ゼノ・クライシス(Xeno-CRISIS)   作:gp真白

13 / 32
第十二話

地下監獄の騒乱が、エルサレムの最上層に位置する「理の塔」にまで響き渡っていました。

 

そこは、近代的な電子機器と古代の祭壇が混ざり合う、異様な空間。中心部の円筒形カプセルには、奪われたアニマの結晶が、無数のコードに繋がれた状態で宙に浮いています。カプセルの前で、冷徹な美しさを湛えたエルフの王女が、端末を操作しながら忌々しげに舌打ちをしました。

 

「……計算が合わないわ。アニマの深層意識(神の記憶)にアクセスしようとするたび、この結晶が激しく拒絶反応を示す。……まるで、誰かの呼びかけに応答しているかのように」

 

その時、一人の部下が血相を変えて部屋に飛び込んできました。

 

「王女! 地下監獄から報告です! 不法侵入者の少年が、あの『追放者』カレルレンを連れ出し、脱獄しました! 現在、研究区画にグノーシスを出現させ、甚大な被害が出ております!」

 

「カレルレン……。あの古臭い人道主義者と、あの泥臭い小僧が?」

 

王女の瞳に、鋭い殺意が宿ります。彼女にとって、アニマの結晶から引き出せる「神のエネルギー」は、エルフ一族が永遠の統治を続けるための絶対的なリソース。それを邪魔する者は、誰であろうと排除すべき「塵」に過ぎません。

 

「邪魔はさせない。神の記憶を我が物とするまで、あと一歩なのよ……。……全軍に告ぐ。地下の反乱分子を即刻抹殺せよ。……それから、待機している『番人の精鋭』たちを差し向けなさい」

 

王女の指示と共に、王宮の各所に配置されていた「秩序の番人」たちが一斉に動き出しました。彼らは通常の兵士とは異なり、ゾハルの波動を直接戦闘力に変換できる超常の戦士たちです。

 

王女は再び結晶に向き直り、出力を最大まで引き上げました。

 

「カレルレン、あなたが何を企んでいるかは知らないけれど、ここへ辿り着く前にすべてを終わらせてあげる。……このアニマの力でね」

 

カプセルの中の結晶が、悲鳴を上げるように激しく明滅します。結晶体のアニマは、遠く離れた場所で戦うクライムの「左目」の波動を感じ取り、必死に抵抗を続けていました。

 

一方、昇降機で上層を目指すクライムたちの前には、王女の命を受けた「番人」たちが立ちふさがります。

 

「新人さん、ここからは本当の地獄だ。相手はグノーシス以上に話が通じない、『秩序』という名の狂信者たちだよ」

 

カレルレンは、奪ったヒルベルト・エミッターを弄りながら、不敵に笑います。クライムの左目は、壁の向こう側から迫る、巨大な「アニマの波動」を捉えていました。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。