ガナード本部に存在する会議室の一室。そこに上層部が集っていた。焦りの表情をするものもいれば、深刻な表情をするものもいた。
「今回、緊急で集まった理由、君たちなら容易に理解できるだろう」
ガナードのトップを務める総司令官が口を開く。その場に緊張感が走り、流れていた汗が凍り付いたようにも感じた。
「例の生き残りの件ですよね?」
上層部の一人が答える。その声は震えており、総司令官に対する恐怖心がその他の者にも伝わり、何かしらの言葉を探していた。
「七年前、私はS.A.M.は全滅したと聞いていた。だが実際は違った。君たちは現場をしっかりと確認したのかね?」
「もっもちろんです。隊員に確認させたところ何も残っていなかったと」
「何も残っていなかったと。では今回現れたS.A.M.は亡霊とでも?亡霊が現実に存在できる者に干渉できるのかね?それに隊員に確認させただと、自分たちの目で確認しなかったと?」
「お言葉ですが、街の壊滅状況から生存の確率はゼロに等しかった。わざわざ我々自ら確認をするほどでもなかったかと」
「そういった状況でも生き残れる。それが人間のしぶとさだ。君たちは自身の安全を最優先にしたに過ぎない。スペースビースト一体の為だけにまだ逃げ切れていない民間人を巻き込むかも知れん航空爆撃を使用したようにな」
上層部は言葉が詰まる。あの爆撃の目的はスペースビーストではなかった。暴走したウォームズの抹殺、証拠の隠滅にS.A.M.の処分も想定していたのだ。総司令官にはスペースビーストの危険性と隊員たちが携帯している兵器、S.A.M.の戦闘能力ですらもかなわないと強く進言したため、渋々要請を承認することができたのだ。ここで嘘を露呈させるわけにはいかない。彼らは必死に弁明を考え続けた。
「S.A.M.を統括していたマザーコンピュータはどうなっている」
「何故マザーコンピュータのことを?」
「あれが本物のS.A.M.ならマザーからコンタクトがとれるはずだ。それでマザーはどうなっている?」
「マザーコンピュータはスリープモードに移行し、我々も起こす方法を模索しておりますがまだ一向に目覚める兆しがありません」
「そうか、一刻も早くマザーコンピュータの覚醒を。以上だ」
総司令官が席を立ち、会議室を後にする。総司令官が完全に部屋を出たのを確認すると上層部は焦りから浅くなっていた呼吸を戻していった。
「どうする?これは想定外だぞ」
「あぁまさかあの使い捨てに生き残りがいたとは」
「何故今になって」
「そんなことはどうでも良い!隊員たちにも奴の存在が知られ、総司令にすら責められた。おい、マザーがスリープ状態とは本当なのか」
「本当だ。何も反応を返さない。研究チームになんとかしてもらっているが」
「なんとしても招来の日の真実を隠し通さねばならん」
上層部の1人の言葉にそのほかの上層部が一斉にうなずく。そしてそれぞれの担当部門へと戻っていく。招来の日の真実を隠し通すために。
本部の廊下で女性の研究員と総司令官がすれ違う。総司令官は研究員に声をかける。
「君、少しいいかね?」
「はい、何でしょう」
「君はサムを知っているかね」
「存じ上げております。確か七年前に全滅したと思われていたガナードのパワードスーツ部隊ですよね。まさか生き残りが存在していたとは」
「知っていたか。ならサムたちがマザーコンピュータの指示で行動をしていることも知っているかね」
「噂程度には、どの部隊にも所属せず、指揮系統も特殊だときいておりました」
「その通りだ。今、その指揮をしていたマザーコンピュータが機能を停止してるようなのだ。そこで君に頼みたいことがある。」
「頼みたいことですか?」
「そうだ、君にはマザーコンピュータの修復を頼みたい」
「私にですか?そういう大事なことは上層部の方が適任かと」
「彼らに対する信頼感より、君のようにしっかり仕事をしている者の方が信頼度が高いのだ。こちらで君の元にマザーコンピュータを輸送するように手配しておく。頼めるかね?」
「わかりました。私にできることしてみます」
「頼んだぞ」
総司令官は微笑み、研究員から離れていく。研究員は内心で思っていた。総司令官のような人間が上層部に多ければ、隠し事をせずに気楽に仕事ができるのではないかと。
サムの出現から数日が経過した。ハルトはジオライザーとしての活動にも力を入れ、時にはガナード隊員と連携し、救助活動をし、サムと協力してヴォイドの撃退に精を出していた。ある日、ハルトが公園でゆっくりと時間を過ごしていた頃、何やら言い争っている声が聞こえてきた。そこには老婆の圧に負けている1人の男性がいた。ただ事ではないと感じたハルトは二人の間に入って仲裁を始めた。どうやら男性が親切の押しつけをしてきたため、男性に対して強く抗議をしていたようだった。ハルトは老婆をなだめ、男性にも謝罪を促し、なんとか言い争いを解決することに成功した。
「ありがとうございます。やはり親切とは難しいものですね」
男性はハルトに感謝の意を述べ、その場を後にしようとした。しかし、ハルトは彼を呼び止めた。
「待ってくれ、もしかして以前もこんなことをやらかしていたりする?」
「はい。困っているであろう人を見かけては状況から考え、最善の解決方法で助けていたのですが、困惑した表情をする人もいれば文句も言われてきました」
平然とした表情で言い切った男性。ハルトはこのままではまた同じ問題を起こすと考え、彼と話し合うことを決めた。
「失礼なことを言うかも知れないけど、あんたがやろうとしてるのは親切の押しつけだ。そんなことしたって本当に助かるわけじゃないんだ」
「問題解決が最善ではないと?」
「事件とか事故とかならそれが一番だと思うけど人に対しての親切ってのは相手を思いやることが大事なんだ」
「相手を思いやる・・例えばどのようにすれば良いのですか?」
「例えば、困っている人がいるなら黙って勝手に解決しようとするんじゃなくて相手に何が困ってるのか確認をする。そこから自分が手助けをすると進言する。こうすればさっきみたいに言い争いにならないはず」
「なるほど、相手からの確認を取る。勉強になります。もしよろしければ実際に見てみたいのですがよろしいでしょうか?」
ハルトは困惑した。この男は本気で言っているのかと。少し気が引いたが頼まれてしまった為、仕方なく彼とともに人助けに乗りだした。些細な手助を2人でこなしていく。最初はぎこちなかった男性の動きにも滑らかさが出てくるようになり、笑顔で感謝されることが増えていった。
「あなたの言ったとおりでしたね。人に寄り添う、これが優しさですか。ありがとうございます。もしよろしければあなたの名前をお伺いしても」
「神代ハルト、こっちも名前を聞いても?」
「はい、私の名前はゼイン。人々を助けるために作られたアンドロイドです」
ハルトは内心驚くと同時に納得した。だから普通じゃ考えられない言動をしていたのかと。
「まだまだ学ぶべきことが多いと私は考えているのですが、もし神代さんがよろしければ私にいろいろなことを教えていただけませんか?」
「ハルトでいいよゼインさん。俺で良ければ頼ってくれ」
ハルトはゼインに手をを伸ばす。ゼインはそれが握手を求めているものだと理解し、優しく握る。ハルトも握り返し、軽く握り合った手を振るのだった。その時、地面から音もなく、複数のヴォイドが出現する。大型ヴォイドが確認できないものの、10体以上は確認できた。ハルトがジオライザーを装着して戦おうとする。それを左腕で制止し、ヴォイドの目の前にゼインが立ち塞がる。
「ヴォイドを討伐するのも私の役目です。ハルトさんは安全な場所に」
ゼインはハルトへそう促すと左手にはベルトが握られていた。ベルトを腰に当て、装着する。右側のホルダー部分からガジェットを取り出し、ガジェットの小さなボタンを押す。ブレード部分が展開し、待機音が音が鳴り響き、ゼインの周囲に4つの光球が出現する。両腕を胸の前でクロスし、左手を開き、突き出す。
「変身」
ガジェットをベルトの右側に装填すると、光球がゼインと同化する。背後にタイムラプス映像が流れ、光からその姿を現す。白と銀をメインとし、差し色の金色と水色をあしらった高貴な姿をしていた。肩からは外側は白く、内側は水色のマントを伸ばしていた。
「私のは仮面ライダーゼイン。人々を救い、悪意を正すもの」
ゼインは変身を完了するとゆっくりとヴォイドに近づく。ヴォイドはゼインに向かって攻撃を開始する。鋭い爪でゼインを切り裂こうとする。ゼインはそれを華麗に躱し、掌底でヴォイドを後退させる。ヴォイドは少し後ろに下がるがまたゼインに向かって突撃する。ハルトは慌ててジオライザーとなり、ジオキャノンでゼインの援護に入る。
「あなたも仮面ライダーでしたか」
「俺は仮面ライダーじゃないんだ。この姿だとジオライザーって名乗ってる」
「なるほど、ではジオライザー。ともに参りましょうか」
「おう、ゼインさん!」
ゼインとジオライザーは背中合わせとなってヴォイドを倒していく。しかし地面から大型ヴォイドが出現する。そこにタイミング良くサムが現れる。
「ジオライザー、この方は?」
「仮面ライダーゼインって言うんだ。俺たちの仲間」
「初めまして、仮面ライダーゼインです」
「私の名はサム、よろしくお願いします。ゼイン」
自己紹介もそこそに大型ヴォイドの攻撃を避ける3人。サムは拳に炎をまとい、大型ヴォイドに叩き込む。大型ヴォイドは怯むが大きな尻尾でサムをなぎ払おうとする。サムはそれを躱し、尻尾を持ち上げようとする。
しかし、大型ヴォイドは尻尾を捕まえられまいと頭部に着いた角でサムを後退させようとする。ゼインは左側のホルダーからカードを1枚取り出す。そのカードには炎のマークが書かれていた。ベルトの中央部にカードを横向きにセットし、ベルト左側のればーを引き延ばす。カードが下へスキャンされると同時に裁断されていく。右側のガジェットを押し込み、スキャンした能力を認証し、裁断されたカードがゼインに光となって取り込まれていく。ゼインの手からはサムと似たような帆王が発生する。
これが仮面ライダーゼインが持つ力、現状確認されているエレメンタリーの能力を再現したカードを使用することで自身のの力として扱うことができる『ジャスティスオーダー』である。ゼインは大型ヴォイドの腹部に潜り込み、炎をまとった手足を使い、攻撃を繰り出す。ジオライザーはジオブラスターを使用し、大型ヴォイドの頭部を押さえる。動きが鈍くなった大型ヴォイドの尻尾を掴み、上空へと投げる。全身に炎をまとったサムの突撃によって大型ヴォイドは消滅した。サムはそのままどこかへと飛んでいく。ゼインとハルトを変身を解除しながらそれを見送った。
「あの方はすぐにどこかへ行ってしまうのですね。もう少し話がしたかったです」
「俺もあんま話したことなかったな。きっと俺たちにも正体を明かせないんだろうな」
「あなたはいいのですか?正体を明かして」
「目の前で変身されたら俺だけ隠すのもどうかなって思って」
ハルトはゼインに笑顔を見せる。それを見たゼインは彼を見真似て、笑顔を作る。
その日の夜、2人の男性が歩いていた。1人の男性が何かの違和感を感じた。そこには誰かの散らばっていた。2人の男性は興味本位でバックへ近づいた。近づいた瞬間彼らは後悔した。バックの周囲には水溜まりのようなものができていたのだ。少し粘性を持ったもの、それは血であった。男性2人は大きな悲鳴を上げる。その悲鳴を待っていたかのように何かが男性に飛びつく。顔に付いたそれを必死に引き剥がそうとするがそのたびに別の場所から謎の物体が飛びつく。やがて彼らは力なく倒れ込む。翌日、その場所にはボロボロにされた衣服とバック、そして大きな血だまりが発見されたのだった。
数日が経過し、ハルトは学園から自宅へと帰ってきた。帰ってきた瞬間目を見開いた。自宅にゼインが上がっていたのだ。
「ゼインさん!?何で家に?」
「こんにちは、ハルトさん。実はあなたに相談がありまして」
ハルトは祖父に目を向ける。祖父は視線に気づくと少し申し訳なさそうな表情を作った。恐らくある程度の事情はゼインから聞いたのだろうと考えたハルトはリビングでゼインの話を聞くことにした。
「この最近、怪奇事件が発生しているのはご存じでしょうか」
「ニュースで見たな。ボロボロの衣服と身につけていたものだけが残っていて地面には血だまりができてたって言う」
「それです。そこで私に協力してほしいのですが」
「事件の真相を確かめるってこと?」
ゼインはうなずく。確かにこれ以上の犠牲者は出したくないと考えたハルトはゼインの協力をすることとし、夜に現場に向かうこととした。
ゼインとハルトは夜に怪奇事件が発生した現場へと向かった。辺りは暗く、人の気配は意がしない場所であった。ゼインは何かに察知し、ハルトに物陰に隠れるように促す。物陰から様子をうかがうとそこにはガナードの隊員がいた。恐らく現場の捜査に来たのであろう。隊員たちが辺りを見回していると一人の隊員が悲鳴を上げる。悲鳴を上げた隊員の腕を見ると頭部と尻尾の部部に触覚のような触手が生えたエイのような見た目をした化け物が食らいついていた。その光景を見た他の隊員たちが化け物を引き剥がす。すると辺りから複数の化け物が出現する。
隊員たちの危機を感じたゼインとハルトは変身をし、隊員たちとともに怪物退治を開始する。またどこからともなくサムも現れ、怪物たちを一掃を開始する。サムの身体に複数の化け物が張り付く。サムは全身から炎を発生させ、怪物を燃やし尽くす。全身に炎をまとったサムに怪物たちが怯む。その光景を見たジオライザーがゼインに進言する。
「ゼインさん!この前使ったあの力だ!あれなら怪物を一掃できる!」
「ジオライザー、それは無理です。一つの1枚のみなのですみなのです」
「嘘だろ!?」
ゼインのジャスティスオーダーは世には出すことのできない情報なども含まれているため、能力1つにつき、1枚のみと言う制約があった。ジオライザーは衝撃を隠せなかったがそんなことお構いなしに怪物が襲いかかってくる。ある程度の数を減らし、ラストが見えてきたところ、突如として、怪物たちが一カ所に集まる。
複数だった怪物たちがやがて一つの二メートル近くの軟体動物とも不定形動物とも似た姿へと変える。腕にできた触手を使い、二人の隊員の首に巻き付く。ジオライザーとゼインがその触手を引き剥がそうと近づく。怪物はその二人に目がけ、頭部の触手から火球を放つ。その火球は2人に直撃し、大きく後退する。他の隊員たちにも火球を放ち、近づけさせないようにする。ジオライザーは左腕にオプションパーツを転送し、そこから中型の光波シールド『ジオリフレクター』を発生させる。
ジオリフレクターによってある程度の火球を反射し、片手で触手を引き剥がそうとする。しかし、触手の力は想像以上に強く、引き剥がせずにいた。もう一人の方は、サムが片腕で火球をはじきながら救おうとする。徐々に怪物へと近づいて行く。
隊員たちが諦めかけた瞬間、怪物の目の前に白い光が現れる。その白い光が怪物に一撃を入れると怪物は大きく後退し、隊員たちの首に巻き付いていた触手も剥がれる。怪物は再び分裂するとどこかへと飛び立ってしまった。ジオライザーはあらわになったその姿を見る。そこには黒と銀がメインとなった身体、腕に赤色のした武器のようなものが施されており、胸にはY字型の赤いクリスタルが埋め込まれていた。黒き銀色の戦士が白い瞳でジオライザーを見ると空へと飛び去る。ジオライザーたちはただ呆然とするしかなかった。
その光景を遠くから見ていた黒いローブの男がいた。
「やはり現れたか。『ネクサス』」
黒いローブの男が黒き銀色の戦士ネクサスの名を呼び、空に大きく腕を広げた。
「私の邪魔はさせんよ」
黒いローブの男の口元はやはり歪んでいた。
同時刻、ガナード研究施設のとあるデスクで作業をしている男性がいた。急いでいるのか椅子に座らず、立ちながら必死に暗号解析を行っているようだった。あと一歩のところで男性の腕を誰かが掴んだ。男性は腕を捕まれた方向に顔を向ける。そこには白いYシャツに黒いズボン姿でショルダーホルスターを身につけた青年が立っていた。
「お前、何者だ」
「こっちこそ、こんな時間に一体何をしてるんだ?」
どこか余裕を感じさせる声に男性は焦りを感じていた。視点が定まらずにいた。
「なっ何って、そっそれは・・あれだ!残業だよ残業だよ!」
「へぇ残業ね。でもあなたの席はここじゃないだろ。『根塚』さん」
根塚と呼ばれた男性は息を飲む。何故自分の名前を知っているのか。どうしてここが自分の席ではないと知っているのか。思考が回らなくなっていった。根塚の表情が更に強ばる。
「最近、ここの研究室で情報が漏洩している可能性があると聞いてね。あなたが来るのをそいつで待ってたのさ」
青年が机の上に指を指す。そこには小型の自立稼働するセンサーが設置していた。根塚は全てを悟った表情を取ると青年の手を振りほどき、全力で走り出す。
「こっこんなところで捕まるか!俺は俺には」
走りながら根塚は叫ぶ。施設の出入口までたどり着き、膝に手を置き、呼吸を整える。逃げ切れたと根塚が安堵し、顔を上げる。その瞬間、根塚の表情は再び恐怖へと変わっていった。そこに青年が立っていたのだ。自身を追いかけてくる素振りすら見せなかった青年が自分を追い越していたのだ。
「追いかけっこは終わりだ。大人しく俺に付いてきてくれ」
青年が根塚に近づいたその時、青年の後ろからスーツを着た集団が姿を現した。青年は咄嗟に根塚を庇う姿勢を取る。
「根塚さん、例のデータは手に入りましたか?」
「こっこいつに邪魔されたんだ!早くこいつをなんとかしてくれ」
「そうでしたか、ではあなたも用済みですね」
リーダー格であろうスーツ姿の男性が手を軽く挙げる。その合図と同時に部下たちが青年と根塚を取り囲む。根塚は絶望し、その場に膝をついた。一対複数の絶望的な状況の最中、青年は余裕の表情を崩さなかった。右手に持っていた赤色のカプセルを回転させる。部下たちが一斉に襲いかかったその時、一瞬にして一人が吹き飛ぶ。呆気にとられている間にまた一人と吹き飛ばされていく。襲いかかってきた部下をものの数秒で蹴散らす青年。青年はリーダーに向き直る。
「後はお前だけだ。今逃げるというなら見逃す。どうする?」
「面白い冗談ですね。私が逃げると?その余裕いつまで持ちますかな?」
リーダーは乾いた拍手をすると懐からあるものを取り出す。それは輝きを失い、濁った色をしたザムジェクト結晶であった。結晶を口の中へと入れ、飲み込む。リーダーの姿がみるみるうちに変わっていき、人型ヴォイドにも似た姿へと変わった。人型ヴォイドとの違いは、鋭い爪の代わりに腕が少し発達しており、全体的に筋肉質な見た目になっている。
ザムジェクト結晶は使用され続けるとその輝きが濁り、人から発生するマイナスエネルギーを蓄えるようになる。ヴォイドはそのマイナスエネルギーが蓄積されたザムジェクト結晶を食料としているのだ。逆に人が取り込むことによってエレメンタリーのように特殊な力を覚醒することができる。副作用としてヴォイドのような姿へと変貌し、定期的に結晶を取り込まないと理性を失い、獣と化す。
青年は『ヴォイド・ガルス』へと変貌を遂げる瞬間を見届けるとベルトを取り出した。
「教団の人間か。ならこっちも手加減する必要はないな」
青年はベルトを胸に装着する。赤色のカプセルを中央部にセットし、ボタンを押す。待機音が鳴り響く。左手の親指で下唇をなぞる。そしてそのまま、こめかみ付近で指を鳴らす。
「変身!」
左手の親指でセットされたカプセルをなぞるように回転させる。ベルトに充填されたカプセルの力が解き放たれ、全身に赤黒いもやに包まれる。足下か徐々にもやが晴れていく。真っ黒な身体に腕、脚、胸筋と腹筋そして顔には緑の模様が浮かび、全身に赤いラインが走る。
「なんだその姿は!お前は一体!?」
「『コードナンバーVII』。またの名を『仮面ライダーゼッツ』」
ゼッツが質問に答える。ゼッツは走り出し、ヴォイド・ガルスに殴りかかる。ヴォイド・ガルスは右腕でそれをガードし、カウンターに左ストレートをゼッツに打ち込む。ゼッツは軽く吹き飛び、殴られた部分を埃を落とすようにはたく。
「どうだ、この私の能力!ただの筋肉増加ではない!攻撃するとき守るとき、自動で力を制御する!ほんのちょっと手加減したが次はないぞ」
「そうか、それがお前の力か。俺も少し本気を出そうかな」
ゼッツはカプセルを回転させる。赤いラインを伝って手足にカプセルの力を送る。再びゼッツは走り出し、ジャンプブローを叩き込む。ヴォイド・ガルスはカウンターをもう一度狙うがガードごと打ち砕かれ、大きく吹き飛ぶ。
「何故だ!何故防げなかった」!
「簡単な話さ。こっちの力がお前を超えただけだ」
ゼッツはベルトのボタンを3回押す。カプセルを回転させ、先ほど以上の力を両脚のみに送り込む。瞬時にヴォイドに接近し、右脚で蹴りを叩き込む。ヴォイド・ガルスが後退し、その隙を逃すまいと左脚で回し蹴りを叩き込む。再び大きく後退し、ヴォイド・ガルスは急いで体制を整える。その瞬間、ヴォイド・ガルスの目の前には空中で蹴りの態勢を取っていたゼッツの姿があった。ヴォイド・ガルスの身体を貫通し、ヴォイド・ガルスを消滅させる。
ゼッツの必殺技『インパクトバニッシュ』が決まり、ゼッツは変身を解き、根塚の腕を掴み、立たせる。その後到着したガナード隊員に根塚を引き渡し、それを見届けていた。
「上出来だVII」
声が聞こえた場所にはバイクが1台止まっていた。かつてノクスナイトが弧門に貸し出したバイク、コードゼロイダーだった。
「『ゼロ』、彼は教団に情報を流していたようだ」
「どうやらまだ一難ありそうだな。次も引き続き頼むぞ、VII」
コードナンバーVIIはコードゼロイダーに乗り込み、夜道へ駆け出していく。次のミッションへと向かっていくのであった。