ラ・ピュセル生存記録 ―魔法少女育成計画Bloopers―   作:神谷萌

8 / 18
Q.お前デスゲーム苦手とか言ってなかったっけ?
A.デスゲームは苦手だけど戦争モノは読むし書くよ!


第08話

 その日、小雪が放課後になり、トップスピードやリップルとの待ち合わせ場所に向かっていた時だった。

 マジカルフォンに着信があった。

 開くと ────

『たいへんだぽん。国道で大爆発騒ぎだぽん。このままじゃ犠牲者がたくさん出るぽん』

 ファヴからのそのメッセージを、思わず凝視する。

 小雪も、もうファヴの事は、少なくとも無条件には信用していなかったが、もしこの内容が本当だったら、放ってはおけない。

 すぐに、手近で人目につかない場所に行き、スノーホワイトに変身する。

「うっ、ぷ……」

 一瞬、吐きそうになった。

 普段の些細な悩み事を拾ってしまうのとは異なる、命の危機に晒された ──── 以前、火災現場から老人を救い出した時に感じたのと同じような性質と強さの声、それが何百とスノーホワイトの頭に響いてくる。

 なんとか冷静さを保ちつつ、マジカルフォンでメッセージを送ろうとして……────

「あ、あれ?」

 ない。

 ラ・ピュセルの名前が、リストの中になかった。

 その代わり、順位表で1位にあったのと多分同じ、崩れたフォントがデタラメに並んでいる名前が、そこにもあった。

 それをタップするが、反応しない。

 スノーホワイトが慌てていると、

 ピリリリリリ……

 と、普通のスマートフォンの方に着信があった。

 それを取り出し、発信者を見ると、『そうちゃん携帯』。

 慌てて通話をタップした。

「も、もしもしそうちゃん?」

『小雪!? 国道の爆弾騒ぎ、気づいてるか!?』

 向こうからも、憔悴した声が聞こえてきた。

「そうちゃんは?」

『うん、()()()()()()ニュ()()()()()()()

 ── え?

 そうちゃん ──── ラ・ピュセルのところには、ファヴのメッセージが行ってない?

『小雪? 小雪!?』

「あ、う、うん、今、私も向かうところ!」

『途中で合流できたらしよう』

「う、うん。そうちゃんは場所わかるの?」

『それもニュースでやってた。高速の出入口の近くだ』

「わかった、私も行くね!」

『うん』

 そう言葉を交わして、通話を終了する。

 大きく跳躍して、建物の上へ。

 そのまま、建物伝いに、声の多く聞こえる方角へと跳躍を繰り返して、急行する。

 その途中、

「こゆ……スノーホワイト!」

 駅のある方角から、ラ・ピュセルの叫ぶ声が聞こえてきた。

「そうちゃん!」

 スノーホワイトの方からも声をかける。お互い、向かう方角はそのままに、近くへと寄って行った。

「良かった、合流できて。私、心細いっていうか……」

「ん?」

「すごい、声が……」

「あ、ああそうか、スノーホワイトにはキツいだろうな、これ……」

 不安そうなスノーホワイトに、気遣いつつも険しい表情のラ・ピュセルは、並んで跳躍を繰り返し、現場へと向かっていく。

 

 

 現場は、さながら戦場のような、というより、もはや戦場そのものに見えた。

 元々交通量が少ないとは言えないところ、高速道路からの連絡路が国道に合流してくる範囲に渡って、多数のクルマが破壊され、散乱していた。

 大爆発騒ぎ、爆弾騒ぎ、と言われていたように、その多くが床下から爆破されたものだ。だが、中には銃で撃たれたようなものも混じっている。

「どうやって、こんな……」

 どこから手を着けたらいいのかすら、すぐには判断できず、スノーホワイトと2人、唖然とした表情で、ラ・ピュセルが声を出した。

 しかも、────

 ファオンファオンファオン…………ドゴォン!!

 走ってきたパトカーが、突然の大爆発で宙に舞う。

「ま、まだ爆弾もあるのかよ!」

 戦慄と驚愕の声が出る。

「と、とにかくクルマに閉じ込められている人を助けないと……」

「う、うん」

 そう言って、横転している、ハイエースクラスのバンがある方へと動き出したときだった。

 その近く、中央分離帯を挟んで反対側に、右側のフロントサスが破壊されているが、車体は比較的原型をとどめている軽自動車があった。

 初老の男性が、孫と思しき女児を抱えて、運転席から降りてくる。

 そして ──── 中央分離帯に置かれていた、円形のそれを踏んづけた。

 バシャッ

「!」

 スノーホワイトの動きが止まる。

 円形の物体 ──── PMN-2対人地雷が炸裂し、男性と女児はずたずたに引き裂かれた血と肉の塊になった。

「な、な、な……」

 ラ・ピュセルがその光景に立ち尽くしてしまいかけると、

「うっぷ、ううっ」

 と、隣にいたスノーホワイトは、手で口元を押さえてうずくまりかけた。

「大丈夫か、スノーホワイト! スノーホワイト! ……小雪!!」

 ラ・ピュセルは、自身もこんな光景には慣れていない。ただ、自分は血濡れで殺されかけた経験があったし、強い殺意、一線を越えるほどの悪意といったものには多少の()()ができていた。それが本人にとっていい事なのかはともかく ────

 だが、スノーホワイトはこんな場面に直面するのは初めてだった。

 それでも、状況は待ってくれない。ラ・ピュセル達が認識するところの “爆弾”、対人地雷がまだ置かれているかも知れないのだ。

「みなさーん! 動かないでください! 私達が今、拾い上げに行きますから!」

 ラ・ピュセルは、見渡せる限りに向かって、声を張り上げ、それを何度か繰り返した。

「スノーホワイト、大丈夫か?」

 行動に移す前に、スノーホワイトの様子を伺う。

「う、うん……大丈夫、私達がしっかりしないと……」

 顔色はよくなかったが、なんとか自分を奮い立たせて、身体を起こした。

 2人は手分けして、破壊されているそれぞれのクルマのところまで行き、車内を伺う。その中に乗員がいれば、車内から出して、道路を踏まずに跳躍で、消防のレスキュー車や救急車がなんとか到着できているところまで運ぶ、それを繰り返す。

「大丈夫ですか!?」

「あ、ああ、なんで、こんな事に……」

 頭をどこへぶつけたのか、額が割れて派手な出血をしている男性は、礼を言う余裕もなく、ラ・ピュセルに抱えられて、ただ震えながらそう漏らす。

 何度かそれを繰り返すが、重傷者は動かせない。

 歯痒い思いをしていると、消防のレスキュー車が停まっているそのさらに向こう側から、自衛隊の車両が走ってくるのが見えた。

「後は……なんとかなりそうか……」

 ラ・ピュセルが、思わず安堵の声と息を漏らした時だった。

「う、ううっ」

 別の車体の上に乗っていた、スノーホワイトが、頭を抱えてうずくまった。

「スノーホワイト!」

 ラ・ピュセルは、一旦その車体の上まで向かう。

「大丈夫か? どうしても耐えられないなら……」

「違う……違うの、この、声……」

 ラ・ピュセルが険しい表情でスノーホワイトを覗き込みつつ訊ねると、スノーホワイトは頭を抱えるようにしたまま、その頭を左右に振る。

「これ……近くで、リップルとトップスピードが戦ってる……別の魔法少女と……だけど……!」

 

『そうだ、お前の為にここまでしてやったんだ。それなのに、それなのに!』

『また庇う。ああもう、ほんとに邪魔だ。お前はそっちに守られてる顔より、もっといい顔をするだろ』

『ここまでしてやってるのに、なんで私のものにならない……なんであの子のほうへ行く……』

 

「…………そいつが、これをやった、のか?」

 ラ・ピュセルが問いただすように言うと、スノーホワイトはこくこくと頷く。

「リップルとトップスピード、苦戦してるみたい」

 スノーホワイトは、震える声で言う。

「……どっちに行けばいい?」

 ラ・ピュセルの問に、スノーホワイトは、震える手を上げて指差した。

「ここ、任せて大丈夫か?」

「うん、頑張る。だから、行ってあげて」

 スノーホワイトは、なんとか自分の身体を動けるようにして、ラ・ピュセルを見た。

「解った!」

 ラ・ピュセルは、先程スノーホワイトが指差した方角へと、一度高く跳躍し、路側帯に出てから、疾走していった。

 

 

 ── そうだ、撃ってこい、オレを狙ってこい!!

 トップスピードとリップルは、トップスピードの箒『ラピッドスワロー』にタンデムに乗り、敵に向かって突進しているところだった。

 ラピッドスワローは、レーサーレプリカのオートバイのようなカウルを纏っていた。

 そして、そのカウルを今は武器にしていた。

 賭けだ。相手が正確に狙ってくる事を逆手に取る戦術を組み込んで、真正面に突進していく。

 

 そして、そこへラ・ピュセルが到着して()()()()

 

 ラ・ピュセルには、「トップスピードとリップルが今にも撃たれそうになっている」ように見えた。

 それ自体は間違いではない。

 ただ、その意図を知らない状態から見ると、それは「トップスピードとリップルの危機」と判断できてしまう。

 だから、

「やめろっ!!」

 ラ・ピュセルは、躊躇わずその敵に突進し、タックルをかけた。

「うぉっ」

 敵が漏らした声。

 タンッ

 銃身が僅かにブレた状態から、その銃口から7.62mmNATO弾が発射された。

 弾丸は、ラピッドスワローの真正面を僅かに右に逸れて命中した。カウルが破壊され、右に逸れて速度を落としながら、落下していく。

 グワシャッ、ズシャアァァァッッ

 破壊された右側を擦り付けるようにして、ラピッドスワローとトップスピードは地面に叩きつけられた。

「トップスピード! トップスピード!!」

 自分は、落下中に反射的に飛び降りてしまったリップルは、トップスピードに駆け寄り、何度も声をかける。

「うぐ……ぐっ……」

 トップスピードは右に倒れたまま、動けずに呻き声を上げている。

「トップスピード……!」

 それを確認して、リップルは愕然とし、一時的に動きが止まってしまった。

 トップスピードの右腕が、なくなっていた。高速弾でカウルごと吹き飛ばされたのか、落下の時にもがれたのかまでは、その場では解らなかったが、何れにせよ腕がない事実は変えられない。

 ドンッ!

「うわっ!」

 野太い発砲音と、ラ・ピュセルの声が聞こえた。

 リップルがそちらを振り返った時、敵は既に目前にいた。

 先程ラ・ピュセルに向かって発砲しただろう、巨大なリボルバー銃 ──── ダネルMGLグレネードランチャーを、リップルとトップスピードの方に向ける。

 リップルは、相手を憎々しく睨みつける。

「結局、ずっとお前は私のものになってくれなかった」

 敵はそう言い、トリガーに指をかける。

「だから、その女は消してやる。お前は、持ち帰って、そのまま飾っておけばいい」

「やめろぉおぉぉぉぉっ!!」

 

【挿絵表示】

 

 ザシュ

 砲口をトップスピードの方に向け直した僅かな瞬間の後に、敵 ──── カラミティ・メアリの胸から、彼女を背後から刺し貫いた白刃が突き出てきた。

 

 

 ── やっぱり。

 スイムスイムは、様子を伺いながら、自分が抱いていた違和感に確信を得る。

 ── ラ・ピュセルは生きてた。

 そして、僅かに逡巡する。

 ── トップスピードは大怪我してるけど、リップルとラ・ピュセルは無傷。

 勝てない相手ではない。むしろ2人とも、スイムスイムにとっては相性が良い方だとは言える。

 ただ、強い相手、ではある。

 それに、クラムベリーが自分達を狙っている、という情報もある。

 ── やめよう。

 スイムスイムはそう判断して、人知れずその場を去っていった。

 

 

 無我夢中だった。2人を助けなきゃと思った。だから全力で身体が動いてた。

 ──────── でも。

 

 ──── 「こんなやつ、生きてちゃいけない」って、確かに思ってた。

 

 





もうひとつ言い訳
流石に現場は掴めなかったから地元の国道354号/常磐自動車道 桜土浦インターチェンジをイメージに使いました。

具体的な感想をいただけると、続きを描くことが捗ります。
Twitter https://twitter.com/kaonohito2
Discord https://discord.gg/WN23qmRnkQ
Discordは「一時メンバー」となりますので、私のオフライン時に来られた方は、「エントランス」及び「⁠一時メンバーの連絡用チャンネル」のアナウンスに従って必要事項を書き残してください。

ラ・ピュセル以外に追加で助かる魔法少女がいてもいい?

  • いいと思う
  • よくないと思う
  • むしろ助けろ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。