アカメが斬る! 革命の涯てに   作:Lucas

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4話 娘

「で? 結局どういうことなんだ? タツミ」

 

 ウェイブはタツミに何度目かの問いを発した。

 

 タツミが誘拐犯を斬り殺した後、一行はひとまず都まで帰って来ていた。

 子供たちを落ち着かせたり、ナイトレイドの一員を見て取り乱す部下たちを宥めたりと、ウェイブは疲れていたが、兎に角事情を聞かずにはいられなかった。

 

「無事に解決したようで何よりです。子供たちもひとまずは……、タツミくん!?」

 

 任務の完了を聞いたのか、ウェイブを訪ねてきたらしいランが、タツミを見て素っ頓狂な声をあげた。

 

「そりゃ驚くよな」

 

「どういうことなのですか、これは……」

 

「それを今、ちょうど聞こうとしてたとこだよ」

 

 ウェイブはもう一度タツミに視線を戻して、

 

「なんで生きてんだ? タツミ」

 

「ふぅ……」

 

 タツミは観念したように一つ深い息を吐いた。

 

「どこから説明しようかな……」

 

「おい、タツ……」

 

「パパっ!」

 

「パパぁ!?」

 

 誘拐された子供たちの中から、一人の少女が走ってきた。

 唖然とするウェイブとランの脇を抜けて、タツミの胸に勢いよく飛び込んだ。

 

「ティー! ハハハ、元気いっぱいだなぁ。怖かっただろ、ごめんな。大丈夫か?」

 

「うん。大丈夫だよ。私えらい、パパ?」

 

「うん、えらいぞ。ティーは強いな」

 

「えへへっ」

 

「ちょっと待てぇぇぇぇ!!!」

 

 胸に抱いた少女と、父性溢れる優しい表情のタツミとの会話をウェイブが全力で断ち切った。

 

「た、タツミ? そ、その子は誰だ………?」

 

 恐る恐る尋ねるが返ってきた答えは予想通りのものだった。

 

「俺の娘のティーだ」

 

「「…………」」

 

「ティー、こっちがウェイブで、こっちがラン。二人ともパパとママの友達だ」

 

「こんにちは。ティーです。5才です」

 

「あ、……あぁ、俺はウェイブだ。よろしく」

 

「ランです」

 

「………って! いや、そうじゃなくて! お、おい、タツミ!」

 

「ウェイブくん、少し落ち着きましょう」

 

「お、おう……」

 

 ランがオーバーヒート気味のウェイブを抑えた。

 

「タツミくん。今から、二三質問しますよ。構いませんね?」

 

「あぁ」

 

「では。疑うようで申し訳ありませんが、あなたが本物のタツミくんだと証明できますか?」

 

「ッ! おいラン、それは……」

 

「いえ、必要なことですよ。世の中には人の目を欺く術や帝具があると聞きます」

 

「………」

 

 ウェイブの脳裏にクロメの幻が浮かんだ。あの時タツミが来なければ、ウェイブは死んでいたかも知れない。

 

「それに、私もあなたも、この目で見たでしょう? タツミくんとエスデス将軍の最期を」

 

「………」

 

 再び沈黙するウェイブ。

 確かに、6年前の革命の日、タツミは『シコウテイザー』から国民を守って命を落とした。加えて、遺体はエスデス将軍とともに無数の氷の欠片となって空に消えた。ともにウェイブの目の前で起こったことだった。

 

「……わかった。なぁウェイブ、フェクママウンテンで木の形した危険種から助けてやったことあったよな」

 

「あ? あぁ……」

 

「たぶん俺とウェイブしか知らないことだ。これでいいか、ラン?」

 

「ええ、そうですね。疑ってすみませんでした」

 

「別にいいよ」

 

「では次の質問です。その子の母親は誰ですか?」

 

「そうだ、それそれ。俺も気になっ……」

 

「あっ! ママだ!」

 

 ランに追従しようとしたウェイブの言葉を遮って、ティーが二人の後ろを指さした。

 

「ここにいたのか……」

 

 振り返るウェイブとラン。目に入ったのは一人の女性。

 長い青色の髪に青色の瞳。雪のように白い肌。見る者すべてを虜にするような美しい顔立ち。そして、肘から先に膨らみがない左の袖。

 今身に着けている婦人服を、軍服に着替えれば、記憶と完璧に一致する人物がいる。

 ウェイブは呆然とその名を口にした。

 

「エスデス、隊長………?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「むぅ………」

 

「ハンナ、いい加減に貧乏揺すり止めなよ」

 

 ところ変わって、任務を終えたウェイブ隊一同は待機中。

 

「だって、だって、だってだってだってだってだって………」

 

「隊長のこと、気になる?」

 

「当たり前でしょ!」

 

「そりゃそうだよねぇ、ナイトレイドっていったら帝都を恐怖のどん底に陥れたっていう殺し屋集団。で、そのうちの一人と好きな人が知り合いだったなんて知ったら、そりゃイライラするのも当ぜ……痛い痛い痛い!」

 

 ハンナがベイターの口をつまみ上げた。

 

「誰も隊長が好きだなんて言ってないでしょ!」

 

「もうバレバレなんだから隠すことないのに。気づいてないの隊長だけだって……痛いって! ごめんごめん! ごめんなさい!」

 

「あまり遊ぶなよ、ベイター」

 

「いやあ、ハンナの反応は面白いから何度やっても飽きなくってねぇ、ついつい」

 

 窘めるカイにベイターは持ち前の軽口で返した。そんな中で、ザイルが重々しく口を開いた。

 

「なあ、みんな。俺がスラムの出だって話は前にしたよな?」

 

「あぁ。急にどうしたんだ、ザイル」

 

「あそこではよ、みんな家族みたいな付き合いなんだ。子供はみんな兄弟でさ。そこで俺が『姉さん』って呼んでた女がいてな。時々、稼いだ金持って帰ってきては大人連中と酒飲んで、俺たち子供とは遊んでくれた」

 

「それで?」

 

「それでオチを言うとだな。その女がナイトレイドの一員で殺し屋でしたって話だよ」

 

「はあ!?」

 

「手配書見たことあるだろ? レオーネって奴だよ。でもさあ、ホントに優しくていい奴だったんだ。俺のダチはみんな姉さんのこと好きだったんだよ。だからさ、ハンナ……」

 

「ん?」

 

「別に気にすることないと思うぞ。悪いことした奴がホントに悪人とは限らねえんだ。まして、本人がそうだってんじゃなく、ただの知り合いだろ? それにあの隊長だぞ? 悪い人だと思うか?」

 

「ううん。絶対、隊長は正義の味方だよ。訓練辛いときには励ましてくれたし、何度も危ないところ助けてもらったし」

 

「だろ? だから気にするな」

 

「うん。そうする」

 

 ハンナの顔に笑顔が戻った。

 

「ねぇ、今のって遠回しに隊長のこと好きだって……イタタタタっ!」

 

「ベイターは黙ってなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エスデス、隊長………」

 

 ウェイブが呆然と呟いた。

 

「あぁ、私だ」

 

「なんで……?」

 

「今から話す。……タツミ」

 

「一人で大丈夫か?」

 

 タツミが心配そうに言葉をかけた。

 

「大丈夫だ」

 

「わかった。ティー、ちょっとあっちに行くぞ」

 

「ええ? なんで?」

 

「いいから」

 

 タツミはティーを連れてその場を離れた。

 

「では、話すとしようか……」

 

 そして、エスデスは6年間の出来事を話し始めた。

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