進撃の巨人の世界に15m級の無垢(?)の巨人として転生してしまった……   作:感謝君

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第七十九話

……シテ……コロ……シテ……

 

 

今、俺は前世からの人生をすべてひっくるめても断トツで最悪な、今世紀最大の羞恥プレイという名の『公開拷問』を全身で受けていた。

 

 

シガンシナ区の巨大な壁門を抜け、石畳のメインストリートへと足を踏み入れた調査兵団の帰還行列。

 

 

 

その栄えある一番前、つまり指揮官やエースが陣取るべき最も目立つ特等席に、俺は現在進行形で、数え切れないほどの壁内民衆と駐屯兵団の前にその姿を晒している。

 

 

 

……よりにもよって、この過剰なフリルと漆黒の布地が風に舞う、破壊的な『メイド服』姿でッッ!!!

 

 

 

(どうして……どうしてこうなった……っ!)

 

俺は、頭に乗せられた純白のホワイトブリムを両手で深く引き下げ、顔を隠すようにしながら心の中で血の涙を流していた。

 

 

 

背後を振り返れば、エルヴィン団長をはじめとする三百人の精鋭たちが整然と馬を進めているが、彼らは誰一人としてこの狂った状況を止めてはくれなかった。

 

 

 

エルヴィン団長に至っては、俺と目が合うと「すまない、私にはどうすることもできない。強く生きてくれ」と言わんばかりの死んだ魚の目でスッと視線を逸らす始末だ。

 

 

 

人類の希望、仕事しろ。

 

 

 

沿道に詰めかけた群衆と、警備に当たっていた駐屯兵団の兵士たちは、我々の姿を見た瞬間、文字通り全員が目を見開き、口を半開きにしながら石像のように立ち尽くしていた。

 

 

 

夕日差すシガンシナ区のメインストリートは、馬の蹄の音だけがカポッ、カポッと虚しく響き渡る、完全にカオスで異様な静寂に支配されている。

 

 

 

それもこれも、全部俺の背中にピッタリと張り付き、細い腰に腕を回して絶対に逃げられないようホールドしてくる、この真性変態女(リーシェ)のせいだ!!!

 

 

 

(俺が一体何をしたって言うんだ! 確かにちょっと……いや、かなり約束をすっぽかしたけど!)

 

 

 

一年と三ヶ月前。あの雪降る巨大樹の森で、巨人体だった俺は、泣きじゃくる彼女の頭を撫でながら「人間の姿に戻る方法を見つけたら、必ず会いに行く」と約束した。

 

 

 

だが、いざ人間への再構築に成功してみれば、かつての平凡な男子大学生の面影など微塵もない、神がかり的な黄金比を持つ『極上の超絶美少女』へとTS(性転換)してしまっていたのだ。

 

 

 

俺はあの時、そのあまりにも理不尽な現実にパニックを起こし、現実逃避のために約一ヶ月間、ひたすら森の地下でクリスタルをこねくり回して『衣装製作(このメイド服含む)』という狂気の趣味に没頭してしまった。

 

 

 

その結果、待ちくたびれたリーシェが軍隊を私物化して突撃してくるという大惨事を招いたのだ。

 

 

(…………あれ? やっぱ完全に俺が悪いんじゃねぇか!!!)

 

 

ちくしょう!!! 弁解の余地が一つもねぇ!!

 

 

自身の招いた自業自得な結果に絶望し、俺はギュッと唇を噛み締めた。

 

 

 

今の俺の表情は、さながらオークの群れに囲まれ、凌辱される数秒前で羞恥と屈辱に染まりきった『くっころ系女騎士』の如く、耳の先まで真っ赤に染まり、涙目で震えていることだろう。

 

 

 

自分が男だというプライドが、この極限の辱めによって音を立てて崩れ去っていくのを感じる。

 

 

 

そんな俺の葛藤など露知らず、しばらくの間、幽鬼の行列でも見るかのように呆然と立ち尽くしていた民衆たちの間で、ようやく「状況の整理」がついたらしい。

 

 

 

「お、おい……嘘だろ……?」

 

「荷馬車が……カラだぞ! 負傷者も、遺体も一つも積んでねぇ!」

 

「全員無傷だ! 調査兵団が、誰一人欠けることなく帰ってきたぞおおおおッ!!」

 

一人が上げた震える声が導火線となり、シガンシナ区のメインストリートは、一瞬にして爆発的な歓声と熱狂の渦に飲み込まれた。

 

 

 

「うおおおおおおおおッッ!!!」

 

「すげぇ! 奇跡だ! 調査兵団万歳!!」

 

「エルヴィン団長! あんたこそ人類の救世主だ!!」

 

まぁ、そりゃそうだ。

 

調査兵団史上初となる、死者、負傷者、行方不明者、完全0人。

 

 

これまでの「壁外調査=大量の死と絶望を持ち帰るだけの無駄な行為」という常識を根底から覆す、壁内人類史に永遠に刻まれるであろう偉業を、彼らは今まさに目の当たりにしているのだから。

 

 

 

……謎のメイド美少女を手土産にして。

 

 

「おい見ろよ! 先頭に乗ってるあの子、一体誰だ!?」

 

「めちゃくちゃ可愛い! いや、美人すぎるだろ! 女神か!?」

 

「壁外にんなべっぴんさんが落ちてるわけねぇだろ! でも、あの鬼神リーシェ・ベニアが、あんなに優しく抱きしめてるぞ!?」

 

「ていうか、あのリーシェ班長が……笑ってる!?」

 

そこからは、まさに魔王を討伐した勇者の凱旋パレードの如く、割れんばかりの賞賛の嵐だった。

 

 

そして、その熱狂の中心は、いつしか「奇跡の生還」から、「人類最強の鬼神が背後から抱きしめている謎の超絶美少女」という、あまりにもゴシップ的で視覚的な衝撃へとシフトしていく。

 

 

「お幸せになーっ!!」

 

「班長! ついに嫁さん見つけたのかー!?」

 

時折、沿道から俺たち二人を指して、そんなトンチンカンな祝福(?)の言葉までが投げかけられる。

 

 

やめてくれ。俺のライフはもうゼロだ。精神がすり下ろし器にかけられている気分だ。

 

 

 

だが、そんな俺の絶望をよそに。

 

「ありがとう!! ええ、すっごく可愛いでしょ!! 私のお嫁さんよ!!」

 

 

俺の背中にぴったりと張り付くリーシェは、兵士達との会話で聞いた普段の他者をゴミのように見下ろす絶対零度の眼光を微塵も感じさせない、まるで花が咲き誇るような、満面の、とびきり愛らしい笑顔で民衆に向かって大きく手を振り返していたのだ。

 

 

「ちょ、リーシェ! 何言ってるの!? 恥ずかしいから手振るのやめて!」

 

「なんで!? みんな私たちの門出を祝福してくれてるのよ! ほらアトラスも、もっと胸張って! あなたのその神がかった美貌を、壁内の民衆にしっかり見せつけてやりなさい!」

「公開処刑でしょっ…こんなの!! 」

 

 

 

「キャーッ! 班長さん笑いかけてくれた! 素敵ー!!」

「メイドのお姉さまー! こっち向いてー!!」

 

完全にアイドルのパレードカー状態である。

 

 

リーシェが機嫌良く手を振るたびに、沿道の民衆……特に若い男や、なぜか一部の女性たちまでが黄色い歓声を上げて沸き立つ。

 

 

鬼神が美少女に骨抜きにされ、憑き物が落ちたように笑っているという事実が、彼らの恐怖心を完全に麻痺させていた。

 

 

「はぁ、はぁ……早く、早くどこか建物の裏へ……」

 

俺が羞恥で呼吸困難に陥りそうになっていると、エルヴィン団長が胃を押さえながら前方に指示を出した。

 

 

「……全軍、このまま駐屯兵団の庁舎へ向かう! 人数が多すぎる、まずはあそこで大休止と事後報告を行う!」

 

 

その号令に従い、三百人の「無傷で帰還した精鋭と、彼らを背景に従えた百合メイドカップル」の異様な一団は、歓声と熱狂、そして無数の花びらが舞うシガンシナ区の石畳を抜け、駐屯兵団が管理する巨大な庁舎の敷地へと向けて、ゆっくりと行進を続けていくのだった。

 

 

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