ハルトは二つのニュースに釘付けになっていた。一つは自身が対峙した謎の怪物についてのガナードからの発表であった。隊員たちがつけているボディカメラの一部を使い、夜中に対峙した怪物の映像を公表していた。
この怪物は七年前に街を壊滅したザ・ワンと同様スペースビーストとカテゴリーされ、個体名を『ペドレオン』と命名した。ペドレオンの撃退に至っていないことを深く謝罪し、夜中の外出を控えるよう呼びかけていた。
二つ目にガナード研究員であった根塚という男性が要注意団体の教団に対して情報を漏洩していた為、捕縛したと公表したのだ。現在どのように教団と繋がったのか取り調べを行っているようだ。一通りニュースを見終えたハルトは何故かそこにいるゼインに目線を移す。祖父と話し合い、居候することになったようだった。
「あの怪物、スペースビーストっていうのか。確かにヴォイドと比べると強さが全然違ったな」
「ペドレオン。厄介なのは分裂し、潜伏できる点ですね。今、ガナードの対スペースビースト部隊の『ナイトレイダー』が捜索しているようです」
「へぇそんな部隊が。どのニュースで?」
「いえ、ニュースでは公表していません」
「どこでそんなことを?」
「私を作ったガナードの博士からです」
「ゼインってガナードと繋がってたの!?」
ハルトは口に含んだ水を吹き出しそうになる。慌てて水を飲み、祖父の方に目を向ける。祖父は目をそらし、自身のラボへと逃げていった。どうやら知っていたらしい。再びゼインの方に向き直る。
「それでナイトレイダーって部隊は何か手がかりを?」
「おおよその部分だけなら。そこで我々も向かってみる必要があると思いまして」
「今度こそ倒さないとな。これ以上犠牲を出さないためにも」
ハルトは朝食を食べ終えると学園へと向かっていった。
人々が賑わう街中に突如として爆発が巻き起こる。辺りは悲鳴と逃げ惑う人々で混沌とかしていた。ガナード隊員が現場に急行するがどうやらヴォイドが引き起こしたものではないようだった。何かが意図的に爆発したようだった。この爆発を機に街中の建物が次々爆発していった。ガナードはこの無差別爆破テロに対して緊急のアラートを出し、他に爆弾が存在していないかの捜索に回った。その爆発現場でたまたま爆破に巻き込まれたゼインは自身がアンドロイドの身体であることを最大限に活かし、救助活動に奔走した。
とある建物の一室、そこにコードナンバーVIIがしゃがんで何かを行っていた。左手に小型の携帯端末を通して、何か筆箱くらいの物体を観察していた。ある程度物体を観察し終えると、物体の蓋を開け、中の無数にあるコードの中から起爆装置に接続されているコードを切断する。切断し終えると携帯端末で自身の直属の上司であるコードナンバーゼロに連絡を入れる。
「こちらコードナンバーVII。予想通りここに爆弾が隠されていた」
「グッジョブ、VII。奴の狙いは爆発による混乱だろう。これ以上の被害は看過できない。相手はエレメンタリー能力によるものの可能性がある。慎重に事を運べ、VII」
「了解。コードナンバーVII,これよりミッションを開始する」
コードナンバーVIIは通信を終えるとすぐさま行動に移った。ゼインがガナードとともに爆弾解除へ奔走する。そんな最中、一人の男性がスキップをしながら建物に指を指していた。
「あそこにもあそこにも。そーだあそこにも仕掛けたんだった。どうなるかなどうなるかな~」
男性は鼻歌でも歌いそうな勢いで次のターゲットへと向かおうとしていた。すると男性が足を止める。目の前にコードゼロイダーに乗ったコードナンバーVIIが待ち構えていた。
「誰、あんた」
「お前を止めに来た」
「僕を?一体何と勘違いしてるのか。僕はただの民間人ですよ~」
「いいや、この連続爆破事件、お前の仕業だろ」
「何を根拠に?」
「これだ」
コードナンバーVIIはコードゼロイダーからあるものを取り出す。それは、一枚の紙であった。
「ここにお前の爆破計画の記録が記されている。それにお前が指さしていた建物、全部爆弾が仕掛けられていた。こんな偶然、あるのか?」
男性の顔が歪む。せっかく自身の計画通りに事が運び、気分が上がっていたところに目の前の男が台無しにしたことに対して怒りがわいてきたのだ。男はすぐさま手のひらに爆発物を生成し、コードナンバーVIIに向かって投げつける。VIIはホルスターからハンドガンを引き抜き、すぐさま撃ち抜く。
「せっかく人がいい気持ちでいたのにお前のせいで台無しだ!」
「やはりエレメンタリーか。今すぐ爆弾を全て解除しろ!」
「いやだね!こんな力があるのに何で持ってない奴らに合わせてセーブしなきゃいけないんだ!教団が言ってたよ、押さえることはない。もっと自由になっていいってさ!」
すると男性はポケットからペンダントを取り出す。ペンダントに付いているザムジェクト結晶を飲み込みと身体が徐々に変貌を遂げる。ヴォイド・ガルスとなった男性は先ほど以上の火力を持った爆弾をコードナンバー7に投げつける。ハンドガンの弾をはじく爆弾を間一髪で回避する。
エレメンタリーがザムジェクト結晶を取り込んでもヴォイド・ガルスとなるが能力が強化され、更に凶暴性が増してしまう。
コードナンバーVIIは『ゼッツドライバー』を胸に装着し、赤の『インパクトカプセム』とは違うオレンジ色の『トランスフォームカプセム』をセットする。ゼッツドライバーのボタンを押し、カプセムを回転させる。投げつけられる爆弾を赤黒い霧の状態でくぐり抜け、変身を完了する。
見た目は以前の状態とおおよそ変わっていないが両手両足に装甲が追加され、赤色へと変色していた。身体を自由自在に変化する能力を扱う『フィジカムトランスフォーム』へと変身したゼッツは右腕をムチのように伸ばし、相手を叩く。伸ばした手を使い、相手の肩を掴み、一気に近づく。近づいた相手に複数の棘を生成した足で何度も蹴りを入れる。ヴォイド・ガルスは至近距離で爆発を引き起こし、距離を離す。ゼッツは再び腕を引き延ばし、右ストレートを打ち込む。しかしこの攻撃は回避され、ビルに拳がめり込む。なかなか抜き出せないゼッツを見たヴォイド・ガルスは両手に爆弾を生成し、徐々に近づいて行く。
「卑怯な能力使いやがって、でもこれでもうおしまいだな!」
両腕を高く上げ、ゼッツに叩き込むその瞬間、ヴォイド・ガルスの動きが止まる。ヴォイド・ガルスの後ろからゼッツの鋭い指が胸を貫いていた。
「お、お前、まさか!」
「あぁお前が隙を見せるのを待っていた。大方お前を倒してもお前自身が爆発すると思ってね」
ゼッツは伸びていた指と腕を元に戻し、蹴りを入れる。ヴォイド・ガルスは大きく後退し、膝をつく。爆弾を生成するエネルギーを供給する内部の線を切られたため、力が抜けていっているのだ。ゼッツはゼッツドライバーのボタンを3回押し、カプセムを回転する。伸ばした右腕でフックを打ち込み、続いて左フックを打ち込む。伸ばした両腕で両肩を掴み、引き寄せる。軽くジャンプをし、両脚をバネのようにし、両脚でヴォイド・ガルスを上空へ飛ばす。
トランスフォームインパクトによってヴォイド・ガルスは爆発することなく光の粒子となって消滅する。ゼッツが上空を眺めているとそこにジオライザーがローラーダッシュで丁度現場にたどり着いたところだった。
「あっあの、なんかここであったみたいですけど」
「あぁあったよ。丁度終わったところだ。君はもしかして今噂になっているジオライザー?」
「はい!あなたは?」
「俺の名はゼッツ、仮面ライダーゼッツ。またいつか」
ゼッツは変身を解除することなく、コードゼロイダーに乗り込み走り出す。その姿をただ眺めていたジオライザー。呆然としているところにゼインが近づいてくる。
「爆弾は全て無力化されたそうですよ。ジオライザー?聞いていますか?」
「聞いてるよ。ゼインさん、仮面ライダーゼッツって知ってる?」
「えぇ、彼はCHORDに所属する無敵のエージェントですよ」
「CHORD・・それって何?」
「特務機関CHORD、ガナードと協力関係にありながら独自の技術を持ち、選ばれたエージェントのみが所属できる裏の防衛機構といったところでしょうか」
「裏の防衛機構・・」
ジオライザーを解除したハルトは思い返していた。仮面ライダーゼッツの姿をどこかで見たことがあるような気がしたのだ。
その日の夜、とある森林にて対スペースビースト部隊ナイトレイダーが独自のレーダーを使い、スペースビーストを捜索していた。
「近いぞ。皆、構え」
ナイトレイダーの副隊長である『加賀見矢木』が他の隊員に声をかける。辺りから獣にも似た鳴き声が響き渡る。
ナイトレイダーが周囲を警戒した瞬間、一斉にペドレオンが襲いかかる。ナイトレイダーは特殊弾頭を搭載したアサルトライフルでペドレオンを撃墜していく。分が悪いと判断したペドレオンは一カ所に集まり、四メートルくらいある集合形態『グロース』となり、襲いかかる。触手を巧みに躱すが火球によって一人また一人と倒れていく。アサルトライフルを掃射し続けるが効果がなく、じりじりと追い込まれていく。
するとペドレオンの前に光が降り注ぐ。光が人の形へと変わっていき、光が止む。そこにはネクサスが立っていた。ネクサスは戦闘態勢を取り、格闘戦を仕掛ける。ペドレオンに何発か拳を叩き込み、後退させる。距離がとれたペドレオンは火球をネクサスに向かって放つ。ネクサスはエネルギーの刃『パーティクル・フェザー』で迎撃する。
全て迎撃しきったネクサスは右腕を胸のY字型のクリスタル『エナジーコア』にかざす。水面に走る波紋のような光が全身を通うと姿が変わる。肩に鎧の肩当てのようなパーツが生成され、エナジーコアの部分に青色に輝く『コアゲージ』が出現する。銀と黒をメインとしていたカラーリングから赤、銀、黒のカラーリングとなった。
形態変化したネクサスは左側で腕を十字にクロスし、右腕を右腰辺りまで回し、右腕を空に掲げる。腕に装備された『アームドネクサス』から光線が放たれ、上空で花火のように拡散され、地上にシャワーのように降り注ぐ。ネクサスとペドレオンを囲むように降り注ぎきると加賀の目の前から突如として消えた。
「消えた?」
加賀は目の前で起きた光景に疑問を持ち、レーダーを確認する。そこにはネクサスとペドレオンの反応が残ったままだった。
ネクサスはペドレオンを自身が生成した不連続時空間『メタフィールド』に引き込むと再び戦闘態勢を構える。そこは荒野が広がっており、空も幻想的な色をしていた。ペドレオンが周りの風景が変わったことに困惑している隙を突き、ネクサスは手刀や蹴りと叩き込む。
メタフィールドの効果により、ネクサスの力が倍増しており、ペドレオンはネクサスの猛攻に反撃することができなかった。ネクサスの正拳突きによって大きく吹き飛ぶ。
吹き飛んだペドレオンに対してネクサスは胸の前で腕をクロスし、両腕を大きく回転させ、エナジーコアにエネルギーをチャージする。大きく腕を開き、エナジーコアに溜めたエネルギーを光線として放つ『コアインパルス』を撃ち込む。
コアインパルスを受けたペドレオンは青白い光の粒子となって消滅する。ネクサスはメタフィールドを解除すると夜空へと飛び立っていく。加賀はその光景を見届けた後、本部へと連絡を取る。
「本部、こちら加賀。例のH型タイプが現れました。奴がペドレオンを・・あいつはまさに『ウルトラマン』ですよ」
加賀はこの時、ほんの少し自身に邪心が生まれていた。ウルトラマンのような力がほしいと。その姿を黒いローブの男はじっくりと観察していた。
翌日、ペドレオンの撃破が街中に広まっていた。しかし、ネクサスが倒したのではなく、ガナードの隊員たちが多少の犠牲を出しつつも撃破したことになっていたのだ。ハルトは外のモニターでベンチに座りながら聞いていた。どこか嘘のように感じ取っていたハルトはベンチで横になる。そんな彼に誰かが声をかけた。ハルトは身体を起こし、声のした方向に顔を向ける。顔を向けた瞬間、硬直した。七年前から会うことがなかった幼なじみの女子『相沢美佳』がいたのだ。
「美佳ちゃん・・?美佳ちゃんなの?」
「そうだよ、久しぶりだねハルト君」
彼女は微笑む。七年前から故郷に帰ることができず、他の人たちとも連絡が取れずにいた幼なじみが目の前に現れ、ハルトは嬉し涙を流していた。
「ねぇハルト君。私、ここに来るの初めてだから色々教えてくれない?」
「うん!おいしい店とか知ってるから行こ!」
ハルトは美佳の手を引き、様々な店へと向かった。ハルトと美佳は夕暮れまで街を回った。ハルトが自分でさだめた門限となったため、美佳にまた会うことを約束し、自宅へと帰っていった。美佳はその後ろ姿を見届ける。美佳の瞳には光が宿っていなかったことにハルトは気づいていない。