ゼノ・クライシス(Xeno-CRISIS)   作:gp真白

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第二十三話

王宮の頂上、崩壊した瓦礫の只中に、黒紫の翼を羽ばたかせる「クライム」が降り立ちました。その瞳は冷徹な演算回路と化し、世界を数式の奔流として捉えています。

 

「……ありえん! あの高さから落ちて、なぜその姿で戻ってこられる!」

 

ドンパが咆哮し、丸太のような腕を振り抜きました。大気を引き裂く質量攻撃。しかし、少女の意識を宿したクライムは、紙一重の動きでそのすべてを無効化します。

 

「……右、三十二度。衝撃波の拡散率は十二%。……無意味よ」

 

少女の声がクライムの唇から漏れます。ドンパが繰り出す渾身の連撃は、まるでスローモーションのように空を切りました。少女の計算能力は、ドンパの筋肉の収縮、重心の移動、さらには周囲の気流の変化から、数秒先の未来を完全に導き出していたのです。

 

「そこ」

 

クライムの指先が、ドンパの巨体の「節」に触れました。ただの接触に見えましたが、そこにはグノーシスの「事象崩壊」の数式が直接流し込まれます。

 

「がはっ……!? なんだ、この……力が、抜ける……!」

 

ドンパの鉄壁の防御が内側から霧散し、巨躯が膝をつきました。一切の反撃を許さない、文字通りの圧倒。(パワー)が知性に(ひざまず)いた瞬間でした。

 

ムサシと剣を交えていた隊長は、その光景を目の当たりにして、静かに武器を収めました。彼は戦いの興奮よりも、目の前で起きた「現象」に対して、深い知的好奇心に突き動かされているようでした。

 

「なるほど……。個の意志(クライム)と、種の拒絶(グノーシス)が、一つの肉体で共振しているのか。……これが、集合的無意識が導き出した『最適解』というわけか」

 

隊長は口から細く煙を吐き出し、興味深そうにクライム——その中に宿る少女を見定めました。

 

「小僧、いや、お嬢さんと言うべきか。君は今、この宇宙のバグそのものだ。番人たちが一生をかけても到達できない、高次元の存在へと足を踏み入れている」

 

隊長の言葉に、少女(クライム)は感情のない視線を向けました。

 

「私たちは、もう誰の観測にも縛られない。……ドンパ、貴方の『質量』は、私たちの『意志』の前では羽毛よりも軽い」

 

クライムの背後の翼が大きく広がり、王宮全体を黒い影が覆います。アニマの結晶がその胸で共鳴し、かつてないほどのエネルギーが「理の塔」に充満し始めました。それは一つの意志が生み出した結果なのか、グノーシス達の終着点がクライムという存在を完璧に変えるのか。

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