進撃の巨人の世界に15m級の無垢(?)の巨人として転生してしまった……   作:感謝君

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リーシェ視点です


第八話

842年、10月中頃。

 

調査兵団に入隊してから、今年で5年になる。

 

この地獄のような壁外調査における異常な死亡率を考慮すれば、私はもう立派な「ベテラン」と呼ばれる部類に入っていた。

 

幾度となく仲間の死を看取り、巨人の恐ろしさを骨の髄まで理解しているつもりだった。

 

今日は、壁外に存在する巨大樹の森の内部調査とルート開拓が目的だった。

 

しかし、運悪く森の入り口付近で予期せぬ巨人の大群に遭遇し、陣形は瞬く間に崩壊。

 

乱戦と混乱の中、私は所属する班から完全に孤立し、一人ではぐれてしまったのだ。

 

立体機動装置のガスもブレードも残り僅か。助けが来る保証もない。

 

薄暗い巨大樹の森を当てもなく散策しながら、私は徐々に胃の腑から這い上がってくるような深い絶望に打ちひしがれていた。

 

その時だった。

 

 

 

ズドォォォォンッ……!!

 

 

 

唐突に、森の奥深くから空気を揺るがすような激しい衝突音と地響きが辺りに響き渡った。

 

本来であれば、生存を第一とするベテラン兵士として、正体不明の音源からは直ちに離れるのが鉄則だ。奇行種の同士討ちか、あるいはもっと最悪な何かか。

 

だが、死の恐怖に脳が麻痺していたのか、私は何をトチ狂ったか、ガスを吹かしてその轟音の発生源へと近づいていってしまったのだ。

 

太い枝の上に降り立ち、木葉の隙間からそっと視界を下へ向ける。

 

そこで私が捉えたものは、これまでの5年間の兵士生活で培った常識を根底から覆す、あまりにも異常な光景だった。

 

一体の巨人が、他の数十体の巨人を一方的に蹂躙している姿。

 

……全く、理解が及ばなかった。

 

そもそも、中心で暴れ狂っているあの15m級巨人の「強さ」がまずおかしい。

 

群がってくる巨人の群れを素手で叩き潰し、あろうことか、自身と全く同じ体格であるはずの15m級巨人の脚を掴み、まるで軽い雑巾か何かのように軽々と振り回しているのだ。

 

その膂力は、物理法則を無視しているとしか思えない。

 

「……化け物だ」

 

無意識のうちに、震える唇からそんな言葉が零れ落ちた。

巨人は総じて人類の脅威であり、等しく化け物だ。そんなことは分かっている。

 

だが、目の前で同族をミンチに変えていくあの巨人は、間違いなくその「化け物の中の化け物」としか言いようがなかった。

 

永遠にも、何時間にも思えるほどの地獄の蹂躙劇。

 

しかし、現実の時間はほんの十数秒しか経過していなかった。

 

嵐が去った後のようにピタリと動きを止めたその怪物の足元には、無惨な肉片と化した巨人たちの残骸が転がり、おびただしい量の高温の蒸気が森を白く染め上げている。

 

動けない。逃げなければいけないのに、足がすくんで一歩も動けない。

 

すると、ふと、血だまりと蒸気の中心に立つあの化け物が、ゆっくりとこちらの方へ顔を向けた。

 

「……あ」

 

私の口から、ヒュッと空気が抜けるような乾いた声が漏れる。

 

───目が、合った。

 

距離はあるはずなのに、はっきりと分かった。

 

あの巨人の瞳は、他の無垢の巨人のような焦点の合わない虚ろなガラス玉ではない。

 

そこには明確な「知性」と、理性的な光が宿っていた。

 

そしてあろうことか、その整いすぎた巨人の顔に、まるで親しい隣人を見つけたかのような『微笑』を浮かべながら。

 

『こんにちは』

 

ズシン、と。大気を震わせるような恐ろしく低い、しかし流暢な人間の言葉が、私の鼓膜と絶望しきった心臓を直接打ち据えた。

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