ラ・ピュセル生存記録 ―魔法少女育成計画Bloopers―   作:神谷萌

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第07話

「結局、1人もヤれてないな、お前」

「ソレハ……まだ、待ってくだサい」

 だが、容赦はない。いや、容赦するとか、そう言う性質のものでは、最初からなかったのかも知れない。

「もういいわ。お前、つまんね」

 ドバァン!!

 

 

 電波塔のキャットウォーク。

 そこに、ラ・ピュセルとリップルはいた。

 先日とは逆に、

『2人きりで話がしたい』

 と、そう伝えてきたのは、リップルの方だった。

 ただ、トップスピードやスノーホワイトにそうは言えなかったのか、一度解散してから、その場所から少し離れたところで、ということで、ここになった。

 夜風が少し冷たい。

「なんで、助けたんだ?」

 ラ・ピュセルの方を向かないまま、リップルは問いかける。

「そりゃ……あんな目に遭ってる人がいたら助けるのは当たり前だし……」

 ラ・ピュセルは、特に言いにくそうにもなく言う。

「それに、仲間だろ」

 それを聞いて、リップルは、ガリッ、と奥歯を噛んだ。

「仲間か、私が」

 どこか忌々しそうに言ったリップルの言葉に、

「解ってるよ。リップルの方は認めてくれてないって」

 と、ラ・ピュセルは、(かす)かに困惑したようにしつつそう言ったが、リップルの言い回しの微妙さに気づいていなかった。

 僅かに沈黙。

 リップルが、一度ラ・ピュセルを見て、すぐに視線を伏せるように逸らす。右手で左腕の肘のあたりを掴んで、立っている。

「スノーホワイトから、聞いたんだろ」

「え?」

 リップルの言葉に、最初ラ・ピュセルは、素で何の事か解らず、短く声を出して訊き返す。

「私の、 …………困ってる声」

「その、スノーホワイトも心配してるんだよ、だから……────」

「そうじゃない」

 スノーホワイトの事を怒っているんじゃないか、と早合点したラ・ピュセルが慌ててフォローしようとするが、リップルはその言葉を遮った。

「私も聞いた。お前の事。スノーホワイトから。許してやってくれって」

「……そう、なんだ」

 リップルが低い声で言った言葉に、ラ・ピュセルはそう返す。

 一見、同じようにつっけんどんにしているように見えても、ラ・ピュセル(じぶん)と比べるとスノーホワイトに対してはさほど拒絶していない、むしろ場面によっては協力的な時もある、とは、ラ・ピュセルも感じていた。

 だから、スノーホワイト ──── 小雪も、ラ・ピュセルの事を案じて、言ってくれたのだろう。

「すごく、苦しんでたって」

「えっと……それは」

 そう言われて、ラ・ピュセルは、先程からの緊張感に似たそれとは、別種の気まずさを感じて、誤魔化すように苦笑する。

「今は……そうでもないっていうか……」

 ラ・ピュセルが言うと、リップルは再び、ガリッ、と奥歯を噛んでから、

「嘘つくな!」

 と、急に声を荒く張り上げ、同時に視線もラ・ピュセルの方に向けた。

「嘘つくなと言われても ────」

「殺されかけて! 変身が解けなくなって! それなのに元々は男で! それで平気なわけないでしょ! 私だったら気がおかしくなってる!!」

 困惑して言い返しかけたラ・ピュセルの言葉を遮り、リップルは一気にまくし立てた。

「うん……そのあたりは、平気っていうか……改めて考えても、平気だな」

 激昂したような表情を向けているリップルに、ラ・ピュセルは言う。

「多分、スノーホワイトは、ボクがすごく苦労した、みたいな事言ってたと思うんだけど、それは、事故のすぐ後で身体が思うように動かなかった時の話。あのときは確かに、平気じゃなかったっていうか、なんかどうでも良くなりかけてた」

 ラ・ピュセルがそう言っている間に、リップルの一気に声を上げて荒くなっていた息が整ってくる。

 ラ・ピュセルは続ける。

「あのさ、今の姿って…………ラ・ピュセルって、ボクがなりたかった姿なんだ。強くて、カッコよくて、誰かを助けられて……女の身体って事には、まだ慣れてないところもあるけど、そう言うところは、辛くないんだ」

 リップルを宥めるかのように、ラ・ピュセルは穏やかな表情をしていた。

「でも」

 リップルは、眉を険しくして言う。

「お前には、殺したいやつがいる」

「それは……────」

 ラ・ピュセルの表情も険しくなった。

「── 憎んでるのか、って言われれば、そうだと思う。だから、次で終わりにしたいんだ。こんな気持ちは。そして、早く “ゲーム”(こんなこと) が終わればいいって思ってる」

「…………だから、強くなりたい、のか」

「うん」

 リップルの問に、ラ・ピュセルは真剣な表情で即答する。

「でも、私はそれを断った」

「それは、でも、自分でもいきなり過ぎたって言うか……────」

 軽く慌てて、自分の方が悪かったように言いかけるラ・ピュセルだったが、

「そう言うとこなのよ!」

 と、リップルが遮る。

「私は酷い事を言ったのに! 私が襲われてて、そこに助けに来て! 仲間だからって! お前も! スノーホワイトも! トップスピードにもそう言うとこあるし!」

「えっと、ごめ ────」

 彼女らしくなく、言葉を乱し続ける(さま)に、ラ・ピュセルは反射的に落ち着かせようとしてしまうが、

「違うの!」

 と、リップルはその言葉を遮る。

「え?」

 ラ・ピュセルの方は、場違いにも一瞬、キョトン、としてしまう。

「私もホントはそうなりたいの! 誰かを助けられる、優しい魔法少女に!」

 自分の肩を抱くようにしながら、リップルは慟哭するかのように言った。

「……もう、なれてるじゃん」

 ラ・ピュセルは言う。

「トップスピードと、ずっと、人助けしてきたんだろ」

「もっと、自分から、そうなれるようになりたい」

 リップルは、それが、自身が惨めであるかのように感じられるように声のトーンを落としつつ、言う。

「なれるよ」

 ラ・ピュセルは、穏やかな表情になって言う。

「それはさ、急がなくてもいいじゃん。トップスピードを見ていれば……ボクも、スノーホワイトもいる。一緒にいれば、少しずつ、そうなれるよ」

「…………」

 リップルは、僅かに沈黙を置いてから、

「少しずつじゃ、嫌だ」

 そう、大きくはないが、はっきりと聞き取れる声で言った。

「あの時の、お前の顔、覚えてる」

「あの時?」

 リップルが続ける言葉に、ラ・ピュセルが鸚鵡返しに訊き返す。

「あの男を私から離してくれた時。本当に、自分の事の様に怒ってた」

「それは、だって、仲間だからさ……」

「解ってる」

 ラ・ピュセルのその答えをもう一度確認したかのように、リップルは続ける。

「私、親にも助けてもらえなかった。私の事であんなに怒ってくれたの、お前が初めてだと思う」

「そう、なんだ」

 リップルの言葉に、ラ・ピュセルは、それをどう捉えて、どう返すべきなのか困惑しつつ、そうとだけ返す。

 ラ・ピュセルが次の言葉を考えている最中に、

「私は、お前……ラ・ピュセルの事が、もっと知りたい」

 と、リップルが言った。

「いいよ、じゃあ……────」

 ラ・ピュセルは、そう言いかけて、

「── あ、ボクはほら、今、昼間学校通えてないからいいけど、リップルは……」

 と、少しムードを(たが)えたような事を言ってしまう。

「いい。明日1日ぐらい」

 リップルは、そう答えた。

「じゃあ、話すよ。魔法少女になってからの、ボクのこと ────」

 

【挿絵表示】

 

 

 

「スイムスイムにとっておきの情報だぽん」

 そう言って、ファヴはスイムスイム達が集まっているところに現れた。

「ひゃっ!? ファ、ファヴ様……」

「うわぁ……また出た」

 反射的に怯えたようになるたま、あからさまに嫌そうな顔をするミナエル、そして、

「必要ない」

 と、当のスイムスイムは、素っ気なくというか、視線も向けずに、端的に言った。

「そんなこと言ってていいぽん? このままじゃみんな殺されちゃうぽん」

 ファヴは、スイムスイム達の反応を気にしないかのように、馴れ馴れしい口調で言う。

 それを聞いて、ようやくスイムスイムは、視線だけをファヴに向けた。

「脅かしてなにかさせる気……?」

「ちゃんとした情報ぽん」

 スイムスイムの言葉に、ファヴは気を悪くした様子もなく言う。

「相変わらずうっざい言い回し」

「み、ミナエルちゃん……」

 ミナエルが心底嫌そうな表情で言い、それを軽く怯えた様子のたまが宥めようとする。

「だったら、さっさと言って」

 スイムスイムは、催促するというより、突き放すように言う。

「クラムベリーがキミ達を狙ってるぽん」

「クラムベリー?」

 僅かに怪訝そうな表情をして、スイムスイムが言葉を鸚鵡返しにする。

「たまにチャットルームに出没してたやつよね? そいつそんなに強いの?」

 ミナエルが、訊き返すと言うよりは茶化すように、笑いながら言う。

「かなーり強いぽん。ラ・ピュセルを殺したのはクラムベリーぽんよ」

「ひゃっ!?」

「ふーん」

 ファヴの言葉に、たまが驚いた声を出し、ミナエルは興味もなさそうに言う。

「それは本当?」

 スイムスイムは、淡々と訊き返す。

「ウソはつかないぽん」

「どーだか」

 ファヴはスイムスイムに答えるが、それを聞いて、ミナエルが胡散臭そうにジト目を向ける。

「やられる前にやれだぽん。強い敵は先に消しておいた方が楽だぽん」

「それはそう」

 ファヴの言葉に、スイムスイムは、この場では初めて同意の言葉を出す。

「じゃあ決まりぽん」

 ファヴはそう言うが、

「決めるのは私」

 と、スイムスイムは、主導権はあくまで渡さない。

「別にそれは好きにすればいいぽん。とにかく伝えることは伝えたぽん」

 そう言って、ファヴの姿はどこへともなく消えた。

「で、どーすんの?」

 ミナエルが、スイムスイムに問いかける。

「スイムちゃん、私、少し怖い……」

 たまの方は、全然 “少し” ではない怯え方をしながら、スイムスイムに言う。

 すると、スイムスイムは、自分の持っているマジカルフォンを手に取り、表示を確認した。

 そして、こう呟く。

「…………おかしい」

 

 

「さてと」

 テーブルの上にAK-102カービン、MTs-116M (7.62mmNATO)狙撃銃、イズマッシュ サイガ-20K isp.04、ゲパードM1 (12.7mmNATO)対物ライフル、ダネルMGLハンドグレネードランチャー、PMN-2対人地雷、RGD-5手榴弾……

 この日本でどこからそんなモノ入手した、と言ったシロモノが、一見すると、とてもそんなものが入りそうにないカバンの中に収められていく。

 鼻歌を歌いながらそんな作業をする女性の足元に、女性が倒れている。 ──── 頭部が破裂したようにグチャグチャになっており、とても生きているようには見えないが、作業をする女性の方は、そんなものはお構いなしに、それも楽しそうに続けていく。

 最後に、日本では原型のメーカーである『トカレフ』と呼ばれるノリンコ Model213拳銃を、ジャケットの裏に隠す。

「待ってろよ」

 壁には、4人の魔法少女の写真が貼ってある。そのうち3人には、顔面に紅いインキが塗りたくられ、その胸部には五寸釘が刺してあった。

「今迎えに行くからな、リップル」

 




何がどうしてこうなった?
リップル相手にイケメンムーヴかましてんじゃねぇラ・ピュセルぅ!!
そして中身中学生に絆されてんじゃねぇ中身高校生!!
そうちゃんの言葉が大人っぽくなりすぎないよう気をつけるのが大変

ここまでの脱落者一覧、ネタバレ含むので反転。
1.ねむりん:拙作本編開始前、原作(アニメ)通り
2.ルーラ:拙作本編開始前、原作(アニメ)通り
3.?????????:ラ・ピュセルが死ななかったため最下位脱落
4.ユナエル:ウィンタープリズンに返り討ちに遭い死亡、原作(アニメ)通り
5.ウィンタープリズン:スイムスイム組により殺害、原作(アニメ)通り
6.マジカロイド44:カラミティ・メアリにより殺害(本話冒頭)


具体的な感想をいただけると、続きを描くことが捗ります。
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Discordは「一時メンバー」となりますので、私のオフライン時に来られた方は、「エントランス」及び「⁠一時メンバーの連絡用チャンネル」のアナウンスに従って必要事項を書き残してください。

ラ・ピュセル以外に追加で助かる魔法少女がいてもいい?

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