進撃の巨人の世界に15m級の無垢(?)の巨人として転生してしまった…… 作:感謝君
「……終わったわ。さぁ、アトラスのところへ帰ろう」
エルヴィン団長たちとの会議を強引に終わらせた私は、夜風が吹き抜ける野営地を小走りで進んでいた。
頭の中は、明日の模擬戦のことでも、今後の壁内での生活のことでもない。
ただ一つ、私が無理矢理着せたあの至高のメイド服姿で、テントで私の帰りを待っているであろう愛しい彼女のことだけでいっぱいだった。
私に割り当てられた、分厚いキャンバス地のテント。
その前に辿り着いた私は、はやる気持ちを必死に深呼吸で押さえ込み、音を立てないようにそっとフラップを捲り上げた。
ランタンの微かなオレンジ色の灯りが照らし出す、狭いテントの内部。
そこに用意された簡易ベッドの上で。
「…………っ」
私の口から、声にならない悲鳴が漏れた。
アトラスは、漆黒の布地と純白のフリルが幾重にも重なるあのメイド服を着たまま、完全に無防備な姿で丸くなって眠りこけていた。
きっと、彼女なりに色々あって疲れていたのだろう。
私の帰りを待とうとしてくれたのか、シーツも被らずに、ベッドの端でコトンと寝落ちしてしまったような姿勢だ。
私は足音を殺してベッドに近づき、床に膝をついて、その寝顔を間近で覗き込んだ。
「……可愛い……」
ランタンの光に照らされたその顔は、本当に、神様が狂ったような情熱を注いで創り上げたとしか思えないほど完璧な造形をしていた。
長く濃いまつ毛が白い頬に影を落とし、微かに開いた桜色の唇から、規則的で小さな寝息が漏れている。
艶やかな漆黒の髪がシーツの上に広がり、純白のホワイトブリムが少しだけズレているのが、また堪らなく愛おしかった。
あの日、巨大樹の森で背中を預け合った、15メートルの巨大で温かい背中。
それが今、こんなにも華奢で、腕の中にすっぽりと収まってしまうほどの可憐な少女の姿になって、私の目の前で無防備に眠っている。
(……ああ、ダメだ。理性が……)
ブツンッ、と。
私の中で、今日一日微かに残っていた「上官としての矜持」や「人としてのモラル」といったストッパーが、音を立てて完全に切断された。
私は本能の赴くままに、ゆっくりと顔を近づけ──アトラスの滑らかな白い首筋のあたりに、鼻先をそっと埋めた。
「スゥゥゥゥゥゥゥ…………ッ、はぁぁぁ……っ」
肺の限界まで、彼女から立ち昇る甘い匂いを吸い込む。
森の果実と、陽だまりと、そしてアトラス自身が持つ、脳髄を直接蕩けさせるような極上の香り。
「……んふふ……アトラスの匂い……さいっこう……」
私は恍惚とした表情で何度も何度も匂いを嗅ぎ、その甘い香りを自身の細胞の隅々にまで刻み込んでいく。
匂いだけで満足できるはずがなかった。
私は震える右手を伸ばし、彼女の頬にそっと触れた。
「……温かい……」
巨人体だった時の、あの無骨な高温の熱ではない。
人間の、女の子の、柔らかくて人肌の温もり。指先を滑らせて唇の端に触れると、ぷにんとした柔らかな感触が返ってくる。
そのまま手は、艶やかな黒髪を撫で、メイド服の襟元から覗く華奢な鎖骨をなぞる。
さらに視線を落とせば、寝返りを打ったせいで少し捲れ上がったメイド服のスカートの裾から、眩しいほどに真っ白な太ももが覗いていた。
ニーハイソックスとスカートの間の、いわゆる『絶対領域』というやつだ。
私はゴクリと大きく喉を鳴らし、吸い寄せられるようにその柔らかな肌へと手を伸ばした。
すべすべとした、まるで最高級の絹のような手触り。そこから伝わってくる確かな脈動。
「……私のもの。アトラスは、全部私のものよ……」
誰にも渡さない。壁内のどんな権力者にも、調査兵団の連中にも、絶対に指一本触れさせない。
この美しさも、この甘い匂いも、この可愛すぎる寝顔も、すべて私だけのものだ。
「んぅ……」
不意に、アトラスが微かに寝返りを打ち、身をよじるようにして小さく唸り声を上げた。
私はビクッと肩を揺らして手を引っ込め、息を潜めた。起こしてしまっただろうか。
だがアトラスは目を覚ますことなく、そのまま無意識のうちに、私の伸ばしていた腕に自分の両腕を絡ませ、ギュッと抱きつくようにして再び寝息を立て始めた。
まるで、私の温もりを求めてくれたかのように。
「…………ッ!!!」
私の心臓が、早鐘のように激しく、痛いほどに打ち鳴らされる。
顔から火が出るほど熱い。彼女の胸の柔らかな双丘が私の腕に押し付けられ、その甘い寝息が私の手の甲にかかっている。
限界だった。
もはやこれ以上の刺激は、私の生命活動に重大な支障をきたす。
「……おやすみ、私のアトラス……」
私は限界まで緩みきっただらしない笑顔のまま、彼女の額にチュッと優しく口付けを落とした。
そして、腕を絡められたままの不自然な体勢で自身の類い稀なる身体操作を遺憾無く発揮しながら薄着になり、ベッドの脇に寄り添って、この世界で一番幸せな夜の空気を噛み締めながら、彼女の寝顔を朝まで一睡もせずに見つめ続ける決意を固めるのだった。