擬英戦記   作:キセツ

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エピソード7「ケツイ」

 ガルベロスが再び、街中で人々を襲っていた。逃げ遅れた人間を見つけてはその三つの頭で食い散らかす。自身の幻覚を見せる力によって、更なる混乱を招いていた。ゼインはガナードが配備しているバイクで現地に到着した。

 

「あれってあなたが倒したはずよね?」

 

 ゼインに対してゼインの開発者であり、ガナードの研究員『シルヴィア』が通信を行う。ゼインの目を通して現場の映像をリアルタイムで確認していたのだ。

 

「確かに私が倒しました。別個体ならばもう一度倒すだけです」

 

 ゼインはゼインドライバーを腰に装備し、仮面ライダーゼインへと変身する。ガルベロスに接近し、拳や蹴りを繰り出す。ガルベロスは少しリアクションを取るだけでダメージを負っているように見えなかった。ガルベロスは至近距離でゼインに火球を放ち、ゼインは後ろに吹き飛ぶ。なんとか体制を整えるゼイン。ゼインはゆっくり立ち上がるとプログライズキーを押し込み、右足にエネルギーを溜める。上空へ飛び上がり、ジャンプキックをガルベロスに向けて放つ。ガルベロスの腹部に命中し、後ろへと押し込み。地面を抉りながらガルベロスは後ろへ下がっていくがやがて勢いが収まり、ガルベロスは再び火球を放つ。ゼインは両腕で防ぐが吹き飛ばされる。背中から勢いよく地面へ衝突するが、ゼインはすぐさま体制を整える。自身の必殺技であるジャスティスパニッシュメントが通用しないことに対して分析を開始していた。その隙にガルベロスがゼインに向かって突撃してくる。

 ゼインとの距離が残りわずかとなった時、上空から光がシャワーのように地面に降り注ぐ。周囲の景色はやがて幻想的な空と果てしない荒野へと変わっていった。ガルベロスに対して、立て続けに光の刃が空から撃たれ、ガルベロスは後方へと下がる。ゼインの隣にネクサスが着地する。その姿はすでにアンファンスからジュネスへと形態変化しており、ゼインに視線を送ると戦闘態勢に入る。ゼインはガルベロスを観察し、ある事に気づく。ネクサスが放ったパーティクル・フェザーによって負った傷が徐々に回復していたのだ。

 ゼインは左腰のカードホルダーからとあるカードを引き抜き、ベルトへセットする。カードを裁断し、能力を解放する。ゼインのバイザーが光る。ゼインの視界にはガルベロスの中央の首が赤く光っているように見えていた。ゼインが使用した能力は直視した存在の弱点となる部分が見える能力であった。ゼインはもう一枚、カードを取り出し、再び裁断し、能力を得る。今度は手の甲側の手首から刃が生成される。両手に生成された刃を構え、ガルベロスの喉元目がけて突き進む。刃を突き立てようとしたその時、何者かがゼインの腕を掴み、制止する。ゼインが顔を向けるとそこにはダークメフィストがゼインの腕を掴んでいた。ダークメフィストはゼインの腕を上へと持ち上げるとがら空きとなった胴体にストレートを叩き込む。ゼインは大きく後方に吹き飛ぶ。

 

「こいつが今やられると面倒なんでね」

 

 ダークメフィストは両腕を上げる。メタフィールドが一瞬にしてダークフィールドへと変化していく。ダークメフィストはネクサスに向かって突き進むがゼインがそれを阻む。

 

「彼は私がなんとします。あなたはガルベロスを!」

 

 ゼインはダークメフィストを連れて、ネクサスとガルベロスから距離を取る。ネクサスは手刀や蹴りを巧みに繰り出し、ガルベロスを押す。ガルベロスも自身の尻尾で攻撃するがネクサスは上空へ逃げる。ネクサスは上空で高速飛行しながら両手から三日月型の光の刃を無数に繰り出す。ネクサスの『ボードレイ・フェザー』がガルベロスに降り注ぐ。光の刃がガルベロスのあらゆる部分に傷をつけるがダメージを受けてから徐々に再生していく。その光景を見ていたゼインはダークメフィストを突き飛ばし、ネクサスに向けて中央の首が弱点である事を伝える。その後ダークメフィストはアームドメフィストから宇ローを展開し、クローの間からエネルギー弾を放ち、ゼインを吹き飛ばす。

 ネクサスはゼインの助言を受け、ガルベロスの火球を右腕のアームドネクサスで受け止める。火球のエネルギーを光のエネルギーへと変換し、撃ち返す『スピルレイ・ジェネレード』でガルベロスの中央の首を撃ち抜く。ガルベロスは悲鳴のような咆哮を上げ、大きく怯む。中央の首のダメージは回復しておらず、相手の再生機能がなくなったことを確信したネクサスはとどめを刺そうとする。しかし、ネクサスの目の前に信じがたい光景が映る。それはガナードの隊員服を着た人々がガルベロスを庇うように両腕を横に広げて立ち塞がっていたのだ。

 

「弧門、何をしている。早く民間人を救助しろ」

 

「そうだ弧門。こんなところで戦っているんじゃない」

 

 ネクサスの弧門のかつての仲間たちが惑わす。動きを止めたネクサスに向けて火球を連射する。全ての火球を受けて、大きく吹き飛ぶ。身体を起こすネクサスにガナード隊員たちは再び語り続ける。ネクサスは首を横に振ると立ち上がり、左腕を伸ばし、その上に右腕を重ねる形でクロスさせろ。ゆっくりと両腕を上げ、エネルギーを溜めていく。肘を腕の外側を向けるように曲げ、両腕を斜め上に広げ、L字に腕組み、右前腕部から光線が放たれる。ネクサス、ジュネスの切り札である『オーバーレイ・シュトローム』がガルベロスの見せる幻覚を超えて、ガルベロスに命中する。ガルベロスの全身を光が包み込み、粒子となって消滅する。ガルベロスが消滅すると同時にネクサスが見ていた幻覚も消えていった。

 ガルベロスの消滅を見ていたダークメフィストはゼインをクローで滅多打ちにするとネクサスに向かって突撃する。ネクサスはダークメフィストのクローを左腕で受け止め、そこから目にも留まらぬ速さで拳と蹴りが入り交じる。互いの拳が衝突し、真空波が発生する。二人は互いに距離を取る。ネクサスのコアゲージは赤く点滅していた。ダークメフィストは胸のクリスタルに変化はないものの、疲れが見えていた。

 

「命拾いしたな。だが次こそ貴様の光を消してやる」

 

 ダークメフィストはダークフィールドを解除するとどこかへと飛び立つ。ゼインは変身を解除し、飛び立つ姿を目で追っていた。ネクサスの身体を光が覆い、弧門の姿へと変わっていく。

 

「あなたは…」

 

「ちょっと!急に映像途切れて大丈夫なの?ってこの人…!」

 

 ゼインとシルヴィアは言葉を失う。そこには七年前の唯一のガナード隊員であった弧門一輝が目の前にいたのだ。

 

「あなたがネクサスだったのですね。弧門さん」

 

「どうして俺の名前を?」

 

「私はゼイン、ガナードで製造されたアンドロイドです。ガナード内のデータであれば私の記憶回路に入っていますので」

 

「だからか。よろしく、ゼイン」

 

「えぇこちらこそ」

 

 ゼインと弧門は軽く握手をする。ゼインはポケットから小型の通信機を取り出すと弧門に手渡す。弧門は戸惑いつつも受け取る。

 

「初めまして!私、そこのゼインを作ったシルヴィアって言う者ですけど。いやぁ実際にあって話してみたかったんですよ」

 

「話してみたかった?それはどうして」

 

「あなたは招来の日の生き残り、だからあの日何があったのか事実を知りたくて」

 

「それなら、本部に報告書を残していたはずだけど」

 

「それがどこを探しても存在していなかったので」

 

「…よほどあの日のことを隠したいんだな。悪いけど今は話せない。この通信も記録として残る。君をこれ以上巻き込むわけにはいかない」

 

「でしたら、どうしてガナードをやめたんですか。それだけでも」

 

「やめたんじゃない。やめさせられたんだ」

 

 弧門は通信を切るとゼインに通信機を返す。弧門はどこかへと歩き出そうとするが、歩みを止め、ゼインの方へと振り返る。

 

「君は神代ハルトを知っているか?」

 

「はい、彼は私に様々なことを教えてくれました。今は一緒に暮らしています。良ければ一緒に行きますか?」

 

「いや、遠慮しておくよ。ゼイン、ハルト君をよろしく」

 

 弧門はほっとしたような顔をすると、再び歩み始める。ゼインは弧門から受け取った思いと自分の意思を重ね、神代家へと帰って行くのだった。

 ハルトの自宅、神代家でサムは眠っていた。その姿は炎をまとう鋼鉄の鎧ではなく、可憐な少女の姿をしていた。サムの瞼が少し痙攣する。徐々に瞼が開き、辺りを見回す。痛む身体に鞭を打ち、身体を少しずつ起こす。それに気づいた祖父が作業をやめ、サムのところへと駆けつける。

 

「おぉ起きたか。どうじゃ調子は?」

 

「ありがとうございます。私は大丈夫」

 

 サムはベットから立ち上がろうとするが身体が痛み、立つことができなかった。

 

「今まで蓄積されておったダメージが今になってきたのじゃろう。今は休みなさい」

 

「私に休みは不要です。早く、ヴォイドを殲滅しに」

 

 サムは痛みをこらえながら立ち上がろうとする。苦悶の表情をするサムに祖父がゆっくりと寝かせる。

 

「無茶はいかん。それにおぬしのスーツは今修復中じゃ」

 

「修復できるのですか?あれには専用に設備が必要なはず」

 

「おう、必要じゃ。ここはジオライザーのスーツも直す場所でもあるからのう」

 

「ジオライザーの…あの、ジオライザーとどんな関係なんですか?」

 

「ジオライザーは、ハルトはわしの孫じゃ。七年前に両親を失ってな。それ方ずっと暮らしておるのじゃ」

 

「七年前、もしかして」

 

「そうじゃ、招来の日の生き残りじゃ。最初は失った悲しみで不差し込んでおったが徐々に前向きになってなぁ。今となっては人助けをするヒーローじゃよ」

 

「あのどうして彼にスーツを?」

 

「ハルトの願いを叶えたかったのじゃ。いつかヒーローになると。そして精一杯人を助けるとな」

 

「人を助ける。私と真逆だ…私はマザーからの指示に従って敵を殲滅する。人助けなんてできっこない」

 

「確かにサムは敵を倒すために設計した。じゃがそれだって人を救うことに繋がるんじゃよ」

 

「人を救うことに繋がる?」

 

「救助活動は難しくとも敵からの攻撃をその身で受け、敵を倒す。それぞれ役割があっていいんじゃよ。そうじゃおぬしの名前は?

 

「名前…フライヤーと呼ばれてたけど」

 

「フライヤーかぁ。うーむ、空を飛び、炎をまとって戦う。そうじゃ、『ホタル』というのはどうじゃ」

 

「ホタル?」

 

「そうじゃ、ホタルじゃ。ちょいと待っておれ」

 

 祖父は本棚へ向かうとそこから一冊の本を取り出す。それはとある図鑑であり、ホタルと名付けたサムへと渡し、とあるページを開く。そこにはホタルムシと書かれた虫がわかりやすく写真とともに掲載されていた。ホタルは写真に注視する。そこには夜空を淡い光で照らす複数のホタルムシの写真であった。

 

「今のサムは人々にとって、闇夜の中で光る、淡い希望の炎なのじゃ。例えどんなに小さくともな」

 

 ホタルは図鑑を眺め続けた。祖父はその姿に対して、微笑み、頭を優しくなでるとスーツの修復作業へと戻った。ホタルとハルトのために。その光景を遠目からコードナンバーVIIとゼロが見守っていた。

 ジオライザーの修復が完了し、ハルトはとある場所へ向かっていた。そこはファウストが自身に正体を明かした場所であった。ハルトが目的地にたどり着くとそこに奴はいた。相沢美佳の姿をしたファウストが立っていたのだ。ファウストは光のない瞳でハルトを見つめていた。

 

「来たぞ」

 

「待っていたぞジオライザー。いや神代ハルト」

 

 少女から発する声はどこまでも冷たい声であった。ハルトは改めて目の前にいるの自分の幼なじみではなく、自分たちの敵であると考えを定めた。

 

「最後に聞きたい。なんで俺の幼なじみとして接触してきた」

 

「簡単な話だ。強い光はより強い闇を生む。お前の死んだ幼なじみの姿を取り、お前に渡しの正体を明かしたとき、お前は闇に染まる。その闇が我々には必要だ」

 

「そうか、ありがとよ。最後の質問に答えてくれて」

 

 ハルトは左腕の装置のダイヤル部分をゆっくりと回転させる。ファウストは本来の姿へと変貌し、ダークフィールドを生成する。ダークフィールドが生成される前に光がハルトの頭上から降り注ぎ、ジオライザーへと変化する。ジオライザーの姿は灰色と銀色から深蒼色と金属光沢が増した銀色と変色していた。ファウストはゆっくりと戦闘態勢を取る。ジオライザーは両前腕部に新たなる武装『ジオブレード』を転送する。

 ジオライザーはローラーダッシュでファウストに接近する。ファウストもそれに応じるようにジオライザーに向かって走り出す。ジオブレードの攻撃を受け流し、拳を突き立てる。ジオライザーはその拳を手で受け止め、振り払う。どちらも引かぬ攻防戦が続く中、ファウストが距離を取り、両手にエネルギーを溜める。ジオライザーは右腕のジオブレードをジオキャノンに切り替え、射撃による妨害を行うがダークフィールドから発生するエネルギーによって阻まれる。ダークフィールドのエネルギーはそのままファウストの両手へと吸収される。

 ファウストは両手の拳を重ねて突き出す。拳から紫色の光弾を放つ。ファウストの必殺光線『ダークレイ・ジャビローム』はダークフィールド内限定ではあるが、その破壊力は確かなもので咄嗟に構えたジオライザーのジオリフレクターを貫通し、ジオライザーを吹き飛ばす。ファウストはすかさず上空に大きな光弾を放つ。その光弾は上空で静止するとやがて無数の小さな光弾が雨のように降り注ぐ。無作為であるが確実にジオライザーの周囲に降り注ぎ、煙でジオライザーの姿が見えなくなる。

 勝利を確信したファウストは呆気ないジオライザーの最後を鼻で笑うと背を向けてその場を去ろうとする。しかし、ファウストは歩みを止め、煙へと視線を向ける。晴れた煙の中からは至る所から火花が散るボロボロな姿のジオライザーが少しずつであるが確かにファウストへと近づいていた。

 

「こんなところで倒れるわけにはいかないんだよ。俺は!」

 

「哀れな。あの場で倒れたままでいれば死なずに済んだものを」

 

 ファウストは再び、ダークレイ・ジャビロームを撃つためのチャージを開始する。ジオライザーはチャージを確認した瞬間、自身の後方の地面に向けて、ジオブラスターを発射する。ジオブラスターの威力を推進力とし、ファウストに急接近する。ファウストはチャージが不完全なままダークレイ・ジャビロームを放つ。ジオライザーは破損したジオリフレクターで防ぐ。ジオリフレクターは完全に破壊され、後ろに仰け反るがジオブラスターの勢いによって前進し続ける。ジオライザーはファウストにしがみつくと、再度ジオブラスターをチャージし始める。ファウストは肘打ちや膝蹴りで引き剥がそうとするが、ジオライザーは必死にしがみ続ける。叩かれ蹴られた装甲にヒビが入り、肉体にも確実にダメージが蓄積していく。チャージが完了したジオブラスターを至近距離で放つ。

 ファウストの丈夫な身体はジオブラスターに耐えていたが、やがて耐久性の限界を迎え、その身体を貫く。苦悶の声を上げるファウスト。最後の抵抗としてジオライザーに向けて拳を振るう。ジオライザーの顔面に直撃し、左側が破損し、ハルトの素顔が露わになる。

 露わになったハルトの表情は複雑な表情をしていた。強敵を倒した喜びと化けていたとはいえ、自分の幼なじみを再びこの手で殺してしまった罪悪感を同時に抱えていた。粒子となって消えていくファウストはジオライザーに、ハルトに向けた拳を開き、彼に伸ばしていた。その手は触れることなく、やがて全てが粒子となって消えていった。

 ダークフィールドが消え、元の世界へと戻っていく。そこには力なく座り込むパワードスーツを身にまとったままのハルトが空を仰ぎ見ていた。

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