「——おい。流石に大人二人がガキ一人を相手にするのは、卑怯この上ないんじゃねーか?」
空を切り裂くような鋭い衝撃波と共に、一人の男が瓦礫の山へと着地しました。煤けたマントを翻し、不敵な笑みを浮かべて立つその姿に、クライムは喉が張り裂けんばかりの声で叫びました。
「先生! ムサシ先生!!」
「よお、クライム。少し見ない間に随分と派手にやってくれたな」
ムサシは背後の弟子を片手で制しながらも、その視線は一瞬たりとも目の前の「隊長」から逸らしません。一方、煙を吐き出していた隊長は、信じられないものを見たという風に、呆れた顔で肩をすくめました。
「……おいおい、聞いてねーよ。お前、随分前に死んだって報告を受けてたんだがな。なんで生きてやがるんだ、ムサシ」
隊長の言葉は、まるで行きつけの酒場で旧友に会ったかのような、軽い調子でした。しかし、その周囲の空気は、絶対零度に近い緊張感で満たされています。
「仕方ねーだろうが。こうでもしねえと、女将からゲンコツ喰らうんだよ。同郷のよしみなら、この理不尽さも分かるだろ?」
「分からんし、理解なんてしたくねーよ、おっさん」
隊長の即答に、ムサシは苦笑いを浮かべながら、腰の刀の柄に手をかけました。重心を低く落とし、一瞬で間合いを詰めるための「居合の構え」。
「どっちがおっさんだ。……それに、俺たちの決着もまだ着けてなかったな。なあ、四柱の『隊長』さんよ」
「……チッ。葉巻が不味くなるぜ」
隊長は最後の一服を深く吸い込むと、短くなった葉巻を床に捨て、足で踏み消しました。その目は、もはや「胡散臭い叔父さん」のものではなく、宇宙を統べる番人たちの長としての、冷徹な捕食者の輝きを宿しています。
「ドンパ。悪いが、小僧一人の相手、任せていいか? ……あれ(ムサシ)は俺一人でも正直手を焼くんだよ。お前とは相性が悪い、スピード特化の接近タイプだ。お前なら、あの小僧を捕まえるくらい朝飯前だろ」
巨漢のドンパは、重厚な機械鎧の関節を鳴らしながら、クライムの方へと一歩踏み出しました。
「隊長が久しぶりにやる気になってる……。明日は雪でも降るかもしれませんね」
「余計なこと言わんでいい」
隊長が目を細めて釘を刺すのを他所に、ドンパは巨大な拳を打ち合わせ、闘志を静かに燃え上がらせます。
「クライム! そのデカブツは任せたぞ! そいつの攻撃は『網』じゃ受けきれねえ、逃げながら隙を突け!」
ムサシの叫びと同時に、銀光が一閃。
ムサシの居合術が隊長の喉元へ肉薄し、隊長の手元の暗器がそれを火花と共に弾き飛ばしました。二人の超人の激突によって生じた衝撃波が、理の塔の残骸を砂のように粉砕していきます。
「……さて、少年。遊びは終わりだ」
ドンパの巨大な影が、クライムの視界を覆い尽くしました。