ラ・ピュセル生存記録 ―魔法少女育成計画Bloopers― 作:神谷萌
「ん…………」
気がつくと、側帯を含めても軽自動車同士がすれ違えない程の、幅の狭い道の上にいた。
そんな道なのに、左右は垂直に近い
夜なのか、周りは暗い。
「そうか……小雪を家に送った後だったんだっけ」
見たこともない場所のはずなのに、意識はそう認識していた。
しばらく、そのまま道を歩いていく。
「ん……」
すると、視線の先に、自分が向かっていた道路の彼方から、強い光が現れた。
段々と近づいてくる。
「クルマだ……」
避けないと、と思うが、道路の側帯は狭く、クルマの方が自分に気づいてくれないと接触しそうだった。
エンジンの音が聞こえてくる。低回転型ガソリンエンジンの音。それを判断する知識はなかったが、経験的に、軽自動車のような小さいクルマではない事を感じる。
「大丈夫かな……」
そう思いつつも、エンジンの音から乗用車だと感じた。多分相手が気づいてくれるだろう、と、自分もできるだけ道の脇によりつつ、歩き続ける ────
「えっ!?」
ヘッドライトの光源が、左右の2つに分かれて見えるようになったところで、その車種がトラックだと気がつく。
所謂2トン車と呼ばれる車種。その知識はないが、トラックとしては小型の部類に入っても、この狭い道を通るにはかなり窮屈に見えた。
暗さとヘッドライトの光源で本来極めて見えにくいはずが、
にもかかわらず、トラックはかなりの速度で迫ってくる。自分に気づいてなさそう、気づいて貰えそうになかった。
「避けないと」
慌てて立ち止まり、左右を見回すが、擁壁が圧迫感さえ感じる程に、その空間を塞いでいた。
「そうだ、跳んで躱せば……」
見上げる。天井があるような場所ではなかった。
路面を蹴って、跳び上がろうとするが ────
ピョン
「あ、あれ!?」
いつもの跳躍力が出ない。何度も、ピョン、ピョンと繰り返すが、まるで普通の人間のようなジャンプ力しか出なかった。
「────!?」
そこでようやく気づく。
体型が違う。自分の足元を見下ろした時に視界に入るはずの胸がない。腰も脚も、今となっては心細く感じる程、細いように感じた。
慌てて自分の頭を触り回す。髪型も違う。先を編んで垂らしている横髪も、左右で編み込んで丸めて纏めた後ろ髪もない。そして何より、ツノがなかった。
「そ、そんな!!」
鏡はないが、今の姿が
そこへ、強烈な光源が迫ってくる。
トラックは、もう目の前にいて ────
「うわぁあぁぁぁ!!」
掛け布団を弾くようにして、飛び起きた。
「はぁ……はぁ……はぁ……はぁ……」
上体だけを起こした状態で、荒い息を整える。
「ゆ、夢……か……」
一度息が落ち着いたところで、そう呟いて、ふうと息を軽く吐き出した。
枕元の時計を見る。まだ日の出までには2時間以上ある時間帯だった。
一度ベッドを抜ける。照明を
開き直って女性としてのお洒落を楽しむようになってから、父親が買ってくれたと言うか、
そこには、ピンクにハート柄のパジャマを着た、
その姿を見て、胸元を押さえながら、ほう、と、安堵のため息を深く漏らしてしまう。
「あー、ビックリした……今更なんて夢を見るんだよ」
どっと全身の緊張が緩んだような感覚がして、ボヤくように言いながら、ベッドに崩れ込むように仰向けになる。
スマートフォンとともに、折りたたまれている時のその形状はどちらかと言うと
そこから、ポンッと音でも立てるかのように、電脳妖精ネクが姿を表す。
「なにかあったぽん? 今、心拍数の急激な上昇を感じたぽん」
「あー……いや、変な夢見ちゃって……」
訊ねてくるネクに、ラ・ピュセルは脱力したままそう答える。
「夢?」
「うん、トラックに撥ねられる夢」
「トラックぽん?」
ラ・ピュセルの答えに、ネクは怪訝そうにする。
「トラックぐらい、ラ・ピュセルならどうとでもできるはずだぽん。避けるのなんて簡単だし、どうしても避けられないなら剣や槍で破壊すればいいぽん。それぐらいは緊急避難だぽん」
「それがさ、夢の中じゃ、
「前の姿ぽん?」
ラ・ピュセルの言葉を聞いて、ネクはまるで人間が小首を傾げるかのように身体を傾けつつ、問うような声を返した。
「ネクは知ってるんだっけ? 前のボクの姿……」
「
逆に問い返すようにラ・ピュセルが言うと、ネクはそう答えた。
「姿だけじゃなくて、能力も元に戻っちゃっててさ、それで、避けようもなくて」
ラ・ピュセルの疲労感を感じさせる口調の言葉に、ネクは、慰める口調で、
「夢は内容次第で不合理な状況が再生されるぽん。気にしてもしょうがないぽん」
と、そう言った。
「それともなにか心当たりがあるぽん?」
少し怪訝そうな口調になったネクに、
「いや……うーん、多分ないと思うけどなぁ」
と、ラ・ピュセルは僅かに逡巡した後、そう答えた。
「それにしても…………ネクって、ボクの心拍数まで測れるんだ」
気まずいというわけでもなかったが、話題を切り替える。
「もちろんだぽん。マスターの安全を管理するのがネク、そしてゆくゆくは “NEシリーズ” の役目だぽん」
「へぇ……」
どこか誇らしげに言うネクに、ラ・ピュセルは、感心したような表情になり、そのように声を出した。
「さてと……ちょっと寝なおそうかな」
ラ・ピュセルがベッドに収まり直しながら言うと、
「了解だぽん。いつでも待機してるぽん」
と、そう言って、ネクの姿も消えた。
─☆──☆──☆─
「前から思っていたんだけど」
「え?」
ある日のデートの最中。
アニメの映画を観て(内容はラ・ピュセルが選んでる時点で察してほしいっス)、ウィンドゥショッピングをして、書店に立ち寄って、小腹が空いたねと、入ったカフェでの事。
怪訝そうなと言うか、困ったと言うか、そんな微妙な表情で、華乃が切り出した。
「スノーホワイトに、いつまで『そうちゃん』って呼ばせてるの?」
「あー……うん、それは……」
それを言われると、ラ・ピュセルにとっては凄く気まずい。
「ラ・ピュセル自身は、私の事は『リップル』と『華乃』を使い分けてるし、スノーホワイトに対しても変身していない時は『小雪』って呼んでるわ」
責めるというわけではないが、好ましくないことを指摘するかのように、華乃は言う。
「うーん」
ラ・ピュセルは、苦い顔をして、腕組みをして唸ってしまう。
「最初のうちは
「どうして?」
華乃が訊き返す。
「華乃も知ってるでしょ、ボクがマトモに動けなかった時の話」
「それが……」
なにか、と、華乃は言いかけて、
「ああ……」
と、途中で自己解決した声を出した。
「あの時に固定されちゃったんだよ。今の呼び方……」
ラ・ピュセルは、そう言って、戯け混じりにも深刻さも含めて、大きくため息を吐いた。
「トップスピードから……言っても無理か。一度固定されると動かしにくい所あるし、スノーホワイト」
「そうなんだよねー」
華乃の言葉に、苦い顔をしていたラ・ピュセルだったが、ふっと気がついたように華乃を見る。
「別に、こうしている時は、華乃もボクをそっちの名前で呼んでもいいんだよ?」
「なっ……」
華乃は、不意を突かれたように、短く声を漏らす。
姿が変えられないラ・ピュセルだが、ファヴとクラムベリーの後始末をした時に貰ったアミュレットを、アバターに組み込んでいるおかげで、 “本来、変身を解除しているはずの状態” と “変身している状態” では、魔法少女と自身の近縁者以外には同一人物と認識されない。
「じゃ、じゃあ……」
別に誰かが見ているわけでもないのに、視線を動かして視界の中を確認してしまってから、テーブルの下で手をぎゅっと握ってしまいつつ、顔を赤らめて、言う。
「そ……颯太」
「うん」
言ってしまってから、更に顔を紅潮させる華乃を見て、ラ・ピュセルは、返事をしつつ、妙に嬉しそうな笑顔で華乃を見ていた。
─☆─ オマケ ─☆─
白く小さな魔法少女:
「私、どうしてこんなところにいるんだろう?」
もう1人の白い魔法少女:
「私は、どうしても正式な魔法少女になりたいんだ。夢の世界に行ってしまったあの子に会うために……」
メルヴィル:
「ゲームをしましょう、お嬢さんたち。楽しい楽しいゲームを……」
名深市に再び集められた16人の魔法少女候補生。
本来の姿、健全な “ゲーム” で真の魔法少女を決める。そのはずが ────
女王様姿の魔法少女:
「実験場にふさわしい場所。若いマスターに私の深慮は見抜けない」
ネク:
「あの子は人造魔法少女だぽん。ホムンクルスをベースに作られた一種の兵器ぽん。そして “NEシリーズ” は本来、彼女達のアシスタントとして開発されていたんだぽん」
白く小さな魔法少女:
「違う、私がやったんじゃない! 私がやったんじゃないの! 信じて!!」
「それでも……」
ラ・ピュセル:
「それでも、ボクはあの子を助ける」
ネク:
「それでこそラ・ピュセルだぽん。ネクがここに来た甲斐があったぽん。どうか助けてあげてほしいぽん」
リップル:
「人造かどうかなんて、凄くどうでもいい……」
トップスピード:
「名深のカルテット、再集合だ! 叛逆の狼煙を上げようぜ!」
スノーホワイト:
「──── あの子、泣いてる」
…………って、俺は書けません。ごめんなさい。
いやマジで書けないから!!
自分が書きますという超・奇特な方がおられましたら構想と現段階の設定、それと「お願い」をお送りします。
【2026/05/16(JST基準)】
書きます!!
ChatGPTとネタの蠱毒やってたらストーリーラインが見えてきた。
ガソリンエンジンの件
今は新車としては全滅してますが、21世紀ごく初期頃までは2トン車には申し訳程度にガソリン車が設定されていました。自分も一度だけ、有人スタンドで洗車を頼んでいる間に、ガソリンのブースに入ってきたアトラス(日産が出してた2トン車)に出会ったことがあります。中古でならまだ
今回のそうちゃんのコーデ
反転ルパン三世(赤ジャケット)
具体的な感想をいただけると、続きを描くことが捗ります。
Twitter https://twitter.com/kaonohito2
Discord https://discord.gg/WN23qmRnkQ
Discordは「一時メンバー」となりますので、私のオフライン時に来られた方は、「エントランス」及び「一時メンバーの連絡用チャンネル」のアナウンスに従って必要事項を書き残してください。