擬英戦記   作:キセツ

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エピソード1「シ動」

 この街は平穏であった。そこに住む人々は誰もこの平穏が永遠のものだと思っていた。この日が訪れるまでは。空から突如として、隕石らしき物体がこの街に落ちてきたのだ。落下物による衝撃によって研究所にて極秘に生み出された生物兵器『ウォームズ』が暴走を始めた。ウォームズは、雄のカブトムシのような見た目をし、体の所々が紫色に発光していた。研究者たちはウォームズの暴走にいち早く気づき、暴走を止めるための行動を迅速に開始した。しかし、研究者たちの努力むなしくウォームズによる自己増殖による数の暴力により、ウォームズは研究所を壊滅に追いやった。そしてウォームズは次の標的をこの街全体へと変えたのだった。

 彼がこの街に到着した頃にはあたりは炎に包まれていた。賑わっていた広場や建物はほとんどすべてが瓦礫と化していた。呆然としていると同じ小隊の隊員に肩を小突かれる。

 

「いくぞ。こんなところでボッーとしてちゃ被害が増えるばかりだ」

 

 そう彼に伝えると他の小隊隊員とともに先へと進む。彼も後に続いて先へと進む。あたりは燃え広がる炎の音や乱射しているであろう銃声、それに呼応するような羽音にSF映画で聞いたであろう虫の鳴き声が響き割っていた。自身が装備しているアサルトライフルで周囲を警戒しながら前へと進む。そこで一人の隊員が声を上げた。

 

「おい、こっちに来てくれ!」

 

 声を上げた隊員の元へ駆け寄るとそこには瓦礫に挟まれ力なく倒れている男女二人とその前で泣き尽くす少年が一人座り込んでいた。

 

「大丈夫か?安心してくれ、俺たちは君たちを助けに来たんだ」

 

 小隊長が少年へと声をかけた。その声に気づいた少年が顔を上げ、小隊長に必死に懇願してきた。

 

「助けて!このままじゃ父さんも母さんも死んじゃうよ」

 

 泣き声と入り交じったその叫び声を聞いた小隊長は一人の隊員に本部に報告することを指示し、残りの二人に瓦礫の下敷きとなった男女の安否確認を指示した。そして最後に残った彼にこう指示した。

 

「弧門、お前はこの子を連れて本部にもどれ」

 

 弧門と呼ばれた彼は小隊長に切り返した。

 

「隊長たちはどうするんですか?」

 

「俺たちは他の生存者たちを探す。こんないつ死んでもおかしい場所に子どもを連れる訳にはいかん」

 

「でも、どうして自分なんですか」

 

「お前はまだ新米だからだ。こういったことは俺たちに任せろ。さあ早くいくんだ」

 

 小隊長が弧門の肩を強く叩く。弧門は決心したように一息吐くと少年に優しく声をかけ、少年を背負うと来た道を駆けていった。その姿を見送った小隊長に男女の安否を確認した隊員二人が近づいてくる。

 

「隊長、やはりあの二人はもう手遅れでした」

 

「そうだったか。あの子には後で謝らなければな」

 

「隊長、本部から引き続き生存者を捜索せよと」

 

 通信を行っていた隊員からの報告を受けた小隊長は残った隊員に号令をかけ、他の生存者の捜索を再開した。そのわずか数分後にウォームズの襲撃を受け、奴らの自爆によって全滅してしまった。

 何も知らずに必死になって子どもと一緒に退避していた弧門は少年と会話をしていた。

 

「ねぇ、父さんと母さんは大丈夫かな?」

 

「きっと大丈夫さ。あの人たちはたくさんの人を助けて来たんだ。今回だって、君の父さんと母さん、それに大勢の人助け出すと思うよ」

 

「ほんと!?」

 

「本当さ。だから一緒に安全なところに行って、帰りを待とう」

 

「うん!」

 

 弧門の返答に一塁の希望を持った少年は笑顔を取り戻した。しかしそんな二人に複数体のウォームズが襲いかかってきた。即座に弧門は腰に携帯していたハンドガンで迎撃に出る。一匹を撃退することに成功したが、ウォームズの勢いは衰えなかった。迎撃は不可能と判断した弧門は背負っていた少年を抱え直すと全力で走り出した。それを見たウォームズは速度を上げ、弧門を追跡する。弧門は必死に走り続けるがウォームズとの距離は離れず、徐々にその距離を詰められていく。ウォームズの一匹が弧門たちに追いつくその瞬間、別の方向からエネルギー弾がウォームズに命中する。立て続けに撃退されていくウォームズを前に唖然としている弧門。エネルギー弾が飛んできた方向に目をやると、そこにはバイクに跨がった銀色のスーツのようなものを身にまとった人影があった。手にはウォームズを迎撃する際に使用したであろう大きな銃のようなものを持っていた。バイクから降り、弧門に近づいてくると弧門たちに声をかけてきた。

 

「・・こんなところで何をしている?」

 

「見ての通り生存者の救出を。俺は『ガナード』救助部隊ベータチームの弧門一輝です。あなたは?」

 

「ガナード・・俺のことは知らなくていい。それより、逃げるならこのバイクを使え」

 

「バイクを?しかし、それではあなたが」

 

「俺のことを心配する前にまずは背負っている命を優先しろ」

 

 銀色のスーツの男性は無愛想に弧門へそう伝えるとバイクを残してどこかへ歩いて行った。弧門は心配そうに眺めていたが少年のことを第一に考え直し、その場に残っていたバイクに乗り込む。少年に自身にしっかり捕まるように伝えるとフルスロットルで走り出す。その後ろ姿を銀色のスーツの戦士『ノクスナイト』が遠くから見送っていた。

 別の場所ではウォームズに対して猛攻を繰り出すパワードスーツ集団がいた。その集団の名は、S.A.M.。Strike Arm Militarysの略称であり、様々なタイプのパワードスーツを用いて戦闘を行う遊撃部隊である。六人のS.A.M.が数十はいるであろうウォームズに優位であった。しかし、数の差によって戦力差を埋められており、状況的には五分五分といったところだった。そこにノクスナイトが自身の武器『ブレイカムバスター』による援護射撃を開始した。S.A.M.の一人であり、両肩にショートバレルのキャノン砲にロングバレルのハンドガン型のエネルギーガン、左腕にラージシールドを装備したマークIII『スペースド』が声をかけてきた。

 

「救援に感謝します。私は、S.A.M.マークIIIスペースドと申します。あなたは」

 

「特務機関CHORDからお前たちの援護をしにきた。名はコードナンバーIV、今はノクスナイトと呼んでくれ」

 

「ノクスナイト、ガナードが我々に支援を依頼したのですか?」

 

「これはCHORDの独断だ。ガナードはお前たちのみでことを片付けさせる気だろう。でなければこんな状況で救援部隊を送るはずがない。」

 

「救援部隊ですか。その部隊は無事なのですか」

 

「・・たった一人だけ、生存者とともに逃がすことはできた。運が良ければだがな。それ以外は全滅だ」

 

「マザーからは生存者を見つけ次第、救護しつつウォームズを迎撃しろ指示がありました」

 

「ならば今はあの虫どもに集中することだな」

 

 ノクスナイトは武器を構え直す。それを見たスペースドも戦闘態勢を取り、たった七人で十倍以上はいるであろうウォームズに果敢に立ち向かっていく。

 時間だけが過ぎ、ウォームズの数を減らすことには成功しているが、自己増殖の能力によって絶滅させるには至っていない。ノクスナイトには疲労が見え始めてきたが、S.A.M.には疲れが見えない。誰もが終わりのない戦いだと考えていた。

 そのときだった。青白い熱線が戦闘中のノクスナイトたちに向かって伸びてきた。それに気づいて七人は即座に回避行動を取り、熱線はウォームズのみを焼き払った。ノクスナイトは熱線が発生した方角を見た。そこにいたのは体長が四メートル近くあるであろう白目を持ったとげとげしい見た目をした化け物が立っていた。化け物はノクスナイトたちを見ると咆哮を上げ、迫り来る。ノクスナイトはブレイカムバスターを銃から大型の剣にモードを切り替え、化け物に斬りかかる。胴体に大きな切り傷をつけたが、そこで思わぬ光景を目撃する。傷ついた化け物は周囲に飛んでいたウォームズを数匹、尻尾でたたき落とすとその虫たちを喰らい始めた。あまりの光景にS.A.M.もノクスナイトもただ呆然と見続けることしかできなかった。落ちた虫すべてを喰らい尽くした化け物は再びノクスナイトたちに向き直る。

 

「奴め、虫を食って傷を回復するとはな。趣味が悪い」

 

 先ほどノクスナイトが傷をつけた部分が修復しており、ウォームズと同じかそれ以上に厄介であると判断したノクスナイトは胸に装着しているベルトのボタンを三回押し、中央部にセットされているカプセルを回転させる。カプセルからベルトを通して右足にエネルギーを蓄積する。チャージが完了し終えるとノクスナイトは高く跳躍し、右足を前に跳び蹴りを繰り出す。その攻撃は化け物に直撃し、大きく怪物を後退することに成功するが、大きなダメージには至っておらず、そのダメージすら異常なまでの回復速度で元に戻してしまう。化け物はノクスナイトに対してに得意げな表情を見せるとノクスナイトに急接近した。それに併せてブレイカムバスターで切りつけようと構えるが尻尾にそれを阻まれ、左肩に噛みつかれる。鈍い音が鳴り、血が流れ出る。ノクスナイトは痛みにこらえ,歯を食いしばる。

 そこに大型のマニピュレーターを両腕に装備したS.A.M.マークI『スマッシャー』が化け物の上顎と下顎を無理矢理こじ開け、左足で蹴りを入れる。脚部に増設した強化型スラスターによって火力が乗った蹴りによってある程度の距離を取ることに成功する。ノクスナイトは大きなダメージを受けたために人間の姿に戻ってしまう。

 

「あなたは休んでください。ここは我々が」

 

 スマッシャーがノクスナイトに声をかけると、他のS.A.M.とともに化け物に猛攻を仕掛ける。ノクスナイトは血が滲む左肩を押さえながらただその光景を見ていることしかできなかった。両手に連射に優れたサブマシンガンタイプのエネルギーガンを装備し、背中にマイクロミサイルポットを装備したマークV『ランページ』が化け物に対して弾幕を張り続ける。そこにスペースドのショートバレルのキャノン砲も加わる。煙幕を抜け、両腕両脚に赤熱式のブレードを装備したマークVI『アサルトレイダー』とスーツ内部に搭載されているスラスターの出力を上げたマークIV『フライヤー』が近接戦闘で圧をかける。尻尾によってS.A.M.を振り払った後、再び熱線を撃ち出す。フライヤーとアサルトレイダーは左右に回避行動を取る。そこに両肩と両腕に高出力レーザー砲を装備したマークII『バスターカノン』が迎え撃つ。二つの光が衝突し、爆発を引き起こす。ノクスナイトを盾で庇うスペースド。ノクスナイトはスペースドに自身の仮説を唱える。

 

「もしかしたら奴は、取り込んだものを自身の能力に変化する力を持っている可能性がある」

 

「取り込んだものを?」

 

「やつが放つ熱線、あれをこの機械で調べていた。その結果、あの熱線はガナードが防衛部隊に支給しているレーザー砲と同じエネルギー波を感知した」

 

 ノクスナイトは右手に小型のカメラ型測定器を見せながら続けた。

 

「威力は違うが間違いなく、同じものだ。それに虫を食ってからの奴の回復速度は異常だ。俺の仮説が正しいのならウォームズが持っている自己増殖の能力を自身の細胞に利用している可能性が高い」

 

「機器を使用しているのであれば熱線の説は正しいでしょうね。そして自己再生も同じ原理。やつを倒すには細胞ごと根絶やしするほかありませんね」

 

「いや、こいつを使えばやつの能力を封じられる」

 

 ノクスナイトは胸のベルトにセットされていたカプセルを取り外し、それをスペースドに見せる。

 

「このカプセルには物体及び相手が持つ能力を無力化する力がある」

 

 カプセルをブレイカムバスターにセットする。左腕が動くのを軽く確認すると、ブレイカムバスターを両手で握りしめる。

 

「さっきは、奴の外皮に阻まれたが内部からこの能力を発動させれば」

 

「待ってください。あなたは手負いの状態なのですよ。ここは我々に」

 

「今は人手が足りない状況だ。手負いだとしても、これ以上休んではいられない」

 

 ノクスナイトはスペースドに目線を合わせる。その眼差しに宿る信念を受け取ったスペースドはノクスナイトに提案する。

 

「私が隙を作ります」

 

「あぁ頼む」

 

 スペースドは背部スラスターと脚部スラスターで地面すれすれの低空飛行を開始し、その後ろをノクスナイトが駆け出す。怪物はスマッシャーの大型マニピュレーターを破壊しその左足で踏み潰していた。ランページがエネルギーガンで怪物に対して掃射を行っていたがビクともしない。アサルトレーダーは左腕のブレード以外すべてのブレードが破損して知る状態であった。フライヤーは自身らに近づいてくるウォームズの迎撃に手を焼いており、バスターカノンは怪物との熱線とエネルギー砲の撃ち合いによってバレルがオーバーヒートを起こし、その隙に怪物の貫通性を高めた細い熱線によって、胸部を貫かれ絶命していた。

 スペースドはフライヤーを援護しつつ、怪物へと突撃をする。盾とエネルギーガンを投げ捨て、怪物にしがみつく。スペースドの行動を見たアサルトレイダーは意図をくみ取り、スペースドとともに怪物の動きを封じ込もうとする。スペースドの背後からブレイカムバスターを構えたノクスナイトが怪物の瞳に映る。

 彼らが何をしようとしているか理解した怪物は回避行動を取ろうとする。しかしその足をスマッシャーが逃がすまいと必死にしがみつく。身動きがとれない怪物にめがけ、ノクスナイトが走る。ブレイカムバスターにセットしたカプセルを回転させ、刃の部部にカプセルのエネルギーを送る。エネルギーが充填した刃を怪物に突き立てる。怪物に光が走った瞬間、怪物は大きな悲鳴にもにた咆哮を上げる。

 身体を大きく回転させ、ノクスナイトを振り払う。踏みつけているスマッシャーからは鈍い音が響く。そこからスマッシャーは動かなくなり、スペースドも吹き飛ぶ。アサルトレイダーは突き立てたブレードでなんとか組み付いていられる状態だった。座り込んでいるスペースドにフライヤーが近づく。

「大丈夫ですかスペースド」

「問題はありませんフライヤー。今怪物は自身の能力が使用できない状態です。奴を倒すのに絶好のタイミングですが、もう我々には奴に致命傷を与えられる武器が残っておりません。フライヤー、あなたに頼みがあります」

 スペースドは指を指す。そこには横たわっているノクスナイトがいた。フライヤーは指で指し示された彼を確認し、スペースドに急いで向き直る。スペースドが何を頼み、何を行おうとしているのか理解してしまったからだ。

 

「スペースド、それなら私もともに」

 

「それはダメだフライヤー。まだ彼は息をしている。彼をここから遠ざけ、守れるのは現状あなた以外いない」

「しかし!」

「それにまだウォームズが残っています。ここで全滅してはウォームズはどうなりますか」

 フライヤーは言葉に詰まる。スペースドの言うとおり、ここで全滅した場合、残ったウォームズは他の街に侵攻を開始し、より多くの犠牲を出すことになってしまう。

 

「あなた一人背負わせてしまいますが、任務継続のためにあなたまでここでいなくなってはダメなのです」

 

「・・・了解しました」

 

 フライヤーはノクスナイトに近づき、彼を持ち上げる。残ったS.A.M.たちを見回した後、全速力で後退していった。それを見届けたスペースドは重い身体を奮い立たせる。怪物がそれに気づき、スペースドに対して熱線を放つ。残った力で熱線を回避し、再び怪物にしがみつく。

 

「アサルトレイダー、我々に残された手段はもうこれしかありません」

 

「そのようですね。フライヤー、あとは頼みました」

 

「・・協定採択」

 

「焦土作戦実行!」

 

 二人のS.A.M.が叫ぶ。その瞬間パワードスーツが光を放ち、爆炎を引き起こす。その炎は瞬く間に怪物を飲み込み、周囲へと広がる。その炎は約数十キロメートルも広がり、あたりを文字通り焦土と変えてしまった。

 協定採択焦土作戦とは、S.A.M.が戦闘不能となり、相手の捕虜またはスーツの解析の恐れがある場合、自身の命と引き換えに周囲を巻き込み、自爆する最終手段であった。スペースドはノクスナイトから怪物の能力を聞いた瞬間からこの手を使わざるを得ないと考えていた。彼が持つカプセルの力に一塁の希望を賭けていたが、肝心な一手が届かず、使用する決断に至ったのだった。

 爆炎から逃げ延びたフライヤーは瓦礫の壁にノクスナイトを座らせる。ノクスナイトの瞼が痙攣した後、ゆっくりと瞼を開く。

 

「・・怪物はどうなった?」

 

「消滅しました。二人の・・いえ、私以外のS.A.M.の命と引き換えに」

 

「そうだったか・・最初からガナードはそれがねらいだっただろうな」

 

 フライヤーは黙って聞いていた。ノクスナイトは咳を込む。血しぶきが咳に合わせて床に飛び散る。浅い呼吸を繰り返しながら、ノクスナイトは話を続けた。

 

「奴らはウォームズを聞きつけた瞬間から・・この街を切り捨てていた。だがウォームズの被害をこれ以上出さないため、お前たちが選出された」

 

「この街を見捨てる気だったのであれば何故救助部隊を?」

 

「形式上だ・・・救助活動を行ったという事実のみがほしかった」

 

 フライヤーは絶句した。自分たちを生み出した組織に対してどこか冷酷さは感じ取っていた。それは自分たちがその組織によって作られていたからだと自分の中で納得させていた。しかし、ただその組織に所属しているだけの人々にさえ冷酷な判断を下せることにただただ絶句することしかできなかった。

 

「CHORDも最初は協力するつもりはなかった。ただ・・」

 

 ノクスナイトは言葉を濁した。

 

「あなたの独断で我々の援護を?」

 

「最初はそのつもりだった。うちの司令は鋭くてな、バレていたよ」

 

 ノクスナイトのコートから音が鳴る。そこには携帯端末があり、司令官から通信が来たようだった。

 

「コードナンバーIV、無事か?」

 

 低い男性の声が端末から聞こえてきた。ノクスナイトは息を整えてから通信に応答した。

 

「深手を負った。それより、救援部隊の隊員と少年は?」

 

「君のおかげで無事だ。よくやったIV。君に対してバッドニュースがある。たった今、ガナード航空部隊の広範囲に及ぶ空爆作戦が実行される。今から『コードゼロイダー』を送っても間に合わない。なんとかシェルターを見つけたまえ」

 

「残念だが、俺にも時間が残されていないようだ」

 

「・・そうか、すまなっかた。あのとき私が君を止めていれば」

 

「そんな後悔はしなくていい。これは俺が始めたことだ。2人だけでも救えたのなら悔いはない」

 

 そう伝え、通信を切る。ノクスナイトは、焦点が合わない目でフライヤーを見つめた。

 

「今聞いたとおりだ。これから空爆が来る。お前だけでも逃げろ」

 

「私には何もありません。元々ここで使い捨てられるのなら逃げる意味など」

 

「意味ならある。君にはつないでほしいんだ・・・俺の思いを」

 

「あなたの思い?」

 

「あぁ、もう俺にはできない分、誰かを守っていってくれ。・・例えそれがお前が従うべきものに背くことになったとしても」

 

 フライヤーは困惑していた。怪物との戦闘以降、自身たちに指令を送っていたマザーからの通信がないのだ。マザーの指令なしでは行動できない。そうフライヤーは考えていたのだ。

 

「お前にも命がある。それが例え戦うために作られた命だったとしても」

 

「命・・」

 

「そうだ。だからお前は生きろ。俺の分まで、そして散っていった仲間の分まで」

 

 ノクスナイトはフライヤーに思いを伝えた後、首がガクッと力なく下を向く。フライヤーは彼の前に膝をつき、首を下げる。彼への感謝を込めて。そして、全速力で街からの離脱を始めた。その数分後、上空より多数のミサイルが街に対して降り注ぐ。これにより、待ちに残ったウォームズは絶滅したのだった。

 後にこの事件は『招来の日』と名付けられ、ガナードの防衛強化のきっかけとなった。しかし、これは序章に過ぎなかったのだ。

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