ゼノ・クライシス(Xeno-CRISIS)   作:gp真白

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第二十二話

奈落の底、噴き上がる黒い虚数エネルギーの霧が晴れると、そこには異様な静寂を纏った「クライム」が立っていました。

彼の背中から生えた黒紫色の結晶翼は、周囲の光を飲み込むように不気味に脈動しています。中身が入れ替わった肉体——少女の意識が、クライムの指先を動かし、その感覚を確かめるように掌を見つめました。

 

「温かい……。これが『生きた意志』を持つ肉体の温度……」

 

その時、胸元で激しく明滅する光がありました。アニマの結晶です。

 

「……クライム? なの? いえ、違うわ……あなた、彼の中から何をしているの!?」

 

結晶体のアニマが、怯えと怒りの混じった思念波を放ちます。彼女にとって、今目の前にいる存在は、愛すべきパートナーの肉体を奪った「侵入者」に他なりませんでした。少女の意識を宿したクライムは、感情の乏しい瞳を結晶に向け、静かに口を開きました。

 

「……アニマ。私は彼を消したのではない。彼と私たちの『意志』を燃料として、この絶望的な状況を書き換えるためのOSとなっただけ。今の私たちは、個体でありながら集合体……。彼が望む『レールのない未来』へ進むための、唯一の手段」

 

少女は王宮の遥か高み、ドンパや隊長たちがいる座標を正確にロックオンしました。

 

「クライムの『網』の概念、グノーシスの『事象透過』……これらを並列処理すれば、距離という概念は無意味になる」

 

ドォォォォンッ!!

 

地面がクレーター状に陥没し、黒紫の翼が一閃。

クライムの肉体は、物理法則を置き去りにした超加速で、奈落の底から王宮へと真っ直ぐに「昇って」いきました。それは落下する流れ星が、重力に逆らって空へと帰っていくような、美しくも禍々しい光景でした。

 

その頃、理の塔の崩壊現場では、ドンパが満足げに鼻を鳴らしていました。

 

「……さて、片付いたな。隊長、小僧は処分完了だ。アニマの結晶もろとも、地の底の藻屑ですよ」

 

ムサシと火花を散らしていた隊長が、わずかに眉を動かしたその時。

 

「——誰が、処分完了だって?」

 

背後から響いたのは、クライムの声。しかし、その響きにはこの世のものとは思えない「透明な冷たさ」が混ざっていました。

ドンパが驚愕して振り返った先。黒い翼を羽ばたかせ、紫の眼光を放つクライムが、虚空に編み上げられた「黒い幾何学模様」の上に平然と立っていました。

 

「……何……だと……!? 生きて……いや、貴様、何者だ!?」

 

ドンパの動揺を余所に、少女(クライム)は右手を静かにかざしました。

 

「私は、彼の意志。そして、貴方たちが踏みにじった『無』の代弁者。……ここからは、私たちがルールを決めさせてもらうわ」

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