進撃の巨人の世界に15m級の無垢(?)の巨人として転生してしまった……   作:感謝君

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第七十四話

テントでのあの羞恥の極みのような事件の後、着替えを終えてスッキリした顔のリーシェに事実確認を行い、本当に昼に「公開模擬戦」を行うことが確定してしまった。

 

 

そして、昼

 

 

撤収を終えた調査兵団の面々は、俺が硬質化能力で生成した超透明な巨大結晶の壁の奥で待機している。

 

 

万が一の余波から彼らを守るため、俺とリーシェはそこから500メートルほど離れた平原のど真ん中で、数十メートルの距離を空けて向かい合っていた。

 

 

「こっちはいつでもいいわよ!」

 

立体機動装置のブレードを両手に構え、マントを翻しながらリーシェがこちらを見据えて叫ぶ。

 

 

その瞳には、最愛の恋人(俺)と全力でじゃれ合えるという歓喜と、純粋な闘志がギラギラと燃え盛っていた。

 

 

彼女の言葉を皮切りに、俺は手に持っていた硬質化ナイフで、自身の手のひらを躊躇なく切り付ける。

 

 

───カァッ!!

 

 

同時に甲高い雷鳴のような音と、視界を白く染め上げる鈍色の閃光が走り、大地を揺るがす轟音が平原に響き渡った。

 

 

膨大な熱量と光の渦の中、俺の意識は、瞬時に再構築された15メートルの肉体へと移り変わる。

 

 

鋼のように鍛え上げられ、無駄な脂肪が一切ない、彫刻のような男性ベースの端正な巨躯。

 

 

(意識、動作、出力共に正常……よし)

 

 

見下ろす視界。みなぎる無限の力。メイド服を着せられていた時のあの庇護欲を誘うひ弱さは微塵もない。

 

 

俺は足元のリーシェを見据え、立体機動装置が平原では不利であることを考慮し、地面を踏み鳴らした。

 

 

 

ズゴゴゴゴッ!と、俺たち二人を囲むように、ワイヤーを打ち込むための脆い硬質化の柱を十数本、数十メートルの高さで林立させる。

 

 

「全身硬質化させなくて良いの?」

 

私が用意した足場を見上げながら、リーシェが挑戦的な表情で声を上げる。

 

 

俺は、あえてこの威厳ある男性巨人の見た目に合わせて、声のトーンを重く低く落とし、口調を変えながら応えた。

 

 

「私が必要だと思ったらしよう」

 

巨人にしては整いすぎている端正な顔で、微かに口角を上げて笑みを作る。

 

 

「余裕ぶっちゃって、まぁ模擬戦だから良いけどね」

 

リーシェがニヤリと好戦的な笑みを深めた、次の瞬間。

 

 

────ドシュゥゥゥゥゥッ!!!

 

 

大砲の発射音にも似た爆音が弾けた。

 

俺が彼女に与えた『超高圧巨人蒸気ボンベ』が火を噴き、リーシェの小さな身体が、物理法則を完全に無視した超音速の弾丸となって宙を舞った。

 

 

速い。常人の動体視力では、残像すら捉えられないだろう。リヴァイ兵長と同等か、あるいはそれを凌駕する神速の立体機動。

 

 

────だが

 

(……遅いな)

 

俺の『独立座標』から力を供給されているリーシェの動きが、大元のサーバーである俺に捉えられないはずがないのだ。

 

 

俺の体感時間は極限まで引き伸ばされ、スローモーションの世界の中で彼女の軌道が一本の光の線として明確に視覚化される。

 

 

背後からのうなじへの凶刃。

 

 

俺は振り返りもせず、ただ右手の『人差し指』の表面にだけ、薄く極薄のクリスタル装甲を展開し、背中の後ろへスッと差し出した。

 

 

────カキィィィィンッ!!!

 

 

リーシェの振るう、絶対に刃こぼれしない特注ブレードが、俺の人差し指の腹と衝突し、凄まじい衝撃波が周囲の平原の草を円形に薙ぎ払った。

 

 

「なっ……指一本!?」

 

驚愕に目を見開くリーシェ。彼女のフルパワーの斬撃を、俺は文字通り指先一つで完全に受け止めていた。

 

 

 

「ほら、止まっているぞ」

 

重低音の巨人の声でそう告げると同時に、俺は指先で軽くブレードを弾き返した。

 

 

それだけでリーシェの姿勢が大きく崩れ、彼女は慌ててワイヤーを別の柱へと射出して体勢を立て直す。

 

 

「あははっ! さすが私のアトラス! じゃあ、これならどう!?」

 

 

歓喜に顔を歪めたリーシェは、林立する十数本の柱をピンボールのように高速反射し、全方位からの連続攻撃を仕掛けてきた。

 

 

アキレス腱、膝裏、手首、眼球、そしてうなじ。

 

 

四方八方から襲い来る銀色の斬撃の雨。調査兵団の精鋭たちなら、一秒で肉塊に変えられるであろう絶対的な死の舞踏。

 

 

しかし俺は、歩幅一つ変えることなく、その場に直立したまま、最小限の動きだけでそれをすべて無効化していく。

 

 

刃が触れるコンマ一秒前に、狙われた箇所の皮膚だけをミリ単位で硬質化させる。

 

 

キンッ! カンッ! ガィィィンッ!!

 

 

まるで巨大な鐘を乱れ打つような金属音が連続して響き渡る。

リーシェはどれだけ高速で斬りかかろうとも、俺の皮膚一枚すら裂くことができない。

 

 

「嘘でしょ……!? 私、一度も捉えきれてない……っ!」

 

空中で彼女が焦燥の声を漏らした瞬間、俺は反撃に出た。

 

 

と言っても、本気で殴れば彼女の体が消し飛んでしまう。

俺は、彼女がワイヤーを突き刺そうとした柱の根本を、軽く踵で踏みつけた。

 

 

ドゴォォォォンッ!!

 

それだけで大地が爆発したかのように波打ち、十数本の柱がドミノ倒しのように一斉に崩壊を始める。

 

 

「きゃあっ!?」

 

足場とワイヤーの支点を完全に失い、空中に放り出されるリーシェ。

 

 

そこへ、俺はゆっくりと巨大な手を伸ばした。

 

彼女が体勢を立て直すよりも早く。

 

俺の巨大な親指と人差し指が、空中に浮かぶ彼女の立体機動装置のワイヤーの付け根を、まるでトンボを摘むように、極めて優しく、かつ絶対に逃げられない正確さで「つまみ上げた」。

 

 

「えっ……あ……」

 

地上10メートルの空中で、俺の二本の指につままれてブラブラとぶら下がる人類最強の鬼神。

 

 

彼女はブレードを振るうこともできず、ただポカンと口を開けて、俺の巨大な顔を見つめ返した。

 

 

「勝負あり、だな」

 

俺は微かに目を細め、巨人の顔で優しく微笑んだ。

 

 

戦闘開始から、わずか数十秒の出来事だった。

 

 

遠く500メートル離れた透明なクリスタルの壁の向こう側。

そこでは、エルヴィン団長をはじめとする三百名の調査兵団の精鋭たちが、神々の遊戯としか思えない圧倒的な次元の差を見せつけられ、誰一人として声を発することなく、ただ口をぽっかりと開けて完全に魂を抜かれていた。

 

 

 

人類の希望が、文字通り「指先一つ」で赤子のようにあしらわれる姿。

 

 

『兵士四千万人分』という絶望的な数字が、決して恋は盲目ゆえの誇張などではなかったことを、彼らは細胞の底から思い知らされたのだった。

 

 

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