盤から超硬度のクリスタルが凄まじい勢いで隆起する。

 

 

 

それは瞬く間に巨大な半球状のドームとなり、俺とリーシェの二人だけを完全に包み込み、外部からの視線を完全に遮断した。

 

 

 

外にいる調査兵団の面々は、突如出現した謎のクリスタルドームを前に、間違いなくハーブティーを吹き出して大混乱に陥っていることだろう。

 

 

 

だが、ドームの内側にいる俺にとっては、そんなことはどうでもよかった。

 

 

外部の視線は遮断できたが、最大の脅威は目の前にいるのだから。

 

 

「あ……ぅ……」

クリスタルの床の上。

 

 

ワンピースを完全に奪い取られ、自作の純白の下着(これを作るのにも相当な試行錯誤があった)一枚の姿でへたり込む俺。

 

 

両腕で必死に身を隠し、肩を震わせながら、涙目で上目遣いに目の前の暴君を見上げる。

 

 

その姿は、信じていた者に裏切られ、すべての尊厳を奪われて絶望の淵に沈む、薄い本でよく見る『NTRヒロイン』そのものの悲愴な表情だった。

 

 

「…………っ」

俺を見下ろすリーシェは、荒い息を吐きながら、ゴクリと大きく喉を鳴らした。

 

 

彼女のアイスブルーの瞳は、まるで極上の獲物を前にした肉食獣のように爛々と輝き、俺の白い肌の隅々までを舐め回すように、まじまじと、一寸の隙もなく凝視している。

 

 

 

逃げ場はない。

 

この狭いクリスタルの密室で、彼女の異常なまでの膂力と執着から逃れる術は、現在の俺には存在しなかった。

 

 

 

俺は屈辱に唇を噛み締めながら、震える手で彼女からメイド服を受け取った。

 

 

「……見ないでよ……っ」

「瞬きすらしないわ。さぁ、早く」

 

情け容赦のない宣告。

 

俺は、リーシェから向けられる文字通り穴が開くほどの熱視線を全身に浴びながら、絶望的な『生着替え』を強行する羽目になった。

 

 

 

ブラウスに袖を通すたびに、布擦れの音が密室に響く。

 

 

 

スカートを持ち上げ、腰のフックを留める。

 

 

その間も、リーシェの視線は俺の太ももや腰のライン、そして胸元の谷間へと容赦なく突き刺さってくる。

 

 

恥ずかしさで顔から火が出そうだった。全身の血液が沸騰し、脳髄が焼き切れそうだ。

 

 

最後に、純白のフリルがあしらわれたエプロンの紐を背中でキュッと結び、頭にメイドの象徴であるホワイトブリム(ヘッドドレス)をそっと乗せる。

 

 

(……終わった。俺の人間としての尊厳が、今ここで完全に死んだ)

 

無事(精神的には瀕死の重傷)に着替えを済ませ、俺は力なく立ち上がり、彼女の前に立った。

 

 

完璧に採寸されたメイド服は、俺の黄金比のボディラインをこれでもかと引き立て、楚々とした中にも破壊的なまでの扇情さを醸し出していた。

 

 

俺は、恨みがましい視線をリーシェへと向ける。

 

すると───

 

「…………尊い……ッ」

 

 

リーシェは、両手で口元を覆い隠し、完全に悟りを開いたような、涅槃の境地に達した表情で天を仰いでいた。

 

 

そして、彼女の形の良い小さな鼻から、タラーッ……と、一筋の鮮やかな赤い線が、一直線に流れ落ちていくのが見えた。

 

 

人類最強の鬼神を、ただメイド服を着ただけで物理的に流血させるという、ある意味での圧倒的な大戦果。

 

 

だが、そんなことで俺の削り取られたHPが回復するはずもない。

 

 

俺は、羞恥心で涙目に潤んだ瞳で彼女を睨みつけ、顔を真っ赤にしながら、せめてもの反撃として、震える声でその言葉を絞り出した。

 

 

「……この、変態っ……!///」

密室のクリスタルドーム内に響いたその甘く掠れた罵倒は、リーシェの鼻血の流量をさらに倍増させるという、最悪の逆効果しか生まないのだった。

 

 

 

 

 

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