進撃の巨人の世界に15m級の無垢(?)の巨人として転生してしまった……   作:感謝君

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第九十六話

844年5月1日

 

昨日の夜、自作の『オリジナル立体機動装置(硬質化糸&超高圧蒸気ブースター)』での空中散歩が楽し過ぎて、気付けば森の木々の隙間から朝焼けが差し込んでいた。

 

 

「やばっ、朝じゃん!」

 

 

俺は慌てて兵団本部の自室へと舞い戻り、急いで身を清め(巨人の蒸気で汚れを飛ばす便利機能付き)、支給されたあの無駄にボディラインを強調する兵団服に着替えて出発の支度を済ませた。

 

 

 

現在、俺たちはウォール・シーナ内に位置する調査兵団本部を出発し、一路南へと向かっている。

 

 

 

ここから壁外調査の出発拠点となるウォール・マリア南端のシガンシナ区に向けて、何百キロという果てしない距離を大移動することになるのだ。

 

 

(……いや、遠すぎだろ)

 

 

馬車に揺られながら、俺は内心で盛大に愚痴をこぼした。

 

 

(巨人化して走って向かっちゃダメ? 俺の15メートルボディの脚力なら、こんな距離あっという間なんだけど……

……ダメっすよね。

壁内の人類が「巨人が現れたぁぁ!」って大パニックになって暴動起きるよね……)

 

 

常識的な思考が即座にストップをかけ、俺は巨人化タクシーの案を早々に諦めた。

 

 

「……はぁ」

 

 

ガタゴトと揺れる幌付きの荷馬車の中で、俺は無意識に大きな溜息をついた。

 

 

妙な計らい──十中八九、エルヴィンの「リーシェの機嫌を最優先にし、かつ隔離する」という涙ぐましい配慮──によって、この広めの荷馬車には俺とリーシェの二人しか乗っていない。

 

 

 

そして当のリーシェはと言えば、俺の柔らかい太ももを極上のクッション代わりにして、完全に安心しきった顔で爆睡をかましていた。

 

 

 

俺の腰に両腕を回し、すーすーと幸せそうな寝息を立てている。

 

 

おかげで、俺には話し相手が誰一人としていないのだ。暇すぎる。

 

 

ここは壁内の安全圏であるため、当然ながら巨人の襲撃に怯える必要はない。

 

 

部隊は適度に馬の休憩を取りながら、丸一日ほどかけてシガンシナ区に到着する予定だ。

 

 

そこで一日ゆっくりと休養を取った後、いよいよ明後日、壁外調査が開始となる。

 

 

「んぅ……アトラスぅ……」

 

寝言を呟きながら、さらに俺の太ももに顔をぐりぐりと押し付けてくるリーシェ。

 

 

そのサラサラの金髪を適当に撫でながら、俺は道中のある出来事を思い出していた。

 

 

そういえば、移動が始まってしばらくした頃。

 

 

並走していたエルヴィン団長が、突然何か致命的なミスを思い出したかのように血相を変え、ひどく焦った様子で馬を寄せてきたのだ。

 

 

『すまない、アトラス殿! 大事なことを失念していた……君は立体機動装置の訓練を一度も受けていないではないか!』

 

 

壁外で馬を失えば、立体機動装置の技術が命綱になる。

 

俺の装備が素人同然であることに今更気づき、彼の胃痛が再発しかけていたのだ。

 

 

俺はリーシェを起こさないよう小声で、昨晩完成させた『硬質化の糸と圧縮蒸気を利用したオリジナル機動装置』の件を詳細に説明し、「人間の姿のままでも巨人を細切れにできるので全く問題ないですよ」と伝えた。

 

 

 

その報告を聞いた瞬間、エルヴィンは『もう何も考えたくない』とでも言わんばかりの、果てしなく遠い目をしていた気がする。

 

 

「人間のままでも規格外なのか……」と虚空に向かって呟いていたような気もするが、彼の胃壁の平和のためにも、俺はあえて気にしないでおくことにした。

 

 

 

ガタゴトと単調なリズムで揺れる馬車の中。

 

 

俺は窓の隙間から流れる平和な壁内の景色を眺めながら、数日後に迫る未知の壁外世界へと思いを馳せていた。

 

 

 

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