アカメが斬る! 革命の涯てに   作:Lucas

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明けましておめでとうございます。
今年も私の作品を何卒よろしくお願いします。


6話 夜更け

 ウェイブの知り合いがやっているという宿屋の一室で、タツミとエスデスは枕を並べていた。間にはティーを挟んで、いわゆる川の字である。

 

「寝たかな?」

 

「ああ。疲れていたんだろう」

 

 規則正しく胸を上下させるティーの頭を撫でながらエスデスは言った。

 

「なあ、タツミ。少し、嫌なことを聞いてもいいか?」

 

「何だよ?」

 

「『スペクテッド』で、一体誰を見た?」

 

「…………」

 

 射抜くように真っ直ぐタツミの目を見ながらエスデスは問いかけた。

 タツミは答えない。

 息が詰まるような数秒間が流れる。

 

「……そうか」

 

 先に目を逸らしたのはエスデスだった。

 

「……ごめん」

 

「謝るな。もう眠ろう。私も今日は疲れた」

 

 エスデスは右手で掛け布団を引っ張りながら仰向けになって、目を瞑った。

 

「おやすみ、タツミ」

 

「おやすみ」

 

 しばらくしてエスデスはまた口を開いた。

 

「なあ、タツミ……」

 

「何だよ?」

 

「ここにお前がいて、ティーがいる。それだけで私は幸せだ」

 

「………」

 

「お前が誰を一番に思ってても構わない。お前がいてくれさえすれば、今はそれだけで十分だ」

 

「………」

 

「恥ずかしいことを言ってしまったな。お前の所為だぞ、タツミ」

 

「ごめん」

 

「だから謝るなと言っただろう」

 

 エスデスは左目を小さく開けてタツミを見た。

 

「愛してる。忘れたくないなら無理するな。そんなことで私はどうこう思ったりはしない」

 

「……ご、……ありがとう」

 

「それでいい」

 

 エスデスは再び瞳を閉じた。

 

(そこは『俺も愛してる』と言って欲しかったのだがな……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おかえり、カルラ」

 

「おう、レイラか。遅くまでご苦労さん」

 

 ホワイトファングのアジト。

 金髪の女性が帰還したカルラを出迎えた。

 彼女の名前はレイラ。

 

「それとも俺が帰ってくるまで待っててくれたのか?」

 

 カルラがレイラの肩に手を置いた。

 レイラは手に持っていた書類を床に落とし、カルラの手にゆっくりと自分の手を添えると、力強く掴んでそのままカルラを背負い投げの要領で床にたたき伏せた。同時にナイフを抜いて首に突きつける。

 

「セクハラは犯罪だぜ? どうする? 死ぬ?」

 

「ただのシキンシップだって! 誰か! 誰か!」

 

 引きつった表情でカルラは弁明して助けを呼んだ。

 

「またやってんのか?」

 

 カルラの声が聞こえたのか、奥から一人の男がやってきた。

 

「こっちはもう寝るところなんだぞ」

 

「反応うすっ! おい、ボリス!」

 

「そんなことより、さっきモランの旦那が呼んでたぞ」

 

「そんなことより!? 俺、今ピンチなんだけど……」

 

「んじゃ、伝えたからな」

 

「えっ、行くの? マジで?」

 

 欠伸をかみ殺しながら、ボリスは再び奥に消えた。

 

「さて、邪魔者はいなくなったな」

 

「普通そのセリフを美女に言われたら小躍りして喜ぶところなんだろうがお前に限っては喜ぶどころか逆に縮んじまうわ!」

 

「そうかよ。オレはお前に限らず男にそういう目で見られるのは嫌いだから助かるよ」

 

(こいつこれがなければホントにいい女なのに……)

 

 どうやって切り抜けようかとカルラが割と本気で考えて始めた時、また一人の女が近づいてきた。

 

「あの~、」

 

「ああ、シオン。ごめん、待たせてたんだった。すぐ行くよ」

 

「うん」

 

 シオンの出現によって一瞬でカルラのことなど忘れてしまったらしいレイラは、ばらまいた書類を手早く纏めると、シオンと手を恋人繋ぎにして寝室の方へと去っていった。

 

「男の出る幕はないってか……」

 

 一人置いて行かれたカルラは立ち上がって、呼んでいたらしいモランの部屋へと向かった。

 

「何の用っすか、旦那?」

 

「なぁに、大したことじゃない」

 

 グラス二つと酒のボトルを示してモランは言った。

 

「エスデス将軍が帝都に戻ったらしいな」

 

「ええ。お陰で今までみたいにこっそりやってく訳には行かない。でもまあ、こっちに引き込めなかったにしろ、向こうにだって大して戦力にはならないんだから気にするほどでもねえですよ。後、あそこはもう帝都じゃありませんよ」

 

「癖だよ。半世紀もそう呼んでいたら直すのが難しくてな」

 

 モランは帝国の高官だった。革命軍の手を逃れた彼は、同じように地位を追われた人間とともに、いくつかの反政府組織を援助している。ホワイトファングはそのうちの一つ。今のところは、一番の有望株らしい。

 そうして、嘗ての栄光を取り戻す日を夢見めているのだ。

 カルラの方はモランの情報やコネは重宝している。

 よく言うところの持ちつ持たれつというあれだ。

 

「エスデス将軍が生きていると聞いた時は期待もしたのだがな」

 

「まあ、そうそうそんな美味しい話はないってことで。損しなかったんだから、嘆くことでもねえですよ」

 

「君はいいさ、まだ若い。私はもうそんなには生きられないからね。焦りもするんだよ」

 

「そりゃ何回も聞いてますって。まあ、見ててくださいよ。旦那が生きてるうちには、この国をまたひっくり返してやりますから。サポートは今度ともよろしく頼みますよ」

 

「ああ、心配するな。協力者はまだまだいる。革命軍の中にも、結局は我々に取って代わって甘い汁を吸いたかっただけの連中も多い。フフフッ……」

 

「ハハハッ! それじゃあ、俺はこの辺で」

 

「もうか? まだ酒はあるぞ」

 

「明日から忙しくなるんで」

 

 カルラは、モランが次の言葉を言う前に扉を閉めて、部屋を出て行った。

 

「隊長!」

 

 ちょうどその時、ホワイトファングのメンバーが駆け寄ってきた。

 

「どうした?」

 

「敵襲です。政府軍の部隊が町はずれまで来てます」

 

「チッ! 思ったより早かったな。数は?」

 

「12人」

 

「隊一つだけか。まあ、ご老人方の耳に入らねえようにしたら、どうしても少なくなっちまうか……」

 

「どうします?」

 

「町に入ってきたところで仕留めろ。中央の部隊なら土地勘ねえだろ。後、全員叩き起こして荷造りさせろ。ここ引き払って山奥のアジトに移る。しばらく文明とはおさらばだ」

 

「了解!」

 

「忙しくなるぞ!」

 

 カルラは白い歯を見せて不敵に笑った。

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