ここは地球に限りなく似た惑星『ヴァース』。この星で一番の賑わいを見せている都市、『サンデットシティ』。この都市のエネルギーは『ザムジェクト結晶』と呼ばれる結晶体によって支えられていた。しかし、この結晶体を食料とし、人々を襲うモノが存在していた。その名は『ヴォイド』。ヴォイドからの侵攻を阻止すべく生み出された防衛組織、それこそがガナードなのである。
サンデットシティに建造されたガナード作戦本部、そこの一つの作戦室にてとある映像が流されていた。
それは、七年前の招来の日に救援活動を行っていた部隊隊員の映像記録であった。必死に呼びかける隊員の声が聞こえた後、遠くからこの世のモノとは思えない音が近づいてくる。その方向にカメラが向くと、そこには二足方向の三メートル近くある怪物が近づいてきていたのだ。カメラ内に映る隊員が手持ちのアサルトライフルと手持ち型のエネルギー砲で迎撃を開始する。しかし、怪物には傷一つ付かず、エネルギー砲ですら少し焦げる程度であった。徐々に隊員たちに接近する怪物、カメラの隊員は悲鳴を上げ、即座に逃げようとする。後ろを向いた瞬間、隊員の動きが止まる。カメラは隊員の胴体を映し出す。そこには血に汚れた尻尾の先端が飛び出ていた。尻尾が勢いよく引き抜かれるとカメラが横向きになる。動かなくなった隊員のカメラには残された隊員が抵抗むなしく鏖殺されていく瞬間が映し出されていた。ここで映像を終わらせ、スクリーンの隣に立っていた白衣を着た女性が話を始めた。
「以上が七年前に起きた事件の一部始終です。この映像に映し出された怪物によって、一つの街が壊滅されました。この怪物に類似した存在はこれ以降確認されていません。しかし、またいつどこで出現するか不明なため、我々ガナードは何時でも対応できるよう装備の改良及び、訓練内容の見直しなどを行ってきました。今回の集会では改めて我々の目標の再確認をするために開かれたものです。何か質問をお持ちの方は?」
白衣の女性が質問を促す。そこで一人の隊員が手を上げる。彼女はその隊員を起立させ、隊員は質問を投げかけた。
「この事件での生存者は何名でしょうか?」
「この事件で生存した者は二名です。うち一人はこの映像とは別の救援部隊の隊員です」
隊員は礼を言い、着席をした。次に別の隊員が起立し、質問を始める。
「この怪物にはヴォイドのように名称はないのでしょうか?」
「あくまで仮称ですが、我々はこの怪物を『スペースビースト』と名付けました。このスペースビーストが街を襲撃する前、隕石の状態で空から落ちてきたことから命名しましした。そこからこの怪物の個体名を『ザ・ワン』としました」
二人目の隊員も質問を終え、席に着く。白衣の女性が次で最後の質問にすると伝え、最後の隊員に質問を促す。
「このスペースビーストに対して、『エレメンタリー』を主軸とした部隊を用意するのはどうでしょうか?」
エレメンタリー、それはこの星に住まう人々の中に特殊な能力を持つ人々の名称である。彼らの能力の例として、炎を操る、水を操る、物体の硬化など様々な能力が存在する。
「エレメンタリーの能力がスペースビーストに効くというデータがないため、そこは慎重に検討すべきでしょう。しかし、エレメンタリーの能力が効く可能性もあるため、こちらから上層部に進言しておきます。これにて、今回の集会は以上となります。ご清聴ありがとうございました」
白衣の女性が一礼した後、会議室を後にする。その後をスクリーンを操作していた白衣の男性がついて行く。
「こんな集会に何の意味があるのでしょうかね。半分事実で半分嘘なのに」
「ここでは発言を控えるように、他の隊員に聞かれてはダメな内容のですよ」
男性は不満そうな表情をすつつも、これ以上発言することはなかった。女性は男性の発言を止めはしたが、本人も心の中では不満を募らせていた。集会で語られた内容は一部が改変されたものであった。ザ・ワンが街を壊滅させたこととなっているが、ザ・ワンはあくまできっかけにすぎない。街を壊滅させた存在、それはその街で研究されていた生物ウォームズによるものだ。しかし、上層部はなんとしてもウォームズの存在を隠しておきたいようだった。女性は一度上層部にウォームズの存在を公表すべきだと説得をしたことがあった。しかし、上層部は女性の解雇をちらつかせ、ウォームズの存在の存在を隠すことに協力する立場となったのだ。
「それにしてもエレメンタリーを集めた特殊部隊の編成ですか。上層部はどう考えるのでしょうね」
「それ、もう2年前に言ったわ」
「え?してたんですか?それでなんと?」
「あんな得体の知れない奴らを我ら誇り高いガナードに入れるわけにはいかんとかでダメだった。だからあの隊員くんには悪いけどしたふりだけすることにしてるわ」
「大変ですね、先輩も」
「あなたもいずれこうなるのよ?」
「えぇぇ!?」
男性はいやな気持ちと驚きを併せ持った悲鳴にも近い声をあげる。女性は少し笑いながら男性とともに研究室へと戻るのだった。
建物が並び立ち、人が多く歩き渡っているサンデットシティのとある大通りを一人の少年が走っていた。制服を着ており、背中にはスクールバックを背負っている少年は少し焦りの表情を見せていた。目の前に同じ制服を着た少年2人組を見かけ、声をかける。少年2人組はその声に気づき、振り返る。返事をすると同時に手を挙げる。走っていた少年は彼らの横につくと速度を少年2人組に合わせる。
「なんだよ、急いでいたんじゃなかったのか」
「少し遠くからお前らの姿が見えたからつい」
「そうだったのかよ、てっきり先生に呼び出されたのかと思ったぜ」
少年3人は笑い合う。そのうちの一人の少年、彼の名は『神代ハルト』。サンデットシティで暮らすごく普通な少年だ。ハルトたちは思い思いの雑談をしながら、自身らが通う学園へと向かうのだった。学園生活を過ごし、放課後となった。帰り支度をするハルトの席に先ほどに二人の少年が近づいてくる。
「なぁハルト、この後暇?」
「悪い、俺じっちゃんの手伝いする予定あるんだ」
「そっか、んじゃまた誘うわ、じゃなハルト。また明日」
「おう、また明日」
二人の少年はハルトから離れ、帰路についていった。ハルトもまた、帰り支度を済ませると帰路につくのであった。ハルトはゆっくりと歩いていた。
彼の祖父は個人で機材などを製作する発明家であった。ハルトはそんな祖父の製作をちょくちょく手伝っていた。彼は祖父が今何を作っているのかを考えながら帰路についていた。
そのとき、突如として建物の一つが爆発したのだ。ハルトは驚き、爆発した方向に目をやるとそこには、次々と人を襲っている人型の存在、ヴォイドがいた。ヴォイドはその鋭い爪で人を切り裂き、貫いていた。ハルトはその光景に漠然としていた。ハルトは首を横に振るうと即座に倒れている人に駆け寄り、救助活動を開始した。転んでしまった人をすぐに立たせ、安全な場所へと案内をする。ヴォイドに切られ、倒れている人に駆け寄る。身体を揺らし、呼びかける。そこに背後からヴォイドが近寄る。ハルトが振り返る。振り返ると同時に横に吹き飛ぶ。重い衝撃を受け、咳き込むハルト。ゆっくりと体勢を整え、立ち上がる。周りが悲鳴を上げながら逃げ惑う中、ハルトはヴォイドから人々を守る方法を考えていた。彼の脳裏にはあの時の光景がよぎっていた。七年前、自分の両親を失ったあの光景を。一人のガナードの隊員と銀色のスーツの戦士に助けられた光景を。そのときから彼は強く願っていたのだ。人々を助けるヒーローになると。するとどこかから聞き覚えのある声が聞こえる。
「ハルト、大丈夫かハルト!」
「じっちゃん?どこだじっちゃん!?」
ハルトは辺りを見回す。しかし、そこに彼の祖父の姿はなかった。
「お前がつけてるその腕時計からじゃ」
ハルトは自身の左手首につけていた腕輪型の装置を見る。確かにそこから祖父の声が聞こえてきていたのだ。これは祖父が開発した新型の腕時計だと渡されていたのだ。
「じっちゃん、話なら後にしてくれ!今はあの化け物をなんとかしなきゃ!」
「落ち着け、ハルト。そのなんとかする方法があるんじゃ」
「方法?」
「そうじゃ、お前に渡したその腕時計。それが奴らに対抗するための道具なんじゃ」
「今はとりあえず、信じるしかないよな。どうすればいい」
「その腕時計のダイヤル部分を180度回転させるんじゃ。そしてこう叫ぶんじゃ『ジオライザー、起動』と」
「わかった!やってみる」
ハルトは腕時計型装置のダイヤル部分を回転させる。そして顔に近づけて叫ぶ。
「ジオライザー、起動!」
ハルトが叫ぶと同時に空から光が降り注ぐ。光がハルトを包み込むと光の粒子が彼にまとうパワードスーツと化す。光が晴れるとそこには金属光沢を持った灰色と銀色を持ったパワードスーツ姿のハルトが現れる。ここに人々を守ると誓った戦士『ジオライザー』が誕生したのである。ハルトはヘルメット越しに自分の姿を確認する。その姿に思わず感嘆の声を上げる。そこにヘルメット内から祖父の声が聞こえてくる。
「どうやら成功したようじゃな。今の状態なら奴らと戦えるはずじゃ」
ハルトは構えを取る。ヴォイドはハルトにジオライザーに警戒をする。一体のヴォイドが襲いかかる。鋭い爪切り裂こうとするが、ジオライザーのスーツに傷一つ付かない。ジオライザーはお返しとばかりに右ストレートをヴォイドめがけて放つ。ヴォイドは後ろに飛ぶが倒すには至らなかった。様子をうかがっていた他のヴォイドも一斉にジオライザーに襲いかかる。ヴォイドの猛攻を捌くことしかできずにいた。
「じっちゃん、なんか武器とかないの!?」
「あるぞ、『ジオキャノン』と叫んでみろ」
「オーケー、ジオキャノン!」
叫んだ瞬間、ジオライザーの右腕を光が包み、光が剥がれるとそこには、小型のキャノン砲が装備されていた。飛びかかってきたヴォイドに対してジオキャノンでなぎ払う。なぎ払うと同時に、飛びかかってきたヴォイドに対して標準をさだめる。ジオキャノンからエネルギー弾が放たれ、直撃する。一瞬にしてヴォイドが消滅し、他のヴォイドがその光景を前に動きを止める。
「これならやれる!よっしゃ、反撃開始だ!」
ジオライザーは足に装備されたローラーダッシュでヴォイドに勢いよく距離を詰め、近距離でジオキャノンを連射する。瞬く間にヴォイドを全滅することに成功したジオライザー。ほんの少しの達成感に包まれた後、彼はスーツのまま救護活動を開始した。建物の爆発によって瓦礫の下敷きになった人を救っていく。彼によって助けられた人々は次々と感謝の言葉を伝えていった。
「ありがとう、ところであなたの名前は?」
「名前かぁ・・よし、俺の名前はジオライザー。困ってる人を助けるヒーローになりたい者だ!」
助けられた人々が呆気にとられる。ジオライザーは彼らに手を振るとローラーダッシュで遠くへと走って行った。人目の付かないところに付いたところでスーツを解除し、そのまま自宅へと帰宅するのであった。
その後、ハルトはジオライザーとして、ヴォイドによる被害を防ぐと同時に些細な人助けにも精を出していた。いつしかサンデットシティにジオライザーの名前が広まりつつあった。そんな中、ハルトは祖父とともに食事を取っていた。
「どうじゃハルト。ジオライザーの調子は?」
「最高だよ、じっちゃん。でもさすがにやり過ぎたかな?」
ハルトはニュースに目を向ける。そこにはガナードの上層部がジオライザーに対して警戒心を示していることの表明だった。彼らの言い分としては、ヴォイドと同じように突如として現れる正体不明の存在であるため目的がわからない以上警戒を怠るわけにはいかないというものであった。ハルトは祖父に視線を戻す。その表情はどこかくらいものだった。
「こっちの目的としては人助けしたいだけなんだけどね」
「それを彼らに話したところでいい反応は返ってこないじゃろうな。今のまま、街の人々からの信頼を勝ち取ってゆけば良い」
祖父は茶を飲む。祖父の言葉に納得を示し、はるともまた食事を終わらせるのであった。食事休憩をした後、彼は外に出ることにした。今日は彼が通っている学園は休みであり、たいした趣味を持っていないハルトは外に出て歩くことにしていた。ある程度歩き、休憩を挟んでいたとき、彼の携帯端末に連絡が入る。
「ハルト、ヴォイドが現れおった」
「オッケー、場所だけ送って」
ハルトはすぐさま、ジオライザーを装着し、現場に急行する。現場にいたヴォイドには以前から戦っていた人型のヴォイドに体長が三メートル以上はあるであろう四足歩行の大型ヴォイド二体が建物を破壊し、人々を襲っていた。すでにガナードの隊員が迎撃をしており、ジオライザーもそこに参加する。隊員との連携により、人型のヴォイドを全滅へと追い込む。しかし、大型ヴォイドに対してはジオキャノンも隊員のエネルギーガンも効き目が薄く、攻撃を回避することに専念するしかなかった。ジオライザーが焦りを感じ始めていたそのとき、空から何かが飛来してきた。飛来してきた物体が大型ヴォイドに接触するとそこから炎が嵐のように舞い上がる。大型ヴォイドが自身の上に乗ってきた存在を振り払う。ジオライザーは大型ヴォイドを挟んでその姿を見た。全身が銀色で胴体の一部と装甲の隙間に金色が使用されており、ヘルメットのバイザー部部にはバイザーを守るような形で金色の追加装甲が施されていた。全身は所々焦げており、傷も様々な箇所に残っていた。
「私が一体、こちらに引きつけます。残りをお願いします」
どこか機械的な男性の声でジオライザーに伝えるもう一人のパワードスーツが戦闘態勢を取ると、一体の大型ヴォイドが突進する。パワードスーツが背中のスラスターから炎を吹き出し、飛行しながら大型ヴォイドに接近する。大型ヴォイドの腹部に入り込み、そこから空へと持ち上げる。ジオライザーはその光景に見とれつつも、残った大型ヴォイドにローラーダッシュで接近する。大型ヴォイドも負けじと突進を開始し、雄叫びを上げる。ジオライザーは口を開けた瞬間にジオキャノンに溜めていたエネルギーを一気に放出する。
「食らえッ!『ジオブラスター!』」
ジオキャノンに一定のエネルギーを溜め、レーザー砲として一気に放出するジオライザーの必殺技、ジオブラスター。大型ヴォイドの口を通って身体を貫通し、見事に撃破する。空に上がったパワードスーツも大型ヴォイドを大きく上に放り投げると装甲の隙間からオレンジ色の穂脳をまとい、勢いよく突撃する。大型ヴォイドの身体に風穴を開ける。パワードスーツはゆっくりと降下をし、そこにジオライザーが近づいて行く。
「あの!助かりました。俺、ジオライザーって言います。最近人助けをし始めました!あなたは」
「私の名前は・・サム、サムと呼んでください」
「サムさんですね!これからよろしく!」
ジオライザーは勢いよく手を差し出す。サムは少し戸惑いつつ、その手をつかみ、握手をする。ガナード隊員はその光景を前に拍手を鳴らすものもいた。しかし、ガナードの上層部がサムが出現したことを知った際、どよめいた。知られてはならない存在が七年の時を経て活動を再開したからである。
その日の夜、どこか高いビルの屋上に黒いローブを着た一人の人間がいた。彼は夜空に手を伸ばす。
「そろそろ頃合いか」
そうつぶやいた黒いローブを着た人間の口元は歪んでいた。ジオライザーとサムはこの人間が何を企んでいるかまだ知るよしもなかった。