ラ・ピュセル生存記録 ―魔法少女育成計画Bloopers―   作:神谷萌

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注意
こっから先は筆者のお遊びです。
キャラ崩壊・設定崩れが今までより大きくなる可能性があるので、ご了承ください。


後日談 その01

「待て、待ってー!」

 深夜の裏路地。

 後ろから追いかけてくる声がするが、構わず走り去る。

「へへっ、これでアイツは脱落、アタシは安定1位確定と……」

 魔法少女マイカホワイトは、自分のものではないマジカルフォンを手に、そんな事を呟きながら走り去っていこうとする ────

 ベンッ!

「ブベッ」

 突然出現した障害物に、顔面から突っ込み、跳ね返るように後ろによろめいた。

 出現した障害物は、人の身長の高さよりも長い大剣。それが地面に突き立っている。

 そこへ、

 スタッ、タッ

 と、2人の魔法少女 ──── ラ・ピュセルとリップルが、建物の屋上から降り立った。

 ラ・ピュセルは、マイカホワイトの行く手を塞ぐ障害物に使った剣の代わりに、かつてスイムスイムが使っていた槍を担いでいる。

「はぁ……はぁ……はぁ……」

 2人がマイカホワイトの行く手を塞いでいると、被害に遭った方の魔法少女が追いついてきた。膝に手をついて前屈みになり、息を整えようとしている。

 ラ・ピュセルは、僅かに呆れを混ぜつつも、険しい視線をマイカホワイトに向ける。

「他人から奪うのは禁止。最初に説明があったと思うけど?」

「ネクは最初に言ったはずぽん」

 電脳妖精ネクが姿を表す。形状はファヴとほぼ同じだが、色は白と黒の塗り分けは左右ではなく上下で別れていて、その境界に赤い線が入っている。

 ファヴが所属していたFAシリーズに、より抜本的な改良を施した試作型、と、ラ・ピュセルには聞かされている。まだ完全なリリースの前で、 “NE-X” と呼ばれていた。

「他人のマジカルフォンを奪って操作するのは不正行為ぽん。もちろん脅して操作させるのもダメぽん」

「ちっ、バレやしないと思ったのに」

「ネクは不正対策も強化されてるぽん。いつでも見張ってるぽん」

 悪態をつくマイカホワイトに、ネクはそう言った。

「はい。ミクセリクサーのマジカルフォンを渡して」

「…………」

 マイカホワイトはまだ不満がありそうな表情で視線をラ・ピュセルに向けていたが、そうしながらも渋々、といった感じで、手に持っていたマジカルフォンを、ラ・ピュセルが差し出した手に渡した。

 そして、そのまま逃げるように駆けていく。

「まったく……」

 ラ・ピュセルはそう言いつつ、路地の真ん中を塞いでいた剣を、人が振り回すのに常識的なサイズに縮めた。

「はい、これ」

 奪われた方の魔法少女、ミクセリクサーに、彼女のマジカルフォンを差し出す。

「あ、ありがとうございます!」

 衣装のデザインも含めて、スノーホワイトとどこか似た雰囲気を持つミクセリクサーは、ラ・ピュセルからそれを受け取ると、少し緊張しつつも、はっきりとした声で礼を言った。

「あ、気にしないでいいよ。これがボクの役割だし」

 ラ・ピュセルは苦笑しつつ、手を振りながら言う。

 それから、腕組みをし、呆れまじりに困ったような顔をして、

「本当は、そもそもこういう事が起きないようにしなきゃならないのになー」

 と、誰にともなく言った。

「じゃ、じゃあ私、帰ります」

「うん、気をつけてね」

 

 

【挿絵表示】

 

『名深市の魔法少女の鬼指導役。鬼だけにツノが生えている』

 普通のスマートフォンの方で、写真付きのそれを見せられて、ラ・ピュセルは、がくっと、半ばわざとらしく首を傾けた。

 雑居ビルの屋上。ラ・ピュセル、リップルにスノーホワイトを加えた3人が集まっている。

 トップスピードは、出産直後で完全離脱中だ。

「これ絶対、今回の候補生の誰か……探す?」

 リップルが問いかけてくる。

「いいよいいよ、別にX(旧Twitter)の投稿なんか半分ネタみたいな扱いだろうしさ」

 ラ・ピュセルは、首を傾けた姿勢のまま、脱力しきった様子で手をひらひらと振りながらそう言った。

「でも、こういうリプも付いてるけど」

 リップルは、ラ・ピュセルに見せるために手を持っていたスマートフォンを、一旦自分の方に寄せて操作する。

 下を向いたままのラ・ピュセルの代わりというわけでもないが、スノーホワイトが画面を覗き込んだ。

「『かっこいい系魔法少女』『今のキューティーヒーラーだと誰のイメージだろ』」

 最初の方はよかったのだが、

「…………『シゴかれたい』『踏んで欲しい』」

「どういうイメージあるのボク」

 スノーホワイトが読み上げたそれを聞いて、ラ・ピュセルは、さらに崩れるようなリアクションをとった。

「まったく……大体ツノだって本来ドラゴンのイメージで……それを鬼とか……」

「…………」

 座り込んでいるラ・ピュセルに、スノーホワイトが近付いていって、そのツノに、軽く、というには、少し強めに押すように触れた。

「ひゃっ!?」

 ラ・ピュセルがびっくりした声を出す。

 

【挿絵表示】

 

「あれ、ツノって感覚あるんだ」

 スノーホワイトが、意外そうに言う。

「ツノ自体っていうか、根本が敏感みたいだ。すごくくすぐったい」

 頭の、スノーホワイトに触られた方のツノの根元あたりを手で押さえながら、ラ・ピュセルは言う。

「ふーん、へー、ほー……」

 リップルの声が聞こえる。

 不穏な予感がして、ラ・ピュセルが振り返ると、そこによくない笑みを浮かべたリップルが立っていた。

「え、あの、ちょっと……」

「スノーホワイトに触らせといて、私に触らせられないなんて言わないよね?」

 リップルは、そう言いながらわきわきと既に怪しい手つきをしつつ、ラ・ピュセルに迫ってくる。

「ちょっ、ひゃっ……」

 

【挿絵表示】

 

「あひゃひゃひゃひゃひゃっ!?」

「ひっ、ひゃっ、ぴゃうっ!!」

 リップルの気が済むまで、細い角を握られて軽く傾けさせたり、その根本を指でくすぐられたりしたのだった。

「弄ばれた……」

 

 

 ─☆──☆──☆─

 

「細波華乃といいます。颯太さんとお付き合いさせていただいています」

 岸辺家。

 来客対応をする、ラ・ピュセル ──── 颯太の母親に向かって、深々と頭を下げ、挨拶の言葉を言う。

「こちらこそ。いつも息子が大変お世話になっています」

 母親もお辞儀を返した。

「これ、つまらないものですが」

 華乃はそう言って、ありきたりのものではあるが菓子折を母親に手渡した。

「まぁまぁご丁寧に。颯太、上がってもらいなさい」

 

 話は数日前に遡る。

「あの……戸籍のこと、なんだけどさ」

 夕食時、両親の前で切り出した。

「その、男のままにしとくわけにはいかないかな」

「理由があるのか?」

 父親が訊き返してくる。

「うん……まぁ……」

 すぐにははっきりと言えず、一旦は視線を逸して誤魔化してしまう。

「そのままだといろいろ不便よ?」

 母親は、心配そうな表情でそう言った。

 僅かな間があって、父親が言葉を発した。

「好きな()でもできたか?」

「!?」

 今度は目を見開き、頬を紅潮させる。わかりやすい事この上ない。

「なるほど、そう言う事だったのね」

 母親もそう言って苦笑する。

「ま、思うところがないではないが、この御時世だ。敢えてどうこうは言わん」

 そう言う父親に対し、母親の方は妙に楽しそうに、

「あ、解った!」

 と、言う。

「小雪ちゃんでしょう? いろいろお世話になったみたいだものね」

「あの、えっと」

 先走る母親に、最初、戸惑ってオロオロとしてしまいかけたが、息を吸い直して、落ち着かせてから、

「小雪じゃないんだ」

 と、伝える。

「そうなの?」

 多少意外そうにしつつも、特に咎めることもなく、ただニュートラルな表情で、母親は問い返すような言葉を出した。

「うん……母さん達とは会った事はないけど、小雪と同じくらいお世話になってる人……かな」

「ふーん……」

 最初は、気のなさそうな声を出した母親だったが、

「あ、でもアンタがどんな娘を好きになったのか、ちょっと興味あるわね」

 と、言い出す。

「今度連れていらっしゃい」

「へ!?」

 言い出す母親に、驚きの言葉を返す。

「挨拶するだけよ。颯太が色々お世話になったんでしょう?」

「え、えっと、そうなんだけど……」

「母さんが家にいる時ならいつでもいいから」

 そう言われて、その場ではそれ以上言い返せなかった。

 

 そして、現在に戻る。

「小雪ちゃんとは違うタイプね、綺麗系って感じ。意外だわ」

 華乃を先に自室に上がらせ、台所で、飲み物とお菓子を用意する母親とやり取りする。

「でもあの目の傷……やっぱり、颯太が言ってた御家庭のトラブルで?」

「あー、うん、まぁ、そんなところ」

 流石に、それについては本当の事を言うわけにはいかなかった。

 カルピスの入ったコップ2つと、乾き物の入ったボウル皿を載せたお盆を受け取り、階上の自室へと向かう。

「あー、ドキドキした」

 部屋に入って、後ろ手に扉を閉めてから、ラ・ピュセルはそう言って、大きく息を吐き出した。

「私も」

 部屋の中で立ったままの華乃が言う。

「あ、適当に座って……」

 ラ・ピュセルはまず、そう言ってから、

「でもびっくりしちゃった。華乃、母さんの前じゃ別人みたいだったから」

 と、華乃の方を見る。

「それは……挨拶ぐらいはきちんとしないと」

「そうだけど……華乃はそう言うの苦手かなって」

「私をなんだと思ってる?」

 苦笑しながら言うラ・ピュセルに、華乃は、呆れたような表情で問い質すように言う。

「得意とは言わないけどバイトとかあるし、多少の猫は被れる」

「あ……そうだっけ」

 言われて、ラ・ピュセルは決まり悪そうな表情になった。

「…………」

「……どうかした?」

 妙な沈黙の後、華乃がどこか俯き加減なのを見て、ラ・ピュセルは問いかける。

「お前には、家族がいるんだなと思って」

「あ…………」

 華乃の言葉に、ラ・ピュセルは、軽く慌てつつ気まずそうな表情で、口元に手を当てる。

「別にどっちがより不幸かなんて話はしない」

「…………」

 華乃はそう言うが、それに対してなんと言えばいいのか、中学2年の頭はフル回転させても言葉が見つからなかった。

「ただ……」

 先に、華乃の方が声を発した。

「うん?」

「その、抱きしめて欲しい、かな」

「えっ?」

 華乃の言葉に、ラ・ピュセルは、意外そうな、軽く驚いたような声を返した。

「正面から、ぎゅっと……」

「ちょ、ちょっと待って」

 切なそうな表情で言う華乃を見て、ドキマギしてしまい、一旦は躊躇の言葉が出る。

「すぅ、はぁ……」

 ラ・ピュセルは、一度息を吸い直して、落ち着いてから、ベッドの端に腰掛け、

「いいよ、こっち来て?」

 と、両腕を開くポーズを華乃に向ける。

「…………ッ」

 華乃は、いざそうなってしまってから、今度は自分の方が気恥ずかしくなって、顔を真っ赤にしてしまう。

 それでも、言った手前もあるし、何より自分がそうして欲しくて、華乃はラ・ピュセルの腕に飛び込んでいく。

 少し勢いが強かったが、ラ・ピュセルはしっかりと華乃を抱きとめる。

「ちょっと、勢い強すぎた?」

「大丈夫だよ。これぐらい」

 華乃は女性にしてはかなり体格が良いが、ラ・ピュセルの身体にとっては然程の事もない。

 華乃の体重を支え、その身体に回した腕を締め、服越しにだがぎゅっと密着する。

 それでもラ・ピュセルにとっては力を抑えなければならなかった。未変身の華乃を、変身解除状態で若干抑えめになってはいるものの、ラ・ピュセルの力で思い切り抱きしめたら壊してしまう。

 もっとも力いっぱい抱き合いたいなら、華乃もリップルになればいいだけだ。ただ、今は万一親に覗かれたら困るからできないだけ。 ──── まぁ、高校生と中学生が抱き合っているのを見られるのもどうかとは思うところだが。

 華乃の方も、ラ・ピュセルの身体に腕を回して抱きつき返す。

「あったかいな……」

「前にも言ってたね」

「うん……」

 そうやり取りをしつつ、お互いの体温を感じ合う。

「…………」

「…………」

 

【挿絵表示】

 

 しばらく、お互い言葉が出ない。

 そのうちに、ラ・ピュセルが、じっ、と、華乃の顔を見つめた。

「ラ・ピュセル?」

「華乃の顔、綺麗だな……ボク、我慢できなくなっちゃう」

「えっ!?」

 その言葉に、ほんの一瞬、いや半瞬だけ、華乃が緊張する。

「その、キスしてもいい……?」

「あ、そ、そういう……う、うん、いい」

 熱で浮かされたような表情で言うラ・ピュセルに、華乃は自分の早とちりを恥じつつ、それを肯定した。

 ラ・ピュセルの方から顔が近付いていって、唇が重なる。

 ちゅ……

 1回じゃ物足りない。それがどっちの思いだったのか曖昧だが、何度も口づけ直す。

 ちゅ……ちゅ……

 

【挿絵表示】

 

「!」

 そのうちに、華乃の瞳から涙が(こぼ)れ始めた。ラ・ピュセルがそれに気付いて、少し慌てて一旦顔を離す。

「な、なんか、変なことしちゃった? ボク……」

 戸惑うラ・ピュセルに、華乃は口元で笑う。

「大丈夫、悲しい涙じゃないから……」

「そ、そう……?」

「うん。もう少し、離さないでいて」

 まだ不安そうな表情を見せるラ・ピュセルに、華乃はそう告げる。

 またしばらく、お互いの存在を味わい合って ────

「ラ・ピュセル」

 その果てに、華乃は、呪いの言葉を告げた。

「愛してる」

 

 





NE-Xの件
 色で解かれよ。成田エクスプレスだよ

具体的な感想をいただけると、続きを描くことが捗ります。
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