アカメが斬る! 革命の涯てに   作:Lucas

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1話 新たな時代

 墓地。

 葬儀は既に終了し、英雄の死を悼もうと押し寄せた人々も皆街へと帰っていった。

 そんな中、影が伸びたナジェンダ将軍の墓石の前に一つの人影があった。

 

「6年か……」

 

 砂漠用かと思われる、全身を覆ったマントから右手を伸ばし墓石を撫でる。その腕には線を引いたような痣が走り、その瞳の色は赤かった。

 

「よく頑張ったな、ナジェンダ」

 

 その人物の名はアカメ。帝国時代の末期、人々を恐怖に陥れた暗殺者集団『ナイトレイド』の一員にして、知る人ぞ知る革命の立役者である。

 

「よう、アカメ。やっぱり来たな」

 

「ウェイブか」

 

 一人の青年が後ろからアカメに声をかけた。

 軍服を来た彼の名はウェイブ。政府軍のれっきとした軍人である。

 

「葬儀は……」

 

「遠目に見ていた。一応、追われる身だからな」

 

「……そうか」

 

 ウェイブは沈黙を重く感じた。

 革命を成功に導いた鍵──帝国の主要な人物の暗殺という汚れ仕事を担った『ナイトレイド』、 ひいてはその生き残りであるアカメを、革命の英雄ではなく、ただの人殺しとして扱っている現状 と、それを許している自分が嫌になる。

 

「そんな顔をするな。私がこれでいいと言った」

 

「でもよォ……」

 

「いいんだ。私は、……私たちは殺し屋、人殺しだ。正義なんてどこにもない。それでも、多くの人々の幸せな明日のためにと、そんな目的のために戦えて、それだけで十分なんだ。後悔はしていない。きっと、みんなも……」

 

 アカメは視線を脇にずらした。

 名前の刻まれていない墓石が並んでいる。

 シェーレ、ブラート、チェルシー、ラバック、スサノオ、マイン、レオーネ、そして、タツミ。

 かつてナイトレイドとしてアカメとともに戦った彼らは、名前を刻むことこそ許されないが、こうして都を臨むことのできる場所で眠っていた。

 

「ところで、さっきクロメの墓を見てきた」

 

「………」

 

「綺麗に手入れされていた。石に汚れはないし、草も伸びてない。供え物は野良猫に食われていたが……」

 

「あの野郎、またか……」

 

「とにかく。大事にしてくれてるんだな、ありがとう。妹もきっと喜んでる」

 

「………あぁ」

 

 ウェイブはしみじみと頷いた。

 

「最近の都の様子はどうだ?」

 

「まあまあ、かな? 6年前より豊かになる奴は増えたけど、やっぱり治安の方はまだまだだ。でも、心配いらねえよ。ちょっとずつ良くなってるし、もしもの時は俺たちが頑張るからよ」

 

「そうか。なら安心だな」

 

「こっちのことはともかく、あんたこそ、どうなんだ? この6年、さっぱり噂も聞いてねえぞ?」

 

「いつもは手配書の回っていない辺境にいるんだ。そこで小さな集落を渡り歩いている」

 

「一人で、か?」

 

「ああ……」

 

「……」

 

「……そろそろ、私は行くよ」

 

「な、なあ。今日くらいは都に泊まったらどうだ? 手配書が貼ってあるから普通の宿はダメかも知んねえけど、俺の知り合いがやってる……」

 

「ありがとう、ウェイブ。でも、いいんだ」

 

 アカメはウェイブの言葉を遮った。

 

「私の存在は争いの火種になりかねない。実際、何度か襲撃を受けた」

 

「!」

 

「覚悟はしていたことだ。ウェイブが気にすることじゃない」

 

「で、でも……」

 

「それに、ただ逃げていればいい私より、国を立て直すウェイブたちの方が大変だ」

 

 踵を返し、アカメはウェイブに歩み寄った。

 

「頑張れよ」

 

 ウェイブに右手を差し出した。

 

「……。そっちこそな」

 

 力強くアカメの手を握り返す。

 

「クロメとみんなのことは頼んだ」

 

「任せとけって、お姉ちゃん」

 

 お互いに笑みを見せ合ったのち、アカメは墓地を後にした。

 

「ウェイブくん」

 

 今度は、アカメを見送ったウェイブに声がかけられた。

 

「ラン……」

 

「『俺たちが頑張るからよ』ですか」

 

「聞いてたのかよ」

 

「偶然ですよ。葬儀を取り仕切ったのは私ですから、終わった後もやることがあったのでまだいたのですよ。因みに、その『俺たち』というのは……」

 

「当然、ランも入ってるぜ」

 

「ハァ。でしょうね。まったく、あなたという人は……」

 

「いいんだよ。色々あるけど、今起こってることは俺たちの役目だろ? もう、アカメにも、もちろん他のみんなにも、頼るわけにはいかねえ」

 

「ですね。さて、それではすぐに戻って、もう一仕事していただきましょうか」

 

「えぇ! おい、もうそろそろ日も暮れちまうぞ」

 

「何を言っているんです? まだまだやらなければならないことは山積しているんですよ。これでも6年前のように毎日徹夜なんて事態にはなっていないだけマシです。それに、ナジェンダ将軍亡き今、軍の皆さんにはより一層の……」

 

「うぅ……。頑張ります……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナジェンダ将軍が死んだか」

「帝具の使用による消耗で明日も知れぬ命と言いながら」

「これほど長らえるとは」

「いやはや流石と言う他ありませんなあ」

「しかし彼女亡き今」

「我々は今までにも増して大きく動くことができる」

 

 フフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフ…………。

 

 この国の闇は、まだまだ晴れることを知らない。

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