アカメが斬る! 革命の涯てに   作:Lucas

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ここからオリキャラが増えていきます。


2話 誘拐と追撃

「はい、満点ですよ。頑張りましたね、サーニャ」

 

「わーい。やったー!」

 

 ここは孤児院に附設された学校。子供たちの賑やかな声がこだましていた。

 

「はい。ソラは惜しかったわね」

 

「えぇ~、ちょっとくらい……」

 

「ダメです」

 

「ちぇ~」

 

 教室の中央に一列に並んだ子供たちに女の先生がテストを返していた。

 

「次は……、ハァ……。ティー、まじめに授業は受けなきゃダメよ」

 

「だーって、先生の授業つまんないだもん。字なんか書けなくても死なないし」

 

「まったくもう、この子ったら!」

 

 教師は真っ白なままのプリントを呆れた顔で手渡した。

 

「いい? 確かに字は書けなくても生きていけるわよ。でもね、これからの時代、ちゃんと読み書きができると絶対に役に立つものなの。だから、今は面倒くさいと思うかも知れないけど、頑張らなきゃダメなの。先生の言うことわかってくれた?」

 

「むぅ~。はーい」

 

「はい。よろしい」

 

 教師は笑顔で少女の頭を撫でた。

 

「みんなも、わかった?」

 

「「「「「「はーい、先生」」」」」」

 

 微笑ましい光景だった。

 ここには革命の後に生まれてきた5才ほどの子供も多くいる。

 彼らが生まれてくる前のこの国では、とても教育などに時間を使うことはできなかっただろう。できたとしても、これだけ大勢の子供が安心して暮らしていけるという未来は見えなかっただろう。

 そう考えると、教師はとても素晴らしい仕事だと思える。

 

(きっと、この子たちの中からも、新しい国で活躍する人間が出てくる)

 

 教師は輝かしい未来を夢見、思い描いた。

 

 コンッ、コンッ。

 

 そんな時、教室のドア──とは言っても、小さな小屋が丸ごと一つの教室なので玄関とも言える──を叩く者があった。

 

「はーい! 誰かしら? ちょっと待っててね………」

 

 教師はドアの鍵を解除し、突然の来訪者の姿を瞳に収めた。

 旅人のようにマント羽織り、フードは顔が見えるように被っていない。表情は商人風の笑み。その装いに相応に、数歩後ろには運搬用の馬車が置かれていた。

 

「こちらで孤児院と学校をやってらっしゃると聞きまして……」

 

「ええ。それはおそらくここのことだと思います」

 

「いやあ、それはよかった。するとそちらのお子さんたちが生徒さんですかい?」

 

「ええ」

 

「そうですか、そうですか。ところで聞いた話なんですが、あなたはここの孤児院の孤児だけじゃなく、近くの学校がない町の子供たちにも読み書きを教えてるってんですが、本当ですかい?」

 

「ええ。まだまだ都の近くでも、子供たちの教育には手の回っていないことが多くって。私のような者でも力になれれば、と」

 

「いやあ、そいつはご立派! しかしね、先生………」

 

 男の雰囲気が変わったかと思った瞬間、教師は腹部に衝撃を受けて床に倒れた。そして、二度と目を開けることはなかった。

 

「あんた、運がないよ」

 

 教師の腹からは赤い血がどくどくと流れ出し、そして、男の手には、いつの間に取り出したのか、血に濡れたナイフが握られていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「子供の誘拐!?」

 

「ええ」

 

 ウェイブはランの言葉を思わず反復したが、ランはあくまで落ち着いて肯定した。

 

「都からすぐの位置にある町の学校で、何者かが教師を殺害して30~40人の子供をさらった、と。まだ今朝のことだそうです」

 

「許せねぇな」

 

「まったくです。本来ならば、中央の軍など出さずともよいのですが、なにぶん小さな町ですので。それに、なんといっても子供たちのことを考えると、一刻も早い解決が望ましい」

 

「よっしゃ! つまり、俺がとっとと犯人ふんじばっちまえばいいってことだな」

 

「あなた『たち』が、です。今となっては、あなたも部下のいる立場なのですから、くれぐれも自覚を持って………」

 

「わかってるって。んじゃあ、早速あいつら集めて出発するよ」

 

「よろしく頼みます」

 

「任せとけって」

 

 

 

 

 

「………っつう訳で、今その町に移動してる途中だ。子供の無事が最優先で、犯人の逮捕はその次だ。わかってるな?」

 

「「「「はい!」」」」

 

 ウェイブの言葉にはきはきと返答したのは、4人の部下。

 

 カイ。

 スラッとした体型に凛とした顔立ち。装備には、腰の剣のほかに、両腿にリボルバーを巻き付けている。戦闘で使うのは専ら銃の方。

 

 ハンナ。

 ウェイブにお熱な紅一点。スポーティーな短髪。武器は日本刀。

 

 ザイル。

 筋肉質で2m近い長身。武器は剣だが、通常よりも巨大な特注品。

 

 ベイター。

 隊のムードメーカー的なお調子者。メガネ。ウェイブ以外で唯一の帝具使い。

 

「隊長、着いたみたいですよ」

 

 ハンナが手綱をさばきながら進行方向を指さして言った。道一本通っているだけの風景とは打って変わって、田園風景が広がっていた。

 田畑の間の道を進むと、間もなくして馬上の5人の前に軍服を着た男が現れた。

 

「お早いお着きで。私はこの町の治安を預かるランドと申します」

 

「ウェイブだ。早速で悪いが、できるだけ急ぎたいんだ。走りながら状況を教えてくれ」

 

「了解しました」

 

 ウェイブはランドと名乗った男を自分の馬に便乗させた。

 

「方向はこのままで。概要は既にお聞き及びでしょうから割愛しまして、犯人は馬車に子供たちを乗せて森の中に逃げ込んだようです。犯人の人数は足跡と車輪の跡から見て少人数かと思われます」

 

「森に入ったって言ったが、そのままどこかに行っちまった、なんてことは?」

 

「ないでしょう。隣町へ行くには街道を通りますが見張っているのですぐわかりますし、車輪の跡を辿ったところ真っ直ぐ森の奥へと続いておりました。馬車ですしそうそう奥までは進めないはずです。おそらくどこかに拠点でもあるものかと。本来ならばそれを見つけて叩くまでが我々の役目なのですが、山狩りをするには兵士の数が足りず……」

 

「俺たちにお鉢が回ってきた、と。わかった。で、その森ってのは遠いのか?」

 

「いえ、すぐそこですよ」

 

 ランドの言葉通り、森に到着するまでそうはかからなかった。

 木々が鬱蒼と生い茂る中、車輪の跡が二本、奥へ奥へと続いていた。

 

「この先もこのまま馬で進めるのか?」

 

「問題ないはずです。悪路にはなりますが荷台でもない限りは」

 

「ずいぶん詳しいんだな」

 

「この辺りの出なもので」

 

「へぇ……」

 

「隊長、あれを」

 

「ん? ッ!」

 

 カイが指さした先に、馬車の荷台だけが捨て置かれていた。

 少し遠いところで馬を止める。

 

「ハンナ付いてこい。カイ、ザイル、ベイターは周りの警戒だ」

 

 ハンナはウェイブの半歩後ろを柄に手をやりながら付いていく。3人はそれぞれ馬から下りて周辺に視線を配った。

 ウェイブが馬車に到達する。

 

「開けるぞ」

 

 ウェイブが幌に手をかけていった。

 

「はい」

 

 幌を一気に捲り上げて中を見る。子供たちはいなかったが、替わりにとんだ置き土産があった。

 

「ヤバい!」

 

 ウェイブが叫んだのとほぼ同時、馬車が爆発し、2人の姿が煙に消えた。

 

「隊長!」

 

「ザイル、上だ!」

 

 同時に、後ろの3人の頭上から大量の矢が降り注いだ。

 

「散れ!」

 

 カイの声とともに3人は三方に跳んで、矢をかわした。

 

「どこからだ、ベイター」

 

 リボルバーを抜いたカイがベイターの指がさす方向を射撃する。

 何かが倒れる音が連続したのち、矢が止んだ。

 

「やったか?」

 

 応えるように一本。ザイル目掛けて矢が飛んだ。

 

「舐めんなよ!」

 

 ザイルは剣で矢を弾くと、矢が飛んできた方向に剣を構えて飛び込んだ。

 

「曲射じゃなけりゃ位置もわかんだよ!」

 

 弓を構えていた男を、一刀で斬り伏せた。

 

「全員無事か?」

 

 爆煙からグランシャリオを身に纏ったウェイブが、ハンナを抱えて出てきた。

 

「問題ありません」

「当然」

「チョロいっすよ」

 

「よし。そんじゃあ取りあえず、どういうことなのか聞かせてもらうぞ、ランド?」

 

「て、帝具……」

 

「おい、聞いてるか?」

 

「は、はい! おそらくこれは罠で………」

 

「そこじゃねえよ」

 

 ウェイブがランドの言葉を遮った。

 

「なんであんたの周りには一本も矢が飛んできてねえんだ? って聞いてんだよ」

 

 ウェイブの言葉通り、彼の周囲には一本の矢も刺さってはいなかった。

 

「………」

 

「そこで黙るってことは、やっぱりそういうことなのか?」

 

「いや、これは、その、………」

 

「もうごちゃごちゃ言わねえ方がいいぞ。で? 子供たちはどこだ?」

 

「………」

 

「………そうかよ。ハンナ、子供たちはここから歩いて進んだと思うか?」

 

「違うと思います。馬と大人の足跡しかありません。この馬車は爆弾と敵を運んだだけで、子供たちはきっと別のに、」

 

「だよな。でもこの先は道が悪くなって馬車は進めないし、そもそも車輪の跡は一つ分だった。てことは………」

 

「こっちは完全に囮。本物は隣町への街道を走行中」

 

「ッ!」

 

 ランドの表情が変わった。

 

「当たりか」

 

「どうします?」

 

「もたもたしてる間に距離を稼がれたら困る。俺は先に行くから、お前らは馬で追いついて来てくれ」

 

 言うが早いか、砂埃を巻き上げてウェイブは飛び出した。

 

「ちょッ! 隊長!」

 

「あーりゃりゃ、置いてかれちゃったね。どうする?」

 

「隊長の命令通りに。せいぜい何人かの賊が相手だ。俺たちがいなくとも遅れは取るまい」

 

 カイが拳銃に弾を込めながら言った。

 

「ザイル、お前はそいつを縛って、町まで運んで地元の兵士に突き出して来い。ベイターも一緒に行け。ついでに、事件の詳細も改めて聞いとけ。それから、ここの後始末もな」

 

「オーケー。暴れんなよ、おっさん」

 

「わかったよ。よかったね、ハンナ。隊長の方で」

 

「うっさい!」

 

「遊ぶな。急ぐぞ」

 

 4人はそれぞれ馬に跨がって走り出した。

 

「お前ら……」

 

「あん?」

 

 ザイルの後ろでランドが小さく喋った。

 

「あんまり我々を甘く見てると後悔するぞ……」

 

「そんな格好で言っても説得力ねえぞ?」

 

「ハハハッ! 言いたいことはせいぜい今のうちに言っておくんだな。ハハハ……、うげっ!」

 

 ザイルの肘がランドの顔面に入った。

 

「黙ってろ」

 

「フン」

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